吸血鬼になったエミヤ   作:炎の剣製

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更新します。


028話 日常編 父の手掛かりと竜と喧嘩

 

 

 

翌朝の事、茶々丸はアスナ達の部屋に向かっていた。

用件はというとネギの事を心配に思った様子見と言うことで、部屋の呼び鈴を鳴らす。

するとすぐにこのかが顔を出して、

 

「はーい。あれ、茶々丸さんや。どないしたの?」

「いえ、ネギ先生はいますか?」

「いるえ」

 

すると声が聞こえたのかネギが顔を出してきた。

 

「茶々丸さん? どうしたんですか?」

「あ、ネギ先生…いえ、あれから少し様子見をという事でまいりました」

「そうだったんですか。はい、大丈夫です。シホさんは本当に手加減してくれて傷もありませんから」

「…心のほうは大丈夫ですか?」

「…はい」

「そうですか。それとこれはシホさんと一緒に作ったものですので折角ですので食べてください」

 

茶々丸はケーキの箱を取り出してネギに渡した。

 

「あ、これはどうも。そうだ。シホさんはどうしていますか?」

「はい。シホさんは現在回復していますがやはり胸のダメージが酷いので今は療養しています」

「え!? やっぱりシホって無理していたの!?」

 

話を一緒に聞いていたアスナが叫んだ。

それも当然だろう。昨日は傷もすぐに塞がり平気な顔をしていたのだから。

 

「はい。真祖とはいえネギ先生の暴走した手加減無しの一撃を障壁もなしに受けたのですからダメージが残っているそうなのです。

本当なら胸は陥没で重症ものですから、ネギ先生達が帰られた後、倒られました」

 

淡々と茶々丸はネギ達にその事を伝えたが、ネギとアスナはサーッと顔を青くした。

京都での一件で魔力で強化したアスナのキックだけで岩を破壊した光景を思い出し威力はどんなものか知っているから。

 

「ううー…やっぱり申し訳ないです。今もこの手に感触が残っていて…あぁ! やっぱりなにかお詫びを考えないと!」

「ネギ先生、シホさんは昨日も申されたそうですが、気にしないでくださいと伝えて、と言われました」

「シホって聖人君子かなんかなの…? いや、これも大人の貫禄!?」

 

それから茶々丸も部屋の中に入れ皆でお話をしていた。

 

「昨日の件ですがシホさんはネギ先生の実力と言うより精神力、そして覚悟を試したものだと思います」

「それじゃ一撃を入れるっていうのはオマケみたいなものだったってこと?」

「そうなりますね。結果的には一撃を叩き込んだのですから条件も満たした事になりますから」

「思ったよりネギも傷を負わなかったからね」

「はい。僕はもっとしごかれるのかと思っていましたから」

「ネギ君はあれを物足りないいうのー?」

「そんなことありません! 精神的にはとても痛かったですから」

「ネギって泣きそうになっていたもんね」

 

 

 

ピンポーン!

 

 

 

そこにまた呼び鈴が鳴りアスナが出ると、

 

「あれ? 夕映ちゃんに本屋ちゃん」

「アスナさん…実はネギ先生に内密の話があるのですが」

「?」

「……………」

 

茶々丸はその話をじっと聞いていた。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

翌日の朝の事、シホは全快(別に昨日の午前のうちには痛みも完全に引いていたがタマモが看病するといって譲らなかった)したので朝早くタマモと共に一緒に学園近くを歩いていた。

 

「んー、一日ぐっすりしていたから休みすぎたかな?」

「そんなことはありませんよー。いつもシホ様は無茶が過ぎるんですから私めが見ていないと」

「ははは…手厳しいわね。…ん?」

「どうしましたかシホ様?」

 

シホの千里眼があるものを捉えていた。

 

「ネギ先生にのどかに夕映? それに後をつけているのは茶々丸…?」

「お子ちゃまがどうしましたか?」

「いや、ネギ先生が杖で夕映とのどかを乗せてどこかに飛んでいっているのよ。そして茶々丸がそれを後から追っているの」

「やー、なにかあるんですかね? 付けてみます?」

「そうだね。タマモ、久々に融合しよっか」

「あ! はいです♪」

 

タマモが嬉しそうに笑うと光の玉へと姿を変えてシホに憑依した。

 

「今回は空を飛ぶだけだからランクの低い剣でいこうか」

『はいです』

全回路(オールサーキット)全て遠き理想郷(アヴァロン)へと接続」

『接続しちゃいます』

「―――投影開始(トレース・オン)

「アゾット・メ・ゾット・クーラディス…魔力変換開始(トリガー・オフ)術式固定完了(ロールアウト)術式魔力(バレット)待機(クリア)! 全魔力掌握完了(セット)!!」

 

風の属性の剣の魔力を体に纏って空へと飛翔した。

そして茶々丸のところまで一気に追いついた。

 

「! シホさんですか? お早うございます」

「ええお早う。それよりどうしたの茶々丸? ネギ先生を追っているようだけど」

「はい。なにやらお父様の手掛かりを見つけたようでその場所へ向かっているようですので心配になりついてきました」

「そう。でも確かのどかはともかく夕映は魔法の存在は知らなかったと思ったけど?」

「ばれたのでしょう」

「そう…(あれほど一般人は巻き込まないように言っておいたのにな…)」

 

シホが少し残念な気持ちになっていたが気持ちを切り替えてネギ達の後を追った。

そしてたどり着いた場所は、

 

「図書館島?」

「そうですね」

「あそこのエレベーターから入っていったようね。タマモ、もう飛ぶ必要はないから解除しようか?」

『いーえ、もう少し憑依させてもらいます。いざという時がありますから』

「わかったわ」

 

そしてシホ達もエレベーターを使い降りていきネギ達の後を追っていくと着いた場所は木々が生い茂っているが巨大な建造物がありそこには大きな扉があった。

 

「こんな地下にこんな場所があるなんてね」

「驚きです」

『そうですねー』

 

見るとネギ達は感動しているようで辺りを捜索しているようだ。

 

「…ん? なにかの気配がするわ。これは…魔法生物の気配?」

『シホ様、あれを!』

「!?」

 

シホ達が目を向けた先には竜がのどかと夕映の頭に涎をたらしている光景があった。

 

「茶々丸は二人を救出して! 私は足止めをしておくから!」

「了解しました」

 

そしてのどかと夕映が潰されそうになる前に茶々丸が救出し、シホは竜を殴り飛ばした。

殴り飛ばされた竜は地面を削りながらもシホに標的を絞った目つきで襲い掛かってきていた。

 

「シホさんに茶々丸さん!?」

「ネギ先生、私達はここから脱出します。シホさんはその間、足止めをしていくとの事です」

「で、でも…」

「シホさんに問題はありません。さぁ、いきましょう」

「は、はい!」

 

ネギ達が脱出していった後、シホはその手にグラムを投影して、

 

「さて…別に倒してしまっても構わないけどなにかを守っているようね?」

「グ、グルァ…!」

 

竜はグラムの魔力に怖がりたたらを踏んでいて近寄ってこない。

 

 

 

 

―――あまり門番であるその子を怖がらせないでください。

 

 

 

 

そこに中性的な男性の声が響いてきた。

その声にシホは聞き覚えがあり試しにという思いで、

 

「あなたがここにいるなんてね…学園長も知っているんでしょうね? アル」

「ふふふ…お久しぶりですねシホ。それにキャスターも憑依しているようで…」

 

そこには白いフードをまとった中性的な顔をしている男性、アルビレオ・イマが立っていた。

 

「ええ、久しぶりねアル」

『久しぶりですねー』

「かれこれ二十年ぶりでしょうか…ナギの息子さんが来たと思いましたら今度はあなた達が来るとは思いませんでした」

「ま、今はネギ先生の生徒兼見守り役をやっているからね」

『はいです』

「そうですか。…吸血鬼になられたと聞きましたが…大丈夫ですか?」

「ええ。もうしょうがない事だしね。それよりナギが残した手掛かりの場所にいたのがあなただったとは…エヴァは知っているの?」

「いえ、学園長と特定の人以外は知りません。私はここで十年前から療養しているのですよ」

「療養、ね…まぁいいわ。それじゃそろそろネギ先生達が心配すると思うからお暇するわ」

『失礼しますねー。あ、アル、後で色々とお話しましょうね♪』

「ええ、キャスター。私は基本ここにいますからまだネギ君やエヴァンジェリンなどにばらさないのでしたら会いに来ても構いません」

「ええ、それじゃまた」

 

シホはアルに別れの言葉を言ってその場から飛び立っていった。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

シホがエレベーターから戻ってくるとネギは心配げに近寄ってくる。

 

「シホさん! 大丈夫でしたか!?」

「はい。傷はありません…そうだ、タマモ、もう解除してもいいでしょ?」

『はいです』

 

するとシホから光の玉が飛び出しタマモの姿へと形を取った。

当然、まだ人間化していないので狐耳に尻尾も見えているので夕映などが「これがファンタジーの住人ですか…」と呟いていた。

 

「それより夕映に魔法の事がばれたんですか?」

「は、はいぃ…言い訳もできなくて」

 

少し泣きが入っているのはしょうがないことだ。

それでシホは一度ため息をつき、

 

「夕映…」

「な、なんですかシホさん?」

「魔法の世界に関わるなとはいわないわ。でもあなたは魔法の世界がすべて絵本の中のファンタジーのような世界だと思っているのならその勘違いを訂正するべきよ」

「何故ですか? それは、多少は危険なものだと認識していますですが…」

「多少どころではないわ。それにそれをいうなら魔法の事を知ったアスナ、このか、のどか…そして魔法の世界のネギ先生ももっと認識を改める必要があるわ」

「どうしてそこまで私達が魔法に関わるのを禁忌するのですか…?」

「もっと現実を見てほしいのよ。魔法世界にもしっかりとした現実がある。…そうね。一つヒントを教えておくわ。私はもとはただの人間だった。でも今は吸血鬼になってしまっている…それは何故かわかる…?」

 

ネギとカモはシホの言いたいことが分かったのか顔を青くしている。

 

「シホさんは、自ら吸血鬼になったのではないのですか…?」

「当たり前よ…さて、ヒントはここまで。後は自分達で考えてみなさい。それよりそろそろ学校の時間も迫っていますからさっさと帰りましょう」

 

先ほどまでの大人びた態度から、すぐにもとの優しい雰囲気に戻りネギ達は驚いていた。

だがシホのいうとおりだったので帰る事にした一行だった。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

翌日の夕方、ネギにアスナ、このか、刹那、のどか、夕映、古菲の六名はエヴァの修行場所に着いてきていた。

場所はエヴァの家から近くにあるなにやら遺跡のような場所で小規模ながらも結界が張られておりそこで修行するというものだ。

そこでエヴァがネギに指示を飛ばす。シホとタマモ、茶々丸も後ろで待機していた。

 

「よし。ではぼーや、始めてみろ」

「はい!契約執行!180秒間!ネギの従者『近衛木乃香』『宮崎のどか』『神楽坂明日菜』『桜咲刹那』!」

 

ネギの契約執行により四人の体に薄い魔力が纏われた。

 

「次に対物・魔法障壁(アンチ・マテリアル・シールド)を全方位全力展開!」

「はい!」

「さらに対魔・魔法障壁(アンチ・マジック・シールド)を全力展開後、3分持ち堪えた後に北の空へ魔法の射手199本を放て!」

「はい!! 光の精霊199柱、集い来たりて敵を射て。魔法の射手・光の199矢!!」

 

それによってネギの手から魔法の射手が放たれ空には光の粒子が結界に当たり飛び散っていた。

だが、ネギは魔力を使いすぎた反動で気絶してしまった。

 

「ふん、この程度で気絶とは話にならん! いくら奴譲りの魔力があったとしても、使いこなせなければ宝の持ち腐れだ!! 貫く位の気概を見せてみろ!」

「よーよーエヴァンジェリンさんよう。そりゃ言い過ぎだろ。まだ兄貴は十歳だぜ?

今アンタがやらせたコトは修学旅行の戦い以上の魔力消費だぜ。気絶して当然。並みの術者だったらこれで充分―――…」

「黙れ下等生物が。並みの術者程度でこの私が満足できるか。………煮て食うぞ?」

 

カモの言葉を極度の睨みで黙殺するエヴァ。

カモはブルブルと震えてアスナに飛びついていた。

 

「こえー…」

「ハイハイ、怖かったわね」

 

エヴァはその光景を無視し、

 

「私を師と呼び教えを乞う以上、そんな生半可な修行で済むと思うな。

いいかぼーや。今後私の前ではどんな口応えも泣き言も許さん。少しでも弱音を吐けば貴様の生き血、最後の一滴まで飲み干してやる。心しておけよ?」

「はい! よろしくお願いしますエヴァンジェリンさん!!」

「む……………」

 

脅しのつもりが威勢のいい返事が返ってきたためエヴァは「わ、私の事は師匠と呼べ…」と小さい声で言っていた。

それがタマモのつぼにはまったのか、

 

「あー、エヴァンジェリンたら照れていますね?」

「うるさいぞ女狐! 本気で煮て食うぞ!!」

「まぁまぁ二人とも…」

 

シホが仲裁に入るが、そこでエヴァはニタッと笑みを浮かべた。

なにやらまずい空気を感じ取りシホは逃げようとしたが、

 

「なぁシホ…。お前は神鳴流剣士であるが魔法も使えたよな?」

「…え、ええ。知識だけなら魔法世界で大体学ばせてもらったわ」

「なら試しにお前も魔法の射手を撃ってみないか? 実力というものをここで見せてみろ」

「えー…そんなに得意なわけではないわよ?」

「いいからやれ。ぼーやにもいいものを見せられるやもしれん」

「僕からもお願いします! ぜひシホさんの魔法の腕を見てみたいです!」

 

ネギの言葉に一同も視線をシホに向ける。

 

「ふぅ…わかったわよ。でも期待しないでよ? 本職は魔術師兼神鳴流剣士なんだから。

アゾット・メ・ゾット・クーラディス、光の精霊1001柱、集い来たりて敵を射て。魔法の射手・光の1001矢!!」

 

魔力に物を言わせてシホは魔法の射手を1001矢を結界に向かって放った。途端、

 

 

 

ガシャーーーーーンッ!!

 

 

 

結界はもろくも決壊した。

 

「アホかー! 割る事はないだろう!? あれを張るのも時間かかるんだぞ!!?」

「さっきネギ先生に貫いてみせろとか言ったのはどこの誰よ!!?」

 

おもわずシホとエヴァは言い合いを始めてしまった。

それを見ていた一同は、

 

「すげー…」

「すごい…」

「今のネギ先生では到底真似出来ない芸当ですね」

「っていうかあれ普通に兵器並みの威力持っているんじゃない?」

「再度、驚かされましたです…」

 

その後幾分冷静になったエヴァはシホを指差しながら、

 

「…まぁあいつみたいに魔力の扱いがしっかりしていれば倒れずに済む。だから精進しろ」

「はいマスター! あの、ところでドラゴンを倒せるようになるにはどれくらい修行すればいいですか?」

「何?…もう一回言ってみろ。なんだって?」

「だからドラゴンを…」

「ほうほう、ドラゴンをなぁ………、アホかー!!」

「ぺぷぁ!?」

 

本日二度目の「アホかー!」を鉄拳制裁込みでネギに叩き込むエヴァの姿がそこにあった。

 

「ねぇドラゴンって何の話…?」

「それはですね、信じてもらえるか分からないのですが…」

「……………」

 

アスナが夕映に問いかけている光景をシホは無言で見ていた。

それからは解散となり帰る者もいる中、ネギとアスナは向かい合っていた。

 

「……………聞いたわよ。私に内緒で昨日図書館島に行ったでしょ」

「えっ!? あっ、いや、えーとそれは………!!」

「…なんで私を連れてかなかったのよ?」

「いえ、それはどんな危険があるかわかんなかったし…」

「それも聞いた! ドラゴンだが知らないけどなんかスゴイのがいたんでしょ?

危ないじゃない!? 何で私に言わなかったのよ、このガキ!」

「―――アスナさんは元々僕達とは関係ないんですからいつまでも迷惑かけちゃいけないってちゃんと考えて僕―――…」

「――――――かっ、関係ないって今更なによその言い方!! ネギ坊主――――!!!」

「わわわアスナさん!? いえ僕は無関係な一般人のアスナさんに危険がないようにって」

「無関係ってこの………!! 私が時間無い中わざわざ刹那さんに剣道習ってるのなんでだと思ってたのよ――――っ!!」

「えええ!? そんなの別に頼んでないです! なに怒ってるんですかアスナさん!?」

 

そんな二人の様子をエヴァ達は見ながら、

 

「なんだあれは?」

「ケンカのようで」

「あのお子ちゃま、シホ様のいった事を実践しようとしているのですかねー?」

「あの様子じゃもうどうにでもなれよね、はぁ…」

 

シホ達はそれで呆れていた。

 

「何でって………これだからガキは!! あんたが私のことそんな風に思ってたなんて知らなかったわ! ガキ!! チビ!!」

「アスナさんの方こそ大人気ないです!! 怒りんぼ!! おサル!!」

 

そしてネギはこの後にアスナに言ってはならない事を言ってしまって、

 

「この…! 来たれ(アデアット)――――」

「はうっ!?『風盾(デフレクシオー)』ッ!」

 

ネギはなんとか防御魔法を展開しようとしたのだが、

 

「アホーーーーーッッ!!!!!」

「はうーーーーーっ!!」

 

ネギは障壁を張ったがハマノツルギの前では紙切れも同然のごとく砕かれ吹き飛ばされてしまった。

アスナは一瞬、表情が「しまった」という風になるが意地になってしまっている為そのまま走り去ってしまった。

 

「…ったく何バカやってんだ、ガキどもが。まぁいい。ぼーやと近衛木乃香…お前達には話がある。帰りはウチに寄っていけ」

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

エヴァ邸に場所を移してエヴァによる魔法講座が開かれていた。

 

「ぼーやとこのかの魔力容量は強大だ。これはトレーニングなどで強化しにくい言わば天賦の才、ラッキーだったと思え。

まぁ後天的で言えばシホはそれに該当するな。人間だった頃もそれは高かっただろうがぼーや達には及ばなかった、が真祖になり魔力容量が増大したからな」

「はー…やっぱりな」

「はい、やはりといった感じですね」

 

聞いていたカモと刹那が答えていた。

 

「ただしそれだけではただデカイだけの魔力タンクだ。使いこなすためにはそれを扱うための『精神力の強化』あるいは『術の効率化』が必要になってくる。どっちも修行だな」

「シホ様は精神力が人のそれを越えていますから夕方の魔法の射手も平然と打ち出せたのですよね」

「うむ、その通りだ。ちなみに『魔力』を扱うためには精神力を必要とし『気』を扱うのは体力勝負みたいな所があるんだが―――…そろそろ怒ってもいい頃合だよな?」

「エヴァのお好きなようにしたらどう…?」

 

シホの了承の言葉についにエヴァはきれた。

 

「ぼーや! 近衛木乃香! 貴様ら人の話を聞かんかーッ!!」

 

端のほうでアスナを怒らせてしまった事に対していじけているネギとそれを慰めているこのかの姿がそこにあった。

 

「まったくそんなにうじうじしているといい加減くびるぞ、ガキが!!」

「うう…でもアスナさんが…」

「フン…貴様らの仲違いは私にはいい気味だよ。お前と明日菜のコンビには辛酸を舐めさせられているからな。いいぞ、もっとやれ」

「あうう…」

「まぁ自業自得という事で諦めちゃいなさいな♪」

「コラコラ、タマモ。子供を追い詰めるんじゃないの」

 

タマモがネギを面白半分にからかいそれをシホが抑えているという光景にもネギは反応が薄かった。シホはこれは重症だと思っていた。

次にエヴァが木乃香に伝言があるという。

 

「詠春からの伝言だが真実を知った以上魔法について色々教えてやってほしいとのことだ―――確かに京都での操られたとはいえあれだけの妖怪を召喚し、さらにぼーやの石化を癒したお前の力はもし望むなら偉大なる魔法使い(マギステル・マギ)を目指すことも可能だろう」

「マギ…それってネギ君の目指しとる…?」

「ああ、お前のその力は世のため役に立つかも知れんな。考えておくといい」

 

エヴァの言葉にこのかは「むむむ…」と唸りを上げていた。

 

「次はぼーやだ」

 

エヴァは話を続ける。

これからの修行方針を決めるとの事でまず、

 

 

 

・『魔法使い』

前衛を従者に任せ自らは後方で強力な術を放つ安定したスタイル。

 

・『魔法剣士(拳士)』

魔力を付与した肉体で自らも前に出て従者と共に戦い“速さ”を重視した術も使う変幻自在のスタイル。

 

 

 

この二つをエヴァはネギに進めた。

ネギは少し考えるように顎に手を添えて「一ついいですか?」とたずねる。

 

「シホさん達にも尋ねたいんですけどサウザンドマスターのスタイルは?」

「「「魔法剣士だ(ですよ)(ですねー)」」」

 

エヴァ、シホ、タマモが同時にそう答える。

 

「私やあの白髪の少年の戦いを見ればわかるように強くなってくればこの分け方はあまり関係なくなってくるな。

貴様、やっぱりといった顔になっているぞ。ま、どうするかはゆっくり考えるがいい」

 

伝える事は伝えたのかエヴァはこのかに話があるといって下に下りていった。

その間、ネギは中国拳法の修行をしていた。

いくつもの技の練習をしながらも、

 

「ふぅ…でも拳法じゃドラゴンには敵わないだろうしなー…でもシホさんって素手で殴って吹っ飛ばしていましたよね?」

「ええ。魔法世界ではそれはもう何度も相手をしましたから」

「すごいですねー…。でも『魔法使い』に『魔法剣士』かあ…アスナさんはどっちがいいと思います? あ…」

 

そこでネギはアスナと喧嘩している事を思い出し「うわーん」と涙目になっていた。

 

「立ち直りがはえーと思ってたら…」

「忘れていただけみたいですね」

「夢中になりすぎるのも考え物ですねー」

「まぁ長所であり短所でもあるっていったところかしら?」

 

と、そこに茶々丸がお茶を持っていつの間にかいた葉加瀬と一緒に歩いてきた。ちなみに葉加瀬が協力者だというのはシホは事前に知っていたので驚いていない。

そしてそこから葉加瀬が一緒に喧嘩になった理由を探す手伝いをするということになり茶々丸の録音していた喧嘩の音声をプリントアウトして皆で見る事にした。

ちなみにそれを見ていたのはシホ、タマモ、刹那、茶々丸、チャチャゼロ、葉加瀬でカモはふと(女心とかわかってなさそうな辺りが集まったな)と思っていた。

そして導き出された結論はやはり、

 

「原因はパイ○ンですね(ですねー)(ダゼ)(かもな)(かもです)(かと思われます)」

 

と、ある意味ネギは切って捨てられた。

それからとりあえず謝った方がいいという結論になりネギは外に出て行った。

出て行った後、しばらくして、

 

『いやあああああーーーーーー!!』

 

アスナの悲鳴が中まで響いてきた。

何事かと外に出てみるとそこには裸のアスナになぜかタカミチがいた。

なんて間の悪い…とシホは思った。

アスナは家の中に猛ダッシュしていき残された男組みは、

 

「あああ…よけい怒らせちゃった」

「タイミング悪かったかなー僕。すまんネギ君」

「確かにタイミングが悪かったわね、タカミチ」

 

そこにシホが降りてきて、

 

「あ、シホ姉さん。いたんだね」

「ええ。でもネギ先生、相手の了解を取らずに勝手に召喚するのは英国紳士としてまずかったと思いますよ?」

「うう…やっぱり。どうしよう…」

「まぁしばらくはほとぼりが冷めるまで待つしかないですね」

 

シホの言葉にネギは涙目になりながらも承諾するしかなかった。

 

 

 


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