子宝さんの、おもうてたんと違うんだけど   作:ミレニアムいたっちー

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青春って素敵ね( ・ω・)y━~~



おもうてたより、友人になつかれてるんですが

6月の終わり。

天気予報で梅雨明けを聞いた今日この頃。

いつも通り弁当を作り高虎に押し付けたオレは、いつも通り部屋に籠る━━━━事はなく、一緒に玄関を出た。キャリーケースを転がしながら。

 

別に高虎と何処かに行く訳ではない。

高虎はこれから大学だ。

今日は午後からしか授業はないんだけど、その代わりにサークルの集まりがあるらしい。

 

「あら、子宝さん。お早う御座います、お二人でお出かけ?羨ましいわぁ」

 

戸締まりした所で丁度エレベーターから降りてきたお隣さんに声を掛けられた。ゆるふわ系の若奥様。最近お腹が大きくなってきた、ほんわか巨乳の山瀬さんだ。

 

「おはよーございます。山瀬さんはゴミ出しですか?」

「そうなのよぉ。もう、あの人ったら全然やってくれないのぉ。奥さんは良いわねぇ、旦那さんよくやってくれてるでしょう?羨ましいわぁ」

「言うほど立派でもないですよ?家にいるとずっとゴロゴロゴロゴロ。小説読んでるか、映画見てるかしかしないナマケモノなんですから━━━」

 

「基本的にゲームしかしてないナマケモノが、よく言ったもんだな?」

 

山瀬さんと仲良く話してたら、高虎がいらんツッコミをしてきた。

 

「━━止めろ、この野郎!!ご近所さんで出来る奥さんと噂のオレのイメージが崩れるだろうが!!」

「どこの噂だ、それ。面白可愛い奥さんっていうのなら聞いた事はあるが」

「誰が面白可愛いスパシーバな奥さんだ!こら!!」

「何処からスパシーバ出てきた」

 

二人で話してるとクスクスという笑い声が聞こえてきた。今ここにいる人間は三人だけ。つまりは山瀬さんに笑われているということ。確認する為に視線を送れば、やっぱり山瀬さんが楽しそうに笑ってた。

「本当、二人は仲良いいわねぇ。見てて楽しいわぁ。━━━━あら?ふふふ、この子も仲間にまざりたいみたい」

 

そういうと山瀬さんはお腹を優しく撫でた。

その顔はもうすっかりお母さんの顔だ。

 

「あとどれくらいで産まれるんですか?」

「そうねぇ、あと二月くらいかしらぁ。一応予定日は教えて貰えたけど、人によって多少は前後するっていうから正確な所は分からないのだけれどねぇ」

「へぇぇ、もうどっちか分かってるんですか?」

「ええ、でも教えて貰ってないのぉ。うちの人と相談してね、産まれてからのお楽しみって事にしたのよ」

 

そのあとお腹を撫でさせて貰ってから、オレ達はマンションを後にした。電車まで一緒なので、高虎とは駅まで一緒。駅につくまでの間、先日見たシャークがトルネードする映画について熱く語り合った。

 

オレも黄金のチェーンソー欲しいなぁ。え、何に使う?うーん、知らん。料理とかは?だってこの間料理漫画で使ってたぞ?え、できないの?

 

 

 

 

 

 

「あ、ゆたかーーー!!」

「せーーんぱーーーい!!」

 

駅前に辿り着くと元気な声が聞こえてきた。

声の方を見れば見覚えのある友人二人が手を振っていた。

 

顎に届く程度に伸ばした髪をすっかり赤茶色に変えた、同級生の島原天音。

それとツインが特徴的なまだ現役の高校生である、後輩の服部弓子だ。

 

懐かしい顔に手を振り返せば、倍になって返ってきた。

特に弓子の方。

 

「おっす、ゆたか。元気そうね」

「先輩、お早う御座います!!私服めちゃ可愛いです!!マジ卍です!!」

 

「二人も元気そうだな・・・・マジ卍ってなに?」

 

気になって聞いたらマジ卍はマジ卍らしい。

うん、分からん。

 

一応天音にも聞いてみたけど「うん?しらん」と良い笑顔を返されてしまった。

だよね。

 

卒業式以来の再会を三人で喜んでると、ぬっと高虎が頭を突っ込んできた。

 

「二人とも、ゆたかの事よろしくな」

 

まるでオレが問題児のような扱いにピキンときたけど、ここはあえて黙っておく。さっきみたいに余計な事言われてもつまらないからだ。

これ以上、面白可愛いなどと言われてたまるものか。

 

黙って見てると、天音が高虎の言葉に胸を張り豪快に叩いた。

 

「あいよ、この馬鹿の事はワタシに任しときなさーい。あんた程じゃぁないけど、扱いは心得てるからねぇ。━━━てか藤崎が旦那かぁ・・・なんだろ、まだ違和感あるわぁ。あのへタレがねぇ」

「おい、島原」

「なによ?本当の事でしょ?あ、今は藤崎じゃないわね。子宝だっけ?子宝、高虎・・・・ぷぷっ!やっぱり変だわっ!あははは!ね、子宝さーん?あっははは!」

「あのな・・・・はぁ、まぁいい」

 

高虎の様子に天音がケラケラと笑う。

するとその天音の隣にいた弓子が、話を聞いて凍りつくような鋭い視線を高虎へ飛ばした。

 

「はっ、たった二月程度で、もう旦那気取りですか。けっ。いい気になっていられるのも今の内です。今に私が・・・・・・精々残り少ない時間を、噛み締めながら楽しむと良いです、"藤崎"先輩。さ、その辛気臭い顔を見てると虫酸が走りますから、さっさと私の視界から失せて下さい。どうぞぉ」

「お前は相変わらずだな。まぁ、ゆたかの事頼むな」

「頼まれる筋合いありませんけどぉ!?何ですか!?藤崎先輩は、ゆたか先輩の何だって言うんですかぁぁぁぁああん!?」

 

「一応旦那だけど」

「旦那でしょうが」

 

ケンケン吠える弓子を天音と一緒に捕らえ、頭とか喉を撫で撫でしてやる。すると弓子は直ぐ顔を蕩けさせ、借りてきた猫のように大人しくなった。

ちっちゃいけど素早い所とか、おっきなクリンクリンな猫目とか、知り合いたてのツンツンモードも知ってるから、余計に飼い猫っぽく思える。可愛い。

 

買っておいたポッ●ーを与えて弓子を大人しくさせてる間に高虎と円満にバイバイし、オレ達も目的地に向けて電車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

電車を乗り継いで一時間程。

東京じゃないのに東京と名のついた、ネズミーなテーマパークにやってきた。数ヶ月遅れになった卒業旅行をする為にだ。

 

6月の終わり。

行くにしても中途半端な季節。

勿論これは好き好んで決めた訳ではない。

 

というのも本当は卒業後、三月に行く事になっていたのだ。でもオレに結婚騒動があって結局おじゃん。

その後ゴールデンウィークに行こうと計画してたんだけど、天音に用事が出来てしまっておじゃん。

それならもういっそ夏に行こうかってなったけど、今年受験生である弓子が駄目との事。

 

それで色々と話し合った結果、こんな中途半端な日になってしまったのだ。学校をサボる形になった弓子には本当に申し訳ない気持ち一杯である。

 

荷物をウェルカムセンターに預けた後、チケットを買ってパーク内に入ると弓子が早速動き出した。

何をするのかと二人で眺めていると、売店に売ってるネズミ耳のカチューシャをバージョン違いで3つ買ってきて手渡してきた。どうしても三人でこれを付けたかったらしい。

 

少し気恥ずかしいものがあったけど、可愛い後輩の頼みなので付けてやる。そしたら二人にめちゃ写メ取られた。いや、勿論撮り返したが。

 

一番来たことのある弓子の案内で一番乗りたかったアトラクションのファストパスを取った後、園内を色々歩き回っていたらアヒルーを見つけた。ネズミーより人気がないとはいえ、アヒルーにも人だかりが凄い。

 

「どうしたんですか先輩?あ、写真撮りに行きますか?任せて下さい!!蹴散らしてきますよ!」

「ん?いや、そんなに興味ないな」

「えっ、あ、そうですか?じゃぁ止めておきます。ふんっ、命拾いしたなアヒル!」

 

「弓子、あんたちょっとは落ち着きなさい」

 

ぺしんと弓子の頭に天音のチョップが落ちた。

くぐもった悲鳴が聞こえてくる。

 

「それにしても、平日でもやっぱ混んでるわね。ネズミ様々だわ」

「ネズミ様々って・・・・天音先輩、なんかおばさん臭いですよ?」

「余計なお世話だっつーの。でもまぁ、あんた見てると思う所はあるけどさ」

 

オバサン・・・?天音が?人前でよっこらしょとか言っちゃう天音が?元男のオレより男みたいな天音が?オレより女にモテた天音が・・・・オバサン?

 

「天音はオバサンと言うより、オジサンだと思うけど」

「おーし、ゆたか。その喧嘩買ったわ」

「・・・・えっおう!?」

 

咄嗟に逃げようとしたけどあえなく捕まり、天音よりキツイお仕置きを貰う事になった。そこはらぁめぇ!案件である。本当の事を言っただけなのに!と言ったら追加お仕置きを食らった。なんたる理不尽。

 

「━━━ふぅ、久しぶりにしばいたらスッキリしたわ!次何乗ろっか?」

「・・・・島原天音のSは、ドSのSっ!」

「もう一回しばくわよ、馬鹿」

 

 

 

 

 

 

昼のパレードガン無視でアトラクションを回る事数時間。

すっかり日が暮れ街灯の光が目立ち始めた頃、園内では夜のパレードに向けてかお客が場所取りを始めていた。

 

時間的には少し早かったけど1日歩いて疲れてたし、元々夜のパレードは見る事にしていたので、オレ達も案内に従って場所取りを始める。

 

パレードを待ってる間は近況報告をし合った。

たまに電話はするし、メッセは送りあってるので大体の事は知ってるけど、やはり面と向かって話す方がいい事もあるから。

 

「はぁーーー受験かぁ。気が重いなぁ」

 

弓子の番になると一年前のオレみたいな事言い始めた。

気持ちは良く分かるので深く頷いて同意しておく。

分かる、分かるよ━━━━ったい!?なに!?天音!なんで叩いたの!?

 

「この馬鹿に同意を求めないの。失敗例なんだから」

「天音、このやろう。その喧嘩買ったたたたたっ!痛いっ!頬っへた、つねらないでぇ!!ごめんにゃさい!!」

「よろしい」

 

解放された頬っぺたがじんじんする。

頬を擦ってたら弓子と目が合う。

 

「・・・・そうですよぉ。ゆたか先輩がちゃんと大学入ってくれたら、私こんなにモチベ下がって無いんですからね」

「んー?ああ、そう言えば、オレと同じ所行くとか言ってたもんな」

「そうですよ!ゆたか先輩、反省して下さい!悪いと思ってるなら今からでも一緒に夏期講習の申し込みに来て下さい!!最終的には同じ大学に来て下さい!」

「それはやだ。もう勉強したくないもん」

「うぇぇぇん、せーーんぱーーーいーーーー!」

 

せがまれてもこれだけは拒否する。

絶対に拒否する。

ええぃ、離せぇ!

 

何とか振り払うと弓子は膝を抱えてどんよりした。

少しだけ可哀想に思って余ってたチュロスあげたら普通に食いついてきた。まだ元気そう。

 

「はぁ、進学とか言われてもいまいちやる気でないんですよねぇ。いっそ・・・・あ、そうだ。ゆたか先輩の所で家政婦として雇ってくれたりしませんか?」

「どう考えたらそうなるんだよ。はぁ、あのな、家に家政婦雇う余裕はない。却下だ」

「あ、いえ、寧ろ私がお金入れます。時給1,000円でどうですか?」

「お前が入れんのかよ。いや、却下だけど」

 

オレの拒絶を聞いてしょんぼりする弓子の前にポップコーンが差し出された。

 

「アホ、ここに極まれりね。ほれ、ポップコーン食べな」

「騙されませんよ・・・・おいひぃ」

 

文句言いながらポップコーンを口にした弓子は幸せそうな顔をする。相変わらず簡単に食べ物に騙される姿に、思わず天音と笑ってしまう。

 

それからも最近あった事やら何やら話していたら、いつの間にか賑やかな音が聞こえてくるようになった。

音へ視線を向ければ沢山の歓声に押し出されるように、楽しげな音楽と共にライトアップされた乗り物がやってきてた。

 

弓子がめちゃ写メってる。

 

弓子の真似して写メりながらキラキラ光るそれをぽやーっと見てると、天音がそっと肩を寄せてきた。

 

「ワタシさ、ずっとあんたに悪いと思ってた」

「?何が?」

「進路勝手に決めた事とか、あんたの面倒みなかった事とか・・・・そういうやつ」

 

受験なんて結局本人次第。

そんな事気にするような事じゃないのに、と思ったけど天音の真剣な顔に声が詰まった。

何かに気づいたのかいつの間にか弓子もこちらを見てる。

 

「仕方がなかったってさ、思ったよ。最初は。ワタシは特別頭良くないから、誰かに構ってる余裕とかなかったし━━━━━でもね、ワタシは後悔したんだ。あんたが落ちたって聞いた時」

 

「あれから、ふとした時、頭の中で考えてる。あの時少しでも教えてやればとか、勉強やるように尻蹴っ飛ばしておけば良かったとか、勉強見てやれば良かったとかさ・・・・そうしたらあんたも同じ学校にいたりして、また一緒にいたんじゃないかって」

 

天音の目は少しだけ揺れていた。

 

「ゴールデンウィークさ、本当は用事なかったんだ。ただね、会う気になれなかっただけ。あんたとどんな顔して会えば良いか分からなかったから・・・・ごめん」

 

なんて返したら良いのだろうか。

こんな時、オレは。

天音に、大切な友達に。

 

正直オレは友達が少ない。

話し相手が少なかった訳じゃない。

そういうやつは結構一杯いた。

 

でも、殆どのやつは上辺だけで付き合ってきた。

当たり障りのないように。

だって知られれば知られる程、オレは中途半端で人と比べて可笑しいやつだから。

 

オレは女である事を受け入れているけど、今も女には慣れてない。まだ何処かに男を残してる。

だから男を好きになれないし、かといって女の子を好きにもなれそうにもない。

直そうと思ったし、努力もしたつもりだけど、オレはずっとオレのままだ。

 

そんなオレと天音は友達になってくれた。弓子もそうだ。二人ともオレがオレである事を知った上で友達になってくれたのだ。

 

高虎以外。

初めてちゃんと分かってくれた、大切な二人なのだ。

 

だから伝えようと思う。

上手く伝えられないけど。

ちゃんと気持ちを込めて。

 

 

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

 

「オレのことちゃんと考えてくれて」

 

 

 

 

 

「でもな、大丈夫だから。心配いらないから」

 

 

 

 

 

「オレ、今、ちゃんと幸せだからさ」

 

 

 

 

 

「なんていうか、二人と友達になれて、一緒にこれて、本当に良かったって思うし。その、二人とも大好き━━━━━おふっ」

 

 

 

 

言い終わりそうだった所で、いきなり天音に抱き締められた。なんか弓子までタックル気味にまざってきて、耐えきれず後ろに倒れてしまう。

背中めっさ痛い。

 

「馬鹿ぁ!何いっちょまえに泣かせにきてんだ!生意気だぞ、こいつ!!ワタシもお馬鹿なあんたが大好きだっつーの!もう!」

「うぇぇぇん!せーーんぱーーーいーーーー!!愛してますぅ!!私も一緒にこれて良かったですぅ!!あのクソ野郎に何かされたら直ぐ頼ってきて下さいねぇ!どんな状況だろうと一生遊んで暮らせる慰謝料ふんだくって別れさせてあげますから!!決めた!!私は弁護士王になるぅ!!」

 

「弁護士王ってなに・・・・うっ」

 

 

 

 

 

 

それから皆でパレードを見てホテルに泊まって、翌日はまたネズミーなランドの隣、ネズミーの海ランドの方へと行った。それで沢山遊んで、沢山話して・・・・約束をした。

 

また皆で何処かに行こうって。

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