現在、研究所内を案内するとのことで斑木博士と二人でレオリオは廊下を歩いていた。
「んー? 何時まで居ていいかなんて律儀だね」
「いや、はい……」
この研究所に滞在を決めたため、レオリオは斑木博士に細かいことを相談する。また、9月の頭にはヨークシンに着いていなければならないということもである。
「いつでも、何時まででもいいよ僕は。どうせ部屋は余ってるからね。後、僕に敬語は要らないし、僕のことはフェイスレスって呼んで欲しいかな」
なんでも名前に関してはジャポンの漢字表記はレアであり、それを共通語にするとナオミツ=マダラギとなるため、なんとなく呼び難い。そのため、異名の方のフェイスレスで通した方が色々と楽だということである。
敬語の方はこの研究所にいる者は全員敬語で対応してくるので、少しだけ息が詰まる等とのことだ。
「まあ、"昔"から呼ばれ慣れた呼び名だからねぇ」
「そうか、そういうことならありがたくそうさせて貰うぜ」
「うんうん、それぐらい元気で前向きなのがいいよん」
すると斑木博士――フェイスレスは顎に手をやりながら口を開く。
「9月にヨークシンって言うとオークション関連かな? 奇遇だね。僕らもその時期に毎年ヨークシンに行っているよ」
「へー、そうなのか……何だって?」
それを聞いたレオリオはすぐに自身の知る情報を話した。その内容はクラピカが話していた内容であり、今年のオークションに幻影旅団が何かしらの形で来るかも知れないということだった。
「"
「呼びましたか?」
「うぉ!?」
するとレオリオの隣にハットにコートを着た姿の少女――ヴェロニカが現れる。ふらんと同じように縫い目があり、彼女は顔に大きな×字の縫い目が走っていた。
「幻影旅団って知ってる?」
「えっ……!?」
すると何故かヴェロニカは苦虫を噛み潰したような表情をすると共に驚いた様子でフェイスレスを見ている。
「えっと……
「………………………………そうだったっけ?」
フェイスレスは首を傾げ、暫く考え込む様子をしてからそう口を開いた。本当に心当たりがない様子である。
「3年前の7月ですよ。アイツら"13人"で突然襲って来て――4番と8番を博士が殺して追い返したじゃないですか」
「マジかよッ!?」
レオリオはぎょっとした表情でフェイスレスを眺めた。クラピカの復讐相手であるA級首の幻影旅団、それを二人も殺した存在がここにいるのだ。
しかし、当の本人は大したことでもないといった様子で口を開く。
「あー……そう言えばそうだったなぁ。今の今まで忘れてたよ。襲撃なんて月一であるからねー」
つまりはフェイスレスにとって幻影旅団による襲撃は、忘れる程度でしかない認識のようだ。
「まあ、それなら今年のヨークシンのために"ガブリール"くんを呼び戻す程じゃないか。今平和に教員やってるし、面白いからまだ暫くそっとしておこっと。あんがとね、ヴェロニカくん」
「いえ」
それだけ言うとヴェロニカは影に溶けるようにその場から跡形もなく消えて行った。その様子にレオリオは言葉を吐く。
「今の女の子はいったい……?」
「あ、ゴメン。紹介してなかったね。さっきの娘は僕の造った生体暗殺兵器のヴェロニカくんだよ」
「生体……兵器……?」
とんでもないワードがフェイスレスの口から飛び出したため、レオリオは思わず聞き返した。その様子にフェイスレスは少しだけ寂しそうな様子で会話を続ける。
「医師の卵に対して話すようなことじゃないんだけどさ。僕ぐらいになると敵も多いんだよねぇ。マシンガンと索敵装置で武装した部隊を普通に相手し続けるのも疲れるんだ」
「そ、そうなのか……」
月一で襲撃されると言っていたことをレオリオは思い出す。様子から考えるに比喩でもなんでもない事実なのだろう。更に言えばフェイスレスは大戦時代に化学部隊の司令をしており、生命工学という分野の専門家である。どちらかと言えば科学者寄りなのではないかとレオリオは考えた。
「ああ、大丈夫だよ。僕の造った生体兵器は市場に乗せてないし、基本的に一点モノしか造ってないからね。流石に科学の発展のために人類の幸福を潰すのは忍びないさ」
レオリオが、その言葉を聞いて内心でホッとしてしまったのは、小生意気だが根は優しい暗殺家の少年と接したからだろう。
「まあ、この研究所はちょっとショッキングかも知れないけど、君にも参考になると思うよ。まず、これだけは見せておきたいんだ」
そう言ったフェイスレスの前には大きな鉄扉があった。どうやらまずここに連れて来たかったようだ。彼に先導されるままレオリオは部屋へと入った。
◆◇◆◇◆◇
「なんだこりゃ……」
レオリオが通された暗い部屋はかなり広い空間であり、そこには幾つもの培養槽が置いてあった。
その中には大小性別人種様々な人間が浮いており、皆起きる様子はない。それどころかあまりに機械的であり、生きているのかすら怪しいと考える程で、どこかホルマリン漬けの標本を思わせる。
「分かりやすいのだと、そっちがプロテウス症候群でしょ。向こうのが進行性骨化性繊維異形成症で、その隣は原発性小人症だね」
よく見れば培養槽の中の人間は何処かしらに奇形を持つ者が多く、培養槽にはそれぞれ病名が刻まれた金属プレートが貼り付けられていた。
最初は標本なのかとレオリオは思ったが、近づくと胸が上下しており生きていることがわかる。かといって明らかに患者では無さそうだ。となると答えは自ずと出ている。
「うちの"検体"だよ。みーんなここで造ったのさ」
「……クローンって奴か?」
「うーん、クローンとはちょっと違うかな。テロメアの劣化もあるし、完全に人間と同じデータが取れるって訳じゃないし、データが偏る原因にもなりうるからね。薬物試験用ならそれでいいけど、基本的に特定の疾患を持たせた検体は一から造ってるよ」
レオリオはフェイスレスを見る目が化け物を見るようなものへと変わった。それを見たフェイスレスは口を開く。
「ひとつの医療技術を一般人にまで普及するのにさ。いったい、どれだけの臨床データと試行錯誤が必要かわかるかい? それこそ死体で山が出来るほど人体がいるんだ。それも治したい病気を持った人間のがね。だから僕は――」
「病気の人間を造ってるって言うのかよ!?」
その言葉にフェイスレスは小さく笑う。そして、手でサングラスを外すと鋭く研ぎ澄まされた眼光をレオリオにぶつけた。老人とは思えぬ光を放つ眼光により、レオリオの顔に汗が浮かぶ。
「ラットやゴキブリでやる分には誰も咎めないだろ? それとも君は病気で苦しむ患者さんに直接、実験や解剖させて欲しいと言うのかい? 僕にはそうしないだけの金とコネと技術がある。それだけの話だよ」
「ぐっ……」
レオリオは何も言い返せなかった。フェイスレスのしていることは感情では間違っている。しかし、同時に味気ない程まで正しくもあったのだ。
フェイスレスは再びサングラスを掛けると、首を上げて天を仰ぎ見た。無論、そこに見えるのは天井だが、彼は遠い何かを見ているように感じた。
「僕は"今度こそ"自分が正しいと信じてるんだ。きっと僕の研究は誰かを助けるための役に立ってくれる。そう思いたい」
そう呟いたフェイスレスの言葉はどこか寂しげで、何か取り返しの付かないことを悔いているようにも見え、レオリオの頭は冷えていった。
「でもねレオリオくん。君の考えは大切にしなさい」
フェイスレスは意外な言葉を言い放ち、レオリオは目を丸くする。
「こんなものさ。君がいつか治す患者さん達にはなーんにも関係ないことだもん。黒いものは全部、僕たちが飲み干して、患者さんには笑って貰えればそれでいいのさ」
そう言ってフェイスレスは小さく笑う。それは嘲笑うようなものではなく、サーカスのピエロのように誰かを笑わせるためのものだとなんとなく感じた。
「それに君の夢はひょっとすると僕の夢よりも大変かも知れないよ。病院内外の権力闘争、責任の方向性、マフィアに金を渡してまで行われる他の医師や病院からの嫌がらせ、はみ出し者は皆から叩かれる。タダで特定の病気を治療する医師になりたいなんて夢を叶えるには金以上のやっかみごとが多過ぎる」
「………………」
それにレオリオは全く返す言葉がなかった。そういったこと全てを跳ね退けたからこそ、フェイスレスという男がこの場に立っていることを雰囲気から察したからである。
「それでも君は夢を叶えたいんだろ?」
「ああ!」
レオリオはそれだけは力強く答えた。彼を突き動かすのは過去の後悔と怒り、そして容姿に似合わない善意だ。それだけでプロハンターになった彼の意思は筋の通ったものであった。
「それなら、自分を信じて"夢"を追い続けていれば、夢はいつか必ず叶う――と、いいね。少なくとも、きっと君ならいい医者になれると僕は思うよ。僕みたいな医者モドキじゃなくてね」
そう締め括ってフェイスレスは培養室を後にし、レオリオもそれに続いた。
………………誰だこいつ?(お前が言うのか)
~主にフェイスレスが変わったところ~
・改心済み(最終回後)→口調がやや穏やかで真面目
・顔無し→信仰無し Change!
・『分解・溶解』
人形
機械
↓
人形
機械
人体 New!
・念能力習得 New!
~投稿動機~
いやー、からくりサーカスのアニメもやってるし、やっぱり面白いなぁ。きっとハーメルンにも二次創作があるんだろうなぁ、読も。
からくりサーカス 小説検索→7件
は……?(迫真)
あっ、ふーん(察し)→作者の小説投稿動機は読みたい物が無い時
うーん、投稿するにしてもキャラ絡ませたり、普通にぶちこむのも味気無いしなぁ……なんか微妙に人形っぽいので丁度良いの――。
あったよ!(部屋の棚に!)
\フランケン・ふらん/
でかした!
あ、そう言えばこの個人的に最高の漫画のひとつなフランケン・ふらんは二次創作どれぐらいあるんだろうなー(ポチッ)
フランケン・ふらん 小説検索→1件
キェェェェェ!(発狂)
要するにいつもの行き当たりバッタリでございます。作者は構ってちゃんのウサギちゃんなので感想とか投げるととても喜び、それを餌に成長します。