バビロニア組(+α)が迷宮都市へ行く話 作:はっぱミルクチー
「………え?」
「………え?」
「……おや。」
「………は?」
驚きの声がそれぞれの口から漏れた。当たり前だ、先程まではてんでバラバラ……いや、二つの塊になって過ごしていたのだから。
方や死後座に登録され再会し、旧知の仲を温めていた二人はズッ友、英雄王と天の鎖。
方やかつて目の前から忽然と消えてしまった主人にトラウマを植え付けられた従者と植えつけた主人、冥府の女主人と雑務係の主従。
彼等は全員、見た事のない場所に立っていたのだ────
「あれ?バビロニア繋がりかと思ったけど、イシュタルは居ないのね。これどういう集い?と言うか此処どこ?」
「ハッ、あの様な小煩い駄女神が居らずとも何ら支障はあるまい。寧ろ清々するわ。……その代わりなのか、陰気臭い主従がやってきた様だがな。」
「誰が陰気臭い主従よ!人の身を得てからの我が主は可愛い一直線じゃない!それに私も陰気臭くなんてありませんからね!」
「まあ二人共、落ち着いて。今は誰も現状を把握出来て居ないんだし、助け合いっていうのが大事だろう?先ずは情報の共有から始めるべきじゃないか。」
「「………フンッ」」
仲の悪い二人がケンカする隣で、顔を怒りに染めたり照れ照れしたり忙しなく表情を変えて居た冥界の女主人が、今度はその顔を焦りに染めた。長い付き合いである従者はどうされましたかと声をかければ、彼女は震える声でこう切り出した。
「私、すっごく弱体化してる……!」
「今更ですよね?ここは冥界じゃないんですし。」
「いいえ、違うの。発熱神殿も、権能も筋力も魔力も、全て弱体化……というか封じられてる。今、何度か使ってみようとしたんだけどダメだわ。何かに阻まれてる。これ以上使えば危険だって、本能が疼いてるの……!」
「あら、それは大変ですね。さておき、これからどうします?現世を謳歌します?私は大賛成ですけど〜……」「ノリが軽いわね!?」
「ねえ、君達その神に勧誘されてるの?やめときなよ、見ない顔だしどうせ弱小ファミリアだ。こっちの方が断然良いぜ?団員もそこそこいるし、絶対そこの女神より安定した暮らしが出来るぜ?」
私達の言葉を遮り、男が話し掛けて来た。ファミリアだとか何だとか、訳の分からない単語を連ねては下卑た笑みを浮かべている。
先程からイライラが止まらない☆ギルガメッシュを天の鎖に宥めて貰うように目配せしながら、私は主人を押しのける様に立つその男……いや、神?それに向き合い、頭を下げると共に、告げる。
「変な宗教勧誘はお断りしております。」
「フッ、フハハハハハハ!!聞いたかエルキドゥ!あの雑種は、事もあろうにあれを宗教勧誘だとよ!いやはやこれ程馬鹿な者が居るかと常々呆れてはいたが、まさかここまで察しが悪いとは思わなんだ!」
「な、何よ!現代に伝わる変なシューキョー・カンユーかと思うじゃない!よく見るあなたは神を信じますか?とかでもなかったし!」
「うーん、宗教の勧誘では無かったと思うなぁ。それに近そうではあったけどね。」
「な、何かしらこの流れ……置いてけぼりなのだわ……!」
そうエレシュキガルは言うが、置いてけぼりを食らっているのは声をかけた神もである。周りとは一線を画す騒がしさと、彼等から感じ取れる並々ならぬ力にニタリと笑った彼は、じゃあ良いや、と言って走り去ってしまった。
「なんだったんでしょうね、あの神……見た所エレシュキガル様と同じ様な状態らしいですが。というか周りにも神いっぱい居るじゃないですかこれどうなってんですか?」
「ほう?と言うことは貴様も英霊の座から引きずり出されたという事か、陰湿犬。」
「誰が陰湿犬だバカガメッシュ!ああそうだよ、私も英霊の座に登録されてますよ!?聞いて驚け!私はな、「存在しない者」らしいぞ!登録された時も「冥界の従者」って登録されたからな!」
「その程度我とて気づいておるわ駄犬めが!そして王たる我にその不敬、死にたいようだな!跡形も残さず消し去ってくれるわ!」
「おうやってやろうじゃねえかよ!おぉん!?元々気に食わねえ奴だとは思い続けて来たんだ!今この場で死に損ないの恐ろしさを味合わせて殺してやる!」
ギルガメッシュが黄金の鎧を鳴らし腕を上げれば、彼の背後に金の波紋が現れる。そして、それに対峙する冥界の従者は手に槍を装備した。
それに慌てるのは彼女の主人である。
「だ、だだだ、大丈夫なのかしら!?こんな町中、人混みの中で……絶対に死傷者が出るのだわ!?ああもう、あの子そんな事にも気づいてないのかしら……!?」
「うーん、ギルは一か八かの賭けになるけど抑えられるとして、従者君は抑えられないかなぁ。単純に考えて、ギルが二人いる所に突っ込む訳だし。」
「あなたはこんな状況なのに気楽ね!?」
「ギルは兎も角、従者君は間に誰か入ったら我に返るんじゃないかな?」
「え?あ、そうね、やってみるわ……!」
エレシュキガルが身構えたその時だった。
「そこで何をしている!」
何人かの徒党が一触触発の雰囲気を壊した。
「へっ?あ、あー……うん、はい。貴方達は?」
「我々はガネーシャ・ファミリアだ。見た所冒険者か?取り敢えず、ギルドまで来て貰おうか。そこの緑の奴も、金髪もだ。」
「ひぃ。これもかれも全部ダメガメッシュのせいでは……?」
「貴様ァ……!」
ここでも煽るのをやめない従者にギルガメッシュは青筋を立てた。ほわほわと笑っているエルキドゥも、慌てるエレシュキガルも……つまりいつも通りである。
「つべこべ言わず来て貰おうか!」
「なあ、にーちゃんら、ちょっと待ってくれや。この金髪神やで?ちょっと小競り合い起こったくらいで神まで含むこいつらギルドに差し出す気か?」
「か、神ロキ……ええ、そうですね。頭に血が上っていたようです。すみませんでした。そこの貴女様も、神とは知らず申し訳ない。」
ガネーシャ・ファミリアと名乗った彼等を止めたのは糸目に赤髪を纏め、露出の高め……いや、周りに比べると寧ろ普通の露出?の青い衣服に身を包んだ恐らく女性だった。
「「……勝った(のだわ)。」」
どこがとは言わないが。
「おん?助けてやったっちゅうのに喧嘩売っとんのか?見た所、下界に降りたばっかりで右も左もわからず勧誘を片っ端からかける神と、元々仲の悪い3人組……って所やろ?ウチの助け、必要やと思うけどなー?良いんかー?」
「ぐっ……すみませんでした。けれど、さっきの分け方に物申したい。まず我が主人は天には基本行かないし、こいつらと私は多分無関係です!というか嫌だ!こんな慢心ぼっち王と一括りにしてもらいたくない!エルキドゥは私のものだから!エレシュキガル様は私の恩人だから!」
「不敬!あまりに不敬!エルキドゥは我の友であろうが戯け!しかもその口で無関係とはよく言ったものよ、我もそうであれば良かったとは痛感するがあれほど何処を見ていても眼の合う奴はお前以外の奴らでも居らんかったわ!」
「ははは、ボク人気者だなぁ。照れちゃうよ。ボクは冥界ともギルともある程度繋がりはあるからさっきの分け方にも特に異論はないんだけどな?」
「ごめんなさい、この子達いつもこうで……」
「……いや、ええんや。エレシュキガルやったな。見いひん顔やけど、お前どこの神や?」
先程声を掛けてきた神と同じように口元を曲げた彼女は、そう、まるで面白いおもちゃを見つけた子供のような顔をしていた。
「え、えーっと……あ、自己紹介する時はあなたから自分の事を言うのが礼儀じゃないかしら?」
「……せやな。うちはロキ。ここオラリオで、結構でっかいファミリアの主神や。そっちは?」
「ロキ、ロキね。覚えたわ。私はエレシュキガル。見たことが無いのも当然なのかしら?私は冥界の女主人で、というかファミリアとか言うのもオラリオもあなたの事も全くわからないんだけど──?」
「ロキ。北欧神話に登場する道化師。……北欧神話と言えば、何やらアホガメッシュと因縁のありそうなロr……シトナイもといフレイヤだとか、スカサハみたいなスカディとかは私も知ってはいますね。カルデアにいたし。所でロキさん、イシュタルって名乗る露出狂、知ってますか?」
「ん?イシュタルの知り合いか?イシュタルならほら、そっちや。今はまだ動いてないけどな。」
「何というか……うわぁ、なのだわ。」
「イシュタル、あれでも娼婦の神ですしね。是非も無いヨネ。人間を依代にして召喚されたら鳴りを潜めてましたけど。まあ、どんなイシュタルであっても駄女神なのは変わらないんですけどね!」
ズドン、と質量が落下した。何だ何だと騒ぐ人の視線の中、アマンナに跨る女神は金の目を怒りに染めながら叫ぶ。
「だああああれが駄女神ですってええええ!?」
「うわっ煩い。流石イシュタル煩い。ジャパニーズな五月のハエの如く。」
「煩いのが増えたな。何、またどこかでへっぽこ女神属性を発揮して来たのだろう?今度は迷子か?」
「ここで殺しておくべきだよね?わかるとも!」
「何やこの混沌……というか、アレイシュタルか?ウチの知ってるイシュタルはもーちょっとグラマラスで色も黒めやったような……というかエレシュキガル、アレにそっくりやな?」
「……あれは私の妹よ。」
「は?」
「誰か今私の体型のこと、貶さなかったかしら♡」
マテリアルが解放されました
冥界の従者
ステータス(以下全てFate基準)
筋力:A+
耐久:C+
敏捷:A+
魔力:B
幸運:C
宝具:EX
(+が付いているのは彼女が常に強化魔術を自身の体に行使している為。)
スキル
対魔力C
神性E
道具作成D
陣地作成C
異常耐性EX
宝具
霊峰仰ぎ見ゆ冥府の鞴(クル・キガル・イルカルラ・フェイク)
ランク:B
種別:対山宝具
レンジ:10~999
最大補足:1000人
アンガルタ・キガルシュ、クル・キガル・イルカルラの下位互換。逸話も何も持たぬ彼女が戦う術を研究し唯一自分の技術として創り上げた神の御技に近い物。ただし彼女も人の身、充分な火力はあるものの主人達に比べるとその威力は一段下がったものとなっている。
神の物と違う点は彼女が身体の全魔力を消費し発射する、投擲槍の形をしている点である。ただし魔術師として一流の彼女が放つ宝具の威力は折り紙付き。
○○○○○
詳細不明。彼女の原点に関わるものであるらしいが……