子宝さんの、おもうてたんと違うんだけど 作:ミレニアムいたっちー
今ではないが( ・ω・)y━~~
物心がつく頃、オレは前世の事を唐突に思い出した。
丁度高虎と公園でダンゴムシを転がして遊んでいた時で、スババババヒューーン的にかつての自分の記憶が頭に入り込んできて頭痛が発生。あまりの苦しさに高虎へベンザブロッ●を要求したのだが、救急車呼ばれてしまったのは良い思い出だ。あの時は大変だった。
前世のオレは男だった。
覚えてる限りだと名前こそ分からないが、何処にでもいそうな高校生くらいの思春期男子だったらしい。彼女はいないし、朝起こしに来てくれる美少女幼馴染も、妙に若い義理の母も、甘やかしてくれる義理の姉も、ツンデレなだけで実はお兄ちゃん大好きな義理の妹もいない普通の家庭の普通の男の子。・・・まぁ、仮にそんな者がいたとしても、趣味がかなり強めのサブカル系だったので、先は無かったろうなとは思うが。
日曜日の朝から児童むけのアニメみてたり、ゲームのキャラを嫁と呼んだりしてたら、そらあかんですよね。
そんなオレは今世、普通にきゃわいい女の子だ。
名前は子宝ゆたか。マザーのお可愛い顔と艶々な黒髪、パピーのキラキラした青目と白い肌を持って生まれた清楚さとイケイケさが融合したハーフ系女子である。
皆も分かるだろうが、オレはモテた。
幼稚園の頃からモテた。めちゃモテだった。
だってそうだろう?ブルーアイズホワイト大和撫子なんだよ?そらモテるよ。艶々の黒髪、おめめはぱっちりサファイアブルーなんだから当然だよね。
何故か男子より女子人気のが強かったけど・・・おかしいなぁ。
小学校に入ってからは下駄箱に手紙が入ってるなんてことよくあった。高虎にはよく自慢したものだ。
まぁ、半分は女子からのラブレターで、半分は男子からの果たし状だったけど・・・高虎にはよく爆笑されたなぁ。
そんなある意味モテモテだったオレだが、誰かと付き合った事は一度もない。というのも、気持ち的に微妙だったのだ。元の記憶があるせいで男を恋愛的に好きになれないし、今世女である事も自覚してるし受け入れているから女の子も恋愛的に好きになれなかった。TSものではよくガールズラブに発展してる話があるけど、あれはあれで相当気合い入ってないと出来ない事なのだ。世間体って一番のハードルだしね。創作物は創作物ということなんだろう。
それで色々と踏ん切りつかなかったオレは一生フリー宣言をしたのだが━━━━それが良くなかった。その言葉が変に両親を刺激してしまっていたのだ。
結果、運命の大学入試を綺麗さっぱり全て落ちたオレに両親が突きつけてきたのが「旦那用意してやるから結婚しろ」という一言であった。
当然拒否った、全力で拒否った。
今風に無理ポヨと叫んでおいた。
けれどマザーは「こんな馬鹿大学に落ちといて、選択肢があると思うな!!馬鹿娘!!見守りタイムは終わったわ!!戯け!」とこれを一蹴。大体味方になってくれるパピーも凄い優しい顔で「素敵ナボーイヲ紹介スルヨ。安心シテ、マイプリンセス」と敵対宣言。
抵抗虚しく捕らわれ、お見合い祭り開催まで残り僅かとなった所で、『お祖父ちゃん家に逃亡計画』の相談に乗ってくれていた高虎が言ってきた。
「なら、俺の嫁になるか?」と。
高虎にはオレの前世の話をしてる。初めて話した時はポカンとしてたが、今ではすっかり一番の理解者で色んな面で助けて貰っていた過去があった。
だからその時は事情を知って親友として助けてくれようとしてるのだと考えた。高虎にバツ一つつけてしまう結果がくるかも知れないのは申し訳ないと一瞬思ったけど、ありがてーと一つ返事で頷いて茶色い紙にスポポーンと判子を押した。これでひとまず時間は稼げる!なんて思いながら。
だから・・・・だから、まさか、高虎がオレの事、マジにラブだとは思わなかった。
そんなオレは現在、高虎とさんえるでーけーのマンションで二人暮らしをしてる。高校を卒業すると同時に実家を出る高虎についていく形でお引っ越ししたのだ。高虎の好意に気づく前だった事もあって「別に別居でよくね?」とも思ってたけど、マザーがそこらへん煩かったし、高虎もそうするつもりだというのでそうした。
ん?さんえるでーけーなんてお高そうな所、学生の分際でどうにかなるのか?良いところに目をつけたな。君は。
そう、最初は高虎の財力にみあった普通の場所だった。
引っ越しを決めた当初、オレの引っ越し先は高虎が借りる予定だった一人暮らし用のワンルーム。でも流石に二人で生活するには狭いだろうと部屋を探し直していた所、事情を聞いたお祖父ちゃんが持ちマンションの一室を格安で貸してくれる事になったのである。
え?そうなのよ。自慢じゃないけど、家のお祖父ちゃんマンションとか普通に所有してる金持ちなんよ。未だになんの仕事してるのか分からないけど兎に角リッチーな人で、遊びいったらお小遣いくれるし、お年玉とかお祖父ちゃんだけで六桁とか当たり前だった。
よってお祖父ちゃん大好き。
高虎的にはお祖父ちゃんのマンションに住むのは嫌そうだったけど、お祖父ちゃんと二人きりで男の話し合いをした結果━━━高虎の方が折れてマンションに住む事になって今に至る訳だ。
『次の新婚さーん、いらっしゃいませー』
「いらっしゃいませー」
洗濯物に太陽の光が降り注ぐ午後。
ソファーに寝そべりながら、落語家のおっちゃんが新婚さんをあの手この手で弄り倒すバラエティー番組をみていると、不意にチャイムが鳴った。
なんじゃろかとドアホンのモニターを覗けば、マンションの入り口の所で両手に買い物袋を提げた高虎の姿があった。なのでマイクのボタン押し声を掛けてみる。
「こちらHQ。どうした、タイガー01、おーばー」
『・・・・あー、こちらタイガー01。HQ、鍵を開けてくれると助かる。オーバー』
いつも高虎が鍵を置いてる所をみれば、キーチェーンのついたそれが目に入った。どうやら忘れていったらしい。家はオートロック様。出る時はスッと出れてしまうせいもあって、高虎はアホだからよくやるのだ。オレも本当にたまに忘れる。たまに。
「タイガー01、情けない限りだ。いつになったらお前はオートロックを理解するのか?減俸だ、おーばー」
『そっくりそのまま返す、HQ。ゴミ出しにいって部屋に戻れなくなる事八回、忘れたとは言わさないぞ。オーバー』
「・・・小さい事を気にする男は嫌われるぞ。オレは嫌いだ、おーばー」
『そろそろ開けてくれ、腕がきつい』
ボタン操作で鍵を開けてやれば『助かった』と一言いって高虎はカメラの端に消えていった。
玄関で少し待っているとドアがノックされる。スコープを覗いてみれば高虎の仏頂面があった。
「合言葉をいえ」
ドア越しにそっと囁く、本物であれば言える筈だ。
しかし返ってきたのは静寂。
もしや偽物・・・・!!おのれ本物の高虎を何処にやったのか!許せぬ!
「子宝ゆたか、高三年の時の全国模試の順位は━━」
「よっし!!本物だな!さぁ入れ!」
「一応、羞恥心はあったんだな」
順位はいけない。
それだけはいけない。
風邪で調子が悪くて仕方ない所はあるけど━━━だからといって言っていいものではない。
お口チャックだ、高虎よ。
高虎の荷物を半分持ってやって部屋に戻り、買ってきた物で冷蔵庫に入れなきゃいけない物をしまってく。
小さい事かも知れないけど、この作業も大分様になってきたと自画自賛である。初めの頃は何処にしまうか悩んで冷蔵庫の兄貴から「はよ閉めろや!」と言わんばかりピーピー鳴られたものだが、もうそんな事はない。いまやロボットのように正確に的確に迅速にしまえる。
「ゆたか、それは冷凍庫に入れてくれ」
「知ってるしー!」
「じゃぁ、最初から入れてくれ」
高虎のイヤらしい注意を聞いていると、『ピーピー』という電子音が聞こえてきた。
勿論、冷蔵庫の兄貴からだ。
「あっ、な、鳴られた、だと!?高虎のせいだからな!謝れぇ!」
「?そうか、なんか悪かったな」
「違う、オレじゃない!兄貴に謝れ!」
そう言うと高虎は遠くを見る目になった。
「・・・・俺が育斗さんに謝ると、かなり面倒な事になると思うぞ。本気か?」
「そっちには謝らなくて良い。面倒だから。冷蔵庫の兄貴に謝れ」
「勝手に兄貴増やすな。育斗さんだけでも手に余ってるんだぞ」
・・・うん、そうな。
かなり面倒臭いシスコン野郎だからな、やつは。
冷蔵庫にしまい終えたらまた定位置に戻りテレビ観賞を再開。さっきみたいにソファーに寝転ぼうとしたけど、高虎が隣に座ってきたので大人しく抱き枕を抱いてデレーンと座っておく。
『旦那さんホンマかいなぁー』
「お前またこれ見てたのか・・・・面白いかこれ?というか、こんな時間までやってたか?」
椅子から転げ落ちる司会の人を見てたら、そんな事聞かれた。
改めて聞かれてもなんか困る。めちゃ面白れぇーとか思って見てる訳じゃないからだ。
「スペシャルらしいぞ。てか他に見るのないし?なんか見たいのあんなら良いぞ、チャンネル変えても。あっ、ゴルフは駄目だぞ。サッカーならまだ良いけど。ゴルフ見るなら、もうお前とはやってられない。離婚だ」
「重いな、見ただけで離婚か。まぁ、取り敢えず今はゴルフに興味はないな。一昨日録画した映画見たいんだが」
「あー、最後の方、ゴリラがでっかいトカゲ倒すやつな。キングゴリラのなんだっけか?」
「ああ。・・・・さらっとネタバレしたな、お前」
・・・・・ふむ。
優しいオレはリモコンをポチって『キングゴリラ骸骨島の巨猿』を再生してあげる。高虎の何か言いたげな視線が気になるが、それは放っておく。・・・・見ないで欲しい。わかった、ごめん。ごめんってば。謝るから。
反省を込めてCMスキップ係に就任したオレは高虎の隣でぼやーっと映画を眺めた。一回目はスマホ片手に見てたので結構見落しだらけだった。知らないシーンがいっぱいである。これもうほぼ初見じゃんね。
淡々とCMをスキップしてると、その内ふらっと立ち上がった高虎がお菓子を持ってきた。映画のお供ポップコーン先生である。飲み物も欲しいなーと思ってたらお茶のペットボトルとコップも持ってきてくれた。もっとも、炭酸の気分だったので褒めたりしないが。
「オレ、コーラ」
「太るぞ、お茶にしとけ」
「ぶぅぅぅぅぅぅ」
お茶やらお菓子の準備を終えると、高虎はソファーに座り手招きしてきた。股を大きく開いた様子にピンとくる。だってつい先週もやられたのだ。
「お前、またオレを抱き枕にするつもりだな。イヤだ!あつっ苦しい!」
「買い物代わりにいってやったろ」
気前よく行くなとは思ってたけど・・・・そういう事か。この野郎ぉ。
「・・・・しかたねぇな」
別に断っても良い。どうしてもと頼んだ訳じゃないんだから。ただ、ここで断ると今度買い物にいってくれなくなる可能性が出て来てしまう。基本的に家事担当はオレだから、それは必然自分の仕事を増やす事になってしまう。それはイヤだ。働きたくない、のんびりしたい。
だから、仕方なく、仕方なく座るのだ。
言われた通り股の間に腰掛け、高虎へ体重を掛ける。
するとヌイグルミが如くぎゅっと抱き締められた。
やっぱり暑苦しい。
「やってる俺が言うことじゃないんだが・・・・こういうの気持ち悪いとか思わないのか。俺は兎も角、お前からしたら同性に抱きつかれてる状況だろ?」
「ん?んーーーー暑苦しいからイヤだけど、別に気持ち悪いとかはないなぁ。・・・昔から一緒にいるし慣れだろ。ていうか、ちゅーしといてそれ言うか?どっちかって言ったらアレの方が違和感あるぞ」
「はは、まぁな。・・・・慣れか・・・・じゃぁ、育斗さんとこれ出来るか」
「止めろ、気持ち悪い」
兄貴とかマジ無理。オレの全鳥肌が立ち上がってしまうわ。
想像してゾクゾクしてるとさっきより強く抱き締められた。ちょっと苦しい。
「ちょっときついぞ。なんだよ?」
「いや、何でもない」
「???」
毎週毎週、こいつは良く飽きないもんだな。
そう思いながらオレはまた映画を眺め始めた。
時折流れるCMをスキップしながら。