とある新月の夜
ススキが生い茂る川原に大勢の人々が集まっている
フンドシにサラシをまいた男たちの中心にいる青白い顔の男が言う
「さっさと喰ってくれんかな?退屈しのぎにもならんわ!」
男たちは死にもの狂いでおそいかかる
「我が身を喰らえば、願いがかなうぞ」
ヒラリとかわす青白い顔の男
「夢、幻のごとく、世界は反転し、異世界の扉が開くぞ」
「我の名は、月光無情!喰えぬのならカエルがよい」
「このアホウどもが、コトバすら持たぬやつらよ」
「ナゼに、私を呼び覚ますのか?」
アクビをひとつするごとに人々を眠りに誘う
「ほら、早く我を喰らわねば、お前らの魂が消えるぞ!」
人々は亡者のごとくに絡みつこうと押し寄せる
アクビを、また、ひとつ
「ほら、また、消えたぞ」
目覚めることのない眠りに誘う
無知なる者どもよ、ナニを求める
それすらも解らないままに
ススキが生い茂る川原に雨がふりだす
「ほら、雨だ?アホウどもには解るまい」
フンドシにサラシをまいた男たちの中心で青白い顔の男が言う
「我が名は、月光無情!お前の名は?」
男たちは無言のまま青白い男を喰おうと追いかける
「まだ、気づかんな?消えてカエレ」
水しぶきが湯気となり、男たちからたちこめている
「こりぬやつらよ、ほら、カエレ」
青白い男のアクビが数をます
「ほら、雨が強くなってきたぞ、どうした、あきらめるか?」
雷鳴がとどろき、川の水量がまして流れが速くなる
「ほら、気をつけろ!アホウのままで流れにのまれれば、どこにもカエレなくなるぞ」
数名の男たちが流されていく
「自身もしらぬアホウよ、まだ解らぬか?」
青白い男は、ひときわ大きなアクビをする
「そろそろ、シオドキにしようか?」
いっきにフンドシにサラシをまいた男たちが眠りにつく
あたりが静まりかえり、雨の音がひびきわたる
「やれやれ、今回も無駄あがきだったか?」
ため息をついている青白い顔の男の上から声がする
「おい」
青白い男が視線を上げると、大木の上に人影をみつける
「なんじゃ、まだ、いたのか?……そんなところで何をしている、願いをかなえたくはないのか?」
青白い顔の男が笑いながら言う
「何って、喰らう前に、近付いたらアクビで眠らされるだろ?」
木の上の男が言う
「お前は話せるようだな………アホウじゃなければよいが?」
青白い顔の男が言う
「アホウかどうかは知らんが、自分の名前だけならわかるぞ」
木の上の男が言う
「そおか、名前がわかれば十分じゃ……我の名は月光無情!………お前の名は?」
「俺の名は、B!」
木の上の男が言う
「そうか、…Bか、…ワシを喰うか?」
月光無情が言う
「べつに願いなどないから、いいや!」
Bが言う
「ならば、川の流れにまかせて生きるとよいぞ………お前なら生まれることができるであろう」
終り
とくにありません。
たまたま、思いついた話であります。