24歳、時代は2024年6月初旬です。
陀来(ダライ)僧侶に誘われて、ブルーバードを出てきた絶望光志郎、さぁ、何がおこるやら?
はじまり、はじまり、
絶望光志郎達は陀来僧侶の用事に付き合い、インドネシアに来ています。
オレンジ色の着物に朱色の袈裟をした一向が列をなし、遺跡に向かって歩いて行きます。
「うゎ~すごいお坊さんの数ですね、この人達も観光なんですか?、ポタラさん。」
妄想ルンバは、ワンピースに薄手のカーディガンという涼しげな格好で、ポタラと寺院に向かう列に並んで歩いています。
「ちがいますよ、あのお坊さん達は、お釈迦様の誕生月の満月の日にお祈りをする為に、ボロブドゥール寺院に集まって来ているのです。」
ポタラは、陀来(ダライ)僧侶が、忙しいから一緒には行動出来ないと、気をきかして紹介してくれた案内人です。
「どうして、こんなに来ているのですか?」
「それはですね、ボロブドゥール寺院が世界最大の仏教遺跡でして、西暦780年位に、ここインドネシアの中部ジャワに建てられたのです。そのため、世界中の仏教徒の聖地のようになったからです。」
「780年に建てられたとなると、いまから、1244年前ですよね?現在のインドネシアって、ほとんどがイスラム教で、仏教徒は1%もいないと聞いてますけど、よく残っていましたね?」
「そうなんですよ!200年前に密林のなかで、偶然、発見されたそうで、ほとんどが、ムラビ山の噴火により火山灰に埋まっていたそうで、それまでは、誰も遺跡があることを知らなかったからだそうです。」
ポタラは嬉しそうに興奮しています。
「1000年間、火山灰に隠されて守られてきた。ある意味、奇跡ですね!」
ルンバも嬉しそうに笑います。
「さぁ、ボロブドゥール寺院が見えてきましたよ!」
高さ5階建て位の石組みの大きな寺院が見えています。
「あそこに、光志郎が陀来さんと一緒にいるんだ!」
ルンバは嬉しそうに笑います。
光志郎は、薄手のパーカーに短パンというラフな格好で、陀来僧侶と一緒にボロブドゥール寺院にいます。
「光志郎君は、毎日、瞑想をしているそうだが、どんなやり方をしてるのかね?」
陀来僧侶は光志郎と向き合って、石の床に布一枚をひいた上にあぐらを組んで座っています。
「はい、ベッチ所長に習ったやり方ですが、あぐらをかいて静かに座ります。自分の身体に意識を合わせてリラックスしていきます。目を軽く閉じて、周りの気配を身体感覚で探り、頭のなかに浮かんでくる考えを見まもる。重要なのが呼吸の仕方で、鼻から左右均等にゆっくりと全身に酸素が行き渡るイメージで呼吸します。息を吸うときは胸をひらいて背筋をのばして腹をへこませ、気の重心が腹から頭へと引き上げられる感覚になります。息を吐く時は腹をふくらませ気の重心が下腹に集まるような感覚になるという、逆腹式呼吸をしながら頭から全身の力を抜いていくイメージをするやり方です。なれてくると、呼吸をするごとに自身の気の流れが上下し、おでこからのど、胸、腹、下腹、股間へと循環する感覚を感じるようになります。更に深い瞑想になると、おでこに芽生えた思考が肉体を離れて、自身の半身である高次元の霊的な存在と融合するような流れを感じるような感覚となります。」
「ふむ、まぁ、基本は出来ているようだね。それで、頭の中に浮かぶ瞬間は現実と変わらないイメージを感じれているかな?」
「現実と変わらないイメージとは、音や味や匂いということですか?」
「そう、そのとおり、瞬間、瞬間に頭に浮かぶイメージの臨場感を上げ、実際に起こる感覚と変わらないイメージが捉えられればいいんだよ。」
「う~ん、起きながら夢を見ているというか、実際にそこにいる感覚にはなっていますが、自分の着ぐるみを着ている感じかなぁ?」
「まぁ、そんなとこだね。それでは、密教式の瞑想じゃが、まずは、静かに座り自然な呼吸をする。次に、息を吸う時は、全世界全人類の、ネガティブな惨めさ苦しさの感情を吸い込み、吐く時は、自分のポジティブな喜び至福の全てを吐き出すことじゃ。密教では、胸にあるハートチャクラが人の重要性のみなもとで、慈悲がありネガティブなことをポジティブに変える場所だと捉えているのだよ。」
「呼吸によって、酸素を二酸化炭素に変えることかなぁ?……リラックスしながら、ひとつに集中しないで、全体を捉えてイメージで世界と繋がって自然と一体になるようなことなのかなぁ?」
光志郎は、そのまま瞑想状態に入っていきます
「考えてても分かりにくい、やればわかるものだね。」
陀来僧侶も目を閉じ、瞑想状態へ入っていきます。
自分の呼吸する音が体内から感じとれてきます。
あたりの心地よい大気が、仏教徒のお経と混じって、風にのって届いてきます。
ボロブドゥール寺院の石の床の硬い感触が、薄い布一枚をはさんでお尻に伝わってきます。
陀来僧侶の呼吸する音が伝わってきます。
陀来僧侶の思念が伝わってきます。
『やぁ、光志郎君、こんなに短い時間で、ここまで深い瞑想ができるとは思っていなかったよ、君には、特殊な才能があるようだね。』
『はい、子供のころから、いつの間にか、周りの人の感情が僕の意識に入っていきていました。』
『そうですか、とても、戸惑ったことでしょうね。』
『はい、最初のころは、戸惑い、パニックになりましたが、多くの意識とふれあうことで、だんだん、それほど怖いものでもないと解り、制御できるようになりました。』
『それは凄い、ひとりでそこまでは、なかなかたどり着けないものですよ。』
『いいえ、ひとりではありません、僕のそばには、いつも、ルンバがいました。』
『なるほど、妄想ルンバさんが、君を導いていたのですね。』
『はい、ルンバがいなければ、僕は、とっくにくるっていたと思います。』
『光志郎君は、瞑想を習う前から、世界の意識と繋がる能力があったということですね。』
『はい、この能力に、ルンバが、サンシャインラブという名前をつけてくれました。』
『わからない現象を分析して、名前を着け、言葉にして、より認識し理解を深める、正しいやりかたですね。』
『はい、ルンバは、いつも、間違っていないです。』
『そうですか、それで君は、今、ここにいるのですね!』
陀来僧侶は微笑みました。
さぁ、光志郎君、次は私の番です。
『これは、私が、陀来になる前の子供のころですね。』
『陀来僧侶は、はじめから、陀来僧侶ではなかったのですか?』
『あれは、私が、五歳のころ、名前はラモ トゥンドウのころでな、農家の産まれだった。ある日、突然、チベットの中心のラサ市にあるガンデン寺から呼ばれた。
次の、ダライ ラマに選ばれたのだ、私は、五歳でダライ ラマ14世としてチベットを引っ張っていかなければならなくなった。』
『五歳でですか?』
『まぁ、実際は、なにもせず、お飾りの様なものだよ。それでも、そのころのチベットは、今の中国の前の中華民国に制圧されていて、大変だったがな。』
『現在と、あまり変わらない状況だったのですね。』
『まあ、そうだが、チベット国内に居られただけましだったかな。そのあと、1949年にしんがい革命により、中華人民共和国ができたことで、チベット政権はラサからも追い出されて、仏教徒の多いインドへ亡命せざるおえなくなった。』
『完全に、乗っ取られたということですか?』
『まぁ、悲しいかな、時の流れには逆らえないものなのだろうね。だけど、私は、人を信じて、インドから武力での争いではなく、チベットの現状を世界に訴えかけることにしたのだよ。』
『そういうことだったのですか、それで、1989年にノーベル平和賞をとって、世界の民意に訴えかけたのですね。』
『おかげで、今では、世界中の心ある仲間が応援してくれるようになったのだよ。』
陀来僧侶は、優しく微笑んでいます。
光志郎も、優しく微笑んでいます。
『……さぁ、阿羅漢(ブッタ以外の悟りを目指すもの)たちよ、…私のもと、インド、ブッタガヤへ来なさい…伝えなければならないことがあります……』
暖かい光に包まれたような優しく穏やかな思念が語りかけます。
光志郎と陀来僧侶は、瞑想をとき、顔を会わせます。
「陀来僧侶、聞こえましたか?」
「ときどきあるのだよ、お導きというのがね! ちょうどいい、明日、インドへ行くところだったから、ブッタガヤへ寄って行くとしよう、光志郎君、君もくるかね?」
「もちろん、行きます。お願いします。」
「そろそろ、祈りがはじまるな、さぁ、いくとするか!」
光志郎と陀来僧侶は部屋の外へ出ていった。
ボロブドゥール寺院の周りを、僧侶がお経をとなえながら列をなし回っている。あたりは、日が暮れてきており灯籠に明かりが灯りだしている。
陀来僧侶は、光志郎と別れて最高僧侶として祈りの行事に朝まで参加しに行きました。
「あ、光志郎く~ん、こっち、こっち!」
ルンバが、嬉しそうに光志郎を見つけて呼んでいる。
「はぁ~い、今、行くよ!」
光志郎も嬉しそうにルンバに近よります。
二人の頭上には、満月を背に気球のように、空高く舞い上がる灯籠が流れていきます。
「わぁ~、綺麗!」
ルンバは、そっと、光志郎の手を握ります。
「綺麗だね!」
光志郎は、ルンバの顔を見ながら囁きます。
翌朝、光志郎とルンバは、陀来僧侶と一緒に、インドのブッタガヤへ向かいました。