その日、S.O.N.Gは長野県にいた。
目的はバルベルデから持ち帰った資料の解読と、その護衛となっていた。
現在、敵との戦闘が可能となっている響達奏者達は主に施設の護衛、ソウゴ達仮面ライダーは避難住民の護衛の為に別れて行動する事になった。
そして、現在リンカーの使用が限られているマリア達は住人が残っていないかどうかの確認を行っていた。
「あーーっ!!
あそこにいるデス!!」
「あっ切ちゃん」
そんな中、切歌は張り切りながら、棒立ちになっている人を発見すると共に急いで走り出した。
そんな切歌を心配するように調も急いで走る。
「早くここから離れてって!!
怖っ人じゃないデス!!!」
急いで駆け付けた先にあったのは人ではなくかかし、それも結構不気味なので、思わず大きな声を出してしまう。
「おいおい、どうしたんだ?」
切歌の驚く声に気づいたのか、畑で仕事をしていた青年がすぐに近づく。
「ごっごめんなさいデス!!」
「すいません、切ちゃん。
かかしを見て、びっくりしちゃって」
「あぁなるほどな、しかしまぁ、改めて見ると、怖いなぁ、このかかしは」
青年はすぐに事情を知ると、軽く笑いながらかかしを見つめる。
そんな様子を見て、少しは緊張感が取れたマリアだが、すぐに顔を引き締めて青年に近づく。
「政府から既に退去指示が出ております。
ここは危ないからすぐに避難を」
「えっそうなのか?
まいったなぁ、婆ちゃんが仕事をしているから、手伝っていたんだがな」
「えっお婆ちゃんもですか?」
「まぁな、少しここに用があって、来たんだけど、なかなかに良いトマトだから、つい手伝いたくなっちまったんだよ」
青年は目の前で見事に実っているトマトを見つめがらそう呟く。
「あらまぁ、猿渡君。
知り合いかい?」
「あぁ、婆ちゃん。
いや、なんでも政府からで、ここから退去するようにだってさ」
「それは大変ねぇ。
でもね、トマトの最後の収穫の時期だから忙しくてねぇ」
「いや、でもぉ」
お婆さんの言葉にマリアは戸惑いながらも避難を促そうとしていたが
「おっ美味しいです!!」
「本当、甘くて美味しい!!」
「だろ、いやぁ、本当に良いトマトだ」
そう悩んでいる内に、何時の間にか猿渡は持っていたトマトを二人に渡していた。
任務という事もあり、既に調子が崩れそうになりながらも、マリアはため息を吐いてしまう。
「みぃつけたぁ」
「っ錬金術師!!」
「・・・・」
そんな彼女達の目の前に、錬金術師の一人であるカリオストロが姿を現した。
すぐに警戒を行い、マリア達は猿渡とお婆さんを守るように立ちふさがる。
「錬金術師っ!!」
突然の出現に顔を険しくしながら、三人は目の前から放たれる殺気にどう行動するか、考えていた。
(このままでは危険。
お婆ちゃんを抱えて、逃げたとしても、アルカノイズから逃げられるかどうか?
だけど、早くここから離れないと)
「おい、てめぇ」
そんなマリアの思考を遮るような怒声が聞こえ、見てみると猿渡が切歌と調の間を通ってカリオストロに睨み付ける。
「あらまぁ良い男ね。
でも、残念ながら、こっちの目的とは、関係ないのよねぇ」
「そんなもん、知るか。
それよりも、婆ちゃんや、この子達になに殺気を出しているんだ」
そこから聞こえてくる怒声は先程まで和やかに話していた青年とは思えないような声だった。
「駄目、早く逃げるわよ」
ただならぬ気配を感じるが、一般人である青年を巻き込まない為に、マリアは急いで呼び止めるも
「なんだか、邪魔ねぇ。
どきなさい」
そう言い、軽く殺気を出しながら、カリオストロは叫ぶが、猿渡は軽く笑う。
「そんな脅しが通じるとでも?」
「だったら、死ねば?」
無慈悲な言葉と共にカリオストロは懐から取り出した結晶を投げる事で、周りにアルカノイズを呼び出す。
それを見て、すぐに逃げるようにマリアが声をかけようとした瞬間、驚いた。
「笑っている?」
その笑みが何を意味するのか分からなかった。
「なるほどなぁ、戦兎の頼みだから来てみたが、とりあえずは楽しめそうだなぁ!!」
先程まで見せていた笑みとは反対に好戦的な笑みを浮かべており、猿渡はそのまま懐から取り出した物を腰に巻いた。
【スクラッシュドライバー】
「まさかっ!!」
一瞬だけ見えた物は見慣れた物ではなかったが、その動作はマリア達にとっては見慣れた動作だった。
猿渡はそのまま手に持った物を振りながら、腰に装着したスクラッシュドライバーに差し込んだ。
【ロボットゼリー】
その音声が流れると共に猿渡は目の前に迫りくるアルカノイズやカリオストロに向けて手を伸ばし、構える。
「変身」
その一言と共に猿渡はスクラッシュドライバーのレバーに手を伸ばした。
「まさかっ!!」
変身、その一言はマリア達の中にある疑惑は確信へと変わった。
猿渡のスクラッシュドライバーから突然巨大なビーカーが現れ、中から溢れ出る黒い液体はそのまま猿渡を包み込む。
包み込まれた猿渡の身体は瞬く間に金と黒のボディへと変わる。
【潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラアアァー!!】
ベルトから溢れ出る音声と共に、猿渡の頭から溢れ出る液体はそのまま彼の身体を包み込む。
同時にそこに現れたのは
「仮面ライダー!?」
「おらぁ!!」
仮面ライダーの出現に驚いている間に、猿渡はそのまま接近していたアルカノイズを蹴り飛ばして、カリオストロを睨み付ける。
「仮面ライダーグリス!
心火を燃やして、てめぇをぶっ潰す!!」
その一言と共にグリスはそのままカリオストロの元へと走り出す。
「まさか、仮面ライダーデスとぉ!」
「お前ら、さっさと婆ちゃんを連れて逃げろ!!
ここは俺が食い止める!!」
「まさか仮面ライダーとはね。
でも、そんな事をさせるとでもぉ!!」
そう言うと共に空中を飛んでいたアルカノイズはそのままマリア達に向かっていく。
瞬時にそれを理解したグリスは手を伸ばすと
【ツインブレイカー ビームモード】
「させるかぁってのぉ!!」
その言葉と共にグリスは空中に飛んでいたアルカノイズをそのままツインブレイカーから出てくるビームで次々と打ち抜いていく。
そして、懐から取り出した二つのフルボトルをそのままツインブレイカーに装填する。
【ツインフィニッシュ!】
「おらぁ!!」
同時に残りのアルカノイズを全て打ち抜くように無数のエネルギー弾をアルカノイズに向かって放っていく。
それにより、その場にいたアルカノイズは全て消滅した。
「もぉ聞いていないわよぉ!!
なんで、仮面ライダーがジオウ以外にもいるのよぉ!!
「戦兎から頼まれた物を届けに来ただけだよ。
それに、てめぇのような奴は俺は許さねぇんだよぉ!!」
【アタックモード】
その音声と共にツインブレイカーの形態を変え、グリスはそのままカリオストロに向けて振り下ろす。
「舐めるなぁ!!」
先程からの蹂躙ぶりに流石に切れたカリオストロはそのまま腕にエネルギーを集中させ、グリスを殴る。
予想外の威力に戸惑う所か、グリスはそのまま反撃とばかりに殴り返す。
「威風!果敢!!気鋭!!!その程度じゃあ、俺は止められねぇよぉ!!」
「ちぃ」
勢い良く攻めていくグリスに対して苛立ちを隠せないカリオストロだった。
だが
「あぁぐぁ!!」
攻め込んでいたグリスに突然攻撃が襲い掛かり、一回転しながら体勢を取り直す。
すると、そこに立っていたのは怪物だった。
飛蝗をそのまま人間にしたような姿であり、その胸元には【BLACK】と【2020】という記号が刻まれていた。
その怪物の正体はアナザーライダー、アナザーブラックだった。
「なんだぁ、てめぇは!!」
「ちっアナザーライダー?
邪魔なんだけど」
(私の指示を無視している場合か?
オーラが撤退の為に寄こしてくれた、すぐに退散しろ)
「分かったわよ、じゃ、またねぇ」
「てめぇ待ちやがっ!!」
グリスはすぐにカリオストロを追うとしたが、アナザーブラックによって、動きを止められる。
「ちぃ」
アナザーブラックの妨害によって、カリオストロは逃げてしまい、グリスは舌打ちをする。
だが、そんな隙を逃さないようにアナザーブラックはグリスに攻撃を仕掛けようとした。
【アーマータイム!~!キバ!】
その音声と共にグリスに向かっていた攻撃はキバアーマーを装着したジオウによって、阻止される。
「お前は」
「助けに来た、と言っても邪魔でしたか?」
「ふぅ、いや、大丈夫だ。
ありがとうな坊主」
そう言い、グリスはジオウの肩を叩くと、再びアナザーブラックに睨み付ける。
「まさか、このような所で出会うとはな」
「知っているの、ウォズ?」
そして遅れるように現れたウォズはそのままアナザーブラックを見つめる。
「あいつはアナザーブラック、1987年に活躍していた仮面ライダーブラックのアナザーライダーだろう。
そして、この記号が意味するのは」
「まさか、昭和ライダー!!」
その事に気づいたジオウはすぐにアナザーブラックを睨み付ける。
「我が王、そしてグリス。
ここは私に任せてくれないか?」
「あぁ、いきなり横から出てきて、何を言っているんだ?」
「アナザーブラックは仮面ライダーブラックの力を持っている。
ブラックは不思議な現象を起こして、逆転する事ができるライダーだ。
奴を倒すには、その逆転すらも不可能な力を使うしかないからね」
そう言い、取り出したのは仮面ライダーギンガの力が宿ったギンガミライドウォッチだった。
「太陽の奇跡でも、宇宙の前では対抗できるかな?」
【ギンガ】
その音声を確認すると共にウォズはギンガミライドウォッチをそのままビヨンドライバーに装填する。
「変身」
【投影!ファイナリータイム!ギンギンギラギラギャラクシー!宇宙の彼方のファンタジー!ウォズギンガファイナリー!ファイナリー!】
その音声が鳴り響くと同時だった。
ウォズの身体は一つの天体を現すような鎧を身に着け、背中からは足まで届くマントが現れる。そして顔面には「ギンガ」の文字が描かれた。
変身を完了すると同時にマントを翻しながら、叫ぶ。
「祝え!時の王者に仕えし、宇宙最強の戦士の誕生を!
その名も仮面ライダーウォズギンガファイナリー!
また、新たな伝説の幕開けである!!」
「久しぶりに聞いたな」
「おい、あいつどうなっているんだ?」
ウォズの言動に戸惑いを見せるジオウとグリス。
そんな事を他所にアナザーブラックは雄たけびと共にウォズに襲い掛かる。
「ふんっ」
だが、ウォズは片手を出すだけで、軽々と攻撃を受け止める。
その後もアナザーブラックは蹴る、殴る、様々な攻撃を行うが、ウォズはまるで赤子の手を捻るように簡単に受け流す。
「圧倒、瞬殺、圧勝!
これこそがウォズギンガファイナリーの力だぁ!!」
【ファイナリービヨンドザタイム】
ウォズはそのまま余裕の態度でアナザーブラックを異空間へと引き込むと、同時に、そのままアナザーブラックに向けてライダーキックを放つ。
アナザーブラックは反撃しようにも、異空間でまったく動く事ができず、そのまま攻撃を喰らって完全に敗北した。
「がはぁ」
アナザーブラックはライダーキックを受けると同時に変身が解除され、アナザーライドウォッチが破壊される。ジオウは地面に横たわった、アナザーブラックだった人物に駆け寄る。
「っ大丈夫ですか!!」
「あっあぁ、それよりも、君はジオウかっ!!」
「はい、そうですが」
「これを、頼むっ」
そう言い、その人物は、懐に持っていた資料をジオウに押し付ける。しかし、そのまま力尽きてしまった。
「おい、おいっ!!」
ジオウはすぐに呼び掛けるが、気絶している様子だった。
「大丈夫だ、気絶しているだけだ、すぐに運ぶぞ」
「はい!!」
冷静な判断を下すグリスに従うように、二人で男を運び出す。
その二人を見ながら、ウォズは男が持っていた資料に目を通す。
「まさかっ!!」
そこに記載されていた資料の内容を確認すると同時に、ウォズはそのまま懐へと隠した。
オーマフォームに使用するシンフォギアウォッチは
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天羽々斬
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イチイバル
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シュルシャガナ
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イガリマ
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アガートラーム