偽ブロリー《新》となって異世界に渡りました 作:ゴールデン
娼婦達がブロリーが奪った屋敷に向かっている頃。
戦闘時に溢れていた野心や欲望は何へやら、ブロリーは豪華なソファーに寝転がりながら、暇を持て余していた。
この世界で欲望の赴くままに生きる事を決めた彼だったが、この先の明確なビジョンが浮かばないでいた。
どうやら、戦闘が終わるとブロリーの中のサイヤ人としての本能は弱くなり、日本人として培った感性が強まるようで、彼がアバター制作の元にした《(新)ブロリー》と似ているかもしてない。
日本人の感性が強まって、暴力的な発想が出てこないブロリーは考えても分からないと、気分転換に屋敷の外へと繰り出し、周囲を散歩する事にした。
もしかしたら、散歩している内に良いアイディアが浮かぶかもしれないからだ。
しかし……。
屋敷を出たブロリーの視界には誰も映らなかった。
家からは生活で使用するであろう光はなく、誰かが住んでいるであろう生活音すら聞こえない。
まるで、ホラー映画で登場するゴーストタウンの様だと、不気味に思った。
「おいおい、一体どうしたんだ?」
ブロリーは背筋に薄ら寒いモノを感じ、おもむろにスカウターを起動させる。
ピピピピピピッ!!と誰も居ない道でスカウターの電子音だけが辺りを響かせた。
電子音が止み、スカウターのスキャンが終了すると、周囲には人は居ないが、ここから離れた場所に戦闘力が3や2と言った複数の反応を捉えた。
人は居るようだが、近くの家には誰も居ない。
本当にホラー映画の登場人物の様な気分になったブロリーは顔を若干引き攣らせながらも、複数の戦闘力が集まる場所へと空を飛んで向かった。
★
ブロリーがたどり着いた場所は奴隷市場だった。
様々な種族が商品とされており、見世物小屋の様な所に首輪で繋がれている女や子供に檻に入れられている男の姿が目に入る。
どうやら、ベッサーラの縄張りの中で最も金が集まるこの場所を顔役達が狙うかも知れないと判断した奴隷商人達が、上玉の商品と財産だけを持ち出して逃げ出したようだ。
奴隷商人に捨てられた奴隷達は種族・年齢・性別がバラバラであり、その中で唯一、彼等が共通しているのは痩せ細っている体と全員の目が死んでいる事ぐらいだろう。
そんな、死んだ目をした奴隷達を見たブロリーは懐かしさを覚えた。
(まるで、日本に居た頃の俺だな……)
そう、出勤前に洗面所の鏡でよく見た自分の瞳。
ゲーム以外に生きがいを感じる事が無く、理不尽に
ブロリーは頭に浮かんだ日本での生活をかき消し、奴隷たちの元へと歩を進めた。
彼は、首輪で繋がれた全裸の女の前に立ったが、女は特に反応を示さない。
ただ、ブロリーの顔を見ているだけ。
「チッ」
死ぬことを悟った家畜並みの薄い反応に、ブロリーは苛立ちを隠す事なく舌打ちをすると、女の首につながった首輪と首の間に下から指を通して、引きちぎった。
「……後は、好きにしろ」
ブロリーの行動に目を見開いたまま、呆然とする女を一瞥すると、ブロリーは他の奴隷の元へと移動する。
首輪を引き千切り、檻を破壊して、彼らに自由を与えていく。
(身も心もサイヤ人になったと思ったのに、俺は一体……何をやってんだろうな)
心に残る日本人だった頃の感覚がそうさせるのか?
ブロリーは言葉に言い表せないような思いを抱きながら、次々と奴隷を解放していった。
(本当に……何をやってるんだか)
自分に呆れ、ため息を吐いたブロリーは屋敷へと戻ろうとその場を去ろうとする。
すると……一人の子供がブロリーの腰巻の毛皮を掴んだ。
掴んでいる手の力は非常に弱い。
ブロリーがその気になれば手を簡単にへし折る事が出来る。
「手を……放してくれないか?」
視線を下ろすと、そこには金色の髪をした一人の少年が居た。
ブロリーの言葉には答えはしなかったが、彼の視線はブロリーの目を捉えていた。
そんな少年を見て、ブロリーの心は揺れる。
少年を助けるべきだと思う日本人の自分と、サイヤ人らしくするのであれば見捨てればいいのでは?と思う自分。
自分はどうしたいのか?どうすればいいのか?
ブロリーは悩んだ末に、これからどうすればいいのかが分からないで居る奴隷たちを見て口を開いた。
「ついて来たい奴は、ついてこい。
ただし、俺の為に働いてもらう」
ボソリと言った言葉であったが、不思議と彼等全員の耳にブロリーの言葉は届いた。
幸い、屋敷は大きくて空いている部屋はいくつもあった、最悪の場合は誰も居ない近所の家を使えばいいだろう。
(そうさ、サイヤ人として生きるなら、こいつ等を俺の部下にして働かせればいいんだ。
そして、知識のある奴を傍に置いて色々と教えてもらえばいい)
心の中にあったモヤモヤがスッキリしたブロリーは意気揚々と元奴隷達を連れて、屋敷へと連れ帰った。
彼等を連れ歩く道中に、空き家となった家中から服を強奪して奴隷たちに与えていたが……今さらだろう。
★
ベッサーラ家が滅びた事で、均衡を保っていた顔役達の力関係のバランスが崩れ、彼らは悪所の街の真ん中に建設された屋敷にて顔を突き合わせていた。。
円卓の椅子に座るゴンゾーリ家・メデュサ家・バラマウンテ家の顔役達。
彼らの表情は苛立ちに満ちていた。
「ベッサーラを滅ぼしたクソ野郎……完全に儂達を無視しとる」
飲んでいた酒の入った杯をテーブルに叩きつける様において、静かに唸るスキンヘッドの男。
ゴンゾーリ。
「ベッサーラの子飼いだった奴らの話だと、近接戦闘が出来る上にとんでもない魔法を使う魔導士らしい」
吸血種であり、顔役の一人であるメデュサ
「目障りな野郎だ……」
そして、バリバリと骨を噛み砕きながら喋る右目に眼帯を付けた虎獣人のバラマウンテ。
「奴の情報は何も出ねぇのか!?」
「うるせぇぞ、ハゲ野郎!!
ベッサーラの部下は容姿や魔法のことぐらいしか知らなかったんだよ!!」
「そうすんだ!?このままだと、ベッサーラのカス野郎のせいで俺達まで軽く見られるぞ!!」
噛み砕いた骨を吐き捨て、ゴンゾーリに食って掛かるゴンゾーリと部下の下剋上を恐れるメデュサ。
怒鳴り合う三者であったが、心は冷静であり、どうやってこの二人をベッサーラを潰した男にぶつけようかと思案していた。
勿論、弱った勢力を潰して悪所の王に成り上がる為である。
この話し合いは深夜まで続くのだが、最終的には三勢力が均等に兵隊を出してブロリーを殺した後で、均等にベッサーラの縄張りを手に入れる事で話は纏まった。
三人は増えるであろう縄張りと上納金に胸を膨らませながら、それぞれの拠点へと帰って行った。
勿論、それぞれが他二人を出し抜いて、部下達を元ベッサーラ家の縄張りへと向かわせて全てを奪う為だ。