ポタラを先頭に、光志郎、ルンバ、リサは、果てし無い漆黒へ飛び込むのだった!
さぁ、何がおこるやら?
はじまり、はじまり、
落ちています。
どこまでも、どこまでも、
ただ、ひたすら、落ちています。
「リサちゃん、大丈夫?」
「うん、お姉さまがいれば、リサは大丈夫!」
光志郎たちは、先に落ちたポタラに追い付き手を繋ぎます。
「どこまで落ちればたどり着くのですか?」
「言い伝えによると、私達の世界時間で二千年かかるというが、これじたいが親殺しや自殺の罰になっており、誰の助けもえられず孤独感に襲われ絶望のなか、嘆き苦しみが続くのだよ。」
「おっさん、二千年もまってたら、リサは死んじゃうじゃない?」
「どんなことがあっても、地獄では、死ねないのだよ、何度も死ぬ程の苦しみを味わい犯した罪を後悔する、それが、魂の浄化なのだよ。それに、この世界において時間は意味をなさない、果てし無い永遠であり、まばたき程の一瞬でもある……つまりは、どれだけ時間をかけたかよりも何を感じたかが重要なのだよ。」
「ポタラさん、私達が、この世界のバグなら、何か裏技はないのですか?」
「あるよ!………イメージの力で、無間地獄の底についたと思えばいいんだよ、……まぁ、信じる心が大切で、迷いがあれば、どこかの時空の狭間に閉じ込められかねんがなぁ。………リサ、大丈夫かい?」
「大丈夫よね、リサちゃん!」
「お姉さまがいれば、リサは大丈夫、だって、信じてるもの!」
「よし、みんな、地獄の底をイメージして!」
ポタラの合図で、四人は意識を集中します。
光志郎は、ルンバとリサの意識に自分の思念を重ねてサポートします。
ブルー〰️ー〰️ーーン
辺り一面の景色が、漆黒の闇から真っ赤な炎に変わります。
「熱いよ~……助けて……悪かった……熱~い……熱い………」
そこら中から、罪人の悲鳴が聞こえてきます。
大気は炎を上げて燃え盛っています。
釜の中には、どろどろに熱せられた鉛が溶けており、釜から炎がわきたち、生きながらにして罪人の皮膚を焼き、肉体までとかしていきます。
しばらくすると、焼かれた罪人は、肉体を取り戻して再び焼かれています。
「あの炎は、今までの地獄の千倍の温度で、罪人の苦しみも千倍なのだよ。……私達も普通に地獄にこれば、ここの燃え盛る大気でさえ耐えられないだろう。」
光志郎の周りには、牛鬼と虎鬼をたしたような6メートルを越える大きな鬼が16人います。
牛虎鬼は、それぞれの頭から8本の角をはやし、口からは鋭い牙をはやしています。
「さぁ、自分の罪を償え、……まだまだ、……たりぬわ!………誰が悪い…………泣け…叫べ………外道どもが………」
牛虎鬼が罪人を攻めています。
「忙しい所すまぬが、ちょといいですか?」
ポタラが聞きます。
「なんだ、お前たち、何処からきた!」
「私達は、お釈迦様に言われて、世界を救う為にここまで来ました。……どうしても、仏教の秘宝といわれる物が必要なのですが、心あたりはありませんか?」
「あぁ、お釈迦様といえば、この地獄を創られた仏様の仲間のお方、協力をしてあげたいがワシらでは解らん?………あの燃え盛る城にいる閻魔様にでも聞いてくれないか!」
牛虎鬼は、親切に教えてくれました。
「地獄の鬼って、もっと悪いヤツかと思ったけど、案外、話のわかるヤツなのね!」
リサが、感心していいます。
「地獄は、汚れきった魂を救う為に、仏様が、人間を見捨てないで助けてあげようと創ったシステムでな、地獄の鬼たちは、役人みたいな者なのだよ。」
「どうして、汚れた魂を救わなければいけないの?」
「それはな、魂こそが、私達の本質でな……全ては、より良い魂を求める為に人間は生きているのだよ。」
「人間は、死んだら終わりじゃないってこと?」
「そうだよ、六道輪廻という仕組みで、この世は廻っておってな、この地獄を一番下として、地獄道、餓鬼道、畜生道、までの三道が、自分の意思ではどうにもできない魂の浄化の場所で、その次に、意思はあるが、怒りと嫉妬により争ってばかりいる修羅道があり、私達がいる執着による人間道がある、その中で、四苦八苦を乗り越え、自分の欲望を制して悟りを開いた者だけが、次の天界道へ行けるのだが、その先もまだあるということだよ!」
「その先とは、何があるのですか?」
光志郎は、聞きます。
「天界道へ行った者は、なに不自由なく好きなことを永遠にしながら暮らしていけるそうだが、まれに、争いの多い人間界を不敏に思い、わざわざ、戻ってこられるのだよ、その時は、せっかくの神通力も豊富な知識も忘れて、魂の思いだけで産まれてくるそうだ。……どうやら、陀来僧侶様が、その一人のようなのだよ!」
「産まれながらに、使命を持っているということですか?」
「時代の変わり目に大きく影響を与えた、キリストやブッダ等の偉人は、天界道から戻ってきた人だと思います。……そうやって、さらなる修業をすることにより、悟りの遥か先にある仏の世界へ行くのでしょうね。」
「何か、果てし無い話のようで、リサには、あまりピンとこないのよね?」
「リサちゃんもゲームをしたりアニメを見たりするでしょ、それと同じで、現実の人間界も疑似体験だということ、とてもリアルではあるけれどね!……ようは、どこの世界でも体験を通してしか魂を育てられないということかな、……現実での肉体はゲームでいうプログラムの制限みたいなもので、魂が磨かれれば磨かれるほど制限がなくなり自由度が増すということだよ!」
「う~ん、……なんか、オカルトみたいで、騙されてる感じもしない気がするけど、リサは、お姉さまがいれば、それで幸せだから、いいや!」
「さぁ、閻魔が居るという、炎の城へ行きましょう!」
ポタラを先頭に、四人は炎の城へ向かいます。
燃え盛る炎で、真っ赤に焼けている城の前にきます。
「すごい炎に包まれているわよ、こんなところに本当に入っていっても大丈夫ですか?」
ルンバが聞きます。
「心頭滅却すれば火もまた涼しですよ!……見せかけに惑わされてはいけません。………私達は、試されています。……ルンバさんが、恐れればリサまで怖がりますよ!」
「そうでしたね。……大丈夫、………リサちゃん、大丈夫だからね!」
「お姉さま、リサ、何だか慣れちゃったみたい、こんな炎なんか、へっちゃらよ!」
リサは、ニッコリ微笑みながらルンバにすり寄ります。
四人は、覚悟を決めて、燃え盛る炎の中へ入って行きました。
城の中へ入ると、目の前に真っ赤な顔をした大きな人が立っています。
「いゃ~、待っていたよ!……事情は聞いているから、わかっているよ。…人間界の魂のバランスが偏りだして、今にも、地獄とかわらなくなりそうなのだろう、……それで、直接、全ての人の魂へ語りかけ、考え方を改めさせられる仏教の秘宝を取りに来たわけだな!」
「はい、その通りです。…それで、仏教の秘宝は何処にあるのですか?」
「残念ながら、ここには無いのだよ。…ここより、遥か北にある魔界の城に隠してあるのだ。」
「その魔界の城へ、取りに行けばいいのですか?」
「まぁ、そうだが、……あそこには、魔女ダッキーニと魔界竜ヴリトラが居るからな、……あいつらは、とにかく邪悪な存在でな、力ずくで倒すしかないだろう!」
「わかりました、行くしかありません!」
「そうか、くれぐれも、心惑わされぬようにな、魔女ダッキーニは、幻術をつかってくるからな。……ヴリトラは、とにかく強い、無敵の障壁だからな。……お主らの魂を試されているのだよ、それぐらい、仏教の秘宝は、この六道輪廻の世界に影響を与えるということなのだ!」
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光志郎は、目前にひろがる光景に呆気にとられています。
「ポタラさん、魔界の城へ向かってきたはいいが、この剣の山をどう越えて行きましょうか?」
光志郎の背丈を越える剣が隙間なく、山の斜面にそってはえている。
「そうだね~……そろそろ、君も、守護神である孔雀明王の力を借りたらどうかね?………孔雀明王なら、翼をはやして飛べるのだがね。」
「しかし、僕は、何も修業をしていませんが、ポタラさんのようにできるのでしょうか?」
「何も、寺で過ごすだけが修業でもあるまい、君を見ていると私以上にさまざまな経験をしているようだよ!」
「まずは試しだと思って、孔雀明王のマントラを唱えながら翼をイメージしてみなさい。」
「はい、では、やってみます。…………オン マユラ キランディ ソワカ!」
光志郎は、自分の背中に翼をイメージして唱えます。
「お姉さま、おっさんの背中に……羽がはえてきている。……すごい、……」
「光志郎君、すごいわ!」
光志郎の背中には、七色に輝く翼が現れました。
「ほら、出来たでしょ!」
ポタラは、当然のようにいいました。
「さぁ、今の君なら、こんな剣の山等ひとっ飛びですよ、……行きますよ!」
「ルンバちゃん、リサちゃん、さぁ、行くよ!」
光志郎は、ルンバとリサを両手に抱えて飛びたちます。
「すごい、光志郎君、本当に飛んでるわよ!」
剣の山を下方に見ながら、ルンバはいいます。
「何だか、なんでも出来る気がしてくるね!……いままで僕は、全てが現実なのに勝手に限界を決めていただけなのかもしれないね!」
光志郎は、興奮する自分を冷静に感じとりながら、新しく開けた世界を分析します。
「光志郎君、剣の山を越えたら、次は氷の城壁のようだよ!」
ポタラは、300メートルはありそうな極寒の城壁に近づいて行きます。
「炎の次は氷ですか、本当に地獄は過酷ですね!」
吹き付けるブリザードのなかをかき分け、城壁に近づきます。
「わぁ、……人が、氷付けになってる!………気持ち悪い!」
リサは、氷の城壁に閉じ込められながら訴えかけてくる視線から目を剃らそうとしますが、余計に釘付けになります。
「リサちゃん、あの人たちは、地獄に来てまでも魔界に心を奪われた者だよ、これから行く魔界の城には、この人たちを捕らえている魔者がいる、心を奪われないようにルンバちゃんと必ず一緒にいるんだよ!」
光志郎は、リサを励ましながら氷の城壁沿いに上昇して乗り越えます。
城壁を越えた先には、静寂のなかにそびえ立つ氷の城がありました。
氷の城の前に一人の人影が立っています。
長い黒髪を腰までたらし、大胆に胸元が開いた真っ黒なドレスが、透き通るような真っ白な肌を引き立てています。
青い瞳に真っ赤な唇、鼻筋の通った顔が妖艶な微笑みを浮かべています。
なぜか、左手に真っ白なドクロをもっているのが、この女を更に異様際立たせています。
「さぁ、早く、いらっしゃい。」
女は、氷の城壁を越え、こちらに向かって来ている光志郎たちを見て、怪しく微笑みます。
「光志郎君、扉の前にいる女は、魔女ダッキーニだろう?……幻術に惑わされないように気をつけるんだよ!」
「そうですね、ポタラさんも気をつけて!」
光志郎は、念のため、平常心を保つために、ベッチ所長から習った方法で自分に暗示を掛けます。
光志郎の前に、妖艶な微笑みを浮かべた魔女ダッキーニが立っています。
ダッキーニの透き通った青い瞳が、光志郎たちの視線を捕らえます。
「みなさん、お待ちしておりましたよ。…さぁ、中へどうぞ。」
光志郎たちは、魔女ダッキーニの案内で、氷の城の中へ入って行きます。
「うわぁ、暖かい……外とは大違いね!」
リサが、喜びの声をあげます。
「お食事を用意致しました。…お召し上がりなさい!」
ダッキーニは、豪華な料理が並んだテーブルへ案内します。
「美味しそう!……いただきま~す!」
料理に手をだし食べようとするリサをルンバが手をふさいで止めます。
「リサちゃん、ダメよ。」
ルンバの視線に、リサはしぶしぶ頷きます。
「まぁ、…お嬢さん、遠慮は無用ですよ。…長旅で、さぞお疲れでしょう、ごゆっくりなさって!」
ダッキーニは、ルンバに近づき甘く囁きます。
「いえ、結構です!」
ルンバは、リサを引き寄せ、自分が前にでます。
「そうですか、……そちらの僧侶さんは、お召し上がりになりますよね?」
ダッキーニは、ポタラに歩み寄ります。
「あいにく、断食しておりまして、お断りさせていただきます。……それよりも、先を通させてもらえませんか?」
「この先には、魔界竜ヴリトラが居るだけよ、あれは危険極まりない乱暴者ですので、おすすめしませんわ、…それよりも、私と一緒に遊びましょう?」
ダッキーニは、ポタラの胸元に触れ、自然に近寄ります。
ポタラの鼻腔を、甘く切ない女の色香がくすぐります。
「さぁ、いらっしゃい、……一緒に楽しみましょう。」
ダッキーニは、ポタラの手をとりソファーに座ります。
光志郎は、独り、たたずんでいます。
「あなたは、何がほしいの?……なんでも、望みのままよ!……さぁ、いってごらんなさい。」
ダッキーニは、光志郎の耳もとで甘く囁きます。
「何もいりません、……僕が、望むのは、世界中が愛と平和を取り戻し満たされることだけです。」
「そう、……つまらないことをいうのね?……他人は、勝手にやりたいことをして生きているだけよ、誰もが自己満足の為に生きているのではなくて?」
「そうかもしれません、……ですが、この世には個人の欲望以上に大切なことがあると思います。」
「なぜ、そう言い切れるの?……あなたが言っていること事態が、他人にとっては傲慢なおせっかいなのではなくて?」
「愛と平和とは、人の心と同じで、必ずしも定義づけ出来ないものだと思います。………だからこそ、理由がなくても自分がそう思うだけで成り立つのだと思います。」
「そんな根拠のない不確かなことを、時代遅れではないのかしら?」
「確かにこの科学の時代に、正しく説明できないことに意味は無いのかもしれません。……ただし、正しいとはそれほど大切なことなのでしょうか?……僕たち人間は自然の一部であり生命の成れの果てでは無いのでしょうか?……むしろ、曖昧であるがゆえに柔軟に形を変え、これほどまでの多様性を生み出したのだと思います。」
「ほぉ~、面白いことをいいだすわね……まぁいいわ、いつまでも付き合いましょう……時間はたっぷりありますからね!」
光志郎は、自分の手のひらを見ます。
「あれ、おかしいなぁ……手相がはっきりと見えないのだが?」
いつもなら見慣れた自分の手相があるはずの場所がぼやけて見えません。
「どうしたのかしら?……もっと話の続きをしましょう、黙っていては退屈で仕方が無いではなくて?」
ダッキーニは、光志郎の異変に気づき話に戻そうとします。
「いつからなのですか?」
「なんのこと?」
「あらかじめ、あなたに会う前に、幻術にかかった時の為に自分の手相を確認できるかという暗示を掛けておいたのです。……それが、ぼやけて見えません…今、僕は幻術にかかっているということですよね!」
光志郎は、自分を取り戻そうと目をつむり自分の内面に意識を集中します。
光志郎が目を開けると、先ほどまでの暖かな料理は消えて、テーブルも床も全てが氷で形作られている部屋が現れます。
ポタラは、氷のソファーにくつろぎ、リサは、氷のテーブルを物欲しげに見つめています。
「ダッキーニさん、もっと素直になったらどうですか?…貴女には、寛容性が足りないようですね!」
光志郎は、改めてダッキーニにと向き合います。
「あら、生意気なことをいうのね?……少しばかり幻術を見破ったからといって、まだまだよ!」
ダッキーニは、もう一度光志郎の目を青い瞳で見つめます。
「無駄ですよ、……貴女の幻術は、人の心の矛盾をついてきているようですね。………残念ながら、僕の心は曖昧ゆえに、全てを内包します。……あって当然の当たり前のことに矛盾も何も無いのですよ!……貴女こそ、どうなのですか?」
光志郎は、ダッキーニの意識に思念をあわせます。
「まぁ、憎たらしい小僧だこと、私の中に入って来ないで!」
ダッキーニは、自分の意識を見られまいと抵抗します。
「貴女が、左手に抱えているドクロは、貴女にとって大切な人だったようですね!……以前の貴女は、慈悲深い愛に満ちた存在だった。……大切な人がいなくなり、あまりの悲しみの為に心を閉ざした。……氷のように冷えきり暖かな心に悲願でいるのは何故ですか?」
光志郎は、嫌がるダッキーニに更に詰め寄ります。
「心に矛盾を抱えて苦しんでいるのは、貴女自身では無いのですか?」
ダッキーニは、いとしそうにドクロを抱きしめうなだれます。
「さぁ、いつまでも、冷たく硬い氷の世界に閉じ込めていないで、心を解放しましょう!……悲しみは嫉妬しか生まないのでは?……ドクロの彼も、貴女の幸せを望んでいるのでは無いのですか?……僕たちと一緒に次へ行きましょう!」
光志郎は、ダッキーニの青い瞳を見つめ返します。
「分かったわ、どうぞ仲間を連れて先に行きなさい!……ヴリトラにはあなたの不思議な能力は通じないでしょうが?」
「さぁ、ポタラさん、ルンバちゃん、リサちゃん、起きて!……先に行きますよ!」
区切りのついた所で、今回は、ここまで!
う~ん、なかなか終わりません。
次回で終わるのか?
はたして、ヴリトラと、どうなるのか?
それは、次回のお楽しみ!