さぁ、何がおこるやら?
はじまり、はじまり、
ポタラを先頭に、ルンバをはさんで、光志郎が後ろに続きます。
ポタラは、ヘッドライトの明かりをたよりに、生暖かく湿った壁ずたいに、1メートル幅程の少し傾斜がかった下り坂を進んでいきます。
「皆さん、足元に気をつけてくださいね。何があるかわかりませんから。」
「なんだか、思っていたより大丈夫そうだわ?」
「そうだね、ドラクエのダンジョンみたいだね。」
三人は、一直線に100メートル程進みます。
はじめての曲がり角を曲がると、そこには、?
突然、明るい空間に出ます。
そこは、16畳程の開けた空間になっており、空間の中心には、大日如来像が淡い光を放って蓮の花の上に鎮座しています。その周りに四体の如来と四体の菩薩が配置されています。四方の壁の側面には、曼陀羅が描かれており、部屋全体が結界のような安らぎに包まれています。
「わぁ~凄い、光輝いて、明るいわよ!」
「ほぉ~………これは、見事!………こんな所に、立体曼陀羅があったなんて……」
光志郎は、ブッタから言われた、仏教の秘宝を探しますが、どこにも、それらしきものは、見当たりません。
「ここには、無さそうですね?…この部屋で行き止まりのようですが、………うむぅ、ポタラさん、文字のようなものが描いてありますが読めませんか?」
石版には、サンスクリットの文字と六角形のくぼみがあります。
「何々、[ここより先、人の世界にあらず、入るべからず]と書いてあります。……いったい、どういうことなのだろう?」
ポタラは、思案にくれています。
光志郎の思念に陀来僧侶の声が聞こえてきます。
『光志郎君、私は今、君に渡したペンダントを通じて話している。実は、その曼陀羅が描かれたペンダントは密教の秘宝でな、代々伝えられてきたものなのだよ。そのペンダントを石版のくぼみにはめてみなさい。』
「たしかに、同じ、六角形の形をしているなぁ………何が起こるかは、やってみなければ分からない!」
光志郎は、ペンダントをくぼみに合わせます。
ガガガガ…と地鳴りのような地響きをたてて石版が横に移動したあとには、下へと降りる階段が現れました。
「そこの君!………付いてきているのは、分かっているよ、ここからは危険だから、帰りなさい!」
光志郎は、ずっと付いてきている気配に話しかけます。
部屋の角から、人影が出てきます。
「あ~あ、ばれてたか、おじさん、私も連れてってよ!」
人影が明かりに照らされていきます。
背丈は160センチくらいで細身のスラッとはしているが、顔立ちには、あどけなさが残る少女が立っています。
「あ、リサちゃんじゃない!」
ルンバは、驚きます。
そこには、ガンデン寺の入り口で、光志郎にぶつかってきたリサが立っています。
「リサ、帰りなさい!子供が来るところではない!」
ポタラは、強めの口調で厳しく言います。
「ポタラさん、ここで、私が帰ったら、ここのことを言いふらすからね!…どうなっても知らないよ!」
リサはニッコリ微笑みます。
「それは困ります。………仕方ない……おとなしく付いてくるなら許しましょう。」
「はぁ~い、リサはおとなしくしま~す。お姉さま、よろしくお願いしま~す!」
リサは、ルンバに抱きつきます。
光志郎は、呆れ顔でため息をつきました。
光志郎は、ヘッドライトを外してリサに渡し、予備のハンドライトを持ちます。
ポタラを先頭に、ルンバ、リサ、光志郎の並びで階段を降りていきます。
階段は、6メートル程ごとに折り返して下っており、折り返すごとに、異様な気配は重たくなり闇が深くなっていきます。
4回折り返した所で大きなフロワァーにでます。
闇が濃すぎてヘッドライトの明かりではどれくらい広いかわかりません。
「いやぁ~、なにか背中についたぁー!」
リサが悲鳴をあげしゃがみ込みます。
光志郎は、リサの背中にライトを向け確認します。
30センチ程の黒地に黄色の目玉模様がついた鬼蜘蛛がしがみついています。
「じっとしていろよ、今、とってやるからな!」
光志郎は、リサの背中に付いている鬼蜘蛛を蹴りとばします。
鬼蜘蛛はサッカーボールのように跳んでいきます。
リサは、しゃがんだまま上を見ると、天井一面に蜘蛛の巣が張り巡らされており、無数の鬼蜘蛛の黄色の目玉が、こちらを見ています。
「気持ち悪い、何よ…あれ……虫はだめ、…私…うわぁ…こっちに来る。」
リサは、腰を抜かして狼狽えています。
光志郎とポタラは、それぞれ両側からリサを抱えて走り出します。
「ルンバちゃん、付いてきてよ!」
天井から蜘蛛糸をたらし、光志郎たちを目指して次々と垂れ下がってくる鬼蜘蛛をかき分けながら、真っ直ぐ駆け抜けます。
「うわぁ、……」
光志郎の足元が崩れ、四人は落下します。
光志郎、ルンバ、ポタラはバランスを上手くとり足から着地しましたが、リサはお尻を打ち付けます。
光志郎の足元には、何かうごめいています。
足元に絡みつき、まと割りついてきます。
ライトを向けると、明かりにてかてかと艶めく蛇が床一面にうごめいており、足元に絡み付いた蛇は、どんどん這い上がって体の自由を奪っていきます。
「ルンバちゃん、大丈夫か?」
光志郎は、まとわりつく蛇を引き剥がしなから、ルンバのことを心配します。
「光志郎、私は大丈夫よ。」
ルンバは、床の蛇を払いながらリサに肩をかして起こしています。
「お姉さま、ステキ。」
蛇は平気そうなリサですが、ルンバに体を密着させてもたれ掛かります。
「蜘蛛の次は蛇とは、地獄の入り口でもあるまいし!」
ポタラは、蛇を蹴散らしながら辺りを探索しています。
「光志郎君、こっちに通路があります。いきますよ。」
光志郎たちは、ポタラについていきます。
傾斜がかった下り坂の通路を100メートル程いくと明るい空間に出ました。
その空間は、現実の世界とかわりなく、人々が生活を営む、まるで、ショッピングモールのような所です。人々は次々に現れてくる、様々な商品で溢れた陳列だなから、好き勝手に欲しい物を取って楽しんでいます。
ただ、ひとつだけ違いがありました。それは、そこの人たちの頭が豚だったのです。
「わぁ~、なんでもあるわ、………食べ物もあるよ……お姉さま、一緒に何か食べようよ!」
リサは、ルンバにすり寄ったまま手を引きながら食べ物を食べます。
「おいしいよ……お姉さまも、食べようよ、はい!」
ルンバは、リサから食べ物を受け取り食べます。
「ほんとだ、おいしいわ!」
リサとルンバは、夢中で食べます。食欲が満たされたのか、二人は、衣類や雑貨をあさりはじめます。
「なんだか、暑いわ!」
ルンバは、フリースパーカーを脱ぎます。
「ねぇ、光志郎も、一緒に楽しみましょう……こっちに…いらっしゃい…」
胸元の開いたキャミソール姿のルンバが、目元をとろんとさせて光志郎を誘います。
「いやぁ、お姉さまは、リサのなんだから、おっさんはあっちいって?!」
ピンク色に火照った体になったリサは、同じく、火照ったルンバの体に抱きつきます。
「さぁ、光志郎も脱いで………」
ルンバは、光志郎の胸元のジッパーに手を掛けます。
「ルンバちゃん…駄目だよ……こんなところで…」
光志郎は、ルンバの体から発散している女の香りに抵抗しながら必至に自分を制止ます。
「だから~、リサのお姉さまなの~……」
リサは、光志郎とルンバの間に割り込み、二人を引き剥がそうとします。
「カーツ!」
ポタラが、印を結んでマントラを唱え、大声で制止ます。
ルンバは、我にかえり正気を戻し、恥ずかしそうに上着をきます。
「たるんだことをしている時ではない!この場所に一生捕らえられるところだったぞ!」
ポタラは、真顔でそう言うと、周りの探索を続きます。
リサだけは不満顔ですが、光志郎とルンバも探索に加わります。
光志郎は、曲がりくねった通路の奥にある石版の扉を見つけます。
「ん~何々……[この先入る者、己を知り、悔い改めるなり]…、と書いてありますね。」
ポタラは、真顔で石版の文字を読みます。
「無知なる我欲に貪る豚、本当に地獄の門かもしれないね……えぇい、成るがままよ!」
光志郎は、例のごとくペンダントをはめて扉を開きます。
開いた扉の先には、井戸があります。
井戸のなかを除き混むと、深い深い闇が広がっています。
「この井戸を降りろということですかね?」
光志郎は、ポタラに聞きます。
「どれだけ深いかわかりません。三人のロープを繋げても足りなかった場合は、戻ってこれませんよ。どうしますか?」
ポタラは、真顔で言います。
「行くしかないでしょ!…ルンバちゃん、いいよね?」
光志郎は、ルンバを見ます。
ルンバは、静かにうなずき返します。
ポタラを先頭に、ルンバ、リサ、光志郎の順番で井戸を降りて行きました。