吸血鬼になったエミヤ   作:炎の剣製

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更新します。


005話 2-Aへの編入

 

三学期が始まる前日に私はタマモを連れて学園長室に赴いていた。

理由はというと多分転校生として様々な質問をされてしまう可能性が大だからだ。

 

「ふむ…。たしかに大変じゃが、そこまで深刻になることかの?」

「深刻な問題です! シホ様は朝倉という少女に質問されたときに“前はどこでなにをしていたの”っていう質問だけで激しい頭痛に襲われたんですよ!?」

「む…。それは確かに深刻じゃな。しかし明日にはもう編入する予定になっておるし…対策はどうするのかの?」

「それで提案ですが魔法使用の強力な精神安定剤を輸血パックと一緒に支給してほしいんです。関東魔法協会の長の貴方でしたら簡単に入手できると踏んだんですが、どうですか?」

 

そこで学園長が渋い顔をしながら、

 

「しかし吸血鬼の強靭な肉体とはいえ魔法使用の薬を服用するのはさすがに害では「…大抵の薬物に関しては免疫や抗体がありますから大丈夫です」…そうであったの」

「…そんな顔をしないでください。私はもう割り切っています。でもこの件で周りに迷惑をかけたくありませんから」

「あいわかった。明日までに手配しておこう。また明日にここに来てくれい」

「わかりました。それじゃ失礼します。いこうかタマモ」

「はいです」

 

 

 

 

二人が部屋から退出した後、学園長は目元を抑えながら薄らと涙をためて、

 

「なにが“割り切って”おるじゃ…。激痛を耐える薬を服用するということは未だ過去を克服していない証拠ではないか…。辛いのぅ」

 

学園長は窓の外の青い空を見て哀愁を漂わせていた。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

その夜のこと、大浴場では明日から始まる三学期に向けて色々と会話をしていた集団がいた。

だが朝倉和美は浮かない顔をしてあまり会話に入ってこないでいた。

それを不思議に思ったクラスメートは話をふってきた。

 

「どうしたのですか朝倉さん? 元気がないでしてよ?」

「あ、いいんちょ…。うん、まぁちょっと、ね」

「どうしたのよ朝倉。普段ならなにかしらネタを仕入れているでしょう。それにどこか元気がないようだしなにかあったの?」

「やっぱそう見える? いやー…これは思ったより重症かもね」

 

クラスの委員長である雪広あやかとその友人(?)の神楽坂明日菜が尋ねるが、なお煮え切らない返事を返した。

それで朝倉は話すかどうか迷ったが、シホ・E・シュバインオーグと玉藻アヤメというおそらく三学期からの新しいクラスメートについて話した。

 

「えっ! それじゃ明日は歓迎会をしなきゃいけないじゃん!?」

「あわわ…ハルナ、落ち着いて」

 

一同が騒いでいる中、朝倉が少し声を大きくしてみんなに言った。

 

「あー…そのことなんだけどね、あんまりここに来る前のことに関してとかの事情は聞かないであげてほしーんだ。私個人としては」

『!!?』

 

朝倉の発言で一気にざわめきが起こった。

遠慮と言う言葉は無きに等しい麻帆良パパラッチの異名を誇る“あの”朝倉和美がこうした控えめな態度をとること自体まずありえないという感想がほとんどをしめていたからだ。

それで「熱!?」とか「どこかで頭を打った!?」とか結構地味にひどい事を言われているがそれを意に返さず、

 

「私もねー…つい数日前に学園を茶々丸さんに案内されている二人に直撃取材をしかけたわけねー」

 

その発言に『やっぱり…』と言われるがとりあえず無視して、

 

「アヤメって子はエミヤさんの付き人みたいな立場の人だったわけよ。

肝心のエミヤさんが理由はわからないけど足が悪いみたいで車椅子で移動していたし…」

『ほほー!?』

「それでねぇ…いくつか質問した後、前はどこでなにをしていたの?っていう質問をしたらね…」

『したら!?』

 

全員が騒ぐ中、朝倉は少し言葉を切って、覚悟を決めた顔つきになり、

 

「…突然、前触れもなく頭を両手で抑えてすごく苦しみだしたんだよ…」

『えっ?』

 

それで興味津々だった一同は沈黙する。

 

「その時私はどうしていいか分からず手をこまねいていたんだけど、エミヤさんはとっても苦しそうな顔をしていながらも『気にしないで』って私のことを気遣ってくれたの。

当然その後すぐに三人とは別れたんだけど、別れ際にアヤメさんにまるで親の仇を見るような目で睨まれちゃったんだよねぇ。

だから私、まず原因はまぁ多分質問内容だと思うんだけどちゃんと謝りたいんだよね」

『………』

「だからあまり過去のことに関しては深入りしない方がいいと思う。きっとエミヤさんはここに来る前になにか…そう、なにかとても大きなトラウマになるような事があったんだと、私は思うから。

だからみんなにもそこのところわかってほしいんだ」

 

朝倉の弱気な、でも殊勝な心がけの姿を見てそれぞれ思想は違えど良いことだと思った。

 

「すばらしい考えですわ朝倉さん! この雪広あやか、その朝倉さんの立派な心がけにとても感動いたしました。

それでは是非明日はそのシホさんとアヤメさんという我がクラスの新しいお仲間が気持ちよくわたくし達のクラスに溶け込めていけるようにまずは誠心誠意パーティー作りの努力をいたしましょう!」

『サンセーイ!!』

 

先ほどまでの暗い雰囲気から一転して全員はほぼ賛成の意見をだした。

それに救われたかのように朝倉は心の中で感謝した。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

そして三学期当日、始業式が終わり生徒が各クラスに入っていく中、控え室では私とタマモは少しばかり緊張していた。

もう精神安定剤の薬は貰っているとはいえやはり集団行動をするのだから油断はできないからだ。

またいつ発作が発生するかわかったものでもなし。

 

「シホ姉さん、大丈夫かい?」

「う、うん、なんとか…それとタカミチ。これからはエミヤ君かシホ君で頼むね? 私も他の生徒の前では高畑先生で通すから」

「私も同意です」

「うん、わかったよ。シホ君、アヤメ君。それじゃ僕がいいよと言ったら入ってきてくれ」

「うん」

 

タカミチはそう言ってまだ騒がしいクラスの中に入っていった。

中に入ると一同はすぐに席について静かになった。

どうやら相当タカミチは信頼されている証である。

中からは元気よく「おはようございます」という言葉が聞こえてくる。

 

それでタマモは少し中を覗いてみると、

 

(うわー…こうしてみるとやっぱり女子だけですね~)

(ボロは出さないようにね、タマモ。こっちでは魔法がばれたらオコジョだから)

(アバウトですねー。“あっち”では封印指定だからまだマシですけど。って言うか私はもともと仲間なんですけど…)

 

二、三タマモとライン越しで会話をしていると中からタカミチが「それじゃ入ってきてくれ」という言葉が聞こえてきたので私達は中に入っていった。

だが入った途端目の前に吸盤のついた矢が数本飛んできた。

 

「なんでよ…?」

 

思わず呟く。

だけど冷静に対処して迫ってきた矢はすべて一まとめに弾いてその手に収める。

どうやらタマモにも迫っていたようだけど手刀で叩き落している。

だけどまだトラップは続く。

次にはバケツが私の頭上に振ってくるがそれをタマモが危なげなくキャッチしている。

それでもう終わりかと前に進んだのが甘かった。

 

「わっ!?」

「シホ様!」

 

地面にワイヤーが仕掛けてあったみたいで車椅子が絡めとられて私はそのまま床に倒れた。

ついで「ガシャンッ」と車椅子の倒れる無機物の音が教室中に響く。

 

「痛ッー…」

「シホ様大丈夫ですか!?…高畑先生、これは一体なんですか…!?」

「い、いやぁー…すまない、僕の注意ミスだったよ」

 

私が倒れたのを切欠にタマモはタカミチにドスのきいた声とともに睨みをきかせている。

気づけば教室中の生徒の半数以上が顔を青くしている。

それはそうだ。タマモはかつて絶世の美女とまで謳われた人物なのだから、その顔が怒りに染まれば一気に恐怖を引き起こさせる般若顔になる。

さすがに気まずい空気が流れているなぁ…。これは、さすがにいけないかも。

 

「タマモ、私は大丈夫だから…高畑先生も、皆さんも気にしないでください」

「ですがぁー…」

「「ごめんなさいっ!!」」

「えっ…」

 

と、そこにどうやら双子らしい少女たちが涙目で私をすぐに起こしながら謝ってきてくれる。

 

「ほんのお遊び気分だったんだけど、まさか転倒しちゃうなんて思わなくて…!」

「本当にごめんなさいです!!…足は大丈夫ですか…?」

「うん、大丈夫。ありがとう…それと気にしていないから泣き止んでくれると嬉しいな」

 

そういってできるだけ笑顔を作りながら二人の頭を撫でて上げる。

タマモが「相変わらずシホ様はお優しいんですから…」と言っているけど私としてはあまり泣き顔というものは見たくないから。

でも、どうしてだろう? 泣き止んだと思ったら今度は二人とも火照ったように顔が赤くなりボーっとして私の顔を凝視している。

 

「どうしたの…?」

「あ、いや…!?」

「な、なんでもないです!」

 

二人はそそくさと席に戻っていくとようやく落ち着きを取り戻した一同はホッとしている。

それからしばらくしてタマモの機嫌もやっと治りあらためて自己紹介まで漕ぎ着けた。

 

「それじゃシホ君、アヤメ君。自己紹介をお願いするよ」

「わかりました。私の名前はシホ・E・シュバインオーグです。よろしくお願いします」

「私は玉藻アヤメです。できれば名前の方でお願いします。これからよろしくお願いしますね」

『よろしくー!』

 

自己紹介をすると先ほどまでの重い雰囲気もどこへやら、元気に返事を返してくる。これが若さか…。

強化された吸血鬼の耳でよく澄ませて聞いてみるとやはりどこかしこもこの年代特有でもないけど大体が好奇心で飾られている。

 

 

 

―――さっきまであんな事があったから気にならなかったけど、今見ると二人ともすごい可愛いね。

―――うんうん! それに髪の毛も朱と銀が入り混じっていてとても綺麗…桃色も中々捨てがたいよね?

―――あの制服の上に着ている紅いコートもいい具合に決まっているね。

 

 

 

…と私たちの容姿の事やら。

ちなみに私は先の呟きの通り補足すると制服の上に聖骸布のコートを羽織っている。

 

 

 

―――足、大丈夫かなお姉ちゃん?

―――これが終わったら改めて謝ろう、うん!

 

 

 

先ほどの双子の声やら。や、本当に気にしていないからいいのだけど。

 

 

 

―――おいおい!? 二人ともどんなスペックしてんだよ! ウチの馬鹿連中の上位に入るくらいの逸材だぞ!

 

 

 

…一番後ろの眼鏡をかけている子が見た目と違う喋りをしている。猫かぶりだろうか…?

っと、そこまではおおむね表向きは問題なし。

 

 

 

―――むむっ、車椅子を使っているがかなりできるネ?

―――あれが件の吸血鬼の女性か。一応警戒はしておくか。

―――ふっ、…元・あの赤き翼のメンバーか。また一段と面白くなりそうじゃないか。

 

 

 

チャイナ風の子は単純に興味津々と言った感じだけど、一部関係者だろうか? 結構物騒な事を言っている。

褐色の背の高そうな子なんて私の事を知っているみたいで不敵に笑っているし。

そんな事を思って全員を見回してみると………なぜか幽霊の女の子がいるではないか。

タマモも気づいたみたいで二人して目を合わせるとニコリと微笑む。それでなんとなく微笑み返すとすごく喜ばれた。

…タカミチ、君のクラスの生徒達は一部かなり特殊だけどよくまとめられているね?

心の中で賞賛しているとタカミチが席をどうするか施している。

それで真ん中の先ほどの眼鏡の女の子の後ろ…つまり一番後ろに私たち二人の席が決まり、着席してそのままタカミチが三学期初めのホームルームを開始した。

 

 

 

 

◆◇―――――――――◇◆

 

 

 

 

ホームルーム終了後、私達は転校生ということもあり次々と質問を受けていた。

だけど、ふと疑問に思う。

みな一様に過去のことを聞いてこないのだ。

それに気づいたのか自称麻帆良パパラッチという先日の少女、朝倉さんが話しかけてきた。

それにともないタマモの視線も少し鋭くなる、が朝倉さんはタマモの反応も考慮にいれていたのだろう。

 

「エミヤさん、この間はごめんね。ほら私って報道部にも所属しているからよく聞く癖があったんだけど結果的にあんなことになっちゃって…」

「えっと、気にしないで朝倉さん。あれはちょっと、ね…」

「いや、言わなくていいよ。誰でも踏み込んでほしくない所とかはあるからね…だからこの間はごめん!」

 

先ほどまでの騒がしさが嘘のように教室中が静かになった。

それほど朝倉さんの行動が意外だったのか、はたまた―――…。

でも、その気持ちはとても嬉しいものであって私は口元に笑みを浮かべて、

 

「いいよ。許してあげる。って言っても最初から怒っていないけどね。でもその気持ちだけでも私にとってはとても嬉しい」

「私はあなたの事を最初は少し身勝手な人物だと思っていました。勝手にズカズカとシホ様の中に入ってこようとしていましたから。あげくシホ様はまた頭痛に苦しみましたから…」

「っ……!」

 

タマモの容赦ない毒舌が朝倉さんを直撃して少し顔を引きつらせる。

それでタマモを叱ろうとしたけど、

 

「…ですが、シホ様に対してのそのお気持ちには嘘偽りはないようです。最初の印象は確かに悪かったものです。ですがそれはこれからいくらでも改善していけれるものと思っています。

ですから、シホ様共々あらためてよろしくお願いしますね、朝倉さん」

「あっ…うん!」

 

それで朝倉さんの表情は嬉しそうに弾けた。

タマモも薄く微笑んでいてもう険悪な雰囲気はなくなった模様だ。

それからというもの朝倉さんが主導としてみんなの質問を一挙に受け取って質問してくる。

その中で料理談義があって四葉五月さんと超鈴音さんと話が弾んで今度一緒に作ろうと話を盛り上げていった。

 

そんなことがあったりして、三学期初めということですぐに学校は終わり、もう重い荷物などはすでに寮室に運び込まれているので残りの軽い荷物を取りにエヴァの家に向かおうとしたところ、

 

「あ、シホさんにアヤメさーん!」

「…ん? なに、神楽坂さん?」

「アスナでいいわよ。これから一緒に過ごしていくんだから他人行儀はあまりなしにしてほしいのよ」

「ん。わかったよ、アスナ。それでなにか用があった?」

「うん。ちょっと放課後になんだけどまた一度教室に来てもらって構わないかな?」

「?…いいけど、なにかあるの…?」

「それは来てからのお楽しみよ。それじゃ待っているから」

 

そういい残しアスナはすごいスピードで道を駆けていった。

 

「なんだったのでしょうか…?」

「さぁ…? まぁとりあえず最初はエヴァと合流しようか」

「はいです♪」

「(…そういえば、アスナ?…どこかで会った事があるような気が………うーん、気のせいか)」

 

考え付かなかったので今は保留にしておいた。

それでエヴァと合流して今日はどうだった? と聞かれたので、

 

「いいクラスではないですか? 差別とかそんなものもないようですし…ただ、なんというか特殊な生徒が多い気がしたんですが…」

「まぁ、あのクラスは半分とは行かないが関係者は多数いるし、魔法には関わっていないがそれに順ずる奴もいる。それに近衛詠春の娘もいることだしな」

「あー…そういえば確かに。近衛木乃香って言ったっけ? かなりの魔力を持っていたけどあの子は魔法に関しては…」

「詠春やじじぃの決め付けで教えてもらっていないらしいな」

「そっか。しかしあの堅物で初心だった詠春が結婚して子供まで産んでいたなんて驚きだね」

「そーですねぇ。一度あったら冷やかしてあげましょうか」

「お前らと一緒にいると昔の奴らの事が多く知れてなかなかに愉快だな。ほら、なにか奴らの恥ずかしい話とか持っていないか?」

「そうだね。最初の頃ラカンは敵だったけど、その時のやりとりがなんとも…食事を台無しにされたのはムカついたけど。

まぁ後はナギとラカンがいつも喧嘩という名の殺し合い(?)をしたり、アルがそれをさらに煽って被害を拡大させ、ガトウや詠春まで巻き込んで一夜にして一大戦争を起こしかけたりして、ゼストは他人の振りをしだしたりしていてねぇ…タカミチも当時はまだ少年だったんで介入できるわけもなし。私は一身に被害を受けるばかりで…フフフッ」

「お、おい…シホ?」

「あんまりにも嫌気というか我慢、鬱憤が溜まっていたんだろうなぁ…私が正気に戻った時には全員が大小程度あれ土下座をしていたのは懐かしくもあり、いい思い出だったよ?」

「あの統率の無さが売りの奴らが、か…? 想像できんな…。特にアルが…。いったいなにをしたんだ…?」

「さぁ…? ただ所々焦げていたり、ラカンに至っては殴打の跡が全身にくっきりと残っていたから“錬鉄魔法”でも使用したんじゃない?

最終的には私とタマモ以外は男だらけだったからマグダラの聖骸布で芋虫にしていたね」

「あのときのシホ様は悪鬼羅刹の化身と化してましたからぁ…もうそりゃ本気出せばあの糞ナギなんてイチコロでしたね♪」

「おいおい…それじゃ今吸血鬼としているお前はどの程度の実力なんだ?」

「さぁ、どうだろう? 足が治ればなんとかなるだろうけど…」

「……わかった。足が完治次第、私の別荘で勘を取り戻す意味も込めて実力を測ってやろう」

「あ、やっぱりエヴァもダイオラマ球を持っているんだ」

「まぁな…。それよりそろそろ着く頃だし話はもうやめてさっさと荷物を運び出すぞ。間違っても人前でタマモの不思議四次元袋はだすなよ?」

「えー、わかりましたぁ~…」

 

それから急いで荷物をまとめてタマモと茶々丸が大きい荷物を運ぶ感じでそのまままた指定通りに教室に向かったら、

 

「「「「ようこそエミヤさん!! アヤメさん!!」」」」

 

と、突然歓迎されて私たちは困惑してしまった。

見れば教室はいつの間にやらパーティー会場へと変貌していて、いつ作ったのか分からない様々な料理がおかれていて、私とタマモは主賓とのことで中心まで連れられてきていた。

 

「えっと、これは…?」

「ん? これは二人の歓迎会よ。エミヤさん達一回荷物を寮に持っていくつもりだったんでしょ? それでちょうど良かったから急いで準備したのよ」

 

律儀にアスナが答えてくれる。

それで思わずエヴァに視線を送るが、

 

 

 

―――諦めろ。せいぜい馬鹿騒ぎに付き合ってやるんだな。

 

 

 

切って捨てられた。

しかたなくというのも失礼だけど楽しむことにした。

タマモは早速油揚げの料理はないかと催促している。

そして気づけばタカミチとかも席で苦笑いを浮かべていて、小さい声で、

 

「どうだい、シホ姉さん。これから色々あるだろうけど楽しめそうだろう?」

「はぁ…確かにそうだね。それじゃ改めてだけど、タカミチもこれからよろしくね」

「うん。僕もまたこうして姉さんと話をできるのが嬉しくてたまらないからね。よろしく」

 

一同が騒ぐ中、私たちは気づかれないようにこの出会いに乾杯したのだった。

 

 

 


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