吸血鬼になったエミヤ   作:炎の剣製

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更新します。


029話 日常編 シホとタマモの一日 IN 冬木

 

 

 

とある日、まだネギとアスナが喧嘩をしている最中の事、シホは学園長室に赴いていた。

 

「学園長、ちょっと折り入ってお話があるんですがいいですか?」

「なにかのシホ殿?」

「はい。私とタマモに今度の土日に外出許可を申請してもらいたいんですけど…」

「外出許可かの?」

「はい。私の事は魔法世界に話していないんですよね? だから秘密裏に動いたほうがいいと思いまして」

「うむ、シホ殿を軟禁していた魔法使い達が生き残っていたらもしかしたら情報をリークされるかもしれんからの…しかしどこに何をしに行くのかの?」

「冬木市という場所にいってきます。何をしに行くかというのはしいて言えば失った記憶探しです」

「ほ。記憶探しとな?」

「はい。エヴァと相談したんですけど、詠春達に助けられる前の記憶をいいかげん思い出したいものでして。それで曖昧ながら覚えているキーワードを並べて検証してみた結果、冬木市が当てはまったんです」

「そうか…。では少し待っておくれ、冬木市の魔法使いの一族に連絡を取ってみるからの」

「お願いします」

 

学園長が電話でしばらく電話をしていると話がついたのか受話器を置き、

 

「向こうは了解してくれた。ただしシホ殿とアヤメ殿の事はある魔法使いと従者とだけ伝えておいたから安心しておきなさい」

「感謝します」

「それではくれぐれも騒ぎは起こさんようにな。シホ殿が外に出るというのだけで色々と話が持ち上がるからの」

「努力します」

「うむ。では楽しんできなさい。そして記憶が戻るといいの」

「はい」

 

シホは学園長から書状を書いてもらい出て行った。

 

(よし、なんとか学園長とは話がついた。これで自由に行動が出来る)

 

シホは楽しそうにしながら教室に戻るとエヴァとタマモが話しかけてきた。

 

「どうだったか?」

「どうでしたシホ様?」

「うん、外出許可はもらえたよ。これで今週土日は色々と捜索できるわ。ちょっと麻帆良からだと遠いから金曜日の夜には麻帆良を発とうか」

「はいです♪」

「ではなにかみやげ物を頼むぞ。それともし記憶を思い出したら見させてもらうからな」

「わかった、いいよ」

 

シホがエヴァ達と色々と話していると英語の授業でネギが教室に入ってくるがアスナと目を合わせた途端、アスナは「ふんっ…」とそっぽを向かれてネギが落ち込むという光景があった。

 

「…あちらは自然と回復するのを待つしかないわね」

「くっくっく、見ていて楽しいがな」

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

そしてやってきました冬木市。

現在は土曜日の昼前となる。

駅から降りて、

 

「着きましたねー、シホ様」

「ええ。それじゃまずは遠坂の家に挨拶に行きましょうか。なにかこの町に入った途端、結界に触れたようで多分あっちも気づいたと思うから」

「はいです」

 

そうして二人は冬木大橋を渡って深山町へと入る。

それから何度か道を聞いては遠坂の家を目指すがいざ着いたとなると、なんというのだろうか。

 

「…なんていうか、威圧感と拒絶感が漂うお屋敷といった雰囲気ね。坂の上には魔女が住んでいるとかいうのを耳に挟んだけど割りと当たっているかも…」

「そうですね。霊脈もかなり流れている上に家が建てられていますから魔術師が住まうには上等の場所でしょう。あ、でもこの世界では魔術師はシホ様だけでしたね」

「そうね。でもいつまでこうしていてもしょうがないから入らせてもらいますか」

 

シホが呼び鈴を鳴らすと「はーい」という小さい女の子の声が聞こえてきて扉が開けられる。

そこにはツインテールの黒髪の女の子が出てきた。小学生くらいだろう。

しかしそこで見覚えがあるような気がしてシホは言葉を一時止める。

 

「? どちら様ですか?」

 

しかし気づかなかったのか少女は普通に接客をしてくる。シホは一息つきながら、

 

「えっと、こちらの遠坂時臣氏に用があって来たんだけど今は大丈夫かな?」

「はい。お父様なら今書斎にいますから呼んできますね」

 

少女は静かに家の中を歩いていき『お父様! お客様ですよ』と声を出して呼んでいた。

しばらくして奥から優雅に手を後ろで組みながら歩いてくる男性。

タマモはそれを見て内心で(私の苦手そうなキャラですね~)とか思っていた。

 

「ようこそ。近衛近右衛門殿から話は聞いております。私は遠坂時臣。この町をおさめる遠坂家の現当主です」

「ご丁寧にどうも。私はシホ・E・シュバインオーグ。そしてこちらは私の従者の玉藻アヤメです」

「どーも」

「ここではなんでしょう。客間のほうへ移動しましょう。案内します」

 

二人は案内されていると扉の隙間から先ほどの少女ともう一人、大人しそうな少女がいて目が合った。

 

「…あ、さっきはありがとね。えっとお名前を聞いてもいいかな?」

「私は遠坂凛です」

「わ、私は妹の遠坂桜です」

「そう、凛ちゃんに桜ちゃんね。いい名前ね」

「「ありがとうございます…」」

「こら、凛に桜。お父さんは今からこの方と大事な話があるから葵の所へいっていなさい」

「「はい、お父様」」

 

二人は葵という人物…おそらく母親だろう人の場所へと走っていった。

 

「二人は魔法使いですか…?」

「ええ。今は自宅で学ばせていますが、時期が来ましたら魔法学校へと通わせようと思っています」

「そうですか」

「ちなみに一つお聞きしておきたいのですが、近右衛門殿から詳しくは聞きませんでしたがあなたは二十年前に消えたという旧赤き翼の『剣製の魔法使い』殿ですかな?」

「! やはり気づきましたか」

「あなたのお名前は有名ですからね」

「あまり他言は控えてもらえると嬉しいです…」

「ええ。容姿が変わっていないのですからそれだけで深い事情があると読んでいます。ですからご安心を」

「ありがとうございます」

「えぇ。もしシホ様の事をばらそう物ならきっつーい呪いがあなたを待ち受けていますからねぇ~」

「ははは、怖いですね。受けたくありませんから私の名に誓ってばらさない事を約束しましょう」

 

普通ならタマモの脅しの笑みで大抵のものは表情を引き攣らせるものだが時臣は笑いながら優雅に受け流していた。

それに対して二人は(できるなー)と思っていた。

時臣も時臣でそんなことをすれば私はどうなることかという計算をして導き出した解答ゆえの受け応えであった。

そして本題と行きましょうと時臣は提案し、

 

「それで本日はどういった事でこの地に訪れたのですかな?」

「はい。恥ずかしい事なのですが、私は九歳以前の記憶がないのです」

「ほう…記憶喪失、ですか」

「それで色々なキーワードを並べていくうちに冬木市というものが私の頭に引っかかりを覚えまして、もしかしたら思い出すかもしれないという確信にも似た感触で本日は訪れた次第です」

「そうですか。ですが代々魔法使いの者達を管理してきた遠坂の歴史を調べる限り、あなたのような人物の記録はありませんが…」

「はい。それは分かっています。ところで時臣さん。あなたは私の名前で気にかかる点とかはありませんか?」

「それは…ええ、私もそれは気になっていました。シュバイングオーグ…それは私の一族に魔法の存在を教えてくれた大師父の名の一部ですね」

「ええ。そしてその人は “この世界”では確立されていない魔法、『並行世界の運営』を使えたと言われています」

「!!…そ、それは私の一族の悲願の一つです…」

「そうですか。やはり…ではこれを見てどう思いますか?」

 

シホは腰のホルダーから宝石剣を取り出す。

それを見て時臣は一瞬固まるが、しかしそれでも姿勢を崩さず、

 

「その宝石に柄がついている不思議な剣は…まさか大師父が使用していたという…」

「…“この世界”でも、所持していましたか」

「“この世界”…!? まさかあなたは!」

「ええ、記憶は定かではありませんがこの世界の人間ではないという事だけは証明できます。さすがに見せる事は出来ませんが…」

「そうですか…。ではあなたも『並行世界の運営』を扱えるのですか?」

「一部ですがね。今はまだこの世界だけの移動だけで、後は準備が整えば並行世界の観測などを行えるくらいですね。まぁもうこの話はここまでにしておきましょう。本題に入りたいので」

「え、ええ…」

「話は元に戻りますが私は並行世界の冬木市に住んでいたかもしれないという訳なんです」

「なるほど…それならば私達が知らないのも頷けます。でしたらあなたの名前の中に“エミヤ”がありますね」

「ええ、ついているわ」

「でしたら…」

 

時臣はメモを取り出してある住所を書き始めた。

しばらくして書き終わると紙を渡される。

 

「そこの住所の場所にある武家屋敷を訪ねてみるといいでしょう。君の容姿といいある人物にそっくりですからね」

「は、はぁ…」

「私が提供できる情報はここまでです。お力になれず申し訳ありません」

「いえ、この町を周る許可を頂くだけで十分です。ありがとうございます」

 

それからもう少し話を交わした後、シホ達は出て行こうとしていたが凛に呼び止められた。

それでどうしたのかと思ったが、

 

「また遊びに来てください。歓迎します」

「ええ、ありがと。凛ちゃん」

 

シホは笑顔を浮かべて凛の頭を撫でてあげた。

 

「それじゃまたね」

「遊びに来ますねー」

 

私とタマモは遠坂邸を今度こそ後にするのだった。

 

「いかがでしたか? お目当ての一つである遠坂と会った感想は」

「うん。少し見えてきたものがあったわ。時臣さんとはそんなに接点はなさそうだけど、凛ちゃんにはなにか感じるものがあったわ」

「そうですか。思い出せたらいいですね」

「ええ。それじゃその武家屋敷に向かうとしましょうか」

「はいです♪」

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

そしてシホとタマモは武家屋敷の前までやってきた。

 

「…なんだろう。とても懐かしいというかなんというか…」

「これはもしかしたらシホ様の記憶に関係するお屋敷でしょうか!?」

「わからないわね。とりあえず入ってみましょう」

 

二人が屋敷の門を潜った瞬間、

 

「…ッ!」

「シホ様はお下がりください!」

 

タマモがお札を構えて呪層・黒天洞を展開する。

遅れて衝撃が伝わってきた。

なにかを確認するとそれは銃弾だった。

 

「…君達はなにものかな? 僕の家に入ってくる気配が二人とも人間じゃない…僕達を狙った刺客かな?」

「何のことか分かりませんけど突然発砲するなんて物騒なお方ですねー! 呪いをかけますよ!?」

 

タマモが激昂しながらも扉の前にいるぼさぼさの髪で銃を構えた男性を威嚇する。

その男性を見た途端、シホは頭痛に襲われた。

 

「くっ…!? あなたは誰ですか!?」

「僕かい? 調べてきたわけではないのかい?」

「私達は遠坂時臣さんに行ってみなさいといわれて来ただけです。刺客とかそんなのではないわ!」

「えっ!? 遠坂が僕の家を紹介したのかい!?」

 

そこで男性は「しまった」といった感じの顔になり、銃をしまうと頭をかきながら、

 

「すまなかったね。つい僕達を付け狙った刺客かと思ったんでね」

「それでもいきなり発砲はまずいと思いますよ! シホ様に当たったらどうしてくれるつもりだったんですか!?」

「ははは…すまない。ところでシホさんといったかな?」

「はい…そうですが」

「君はもしかしてアインツベルンの者かな?」

「いえ、違いますがなにか…」

「いやねー…」

「切嗣…誰だったの…?」

 

男性が少し言葉を濁している時に家の中から女性の声が聞こえてきた。

女性は顔を出すとシホを見て「えっ!?」と驚きの声を上げた。

 

「ウソ…私にそっくり…」

「そうですね」

「シホ様にそっくりですねー」

 

女性の容姿はシホを朱銀髪から銀色に変えて目の色を琥珀からルビー色に変えて少し髪形を整えればほぼ一緒の姿のような人物だ。

 

「紹介がまだだったね。僕の名前は衛宮切嗣。そしてこちらの女性が僕の妻の衛宮・アイリスフィールだよ」

「衛宮・アイリスフィールです。親しい人は私の事をアイリと呼びます」

「衛宮切嗣!? 話に聞く『魔術師殺し』の…!」

「ああ…昔はそう呼ばれていたね。それで今もたまに旅先で狙われる事があるからね」

「その家族がこんなところに住んでいたんですか…時臣さんも人が悪いわね…」

 

今頃、はははと笑っている事だろう、その光景を思い浮かべてタマモはいい笑みを浮かべどんなことをしてやろうといった感じの事を考えている。

 

「だがアインツベルンの関係者ではないとすると…君はどこのものかな?」

「はい。あなたなら知っていそうですが私の名はシホ・E・シュバインオーグです」

「私は玉藻アヤメです」

「!? あの赤き翼の!」

「はい、その通りです。訳あってあなたの言った通り人間では無くなっていますが…」

「あなたが噂に聞く『剣製の魔法使い』だったんですね。アインツベルンでもあなたの名前は聞いたことがありました」

「それでどういった理由で僕達の家に近づいたのかな?」

「もう切嗣…お客様をこんなところで立たせたままではいけないでしょう? 居間に通しましょう」

「そうだね。わかったよ、アイリ」

 

そして一同は居間まで移動し、シホは時臣と似たような会話をした。

 

「…ふむ、記憶探しか」

「難しいわね。記憶を見る魔法でも分からなかったんでしょう?」

「ええ。ですがこの町に来て色々と記憶の手掛かりのようなものが掴めてきています。現に切嗣さん、あなたを見て頭痛に襲われましたから」

「その、並行世界かい? そこでは君と僕は家族のような関係だったかもしれないという事かい?」

「ええ。ところで一つ尋ねますがこの家にはもしかしたらイリヤスフィールというお子さんはいらっしゃいませんか?」

「え、ええ…いますけど。イリヤは今ひとつ年下のもう一人の息子である『士郎』と一緒に公園に遊びにいっているわ」

「衛宮、士郎…?」

「うん。僕達にはイリヤと士郎の二人の子供がいるんだよ」

 

その時、ちょうどよくドタドタと玄関のほうから足音が聞こえてきた。

 

「お母様、ただいまー」

「今帰ったよ、父さんに母さん!」

「おっと、噂をすればだ」

 

二人の子供が居間までやってきて二人の姿を見た途端、シホはまたもや頭痛に襲われた。

 

「くぅ…!」

「大丈夫、シホさん!?」

「…え、ええ。大丈夫です。それよりもしかして銀髪赤眼の女の子がイリヤちゃんで赤髪赤眼の男の子が士郎君ですか?」

「ええ、そうです」

「お母様にそっくり…」

「ああ、びっくりだ…」

「二人とも。この人達はシホ・E・シュバインオーグさんと玉藻アヤメさんだ」

「あ、私は衛宮イリヤスフィールです」

「俺は弟の衛宮士郎です」

「よろしくね」

 

二人の頭を撫でながらもシホは笑みを浮かべていたが、

 

「…シホお姉さん、どうして泣いているの?」

「え…私、泣いている?」

「はい、シホ様。いまお拭きしますね」

 

タマモがすかさずハンカチでシホの涙を拭う。

それで気恥ずかしくなったシホは強引に手で涙をふき取った。

その光景を切嗣とアイリはなにか感じ取ったのか笑わずに見守っていた。

その後、二人は自分の部屋にいっていなさいと言われて部屋を出て行った。

 

「恥ずかしいところを見せてすみませんでした…」

「いや、気にしていないからいいよ」

「ええ、だからシホさんもそんなに顔を赤くしないでね」

「はい…それでですが、お二人にはある手紙を見てほしいんです」

「手紙…?」

「この世界では見せるのは極わずかの人だけですので、読んだ後どうして私がこの町を訪ねてきたのか分かると思います」

 

タマモから手紙を受け取り二人にそれを見せた。

そして読んでいくうちに二人の表情が驚愕に染まっていく。

読み終わるとアイリがわなわなと体を震わせながら、

 

「そ、それじゃ、あなたはもしかして並行世界のイリヤの体に宿った士郎の姿、ということなの?」

「…そうだと、私は思っています。私の無き記憶の手掛かりの一つがその手紙ですから」

「そうかい…でも正義の味方を目指していたのか」

「はい。おぼろげですがそれを志して世界の戦場を駆け回っていたと思います」

「まるで昔の僕みたいじゃないか…それじゃやっぱり聞くのもあれだけど、十を救うために一を切り捨てる選択をしていたのかい?」

「おそらくですが…でも私は全てを救おうとがむしゃらになっていたんだと思います」

「君の過去になにがあったのかはまだ知る由も無いけど、この道は継がせたくないと思っていたけど並行世界では継いでしまっているんだね…」

 

切嗣は苦虫を噛み潰したような表情になっていた。

それでシホは申し訳ない気持ちになっていた。

 

「うん、事情は分かったよ。…それで記憶は思い出せそうかい?」

「いえ、後…後なにか切欠があれば思い出せると思うんですけど…」

「…そうか。そうだ、シホさんにアヤメさん、今晩はウチに泊まっていったらどうかな?」

「いいんですか…?」

「うん。もしかしたら君は僕達の並行世界の子供かもしれないんだろう? だから気にせず泊まっていきなさい」

「私も賛成よ。シホさん、そしてアヤメさん、今日は歓迎するわ」

「ありがとうございます」

「お言葉に甘えさせてもらいますー」

 

その晩は衛宮家族にシホ、アヤメが加わり料理も一緒に作ったりして楽しんだ。

その間、もっぱら料理を担当している士郎はシホの料理の腕を知り、「師匠と呼んでもいいですか?」と言われ困ったり、イリヤから魔法を見せてとごねられて投影魔術を見せたり、それを見て切嗣が士郎にはそんな能力があるのか…と感心されたり、アイリには士郎程でもないけど料理を教えてと懇願されそうになったりと色々な事があった。

そして翌朝の事、

 

「それじゃシホさん。何かあったら連絡してくれ。いつでも歓迎するから」

「また一緒に料理を作りましょうね」

「はい。それと…」

 

シホは宝石剣レプリカ(ミニ)を四人分投影して切嗣に渡した。

 

「これは…?」

「あなた達になにか危険が迫った時、それに魔力を通して私を呼んでください。それを持っていれば魔法世界でない限りは転移魔術で飛んでいきますので。まだ刺客とかに狙われる事はあるんでしょう?」

「はは…それじゃその時は頼りにさせてもらうよ」

「はい。これでも『剣製の魔法使い』と二つ名で呼ばれていますからきっと頼りになります」

「頼もしいね。うん、その時はきっとね」

「それじゃ…名残惜しいですが…」

「もう大丈夫ですか? シホ様?」

「ええ、タマモ」

「お邪魔しました。またどこかで…そうだ! 麻帆良学園で六月に麻帆良祭がありますのでぜひ見にきてください。私も歓迎します」

「そうですねー。楽しいイベントが目白押しだそうですから是非来てください」

「わかったよ。それじゃその時には案内でも頼もうかな?」

「そうね、切嗣」

「はい。待っています。それじゃ今度こそ失礼します」

 

シホ達は握手を交わして衛宮邸を後にしたのだった。

 

「それでシホ様、記憶の手掛かりは掴めましたか?」

「うん、思い出すまでには至らなかったけど、だけど…いい家族に出会えたわ」

「そうですか。それなら私も安心です。でもいつか…ですね」

「そうね、思い出せるといいわね…」

 

シホはそう思った。

しかし帰りにエヴァへのお土産はどうしようとなって。

それなら「お酒はどうでしょう?」というタマモの提案に「そうね」と相槌を打って『コペンハーゲン』という酒屋で高級そうなワインを一本購入した。

その際にも頭痛が起きたのはまぁ、気のせいだろうとシホは思う事にしたのだった。

 

 

 


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