あの戦いから一ヶ月が経った。
俺の怪我は軽傷だったのですぐに治ったが、あの時に戦っていた翼さんは現在入院していた。
「あの時、俺がちゃんとしていれば」
響を守る為の行動であったが、もっと上手に響を守れたのではないか。
そんな悔しい思いが胸の中で締め付けており、俺は思わず机を叩いてしまう。
そんな時、誰かから電話がかかってきて、見てみると未来ちゃんからだった。
「もしもし?」
「もしもし、ソウゴさん。
すいません、こんな夜中に。
実は少し相談したい事がありまして、お時間は大丈夫でしょうか?」
「全然平気だよ、俺はいつだって元気だから」
そう、俺はせめて彼女達を心配させないように空元気な声で答えると、未来ちゃんは少し掠れそうな声で話し始める。
その内容は最近響が何かを隠し事をしている事。
夜中に帰ってくる事も多くなり、怪我をしてしまう事がある。
だからこそ、心配で
「どうすれば良いか、分からないと」
「はい、信じたいんです!!
でも、なんで秘密をしているのか、分からなくて、私」
「・・・」
シンフォギアの事だろうと、俺は分かっていた。
おそらく秘密にしている事も、未来ちゃんを心配させない為に隠しているのだと思う。
かという俺も仮面ライダーとして戦っているのを彼女達に秘密にしている。
「・・・未来ちゃんは、響にどうして欲しいの?」
「えっ?」
「秘密を打ち明けて欲しいの?
何も隠し事をしたくないの?」
「そこまでは求めていません。
ただ、響がそれで毎日傷ついている姿を見ると、私」
「・・・そうだね、確かにつらいよね」
目の前で響が傷ついた時、俺は本当に何かが無くなるような恐怖があり、未来ちゃんはそれを無意識で感じているのだろう。
その感情をどう収めて良いのか分からないのだろう。
だから
「未来ちゃんが知っている響ならば、どうして秘密にしたいか考えられるかい?」
「私の知っている響」
「あぁ俺の知っている響は純粋無垢で食いしん坊。
とっても可愛くて優しい子だ。
そして、誰かの為に助ける」
「はい、私も響のそんな所が好きです」
「だったら、響が秘密にしたい理由はそれだと思う。
俺や未来ちゃんの為に秘密をしている。
今は話せなくても、何時か話してくれると信じれば良いんじゃないのかな?」
「そうっですね。
私、響の事を信じて、待ちます」
「あぁ良い子だ。
俺はそろそろ寝るから切るね」
「はいっ今日はありがとうございます!!」
「あぁじゃあね」
その言葉と共に俺は電話を切り、ふと天井を見る。
「なんというか都合の良い言葉だな」
そう言いながら、俺は先程の言葉を思い出す。
まるで、自分にもそうして欲しいと言えるような言葉をなぜ言えたのか、俺は不思議でたまらなかった。
「けど、今は響を守る」
そう誓って戦ってきたが、その為に響にも周りの人達にも秘密にしていた俺が言って良いのか、疑問に思ってしまう。
「・・・寝るか」
そう言い、俺は次の日の為に早く寝る事にした。
翌日、俺は響の様子を見ていたら、黒いリムジンに乗って、何かを運んでいた。
何をしているのか疑問に思っていたが、観察しているとノイズが突然現れ、周りにあった車へと襲おうとしていた。
「ちっ、なにがどうなっているんだ」
そう言い、俺はジクウドライバーを腰に巻き、ライドウォッチをそのまま挿入し、ジクウドライバーを回す。
「変身!!」
【ライダータイム!仮面ライダージオウ!】
変身を完了すると同時にバイクで走り出し、落ちてきた車に向かって跳び、ジカンギレードで車のドアを斬り、中に入っていた人を担ぐ。
「なっなんだ!?」
「まさか」
「さっさと逃げろ、ノイズが来る」
そう言いながらも、俺は次々と落ちてくる車から人を助けていき、最後に響達が向かっていたと思われる所を見ると古い工場があった。
「待ってろ!!」
俺はその一言と共にバイクを走り出し、工場へとたどり着くと、そこには響が立っていた。
しかもその場で、これまで見せた事ない程の拳で次々とノイズを倒してく。
「無事か」
「仮面ライダー!!
はい、大丈夫です!!」
そう言いながらも戦う手を止めない所を見て、俺は動揺を隠せなかった。
前まで、戦えなかったはずの彼女がここまで戦えるようになっていた事に
そんな考えをしている内に目の前に迫っていたのは、前回戦ったアナザーチェイサーがいた。
「よぉ、ジオウ。
まさかてめぇもいるとはな」
「っ!!」
前回戦った、白い鎧の子までいるとは。
この状況で、響を守りながら、どう戦えば
「仮面ライダーさんは、向こうの敵をお願いします。
私はこっちを「何を無茶を言っている。お前はさっさと逃げろ」逃げません!!」
「っ!!」
「私、もう逃げたくない。
だから、ここで戦います」
「何を『君の妹は、今は歩き出そうとしているんだ』えっ?」
突然聞こえた声に、俺は思わず驚いて声を出してしまい周りを見渡すと、俺の目の前にはスーツを着た男性が立っていた。
「歩き出そうと?」
「えっ?」
『あの瞬間、止まっていた自分の時間を進める為に、彼女は必至に動こうとしている。
君は、それを止めたいかい?』
響が、今戦っているのはあの時から動こうとしている。
ライブの事件以来、響はずっといじめに耐えて動けなくなっていた。
それをシンフォギアをきっかけに確かに自分の足で踏みだそうとしている。
『それは君も同じだ。
いつまでも同じだと考えてはいけない、前に進まないといけないんだ』
「そうだよな」
響は、こうして自分の足で立てるようになっている。
だったら兄としてできるのは、妹の成長を見守る事。
そして、妹が超えれない壁に当たった時、超える為に多少の手伝いをする程度だ。
「向こうは、頼めるか?」
「えっ!?」
「俺は、アナザーチェイサーを倒す」
「っ分かりました!!」
「あぁ、頼む」
『どうやら、少しは進めたようだな』
あぁ、勿論だ。
『だったら、受け取れ』
その言葉と共に、俺のライドウォッチの一つが赤い輝きと共に変わり、そこにあったのは新たなライドウォッチだった。
「うわぁ光った!?
これって一体」
これは一体
『前のアナザーチェイサーの時、僅かだけど俺の力が宿っていたんだ。
そして、君の覚悟と共にそれは覚醒した。
あとは分かるだろ』
「あぁ」
その言葉と共に俺はライドウォッチを取り出し、ボタンを押す。
【ドライブ】
「ドライブ?」
【ライダータイム!仮面ライダージオウ!
アーマータイム!ドライブ!ドラーイブ!】
その音声と共に俺の後ろからアーマーが装着されていき、俺の両肩には巨大なタイヤが装備され、両腕には小さな車が装着され、最後にドライブという文字が入る。
「えっ、新しい姿!?」
その姿に驚いている間に、工場の上から何か本が開く音がして、見てみると、そこにはウォズが立っていた。
ただし、その姿はフードを被って顔を見えないようにしているが。
「祝え!全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしらしめす時の王者。
その名も仮面ライダージオウドライブアーマー。
また一つ、ライダーの力が継承した瞬間である!」
「あれ、今の声、どこかで?」
「後ろ」
「えっびっくりしたぁ!!」
突然のウォズの登場で驚いている間にノイズが迫っていたが、響はすぐに対処するように拳を前に出し対処した。
そして俺も目の前にいるアナザーチェイサーに対して構えるように左足を出し、左腕を上に乗せながら、構える。
「ひとっ走り付き合えよ」
その言葉と共に、俺の両足についていた車輪が回りだし、アナザーチェイサーに向かって走り出すと、同時にアナザーチェイサーもそれに対応するように走り出した。
俺は両手に装着されているシフトスピードスピードを飛ばして、牽制を行いながら近づくと、アナザーチェイサーが手に持った斧で殴りかかる。
同時に俺は両肩の車輪を回し、対抗すると、斧は後ろへと吹き飛ばされ、シフトスピードスピードはその隙を突くように攻撃を仕掛ける。
だが、アナザーチェイサーはスピードでは劣る分、パワーを使った戦術が得意なのか、背中にあるタイヤを巨大化させて、自身の身体を中心にタイヤを走らせた。
人と同じぐらいの大きさのタイヤによって作られた防御は崩すのは難しく、突破する方法について考えなくてはいけない。
「あの速さだと、生半可な攻撃は効かないか」
だったら、生半可な攻撃ではなく、思い切った攻撃で終わらせるしかない。
俺はそれと同時にジクウドライバーに手を置き、一気に回した。
【ドライブ!ヒッサツ!タイムブレーク!】
その音と共にシフトスピードスピードが俺とアナザーチェイサーを中心に赤い壁に見えるぐらいの速さで回転する。
俺はその壁に向かって飛び蹴りを行い、その壁面とアナザーチェイサーの車輪の交互をピンボールのように蹴っていき、加速していく。
そして最後にシフトスピードスピードが俺の到着した場所からスピードを軽減しないように進路を変え、アナザーチェイサーの真上から飛び蹴りを行う。
「ぐっ!!」
「横からの攻撃が無理ならば縦で攻撃すれば、倒せる!!」
そう言いながら、最後の一撃をアナザーチェイサーに叩き込むと同時に、爆発し、アナザーチェイサーを倒す事ができた。
『身内を守る意思、やはり強いようだな』
「えっっと」
倒すのと同時にアナザーチェイサーの元になった人が現れ、こちらを興味深そうに見ていた。
『霧子や剛のような関係。
それが人間の強さかもしれないな』
「えっと」
『つまり、兄弟支え合って、強くなっているという事だ』
そういうと、先程力を貸してくれたドライブが俺の肩を叩いて、教えてくれた。
『どうやら、もう行かなければならないんだな』
『あぁそうだな。
ソウゴ、忘れるな、誰かを守りたいという気持ちを』
「あぁ」
その言葉と共に俺の腕にはチェイサーのライドウォッチを確かに受け取る事ができた。
「響は」
戦いを終えて、響の方を見ると、響の身体は剣を手に取るのと同時にまるでアナザーライダーのような叫び声と共に全身が黒く染まっていた。
「響っ!!」
響はそのまま暴走したのか、その剣を先程まで戦っていた女の子に向けて振り上げる。
例え敵だとしても、人を殺して欲しくない。
その思いから、俺は高速で移動すると共に手に持ったジカンギレードを取り出し、ライドウォッチを差し込む。
【ビルド!ギリギリスラッシュ!】
「お前っ!!」
響から放たれる巨大な一撃を溜める為に、俺はジカンギレードにビルドライドウォッチを挿入し、間一髪で受け止める事ができた。
「ぐぅ!!」
「なんで、お前は、そんなに敵の為に命を賭けられるんだよ!!」
俺が攻撃を防いだ事が不思議だったのか、驚いたように白い鎧の子はこちらに叫んでいた。
「さぁな、でも俺は誰にも死んでほしくない!!
だから戦っている!!」
響を守るのが第一だった。
それは今も変わらない。
けど、響が幸せになれるこの世界で誰かが不幸になっているのならば、手が届く所だけでも助けたい。
「生きている事が素晴らしいと思えるから。
俺は誰かに生きてもらいたい、ただそれだけだ!!」
「生きる、あの時から、変わっていないんだな」
その言葉と共に、俺はその言葉に応えるように腕に収まっている数々のライドウォッチが輝き、デュランダルの攻撃を押し返した。
「響っ!!」
俺はすぐに響の方を見ると、響の手元には既に剣はなく気絶するように地上へと落ちていった。
すぐに俺は移動し、落ちている響を受け止める。
身体中はボロボロになっていたが、その顔は確かに試練を乗り越えたように笑みを少し浮かべていた。
「まったく、のんきな奴だ」
そう言いながらも、俺は近くに寝かせると、再び白い鎧の子を見直すと
「えっ」
そこには鎧の兜になっていた部分が剥がれており、バイザーも無くなり素顔になっている少女がいた。
その顔は俺にとっては忘れもしない人物だった。
「お前、雪音さん」
「・・・」
その時の雪音さんは悲しそうな顔をしており、とてもではないが見ていられない程に涙を浮かべていた。
「ジオウ、てめぇが言っていた生きる意味は未だに分からねぇよ。
私は、戦争を無くす為にやってきた。
それが、生きる意味だと思っていた。
けど、それをあんたが否定したらアタシは」
「違うよ。
ノイズを使ったって、戦争は消えない、そんな事をしたって戦争は無くらない」
「だったら、どうやって平和にするだよ!!
そんなの、争いの元を消すしかないだろうが!!」
そう言い、雪音さんは呟くが
「雪音さん。
はっきり言う、お前では世界を平和にはできない。
例え俺に勝てる力があったとしても」
「っあんたは否定してくれないと思ったのに」
その言葉だけを残して、彼女はその場から去っていた。
「・・・・」
今、追いかけても、彼女が納得できるかは分からない。
けど、もしもまた会えた時には伝えよう。
世界を平和にするのに必要な事を
そう悩んでいる間に、黒服の男性達がこちらに近づいてきたので、俺はすぐにその場から離れた。
オーマフォームに使用するシンフォギアウォッチは
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天羽々斬
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イチイバル
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シュルシャガナ
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イガリマ
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アガートラーム