吸血鬼になったエミヤ   作:炎の剣製

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更新します。


016話 修学旅行への準備

 

 

 

シホが医療施設に収容されていた当日、ネギは学園長により関東魔法協会と関西呪術協会の友好の証の親書を託されていた。

その帰り道、私服姿のアスナと木乃香の二人と合流して色々と町を散策していたそのとき、一同はシホとタマモと遭遇した。

 

「あれ、シホさんにアヤメさん。今日はどうしたんですか? 学校に来ていませんでしたけど…」

「あっ、えっと…ちょっとある事情で病院にいっていたんです。本日は休んでしまってすみませんでした」

「私も付き添いでシホ様に着いていきましたのでごめんなさいです」

「そうだったんですか。安心しました」

 

ネギは安心していた。

シホがまた例の症状を起こして休んでいるのではとネギは不安を募らせていたからだ。

事実、その通りなのだがネギ達はそれを知るすべは持っていないから知らないのも仕方がないことだが。

それでちょうどいいという状況でネギはシホ達を修学旅行に持っていく服などを買うために誘いをした。

それでシホ達も断る理由がないので快く承諾した。

 

「それじゃいきましょうか」

「はい」

「ところでシホってさ、普段どんな服を着るの? あんまし見たことがないし」

「そこら辺は私にお任せを! シホ様の私服のコーディネートは私がしておりますので」

「ちょ、タマモ!?」

「「「へー…」」」

 

三人の感心したような発言にシホは言葉を詰まらせた。

それでどう言葉を出そうか考えていたけどアスナが前に来て、

 

「まぁここに来るまで車椅子生活だったんだからしょうがないよね。それじゃ今日はシホの私服コーディネートでもしましょうか。ついでにネギも含めて」

「了解や。ウチに任せとき!」

「いいですよー。それじゃ張り切っていきましょう!」

「よろしくお願いします」

「お、お手柔らかにお願いします…」

 

四人の楽しそうな顔を見てシホは逃げ口を失ったのでとぼとぼとついていった。

それから五人+一匹は服の試着などを繰り返していた。

その最中、カモはまだ詳しく知らない二人のことを知りたがっていた。

そこでネギが着替え中にカモが話しかけた。

最初、木乃香との仮契約の話を持ち出されたが最初はアスナだけでいいと言ったが、カモはあきらめずに、

 

「なぁなぁところで兄貴。やっぱシホって子、見ていてかなりレベルがたけぇよな」

「またその話? レベルって何のこと?」

「決まってんだろ兄貴。仮契約だよ、仮契約。シホ姉さんかもう一人のアヤメっていう姉さん。かなりいい線いってると思うけどな」

「えー…。駄目だよ、カモ君。シホさんの事は知っていると思うけど重い心の病を持っているんだよ」

「むぅ…。しかしなぁ、さっきもいったけどこの先またエヴァンジェリンみたいな奴が現れるかもしれねぇから戦力にしとくにはいいと思うけどな」

「うっ…。でもぉ…」

 

ネギはそういいながら懐からアスナとの仮契約カードを取り出した。

そこに木乃香が着替えの手伝いといって中に入ってきてちょうどネギの手に握られているカードが木乃香の目に入った。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

ネギと木乃香が騒いでいる間にアスナがタマモと一緒にシホの服を選んでいた。

 

「アスナ、何か楽しんでいない…?」

「そんなことないよー? ね、アヤメさん」

「はいです。シホ様は何を着ても似合いますから着せ替え甲斐があるってものです」

「そういうならそんな服を持ってこないで…」

 

シホの目の先には、アスナは黒、タマモは白と二人ともゴシック服が手に持たれていた。

しかも目が少しハイになっているようで少し涙目になっていたシホ。

結局試着として着替えさせられた。

 

「似合う!」

「シホ様、とてもお似合いです!」

「………ッ! しゅ、修学旅行には関係ないと思うんだけどなぁ…」

 

現在、シホはアスナの持っていた黒のゴシック服を着用していた。

それで店内にいる他のお客も見学していて揃って口々に似合うと言っていてシホは赤面しながらもうんざりしていた。

そしてフルフル体を震わせながらシホは吼えた。

 

「いい加減にしなさい! 今は修学旅行に持っていく服を探しに来たんでしょうが!!」

「「は、はい!」」

「正座しなさい!」

 

それからシホの説教が始まった。

余談だがゴシック服で説教をしている姿はシュールだったと、たまたま通りかかった某新聞記者はカメラを構えながら思っていた。

 

そして一通り終わったシホはふと木乃香はどこにいったのかと思い息を整えながら、

 

「…そういえば木乃香とネギ先生は?」

「あ、そういえばこのかとネギ、二人ともいないわね」

「探しましょうか」

 

そこでシホとタマモが荷物持ち待機、アスナが探しにいくということになった。

しばらくして顔を赤くしたネギ、なぜか残念そうな木乃香、疲れた表情のアスナがカモをつまみながら戻ってきて二人は不思議そうな顔をしていた。

 

「(もう、このエロオコジョ。シホ達にばれたらどうするつもりだったのよ)」

「(そこはこのか姉さんみたいにごまかせばオッケイっすよ!)」

「(…あんた、こりていないわね)」

 

ギリギリと雑巾のようにカモを絞っていて小声が聞こえていたシホは苦笑いを浮かべていた。

…後日、なぜかゴシック服を着たシホの写真が朝倉の手にありシホは何度か交渉したという。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

後日、シホ達は学園長に呼ばれていた。

 

「どうしたんですか学園長? やはり修学旅行の話ですか?」

「うむ、察しがよいの。少し話があるがまだ来ていないものがおるので待っててくれるかの」

「わかりました」

「はいです」

 

シホとタマモがしばらく待っているとドアを叩く音がして学園長がよいぞ、と声をかけると中に刹那が入ってきた。

ある程度予想していた二人はやっぱりといった顔をしていた。

 

「先日振りです、シホさんにアヤメさん。お体は大丈夫ですか…?」

「ええ。もう平気だよ。それより刹那が来たって事ではじめましょうか」

「そうじゃの。まず話をすることは間近に迫っておる修学旅行の件じゃが…」

「やっぱりそうなのですね! シホ様、予想は当たりましたよ。ドンピシャです!」

「わかったわかった。だから少し黙ってて。それで何か重要なことがあるんですね?」

 

タマモを黙らせてシホは話を促した。

 

「うむ。シホ殿なら京都、奈良と聞いてピンと思いつくことはあるかの」

「そりゃありますよ。関西呪術協会しか思いつきません」

「その通りじゃ。もう関東魔法協会と関西呪術協会の仲の悪さを知っているじゃろうが、今回あちらがネギ君の京都入りに難色を示してきての」

「あー、なるほど」

「それで細かい説明は省くが仲直りのためにネギ君を特使として使いに出すことにしたのじゃ」

「それはいいですね。いい加減詠春も下のものをどうにかしないと示しが付きませんから、正式に書状を送ればこれから仲はよくなっていくかもしれないですしね」

「そうじゃ。じゃが話はそう簡単なものではない」

「と、いいますと?」

「大停電の時のことで分かってもらえたと思うが関西の下のものが色々と暴走気味じゃ。今回の旅行で直接手を出してくるかもしれん」

「そしてもしかしたらこのかお嬢様にも手をだしてくるかもしれないのです」

 

そこで今まで黙って話を聞いていた刹那が口を開いた。

それにシホは思い当たるのか手を顎に当てながら、

 

「なるほど…親書受け渡しの妨害に加えて、木乃香のあの魔力狙いかもしれない。木乃香が敵の手に堕ちれば人質として活用できて、そしてその魔力を使い強引に何か巨大なものを呼び出すかもしれない…そんなところ?」

「はい。まさに敵にしてみれば一石二鳥、いえ三鳥なことになり兼ねません」

「刹那としては是が非でも守らなければいけない対象というわけね、木乃香は」

「はい…。私はそのために影から見守っているのです」

「じゃからシホ殿にアヤメ殿。今回はもしもの事があったらネギ君達の助けになってもらいたいんじゃ」

「私もシホさん達お二人に助けを乞えるなら心強いです」

「うーん…そっか。私は構わないですよ。タマモもいいよね」

「はい。シホ様がお決めになられたなら反対はしませんから」

「うん、よかった。…でもどうしようか」

 

そこでシホがなにやら悩みの表情をしだした。

それに学園長と刹那はどうしたのかという表情をする。

 

「私とタマモ、刹那は三人とも旅行ではそれぞれ木乃香とは別の班に分かれちゃうけどどうしようか」

『あ』

 

そこで全員があっ、という表情をする。

判別行動のとき他の班員の行動を妨げるわけにもいかないから地味に見えて実はかなりの問題だった。

ネギが木乃香の班に防衛につくかもしれないがいささか不安だ。

四名は話し合った結果、式神を使うことになった。

刹那はまず「オン」と唱えると小人サイズの分身「ちびせつな」を作り出す。

これで刹那は木乃香の警護に当たるという。

次にタマモはなじみになった四匹の管狐を呼び出して、呪文を唱えると四匹のうち琳と雅がシホとタマモに変化した。

 

「母様、シホ様の姿になりましたが大丈夫でしょうか?」

「母上の姿ですか。この雅、いざという時には頑張らせていただきます」

「いざという時はお願いしますね。特に琳は普段からシホ様の警備も任せているんだからシホ様も守るんですよ」

「お任せください、母様」

 

そういって二匹はまた狐の姿に戻った。

ところが焔と刃がそこで駄々をこねた。

 

「ねぇねぇお母さん、私達は?」

「お母さん、ねぇねぇ…」

「あー、はいはい。後で役割を考えてあげるから今はおとなしくしていてねー?」

「「はーい…」」

 

二匹は落ち込みながらも返事を返すのであった。

少し疲れたがこれでタマモ及びシホの身代わりはできた。

最後にシホはどうするかというと、ここでシホの神鳴流時代の能力が発揮された。

剣でできた鳥形の使い魔を作り出して、そこに人型のお札を貼り仮初めの意識を封入させ実体化させると、ちびせつなと同じような「ちびしほ」が姿を現す。

しかもその気になれば人型サイズまで大きくなって戦うこともできるので実に勝手がいい。

実はナギ達と一緒だったときにこれを重宝していた。

 

…一通り術を確かめ合い十分に対応できると判断されたのでこれでいこうということになった。

最後にシホはあることを尋ねた。

 

「そういえば、私のことは外にはどういった風に伝わっているんですか?」

「そのことか。安心しなさい。吸血鬼ということは伝わっていないし、名前や顔写真の方も他人の空似ということで済ませておるからの。関係者にそれを尋ねられた時はヒヤヒヤものじゃったが、年月がかなり経っておるから歳を取らないということがわからない以上、ごまかし様はいくらでも存在するしの」

「はい。それを聞いて安心しました」

「じゃが、もしあの組織の生き残りの人間が現れたらすぐに知らせるんじゃよ?」

「はい。善処します…」

 

シホは学園長のやさしい声と言葉に感謝した。

それから解散となりその帰り、

 

「でも刹那って木乃香の昔からの親友なんでしょ? なにか理由があるの?」

「そうです。お友達とは仲良くするべきですよ」

「…いえ、私はお嬢様の幸せを遠くから見守るだけで幸せなのです。ですから…」

「そっか…。でも、いざっていう時に素直になれなかったら色々と後悔することになるから道を履き違えないでね? それで私もこういう事になっちゃったから…」

「助言、感謝します。シホさん」

「それならよし! それじゃ帰ろうか」

「はい」

 

 


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