子宝さんの、おもうてたんと違うんだけど   作:ミレニアムいたっちー

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リアルでは、真夏なのに、なっ!


おもうてたより、冬の訪れが早いんですけど

肌寒さを覚え始める11月のとある日曜日。

いつもならまったりのんびりと過ごしてる所なのだが、今日というその日は本格的な冬支度をしていた。朝から洗濯したり掃除したり布団干したりと大忙しだ。一通りそれらが終わった今は俺が衣服の衣替えして、高虎はコタツとかストーブとか用意してる所だ。

 

「高虎ー、これまだ着るー?」

 

最近よく着てる半袖のシャツを持って畳部屋に行くと、高虎が電気マットを敷いていた。電気マットはいつも高虎の部屋で見てたやつで、何だかいつもの畳部屋が高虎に占領された気分になる。

 

「・・・・どうした?」

 

じっとその光景を見てると、いつの間にか高虎が怪訝そうにこっちを見ていた。

 

「俺の陣地は何処だ。まさか貴様っ、コタツからオレを追い出すつもりではなかろうな!!」

「いや、なんでそうなる。好きな所に居れば良いだろ」

「じゃぁ、オレ窓側が指定位置な!!」

 

とうっ、と陣地を制圧。

高虎に見せつけてやれば呆れたな顔をした。

なんだよぉ。

 

「まだ用意してる途中なんだが・・・」

「見てれば分かる」

「というか、俺のTシャツ持って転がるな。それしまうやつだろ。折角洗濯したのに、お前」

 

敷立てのそれの上でコロコロすると、敷かれた電気マットの微妙な臭いが鼻についた。スンスンと嗅いでみる。ふむふむ。これは押し入れに押し込まれてた物の臭いだ。間違いない。小さい頃、高虎の家で隠れんぼとかして押し入れに入ると、いつもこんな臭いがしたものだ。というか、高虎の家の臭いがする。

 

「高虎ん家の臭いがする・・・・やはり占領する気か。古来より生き物は臭いで縄張りのアピールをするというし・・・・やらせはせん!やらせはせんぞ!」

「何かの物真似か?悪いんだが、アニメだと俺は分からないぞ。そんなに嫌なら新しいのでも買ってくるか?」

 

軽々しい提案に俺のオツムはぷっつんきた。

日頃から節制を心掛け、小まめに電気消したり、シャワー出しっぱなしにしないようにしたり、出来る限り特売とかセールに買い物行ってるのをなんだと思ってんだ!隣にいて見てるだろうに、こいつぅ!何も気にしないやつか!いや、そりゃ、節約の為とはいっても基本近所のスーパーしか行かないけども!でもだ!でも!ちゃんとチラシとかネットとかで調べて、安い日狙って買い物行ってるのにぃ!!ポイントだって貯めてるのにぃ!この野郎ぅ!!

 

「なに言ってんだ!勿体ない!使える内は電線が見えたって使うんだよ!お金は生えてこないんだからな!」

「お、おう。そうだな、思いつきで言って悪かった。でも電線見えるまでは止めような。感電する。適当なタイミングで買い直そうな?」

「それなら良いけど・・・・ふぅ、まったく。高虎は俺がいないと駄目だな。いつまでも学生気分で」

「・・・・すまん。━━━いや、待て、俺はまだ学生なんだが」

 

なんかブツブツ言ってくる高虎は無視して、俺は取り敢えずその懐かしい臭いを嗅ぎ直す事にする。やっぱり高虎ん家の臭いがする。となると、高虎臭というより藤崎臭といった方が良いのか?臭いを嗅いでるとふと、手元のTシャツが目についた。顔に近づけて臭いを嗅いでみれば、心地よい石鹸のいい香りがする。元々俺の実家でよく使ってた洗剤と同じやつを使ってるから嗅ぎ慣れたやつなんだけど・・・よくよく嗅いでると実家とは違う臭いが混ざってる事に気づいた。

 

「?」

 

いやな訳ではないけど、なんだろうか?

何となしに今着てるパーカーの袖の臭いを嗅いでみれば、Tシャツと似たような臭いがする。む?俺の臭い?でも高虎っぽい気がする?かな?む?洗濯物一緒にしてるせいか?

 

「・・・・ゆたか、勘弁してくれ」

 

声に顔をあげると顔を掌で覆う高虎がいた。

指の隙間から見える顔は真っ赤で、最初は不思議に思ったのだが手元のTシャツを見てハッとした。こいつの目の前で臭い嗅いでたっ!と。

 

「これはっ、違うからな!あれだ、確認してただけだ!変な臭いがしたから!」

「へ、変な臭いっ・・・・!?わ、悪い。今度から気をつける」

「はっ!?いや、違うっ、変な臭いというか、そうじゃなくてな!?あれだ、マットは高虎のだろ!?だから、同じ臭いかと思ったんだけど、なんか違うから、その確認というか━━━大丈夫!俺のパーカーも似たような臭いだったから!」

 

そう教えると高虎が背中を向けた。

なんかプルプルしてる。

オコか?!オコなの!?震える程にオコなの!?

 

高虎が怒るなんて早々ない。そして早々ないそれは、とてつもなく恐いものだ。前に俺がぼーっとしてて車に轢かれかけた時とか、鬼のように怒られた覚えがある。あの時はマジで恐かった。金玉ないけど、金玉が縮みあがる思いだったもの。

 

「ごっ、ごめんってば。変な臭いじゃないから・・・」

「・・・いや、分かった。それは。怒ってはないから気にするな、大丈夫だ」

「そうなのか?本当に?」

「本当だ」

 

そう聞くと高虎は何度か深呼吸してからこっちを向いた。顔の赤みは少し残ってたけど、危惧していた眉はつり上がってない。本当にオコではないみたいだ。

 

「━━━━━はぁ。ほら、そろそろそこをどいてくれ。コタツ組み立てるから。コタツでミカンやるんだろ?」

「うん、まぁ。でもミカンは12月入ってから良いかなぁ。今はおコタ入ってゲームしたい気分」

「なんの拘りだ」

 

苦笑する高虎を見ながら、邪魔にならないようにマットから出た。高虎はマットの上に端に寄せておいたテーブルを置いた。それからテーブルについた電気コードをコンセントに指して、試しで何度か電源をオンオフする。壊れていなかったみたいでコタツは電源を入れる度にブォンブォンと音を立てながらオレンジ色に光った。

そこに干しておいた毛布と掛け布団を掛けて、テーブルの板を上に乗せて完成だ。

 

早速入ってみたくて高虎に視線を送ると、「良いぞ」と微笑を浮かべながら頷いてくれる。お言葉に甘えて定位置に足を滑らせれば、さっきまでの俺の体温が残ってたのかヌクッとしてる。スイッチを入れればブォンという音がなって、じんわりと足が温まる感覚がやってきた。

これこれ、これだよな。

 

冷たいテーブルに顔を預け目を閉じる。

まだぬるいけど、これだけでも寝れちゃいそうなくらい心地良い。ちょっとテーブルが固かったので、側においてあったいつも使ってるクッションを挟む。これで良し。

 

ぼやーっとしてるとコタツにひんやりとした風が入り込んできた。視線を前にむけると、高虎が同じようにコタツに入ってきてるのが見えた。

 

「この所急に寒くなってきたからな・・・・」

「だよなぁー。ちょっと前まで暑かったくらいなのに・・・あっ、そうだ。今夜はお鍋にするか。お肉鍋。白菜と豚肉が一杯入ったやつ。ほら、ギュウギュウに詰まったやつだよ。テレビでやってたろ」

「あぁ、そんなCMあったな。じゃ白菜買ってこないとな・・・豚肉もそんなに無かったろ」

 

それから少し二人でのんびりしてから、改めて残ってる衣替えを開始。買い物にもいかないといけないので、隠し燃料に火をつけて超特急で片付ける。わたたたたた!わたぁ!的な。まぁ結局、途中からストーブの用意を済ませた高虎に手伝って貰ったけど。

それくらいはね、うん。

 

 

 

 

 

本格的な衣替えも終わり、俺達は駅前の大きい方のスーパーに出掛けた。チラシを調べた結果、特別セールとかはやってないけれど、まぁこの出費は仕方ないので気にしない。家計簿にはしっかり書くけど・・・それだけの事だ。大切なのは無駄遣いしない事で、こういうのは無駄遣いとは言わないからな。

 

いつものようにカートを押しながら野菜エリアから見にいくと、お目当ての白菜を見つけた。ちょっとお値段は高いけど、キャベツとかレタスで代用なんてもっての他なので買うことに変更はなし。出来るだけ大きな物を選んで、それを手に取って見てみる。ふむ、いい白菜ですね。

 

「こっちのが大きいぞ?」

「なぬ!そんな馬鹿な、俺の目に狂いがあるとでも言うのか!」

「いや、別に狂ってるとは思わないが・・・ほら、試しに持ってみろ」

 

手渡されたそれをしっかり比べてみれば、微妙に高虎が選んだやつの方が重い気がする。でも微妙にだ。そんな持って比べないと分からないレベル。いや、持ってても気づくか気づかないかレベル。よって悔しくはない。誤差だ、こんなのは。

 

「俺の方を買いま・・・・・高虎のっ、方を、買いま、す・・・・!くっ!」

「どれだけ悔しいんだ」

「お前には分かるまいよ!この気持ちは!」

「まぁ、分からないが・・・・」

 

白菜を買い物袋カゴに入れたら、他の野菜も見て回る。それでシイタケとかネギとかニンジンとかも選んでカゴの中へ。ショウガは家にあるから買わない。そんなカゴに詰まった野菜を見た高虎は首を傾げながら「白菜と豚肉だけじゃないのか?」と呟いてくる。そういう鍋もあるけど、今回は他の野菜も入れる鍋なので問題ない事を伝えれば「そうなのか」と納得してくれた。というか、白菜と豚肉だけとか飽きるだろ。ん?それとも飽きないのか?いや、俺が飽きるしな。じゃ、やっぱり駄目だ。

 

お野菜の次は豚肉。

いつもはパックで並んでる外国産ものだけど、今日は態々スーパーの中にある切り売りしてくれるお肉屋さんで買うことにする。グラム数を言って買う、ちょっと贅沢なあれだ。

 

買う物を選んでるとお店のおじさんが話掛けてきた。少し緊張したものの鍋の話をすれば、おじさんがオススメの豚肉を教えてくれる。300グラムで二千円近いお値段だったのでちょっと腰が引けたけど、ちょっとおまけもしてくれると言うのでそれを購入する事にした。

 

お肉屋さんを離れて少し、高虎が肩をちょんちょんとつついてきた。どうしたのかと思って振り返れば、カゴの中をじっと見つめてる。

 

「・・・・良いのか?節約は」

「良いんだよ。こういう時の為に頑張って節約してるんだから。貯金分はちゃんと分けてるし。今日の高虎は沢山力仕事したからな、一杯食べて良いからな?」

「・・・・・ゆたか、帰ったら抱き締めても良いか?」

「おふっ!?なんでいきなり!?いや、まぁ、最近はしてないし・・・・・べ、別に、い、良いけど?」

 

そう口にすると高虎が目を丸くした。

普段どちらかと言えば細くて鋭い目付きが、随分と見開いて間の抜けた顔になってる。思わず笑ってしまうと、高虎が少し困ったように笑う。

 

「・・・ありがとうな、でも無理はしなくて良い」

 

それだけ言うと高虎は俺の手からカートを奪って前を歩き始めた。別に無理してる訳じゃないんだけどな・・・いや、心臓がバクバクしてるけどさ。

 

相変わらず大きい背中を追って歩くこと少し、人で賑わうレジについた。時間帯的に混むのは分かってたけど思ったより並んでない様子。列に並んで高虎と鍋の話をしながら待ってればあっという間に順番がきた。

レジの店員さんはベテランの人だったみたいで、商品が電子音と共にどんどんレジを通っていく。お会計の値段が出た所で、高虎に商品が入ったカゴとエコバッグを渡し俺は財布を開いた。・・・いつもより金額が大きくて、ちょっと泣きそうになったのは秘密にしようと思う。あっ、すいません。十円あります。

 

 

 

 

 

買い物から帰って直ぐ、高虎と鍋の準備を始める。

コンロとかの用意は高虎に任せ、俺は野菜を洗ってさっさと切り分けてく。白菜はまだ切らない。白菜は一枚ずつ葉っぱを剥がして使うからだ。洗った葉っぱとお肉は交互に挟んでいってミルフィーユ的にする。お肉からはみ出た部分の白菜は切り落として、綺麗になったそれを鍋のフチにそって敷き詰めてく。うん、いいね。

切り落とした白菜は他の野菜と一緒にど真ん中に設置。見栄え的に他にないしね。個人的には白滝とかマロ●ーちゃん入れたいけど、この鍋だと違う気がするので止めといた。

 

水と醤油、鰹だしを混ぜた物を適量入れて火を掛ける。グツグツいい始めたら蓋をして少し待つ。豚肉はしっかり火を通さないと危ないからな。

 

鍋の様子を見ながら待ってると、高虎が台所に顔を出した。

 

「カセットコンロな、一応使えるがあんまりガスが残ってないみたいだ。買ってくるか?」

「んー?良いだろ、余ってるだけで。そんなに頻繁に使わないし、冷めたの温めるくらいだし、足りる足りる」

「そうか」

 

そう言うと高虎は俺の隣に立った。

いつもみたいに大人しくリビングで待ってれば良いのに、なんか隣でじっと鍋を見つめてる。たまにこっちを見てくるけど、何も言わない。

 

「どうした?」

「・・・・・・後、どれぐらいだ?」

「もう出来るから待ってろよ。なんだよ、もう腹減ったのか?」

「いや、それも、あるんだけどな・・・」

 

高虎は何処かソワソワしながらそっぽを向く。

最初は不思議に思ったけど、思えば帰り道もこんなだった。やたらとこっちを見てきて、視線を向けると『何でもない』って態々言ってくるのだ。気になって仕方なかった。どうしたのかと本格的に考えると、もしかしたらとそれが思いついた。ぽそっと高虎が言った事が。

 

「高虎。さっきもいったけど、別に良いぞ」

「あっ、すまない。聞いてなかった。なんの話━━」

 

じっと隣にいる高虎を見上げれば、俺が何を言ってるのか分かったみたいで高虎の喉が唾を飲み込むみたいに動く。目が獣みたいになってるのが少し恐いけど、高虎なら俺の嫌な事しないって信じてるし。それに━━━。

 

「あんまり、強いのはやだからな?」

 

━━━それに、俺も高虎にぎゅっとされるのは好きだから。

 

俺の言葉を聞いて高虎が後ろから腕を回してきて、そのままぎゅっと抱き締めてくる。心臓はバクバクとうるさくて、手汗とかも凄い事になって、顔も熱くて仕方ない。だけど、その温もりは全然嫌じゃなくて、何処か安心出来た。

 

「・・・もう少し、強くても良いぞ」

「そ、そうなのか?いつも、こんなもんだったと思うんだが・・・」

「良いの、今日はな」

「そう、そうか・・・分かった」

 

ぎゅぅっと、抱き締める力が強くなった。

それでも壊れ物を扱うみたいに優しい力加減だけど。

それは何だか余計に恥ずかしくて、でも何故か嬉しくて頬が緩んでしまう。

 

それから鍋がちゃんと煮えるまで、高虎と一緒に鍋の様子を見た。ぎゅっとされながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高虎ーー」

「・・・なんだ」

「呼んだだけーーへへへ」

「・・・・本当に勘弁してくれ」

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