子宝さんの、おもうてたんと違うんだけど   作:ミレニアムいたっちー

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梅雨って嫌い。
洗濯物が乾かないから( ・ω・)y━~~


おもうてたより、雨が止まないんだけど

カエルがぴょこぴょこし、カタツムリがつのだし、ひたすらに洗濯物が乾かない梅雨入りした6月のある日。

オレは部屋に干された洗濯物と、暗雲立ち込める空を眺めながら、雲が晴れるのをてるてる坊主と共に懇願していた。

 

「晴れろ晴れろ晴れろ晴れろ晴れろ晴れろれろれろ━━━もがっ」

「怖いから止めろ」

 

塞がれた口をそのままにちょっと振り返ると、ジト目の高虎と目があった。

 

「ふぁへぇほ、ふぁへぇほ、ふぁへぇほ」

「そこは諦めろよ。というか、くすぐったいから止めろ。止めないと、このまま1日抱き枕にするぞ」

「ふぁい」

 

1日抱き枕にされるのは嫌なのでお口チャックしとく。

戦略的沈黙を選んだオレの様子に気づいた高虎は手を離して読書に戻った。

何を読んでいるのかと覗けば、また小難しい物読んでるようだ。ラノベならまだしも、あんなの読んで頭痛くならないのだろうか。

 

昔から不思議に思ってたが、いよいよ気になったのでてるてる坊主のてる次郎に聞いて貰う事にした。

 

「高虎くん、高虎くん(裏声)」

「・・・・・?なんだ・・・・本当になんだ?その可愛くないてるてる坊主」

 

高虎はオレの持ってる次郎を軽く横目で見て、華麗に二度見した。オレの可愛い、てる次郎(京劇フェイス仕様)を凝視である。

 

「ぼくねぇ、聞きたい事があるんだぁ(裏声)!ちょっと聞いてくれるかなぁ(裏声)?━━━聞いてくれないと、お昼がお茶漬けになるよ?」

「てる次郎、最後にゆたかの部分が出てきてるぞ。お昼お茶漬けか・・・・今朝もお茶漬けだから、流石に別のがいいな。なんだ?」

「そんな難しい本読んで、頭大丈夫(裏声)?」

「てる次郎、言い方な。・・・・・はぁ、まぁ良いか。面白いぞ、読んで見るか?」

 

スッと差し出された本のタイトルを見た。

 

「めい、めい、めいもん・・・はっ!なると!なるとだ!なると・・・ひ・・・・あゆ」

(あゆ)ではないな。最後のは(ちょう)って読むんだ」

 

ちょうって読むのか。

へぇ。

 

「ふぅん?で、どんなん?最後のサムライ的な?」

「最後のサムライ的なのではないな。まぁ、幕末の隠密の話ではあるが。・・・・部類だと伝奇小説だな。まぁ、時代劇みたいなやつだ」

「紋所が目に入らぬか系?人の世の生き血をすする系?屍拾われない系?」

「それ大体似たり寄ったりの話じゃないか?・・・そう言えばお前、時代劇は結構好きだったな。どうだろうな、屍拾われない系が近いか?いや、違うな・・・あー、確かドラマ版があるらしいから今度借りてくるか」

 

ドラマなら見れるかなぁ。

 

「うむ、宜しく頼むで御座る(裏声)」

「おう、分かったでござる」

「真似するなで御座る(裏声)」

「おう、で候う」

 

候う・・・・。

なにそれ、超侍っぽいじゃん。

 

「今度からその候うはオレが頂くで候う(裏声)」

「なに気に入ってんだ」

 

暫く読書する高虎を眺めたりしたが、やっぱり暇なものは暇なのでテレビをつけた。日曜日のゴールデンタイムが終わって見るものがないけど、何もしないよりはマシだ。そのままぼけーっと、流れるニュースとか眺めてるとお昼になった。

 

「お昼で候う、高虎殿」

「なんかパワーアップしてるな。そうだな」

「何食べたい?」

「何でも良いぞ」

 

なんて投げやりな言い方。

オレは今カチンと来ちゃったよ。

もう、こめかみピクピクだよ。

 

「そんな言い方ないだろ!人が折角聞いてやってんのに!毎回ご飯のメニュー考えるオレの身にもなれよ!大変なんだからな!!」

「そう言うのはな、ある程度料理が作れるようになってから言え。お前のレパートリー数える程度もないだろ」

「数える程度はありますぅぅ!!カレーとか、シチューとか、ビーフシチューとか、ハヤシライスとか、肉じゃがとか作れますぅぅぅーー!!」

「ルー入れるやつばっかだな」

 

くっ、それは言わないお約束だろうに。

 

「じゃぁ・・・・あっ!すっ、スクランブルエッグー!ほらみよ!おら!奉りながら敬え!」

「スクランブルエッグ・・・ああ、あのだし巻き━━━あ、いや、何でもない。いつもありがとな。楽しみにしてる」

「はぁ!?何がっ!?ちっ、違いますぅぅぅ!!あれはスクランブルエッグになるべくしてなった、スクランブルエッグですぅ!!」

「うん、そうだな。分かってる」

 

こ、この野郎、絶対馬鹿にしにきてやがる。

もう怒った。堪忍袋の・・・・堪忍袋の・・・切れたぞ。オレの何かが切れたぞ。

 

「高虎のばーか!お昼なんてな!お前のお昼なんてっ!」

「おう、俺のお昼どうなるんだ?」

「冷やし中華にしてやる!」

「お前、買い物行った時にラーメン屋の前通ったろ」

 

うるさいわ!美味しいだろ、冷やし中華!!

茹でてくれるわ!!

 

失礼な高虎は放っておいて台所へ。

戸棚を開けるとラーメンと冷やし中華が目に入った。

少しだけラーメン食べたくなったけど、ここは我慢して冷やし中華を選んでおく。言った手前ってのもあるし、やる気ある時やんないと季節跨いで残りそうだし。オレ、言うほど冷やし中華好きじゃないかんね。

 

水を入れた鍋とフライパンをコンロにおいて早速加熱を始める。温まるのを待つ間、冷蔵庫から卵を二つ取り出し、殻が入らないように割って中身を器に。毎日割ってるので、流石にここではミスはない・・・あっ、マジか。ん?いや、何でもない。何でもないってば。高虎はこっちくんな!!

 

邪魔者を退けた後はマザーから貰ったメモ通り塩と砂糖、それとお酒をちょっと入れて、卵に混ざるようによーくかき混ぜる。

 

鍋がグツグツしてきた所で中火にして、冷やし中華の麺をそこへin。タイマーをセットしておく。

 

麺を茹でてる間は、フライパンに溶き卵を入れて薄く焼く。全体的に固まってきたら蓋してちょっと待つ。待ち過ぎると固まるから、本当に少しだけだ。

少したった所で蓋を開けてみると、程よく火が通っていた。傾けても卵が垂れない。

 

焼けたそれをまな板に置いて冷めるのを待つ。

 

ピピッとタイマーが鳴ったので卵のやつは一旦放置。代わりに茹でてた麺をささっとお湯切り。ラーメン屋のオヤジのあの後ろ姿を思い出しながら、心を込めてシュパパッと。

お湯切りした麺を皿に盛ろうとしたけど冷やし中華だった事を思い出し、水にさらして熱をとってからもう一回シュパパッた。

 

麺を皿に盛って、さっき焼いた薄焼き卵と在り合わせのハムを千切りにして更に盛り、麺と一緒に入っていたタレを掛ける。

最後に刻み海苔と小口切りしたネギも一緒に添えて出来上がりだ。

 

「・・・・マザーに送っとこ」

 

一応、マザーに写メって送っておいた。

別に改心の出来とか、そーいうのじゃないけどね。

一応ね、一応。

 

「ほらよ、目を剥くが良い!どーん!」

「━━━ほぅ」

 

高虎は珍しく感心したような声を漏らした。

大した事ではない、これは大した事ではないのだが、高虎のその態度は思ったより気持ちの良いもので、はからずもちょっと鼻が高くなってしまう。

 

「ネギが繋がってない」

「あったりまえだ!日々ロケットエンジンが如く加速的に成長するオレの料理テクを舐めるなよ!!ネコの手なんて完璧のぺきぺきよ!」

「怪我しなくなって本当に良かった。帰ってきてまな板が血塗れになってるの見たときは、本当心臓止まるかと思ったからな」

「うるさいわ!昔の事をネチネチと!」

「2ヶ月も前の話じゃないんだが」

 

ぶつくさと言い始めたので箸を渡してやる。

高虎は苦笑しながら「いただきます」と一言って食べ始めた。

 

「なぁ、別にこれはこれで旨いんだが・・・・きゅうりとかトマトとか入れて貰っても━━━」

「駄目だ。あれは人の食う物じゃないから」

「お前が嫌いなのは知ってるけどな・・・あー、お前の好きなケチャップな、トマトだぞ」

「違う、あれはケチャップだ。ケチャップはケチャップの木になる不思議な調味料だ。トマトから出来てる訳じゃない」

「そうか、ケチャップの木かぁ・・・・」

 

良いから黙って食え。

・・・・なんだよ、きゅうりもトマトも絶対入れないからな!絶対だ!!・・・・え?自分でやるから?おまっ・・・・良いよぉ!!勝手に切って、勝手に入れればぁ!?でもあれだかんな、ちゅーは拒否させて貰うからな!!やだ、だめ!絶対させない!

 

 

 

 

 

きゅうりトマト戦争を何とか勝利した午後。

吊るしまくったてるてる坊主のお陰か、雨が止み少しだけ太陽が出てきた。なのでここぞとばかりに洗濯物達をベランダに移送、太陽の恩恵に預からせて貰う。

 

「そのポーズの意味は?」

 

太陽に感謝を捧げる為、太陽の方向を見ながら偉大な太陽戦士のポーズを取ってたら高虎がつっこんできた。

知らないなんて、なんて恩知らずなやつだ。ぼくとわたしの太陽に謝れ。

 

「太陽を讚美する偉大な英雄のポーズだ」

「アニメかなんかの真似か?」

「ゲームだ」

「そうか」

 

一心に光を浴びていると、ふとそれが目についた。

遠くの空に掛かっている光の輪っこだ。

 

「高虎ー!大変だ、虹が出たぞ!」

 

レアな光景だったので教えてやれば、高虎の生返事が聞こえてきた。ムカついたので無理やり窓まで引き摺ってやる。小説読んでるから?━━━知らん!!

 

「おお、虹だ。久しぶりに見るな」

「だろ?感謝しろ、オレに」

「お前に感謝すんのか?」

「誰がこんなに吊ったと思ってんだ!」

 

チラッと高虎がてるてる坊主達を見た。

 

「まぁ、執念は感じるな」

 

そう言うと高虎は笑って、また虹を眺めた。

 

「晴れた日は晴れを愛し、雨の日は雨を愛す。

楽しみあるところに楽しみ、楽しみなきところに楽しむ」

「ん?なにそれ」

「親父から聞いた話、さっき読んでた小説の作者が言ってた事らしい。昔は意味分からなかったけどな」

「今はわかんのか?」

 

そう尋ねると高虎がこっちを見た。

 

「ああ、お前のお陰でな」

「?ふぅん?」

 

それから暫く高虎とぼんやり虹を眺めた。

子供の時一緒にみた、記憶の虹と比べながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく分からんけど、感謝してるなら今日のお風呂は高虎やって」

「なんの為に当番にしてんだ・・・・はぁ、今日だけな」

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