戦姫絶唱シンフォギア 時の王である兄   作:ボルメテウスさん

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継がれる希望

ソウゴSide

 

病院での戦いから時が過ぎ、俺は響が通うリディアンに足を踏み入れた。

 

「結構、人が多いなぁ」

 

今日はリディアンでの文化祭が行われているという事もあり、すぐに響達の店へ遊びに行こうとしていた。

 

「だけど、まだ店に出てなかったよな。

適当な店で時間を潰すか」

 

そう言い、周りを見渡すと、他の店とは違い、なぜだか車でドーナツを売っている店であるはんぐり~という店が気になった。

 

「「すいません、ドーナツを一つ」」

 

俺は気になり、ドーナツを頼もうとしたら、丁度タイミング良くもう一人、誰かが注文しようとした。

 

それを見て、互いに向き合ってみると、そこには金髪のバッテンマークのヘアピンが特徴的な女の子と、黒く長いツインテールの子がいた。

 

そんな二人は俺を見た瞬間、固まると、すぐにその場から飛び退いた。

 

「やっやばいデスよ。

まさかここで一番やばいのに出会うなんて」

 

「落ち着いて、とりあえず、ここは逃げる事しか「ねぇ」っ!!」

 

俺が声をかけると、二人は驚いたのか肩を震わせた。

 

「君達、どっかで会ったことあるか?」

 

「なっなんの事でしょうか?」

 

「私達、初対面です」

 

「まぁ確かにそうだけど」

 

なんというか、目の前にいる黒髪の子と金髪の子の特徴、どこかで聞いたことがあるような、ないような。

 

「なんだろう、全然見覚えはないけど、特徴を知っているような?」

 

「そっそういえば、本人とは会っていなかったデス」

 

「・・・あなた、仮面ライダー?」

 

「しっ調ぇ!!」

 

「っ!!」

 

こちらが見覚えがあるのを見て、調と言われた少女は俺に指を指して言った。

 

「えっ、なんの事、さっぱり分からないなぁ」

 

「あなたが変身している所、見たことある」

 

「えっ?」

 

「だっ駄目ですっ、これじゃあ」

 

「まさか、戦いに巻き込まれた時に目撃された?

ごめんっ、頼むから、この事は秘密にして」

 

「あれ?」

 

「んっ、その代わり、ドーナツおごって」

 

「まぁ、それで秘密にしてくれたら良いか」

 

「どっどういう事デスか?」

 

「切ちゃん、私達は向こうを知っているけど、こっちは今まで知られる機会はなかったよ」

 

「そっそうでした!!

そう言えば、直接はなかったデス」

 

「うん」

 

「どうしたんだ?」

 

「なっなんでもないデス!!

さぁって、どのドーナツにしようかなぁ」

 

そう言いながら、車に置いてある無数のドーナツを眺めている金髪の子達。

 

「そういえば、君達の名前は?

俺は立花ソウゴだ」

 

「・・・私は調、それで親友の切ちゃん」

 

「そうか、よろしくな」

 

「・・・」

 

そうは言ったが、向こうはあまり関わらないように向こうを見ていた。

 

どう接したら良いのか悩んでいたら

 

「ドーナツ買ってきたデス!!」

 

「・・・へっ」

 

そこには確かにドーナツがあったが、山盛りになっておりトレーから既に溢れ出しそうになっていた。

 

「やだぁ、お兄さんったら、とっても太っ腹ねぇ。

はい、お勘定」

 

「・・・」

 

俺がそれに驚いている間に店長だと思われるオカマが俺にレシートを渡してきた。

 

その値段を見ると、0の桁が5つもある状態だった。

 

「俺の小遣いが」

 

響の店で使う分の金は残ったが、それ以外は既にこの学園祭では使えそうにない。

 

俺は落ち込みながらも金を払い、席に座った。

 

「それにしても、このドーナツはとっても美味しいです!!」

 

「あははぁ、それは良かった」

 

美味しそうにどんどんドーナツを食べている姿を見るだけでも、払った事に意義を感じ、苦笑いをしてしまう。

 

「・・・聞きたい事があるけど、良い?」

 

「なんだい?」

 

「あなたは、仮面ライダーになって、なにをしたいの?」

 

「何って?

そりゃあ、大切な人を助けたいからだよ。

それに助けられる力があれば、それを助ける、ただそれだけだよ」

 

「そんなの、偽善じゃない」

 

「調」

 

そう言い、彼女は苦い顔をしており、そんな彼女を心配するように切ちゃんは見つめていた。

 

「まぁ、そうかもしれない。

というよりも当たり前だな」

 

「えっ?」

 

そう言いながら、なんとなくだが、俺は一つのライドウォッチを取り出した。

 

「多くの人々は誰かの為に動いている。

それはその人の為ではなく、自分の為かもしれない。

けど、それがもしかしたら誰かの希望になれるかもしれない」

 

「希望?」

 

「あぁ」

 

そう言いながら、なぜか俺はこの時、このライドウォッチを彼女に渡した。何故だか分からないが、必要な感じがしたのだ。

 

「ほら」

 

「えっ?」

 

「もしも、何か迷いがあったら、見つめてみたら、分かるかもしれないよ。

君が受け入れなきゃいけない何かを」

 

「・・・」

 

「ぶぅ、ずるいデスっ!!

私にもぉ!!」

 

「いや、君は今、この山盛りのドーナツを食べたでしょ!!

おかげで俺の財布は空だから!!」

 

そう叫びながら、俺と切ちゃんが騒いでいる間、ずっと調ちゃんはライドウォッチを見つめていた。

 

「それじゃあ、私達はこれでデス!!」

 

「ばいばい」

 

「あぁまたな」

 

そう言い、俺達はその場で別れた。

 

「さて、まずは響の店に行くか」

 

「よろしかったのですか?」

 

「わぁ、ウォズ?

なんだ、いきなり」

 

「なぜ、ライドウォッチをあの娘に渡したんですか?」

 

「そうは言われてもな、なんだか、あの子達に必要だと思っていたからだ」

 

「思ったから?」

 

「よく分からないけどな」

 

まるで手の中にあったライドウォッチの意思に従うように俺は渡してしまった。

 

だが不思議な事に後悔は余りなかった。

 

「それが、我が王の望みならば」

 

その言葉と共に、ウォズはそのまま俺と一緒に秋桜祭を回った。

 

そして、それが後に起きる戦いの前の静けさだと知らずに。

 

調Side

 

シンフォギアの奪還に失敗した私達はマリア達から叱られていた。

 

私達の認識の甘さによって、計画が失敗する可能性があったから。

 

「取れたのは、これだけ」

 

「それはっ!?」

 

「ライドウォッチ!?

一体どうして」

 

「ジオウが、渡してくれた」

 

潜入した先で、たまたま出会ったジオウから渡された物。

 

ジオウ。

 

私達の計画遂行の為に邪魔になるであろう存在であり、その脅威はシンフォギアと同等か、それ以上の存在だと、始まる前から教えられていた。

 

「一体どういう意図で渡したかは不明ですが」

 

「さぁね。

ジオウの考えなんて、誰も理解できないわ。

でも、それは罠ではなく、本物のようね」

 

そう言い出てきたのは、今回の計画の協力者と言うオーラ。

 

年はマリアと同じぐらいだと思うけど、正直、私は彼女が何を考えているのか分からない事もあり、あまり関わり合いたくない。

 

「ほら、そのライドウォッチを渡しなさい」

 

「・・・」

 

そう言い、オーラはこちらに手を向けてきたけど、私は自然とライドウォッチを握りしめる力を強くする。

 

「調」

 

「ごめんなさい。

でも、私は」

 

「・・・分かりました。

すみませんが、これは彼女が持っておくべきです。

計画には何の支障もないでしょう」

 

「はぁ、分かったわ。

だけど、ジオウには返さない事ね、それは奴にとっては重要なアイテムだから」

 

それだけ言って、オーラは姿を消した。

 

「まぁ良いでしょう。

敵の選択肢を減らす事ができたのは大きな進歩です。

今回の事は不問にします」

 

「ありがとうございます」

 

そう言いながら、私は部屋からすぐに出て行った。

 

「それにしても、これは一体なんデス?」

 

「オーラが使っていた時には不気味な怪物ができたけど」

 

「なんだか印象がまるっきり違うデスね」

 

そう、オーラが持っているライドウォッチはどれも不気味で、見ていて正直言って良い気分はしなかった。

 

「・・・押してみる?」

 

「そっそれじゃあ」

 

そう言い、私と切ちゃんは一緒にライドウォッチを押してみる。

 

【ウィザード】

 

「っ!

えっ?」

 

「なっなんですか、ここはぁ!!」

 

一瞬、周りの景色が眩しくなり、気づくと、周りに見えたのは見たことのない倉庫の中だった。

 

「ここは?」

 

「調っ!!」

 

「っ!!」

 

切ちゃんの声に気づいて、すぐに眼を向けると、倉庫の中には見たことのない灰色の怪物と牛のような怪物が暴れており、その中で警察の人達が追いつめられていた。

 

「何なのっ、これは?」

 

そんな疑問をつぶやいている間に、倉庫の入り口から何か音が聞こえ、見てみるとバイクに乗った青年が突入すると共に、その手に持った銃で周りにいた怪物達を倒した。

 

「銀の銃弾、お前、魔法使い!!

 

「魔法使い?」

 

怪物の一体が、青年に向けて叫ぶのと同時に、手に炎を集め青年に向けて放った。

 

「っ!!」

 

何が起きたのか分からない間に、青年は炎に包まれたが、次の瞬間現れたのはライドウォッチに描かれていた顔と同じ戦士だった。

 

「仮面ライダー」

 

「これは」

 

「さぁショータイムだ」

 

その一言をきっかけに戦いが始まった。

 

目の前には銃を自在に使い、蹴り上げながら次々と怪物達を倒しているウィザードの姿があった

った。

 

そんな戦いの中で、一匹の怪物が私達に迫ってきて、思わず身を構えてしまうが怪物は私達に当たることなくすり抜けてしまう。

 

「すり抜けた」

 

「これって、もしかして映像?」

 

その疑問に答えるように、映像はすぐに切り替わり、私達はウィザードの身に起きた出来事を見渡す。

 

「・・・」

 

サバトと呼ばれる儀式で多くの人が死んでしまい、その中の生き残りであるウィザードは人々の希望を守る為に戦っていた。

 

「これが、ライドウォッチの力の源」

 

「仮面ライダーの本来の姿」

 

これまでの記録を見ても、立花ソウゴは数々のライドウォッチを使っていたが、その一つ一つにはウィザードのような戦士がいた。

 

「それで、俺の記憶を見て、どうだった?」

 

「っ」

 

「誰ですかっ!!」

 

「おいおい、さっきまで人の記録を見ていて、それはないだろ」

 

その言葉と共に、映像の中でしか動かなかったウィザードが動きだし、こちらに歩み寄ってきた。

 

「あなたはウィザード」

 

「まぁ俺には操真晴人っていう名前があるけど、今は良いか。

それよりも君達は何を考えて、行動している?」

 

「何って、私達は、世界を救う為に」

 

「けど、それで誰かを笑顔にしているか?」

 

「だけど、悪を貫かなければ守れない物もあるんです」

 

「確かに、そうかもしれない。

けどさ、それが果たして、君が望む希望なのか」

 

「希望」

 

「俺はこれまで多くの人々の希望と絶望を見てきた。

だからこそ、このままでは君達はきっと取り返しの付かない事になる」

 

「説教のつもり?」

 

「さぁな。

でもさ、君達が世界を救いたいのは、きっと君達の希望があるからだろ」

 

「私達の希望」

 

そう言っている間に、ウィザードの記録は最後まで来ていた。

 

彼は、自身の大切な人を助ける為に戦い、そして、その希望を守る為に選択した。

 

「俺は、最後まで守りきれなかった。

だけど、コヨミとの思い出は俺の大切な希望だ」

 

「私は」

 

「ゆっくりで良い。

君達が信じる道で」

 

その言葉を最後に映像は途切れてしまう。

 

「あれ?」

 

「ここはさっきまでの場所?」

 

「一体」

 

私は疑問に思ってもう一度ライドウォッチを押す。

 

だけど、ライドウォッチは反応しなかった。

 

「・・・・」

 

ウィザードが言っていた希望。

 

それがどういう意味なのか分からないし、私の中に答えは出ない。

 

「・・・けど」

 

「調」

 

ウィザードがコヨミという人を大切にしていたように、私は切ちゃんやマリア達を守りたい。

 

「それが私の希望」

 

未だに確かな答えは出ていないけど、今感じる答えは信じてみたい。

 

オーマフォームに使用するシンフォギアウォッチは

  • 天羽々斬
  • イチイバル
  • シュルシャガナ
  • イガリマ
  • アガートラーム

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