子宝さんの、おもうてたんと違うんだけど   作:ミレニアムいたっちー

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シスコンとブラコンを間違えて表記していた。
そんな訳でブラコン展開を期待してるやつら、すまんな。あれは幻やと思ってや。


おもうてたより、シスコンの来襲が早かったんだけど『前編』

ドライブデート以外特に出掛けず、ダラダラっと過ごしたゴールデンウィークも終わり━━━迎えた5月の半ば。

 

朝から絶好のお洗濯日和なその日。

いつも通り弁当を押し付け高虎を見送った後、洗濯物を洗濯機にぶちこみ、寝室から重たい布団を抱えてベランダへと向かってると電話が鳴り響いた。魔王が降臨しそうな曲からマザーな事が分かる。

面倒に思いながらも何とかポケットからスマホを引き抜き、通話ボタンを押してから首の所に挟めばマザーの声が聞こえてきた。

 

「もーしもーし、マザー聞こえるー?」

『あっ、やっと出たわね。聞こえるわよ。なに、何かしているの?ガサガサうるさいけれど』

「布団干してるー」

『あら、ちゃんとやってるのね。そうね、今日は良い天気だものね。干しっぱなしにしないのよ、ちゃんと裏返すのよ。良いわね』

「分かってるってば、もう。てか、どーしたの?今日くる予定じゃないでしょ?」

『ええ、あのね、ちょっと前に━━━━』

 

布団を抱えつつベランダに辿り着いた頃。

首に挟んだスマホから聞き捨てならない単語を耳にした。

 

「━━━━はぁ?兄貴が?」

 

思わず出た言葉に電話越しから溜息が聞こえてくる。

 

『兄貴?お母さん耳が遠くなったのかしら?』

「お、お兄ちゃん」

『よろしい。さっき育斗が帰ってきたのよ。心配してたわよ?貴女、育斗に何も話してなかったのね。ちゃんと自分から伝えるように言ったのに、まったく』

 

その口振りから大体察したけど、一縷の望みを込めて、一応念のために、もしかしたらと思って聞いてみた。

 

「マザー、えっと・・・・・・教えたの?」

『そりゃ教えるでしょう。家族なんだから。そろそろつく頃だと思って━━━━━』

 

ピンポーン、と家のインターホンが鳴り響いた。

静かな部屋に音が木霊していく。

 

『━━━━あ、着いたみたいね。そういう事よ。仲良くするのよ。また電話するわね━━━━ッ』

「あれぇ!?マザー!ねぇ、ちょっ、マザー!?ママぁぁぁーーーーー!オレを一人にしないでぇぇぇ!!嫌だぁぁぁ!!」

 

切れた電話をかけ直してみたけど全然繋がらない。

恐らくマナーモードにしてるんだろう。こういう時のマザーはびっくりするほど連絡つかない。前は家電があったからそっちに掛ければ出てくれたけど、もうその家電もなくなってしまった。ちょっと前、壊れたと同時に解約してしまってるのだ。

 

ピンポーン、と再びインターホンが鳴った。

いつまでも放って置く訳にはいかない。

それにもしかしたらAma●onの宅配かも知れない。もしかしたらこの間ポチッておいた、ゲームのサウンドトラックかも知れない。いや、まだ発売日じゃないし、そもそも予約だった。それは違うか。

 

恐る恐るドアホンのボタンを押す。

するとマンションの玄関の所に黒スーツの人と佇む、花束を抱えた金髪のイケメンが画面に映った。

 

『あっ、繋がったみたいだね。久しぶり、ゆたか。元気にしてたかい?━━━━ゆたかの大好きなお兄ちゃんが、帰ってきたよ』

 

そう言って画面の向こうにいた金髪イケメン。

オレの兄貴である育斗は満面の笑みで笑った。

昔と変わらない甘い笑顔で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姓を子宝、名を育斗。

現在海外を拠点に色々活動してる、オレより六つ年上の血の繋がった実の兄貴だ。

 

成績優秀、品行方正、容姿端麗、運動神経抜群。

パピー譲りのキラッキラの金髪とモデルばりの恵まれた体躯、マザー譲りの黒真珠の瞳と中性的な甘い顔立ちで、ご近所さんからリアル王子様と呼ばれ死ぬほどモテモテだった兄貴。

 

それなりに自慢の兄貴なのだが、ある理由から素直に自慢出来ない存在だった。

 

それは兄貴が気持ち悪いくらいシスコンな所だ

 

 

『・・・・・誰?』

 

『あ、ああ・・・・』

 

 

5歳の誕生日を迎えた日。

オレは初めて兄貴と出会った。

当時11歳だった兄貴は、誕生日会の為におめかししたオレを見ると一言『天使だ・・・・』といって抱き締めてきた。

最初は実の兄貴である事も知らず、知らない人の突然の抱擁に混乱してビビった。マジで変態だと思った。貞操の危機を感じて、思わずちょっとお漏らししたのはご愛嬌だと思う。

 

5歳で初対面とはこれいかに。

そう思うだろう。

兄妹ならそんな事になる訳ないと。

 

それにもちょっとした理由がある。

というのも兄貴の奴はオレが産まれる前に家を出て、お祖父ちゃん家に住んでいたのだ。学校に通学しやすいという理由で自分からマザーとパピーに提案したらしい。小学生にも満たない子供の言うことに毎日電話する事を条件に賛成するマザーとパピーも大概だが、それをいう兄貴も大概であるといえる。

 

都内の頭良い学校に通っていた兄貴は全然帰って来なかった。それが寂しいかと言われれば、そもそも兄貴の存在すら知らなかったので何とも思っていなかった。遊び相手は高虎が一人いれば足りたし。

兎に角、兄貴は何かと理由をつけて帰らず、電話だけして一向に家の敷居を跨ぐ事はなかったのだ。

 

それで気がつけばオレは5歳、兄貴は11歳。

実の兄妹なのに希薄過ぎる関係を築いてしまったオレ達に危機感を覚えたマザーとパピーは、オレの誕生日会に呼んで顔合わせてをする事にしたのだと。

 

 

 

その結果、兄貴は立派なシスコンになった。

 

 

 

それからと言うもの、兄貴は事あるごとに帰ってきてはオレに構ってきた。高虎と遊んでれば割り込むように雑ざってきて、おやつを食べてればあーんさせてきて、お風呂に入ってると洗うのを手伝いにきて、寝ようとするとベッドに潜り込んできて子守唄を歌う。

はっきり言ってウザかった。

 

兄貴が中等部へとランクアップすると、何処でお金の稼ぎ方を覚えてきたのか、財力に物を言わせプレゼントを持参するようになった。ぬいぐるみに始まり、アクセサリーや小物、洋服にバッグ、食べ物などなど。

因みに花束は当たり前のように添えられていた。

 

部屋にプレゼントが入りきらなくなった頃。

ようやくマザーからプレゼント禁止令が発令。

兄貴のプレゼント祭りは終着を迎えた。

 

けれど、兄貴は止まらなかった。

 

プレゼントが駄目ならと兎に角ベタベタしてきたのだ。

オレを見つければ絶対に抱き着き、耳元で『可愛い』とか『天使』とか囁きながら、頬擦りしたり撫で撫でしてくるのだ。その頃には一緒にお風呂とか、布団に潜り込んできたりとかはなくなっていたけど、それでもかなり付きまとわれて気が休まる時がなかった。

高虎はその光景を見る度に同情するような視線を送ってきて、たまに助けてくれたりしたので、今でも感謝してたりする。

 

結局それは高等部を卒業し、海外の大学へと行くことで物理的に離れるまで続いた。

兄貴が旅立つ日、空港で見送った時は本当に涙が出たもんだ。勿論、嬉しくて。

 

その様子を見て変な勘違いした兄貴が『ゆたかが悲しんでるから行かない!!』と馬鹿な事を言い出した時は本当に焦ったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからもう6年。

海外で就職したと風の噂で聞いた兄貴。

一財産築いて楽しくやってると聞いた兄貴。

 

「はぁ、可愛いぃなぁ、僕の妹は可愛いなぁ。どうしてこんなに可愛いんだろう。不思議だ。もしかして本当に天使の産まれかわりなんじゃないかなぁ?そうじゃないとしたら、ヴィーナスが嫉妬しないか不安でお兄ちゃん眠れないよ」

 

何一つ変わらず帰ってきやがった。

渋々ながら部屋にいれると、花束を投げ捨てた兄貴は即行で抱き締めてきた。そしてつむじの所に顔をつけると、臭いをかぎながらめちゃ撫で撫でしてくる。

はっきり言ってウザい。

 

「兄貴、取り敢えず離して」

「それは出来ない相談だよ。僕は今、足りなかった妹分を補給してる所だから。ああ、怒らないで、違うんだよ、ゆたかを怒らせたかった訳じゃないんだ。でも、怒った顔も可愛いなぁ、ゆたかは。ゆたかはどうしてそんなに可愛いの?僕の妹だから?違うな、ゆたかが可愛いのは奇跡。この世が産んだたった一つの奇跡。それはダイヤモンドより貴重な━━━」

「兄貴、気持ち悪い」

「はぁ、そんな怖い顔しないで。━━━可愛いなぁ、もう、なんでそんなにキュートなんだい?どんな顔をしてても可愛いとか、もう反則だよ。ああ、トキメキが止まらない。僕の天使は可愛い小悪魔でもあったんだね。もう離せないよ」

 

ウザイなぁ・・・・。

 

どうしようかと考えてるとぴーぴーと電子音が聞こえてきた。洗濯機が止まった音だ。なので洗濯物を干しに行きたいのだが━━━兄貴が離してくれない。

 

「ええぃ、鬱陶しい!!離せ!!洗濯物するんだから!!」

「洗濯物ならお兄ちゃんがやろう。ジョディー」

 

「OK,boss」

 

兄貴が指パッチンすると、ずっと背後にいたサングラスの黒スーツの人が洗濯機のある部屋に向かっていった。初めてにも関わらず迷いなく。

兄貴やってないじゃんとツッコミたかったけど、それ以上に見逃せない事があったので、オレは兄貴に視線を向け直した。

 

「兄貴、なんであの人、洗濯機のある場所知ってるんだ?」

「んーー?そんな事かい?そりゃ知ってるさ。教えたからね、部屋の間取りは」

「教えた?じゃぁ、兄貴はなんで知ってんの?」

「だってこのマンション、元々僕が高等部に進学した祝いでお祖父ちゃんから貰ったものだからね。高等部時代は僕が使ってたよ?大学行ってからは放置してたけど、お祖父ちゃんからゆたかが部屋を探してるって聞いてね。しかもその条件的にここが一番だって言うじゃないか。だからあげることにしたんだよ」

「妙に物が揃ってると思えば・・・・兄貴のだったのか」

 

最初ここに来た時、家具の揃いように眉を潜めた。

ソファーもあればテレビもあるし、冷蔵庫も洗濯機もレンジも、いきなり住み込んでも大丈夫なくらい何でもあったから。お祖父ちゃんに聞いても、好きに使って良いとしか言ってくれなかったから分からなかったのだ。

 

そうこうしてると、黒スーツの人が洗濯物が満載の洗濯カゴを抱えて出てきた。最初は男の人かと思ったけど、どうやり黒スーツの人は女性らしい。

だっておっぱいの所、服が張ってる。

 

「兄貴の彼女さん?」

「いや、部下だよ」

「部下・・・・兄貴向こうで何の仕事してるの?」

「んーーー内緒。こっちに来てくれるなら、教えてあげるけど」

「じゃ、いいや」

 

この感じ知ってる。だから聞かない。

前にオレに告白してきた男子を、家族ごとスリランカに飛ばした時と同じ雰囲気だもん。あの時ほど聞かなければ良かったと思った時はなかった。

ごめん、キョータロー。また今晩も一緒にネトゲしような。

 

「━━━まぁ、他にも色々と、つもる話もあるんだけど。ねぇ、ゆたか?」

「ん?なに?」

「お兄ちゃん、どうしても聞きたい事があったんだ。ゆたか━━━━━結婚したんだってね?」

 

その言葉に背筋へ冷たいものが走った。

 

「お兄ちゃん、ゆたかが部屋を探してるって聞いて、てっきり大学とかに通う為だと思ったんだ。もしくは趣味部屋とか欲しいのかなって。昔お兄ちゃんに教えてくれたろぅ?一日中ゲームしてても怒られない部屋が欲しいって・・・・・なのに、お母さんから聞いたら、ゆたか結婚したって言うじゃないか。耳を疑ったよ。まさか、何処の馬の骨ともしれない男と、同居する為の部屋を探してるとは思わなかったからね」

「何処の馬の骨って・・・・あの、高虎なんだけど」

「ああ、ゆたかの周りにチラついてた小僧か。そうか、小僧が純粋で心優しいゆたかを騙して・・・・殺そう。うん、殺そう。ジョディー」

 

兄貴が指パッチンすると、空になった洗濯カゴを抱えた黒スーツが戻ってきてシュパッと敬礼した。

 

「OK,boss」

「おーけーぼすすんな!!

「OK,Sister the boss」

「オレの言葉聞いてくれた!?」

 

兄貴を見たら「当然じゃないか」と笑ってる。

何が当然なのか分からない。

 

いよいよ頭がいっぱいいっぱいになったきた頃、スマホが鳴り響いた。

タイガーなマスクの曲、高虎の着信だ。

何とか兄貴の腕の中から抜け出し、ポケットから引き抜き通知ボタンをタッチ。

耳に当てる。

 

『お義母さんから聞いたっ、育斗さん帰ってきたんだってな。大丈夫か?』

「大丈夫じゃ━━━━あっ!兄貴!」

 

電話していたら急に兄貴にスマホを取り上げられた。

取り返そうとしたけど手が届かない。

だからジャンプしたけど、軽くかわされた。

 

「久しぶり、高虎くん。僕のいない間に随分と面白い事してくれたじゃないか。早く帰っておいで」

『━━━━━━』

「ははは、僕がゆたかに何かする訳ないじゃないか。心配するなら自分の身を心配した方が良いよ。それじゃ、待っているよ」

 

そう言った兄貴はスマホの電源を落としポケットに入れてしまった。逃げようとしたけど、玄関へ道は黒スーツの人が塞いでる。

孤立無援。

 

「さぁ、ゆたか。彼が帰ってくるまで、兄妹水入らず久しぶりの再会の続きをしよう」

「あ、あわわ、こっ、こっちにくるなぁ!兄貴!」

「怯えるゆたかも可愛いなぁぁ」

「いにゃぁぁぁぁぁぁ」

 

それから三十分。

高虎が帰ってくるまでスリスリしてナデナデされた。

オレは犬とか猫じゃないと言ってやりたい。

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