兄貴達が夏季休暇で家に帰って来た。
ビルとチャーリーは仕事が忙しいらしくて家族勢ぞろいとはいかなくても家の中は大賑わい。
母さん一人じゃ忙しかろうと料理以外の家の仕事は皆でお手伝い、パーシーは言うに及ばずでジョージ・フレッドも服の干し物を担当してる。
俺たち皆は父さん母さん大好きで、母さんの飯が大好物で、我が家以上に幸せなところはないと断言しよう。
折角ホグワーツ現役生徒がいるので子供の家に引っ張って行ってみれば、三人共あれよあれよの人だかり。主に俺と同い年の奴等はホグワーツの生情報が欲しいのだ。
来年から俺も一年生、けど別に俺はホグワーツの情報はいらん。未知の場所で冒険したいのであえて聞かずにゴーだ。
「君らしいと言えば君らしいが、情報は持っていても損はないぞ?」
「やだよ、あらかじめ知っていたら楽しさ半減じゃないかドラコ。」
「ロンの言う通り、未知なるものへの挑戦の方が楽しそうだ。俺は俺の目で見て感じたことを評価するよ。」
「話が分かるな~セオは。来年嫌でも分かるんだしよ。」
-生き残った男の子-との同学年はどれほど大変なのかな。
平和は今の内満喫しないと来年から大忙しだし、ヴォルデモートをどうすっか、出たとこ勝負になるけど別にいい。
今じたばたしてもどうしようもないもんな。
来年から起こる事を大雑把ながらも知っていても、ロナルド・ウィーズリーの日常は今日も平常運転だ。
「ロン!ジョージ・フレッドの兄貴達がクィディッチ教えてくれるって!!」
「・・マジか・・」
ビンセント・グレゴリーコンビがお目目キラキラしながらなんかトンデモごとを言ってる。
「ジョージ・フレッド!ここは魔法はご法度だぞ!」
子供の家は魔法使いのじいちゃんばあちゃんが常駐していても基本はNG,使っていいのは講師の先生が来てレクチャーした内容の物だけで、子供の杖の持ち込みも、じいちゃんばあちゃんに借りるのもアウトで、やった奴は一回であっても子供の家出禁だ。
「つまらない事を言ってはいかんぞ弟よ!」
「そうとも!冒険をして一つ大人の階段をだな・・」
「・・俺の天使たち唆す馬鹿は身内であっても天国の階段強制的に登らすぞこら・・」
「「・・ごめんなさいロン!!皆ご免!ルシウスさんかシリウスさんの許可出たらやろうね!!」」
ホグワーツのいたずら仕掛け人とて命は惜しい!!!
久々の弟の激おこはマジで怖い!フィルチや他の教師の罰則がマジ可愛く思えるほど弟の天使達への愛情は怖いのだ。
ジョージ・フレッドを久しぶりにガクブルさせたけど「中庭でやっていいかどうか許可貰うぞ。」
なんやかんやで男の子・・ドラコとセオがやりたい!!って顔してるし、きちんと大人に見てもらうか。
「流石は我が弟!!」
「早速ルシウスさんにゴーだ!!!」
双子のテンションもマックスで、子供に激甘のルシウスさんとシリウスが動いてあれよあれよと三日後にはクィディッチ練習、一週間後は紅白戦することになった・・なんだかな~「・・平和だな~」
「あら、ロン君は随分とおじいちゃんな事を言うのですね。」
「いや~晴れた日に皆でクィディッチ、出場してる奴の家族も弁当持って観戦に来て応援合戦していいな~って思っただけですよナルシッサさん。」
「貴方は出ないのロン?」
「俺は楽しんでる皆を見るのが楽しいんだよ母さん。」
「だったらネビル君やパーシー達とドラコ君たちの応援を・・」
「子供の家の奴等はみんな大切な奴等だ。どっちかの応援はできないよ。」
本日子供の家は大開放、皆クィディッチで盛り上がっているけど俺とナルシッサさんとモリ―母さんは少し離れたところでまったりとお茶会。
俺がまったりとしてるのはさっき言った理由だけど、ナルシッサさんはドラコが危ない事をしているようで応援どころか止めそうなので、ドラコの楽しさに水を差さない様にとあえてみないらしい。
「モリ―母さんはいいの?ジョージとフレッドが出てるのに。」
紅白チームの両キーパーはジョージ・フレッドで手加減する約束でいざ危なくなったらお助けにも入る。
今回のクィディッチにスニッチはなく、クァッフルも子供用の柔らかい素材で速度も公式の速さの半分。それでも子供達は夢中で試合をし、箒に乗れない子も日頃から仲の良い子を応援して大盛り上がりだ。確か終わった後はお疲れさん会でちょっとしたパーティーがあって、夕食も食べて終わるんだっけ。
「私の分までパーシーとジニーが応援してくれているからいいのよ。それよりもナルシッサ。」
「何かしらモリ―?」
うちとマルフォイ家が付き合いだしてもう5年が経って、今では母親同士が名前呼びしてる仲だ。
初めは誰が見ても犬猿の仲だったのが変われば変わるもんだ。
でもいい事だ、ナルシッサさんはおっとりとしたママさんで、モリ―母さんは肝っ玉母さん、案外馬があって仲良くなるんじゃねえかな~の見積もりが当たって俺は嬉しい。
時間があればジニーも入れた三人で刺繍や編み物してるし、ネビル入れた四人でお花の話してるし。
ネビルはそんじょそこらの女より女子力が高く、こと園芸の話になると輝いて超可愛い。
なのでシリウスに話して温室作っってもらったら他の女子たちも食いついてきてネビルを中心に可愛い花々を育ててる。
今日の優勝チームにはその温室で栽培された花の束が贈呈される予定だ。
束作りもネビルが率先して作ってな。
一時は魔法が使えないスクイブかもしれないと泣きながら話してくれたことが嘘のように。
「僕がスクイブだったらばあちゃんガッカリしちゃう・・」
泣いてた理由が自分の事よりもばあちゃんの心情を思いやって泣いてるってどんだけ天使なんだよネビルは。
「ネビル、この本やる。」-綺麗な魔法-
「この本には花を咲かせる魔法がある。」
「でも・・僕・・」
「いいから、やってみようぜ。」
落ち込んで自信喪失のネビルを隠れ穴の俺ん家にこっそりと連れ込んで裏庭に連れてった。
他の奴等には話さなかった事を俺だけに話してくれたのだから、何とか力になってやりたくて。
「これ俺の杖だけど、忠誠心はあんまりないらしい。気に入った奴には力貸すってオリバンダ-さんが言ってた。」
「・・僕みたいな・・」
「いいかネビル、俺はお前の事が好きだ、大好きだ。お前は俺の天使だ!心の綺麗な優しい真っ直ぐないい奴だ。自信持て、俺が保証する!お前は魔法使いだネビル・ロングボトム!!」
僕が・・ロンにとっての天使?もっと凄いドラコやセオドール、可愛い妹のジニーもいるのに・・僕なんかがロンの・・「ふうっく・・ひっぐ・・」
「泣くなよネビル、力抜いて、花が咲いたら嬉しいだろ?満開のお花畑をイメージして・・」
嬉しくて泣いて・・呆っとした頭にロンの優しい声が浸み込んできた。その言葉のみに従ってみれば、いつの間にか周りの芝生にお花が沢山咲いてた。
呪文を唱えた覚えはない、ただ綺麗な花をロンと見たいと思ったら「・・咲いてる。」
「ああ、俺の詠唱の後に一語一句間違えずに唱えて杖が反応してた。これはお前が咲かせたんだよネビル。」
「嬉しい・・嬉しいよ・・ありがとうロン!!」
「わっと・・おめでとうネビル、今日が魔法使いのネビルの誕生日だ。」
「魔法使いの・・ふふ、うれしい。」
それは俺達が9歳のハロウィンの寒い日の出来事だった。
大喜びをしながら俺に抱き着いてきたネビルの体はお日様のいい匂いがして一生守ってやりたい気持ちが大幅UPした。ぐしゃぐしゃに泣いても可愛いので黙って抱きしめて。
泣いて喜んだネビルはその晩早速ばあちゃんのオーガスタさんと叔父さんのアルジーさんに披露して大喜びをされたと、オーガスタさんと共に隠れ穴に来てお礼がてら教えてくれた。
そのときにオーガスタさんが俺と二人きりで話がしたいというので、庭のテーブルで話をした。
それは今のネビルの両親の話だった。
今二人は聖マンゴにいる事だった。理由も話してくれた、死喰い人によって心を壊されて今も治らない事、そんな両親を週に一度ネビルが欠かさずにお見舞いに行っている事も全て・・泣きそうになりながらも。
「・・オーガスタさん、俺にとってはネビルは天使で絶対に守りたい人達の一人です。
だからどんなことからも守るよ、あいつを虐めようとする奴から、あいつの悲しい心からも守ってやる。絶対一人になんてしない。ドラコもセオも、ビンセントもグレゴリーも俺の家族皆ネビルの事が大好きだ。」
「そう・・そうですか・・孫を・・これからも・・・」
不覚にも涙が出て止まらない・・孫と同い年の子を相手に・・それでも話せてよかった、
老い先短い自分が死んでしまっては、残されたネビルがどうなるかと心配でつい厳しくしつけようとした。
それが裏目に出てしまったが、子供の家に行ってからは少しづつ変わっていった。
最初はあのマルフォイ家が作ったものと信用しなかったが、アーサー一家が携わっているというのを聞いて、ウィーズリー家の子供がいる時に連れて行ってみればネビルは自分の後ろに隠れてしまった。
これでは友達が出来ないと嘆きそうになった矢先「超可愛い!!」
叫んだ男の子が今目の前にいるロナルド・ウィーズリーだった。
「俺はロナルド・ウィーズリー、家族と親しい奴はロンて呼ぶ。君の名前は?」
優しく辛抱強く、後ろに隠れてしまったネビルを急かすことなく聞いてくれた。
「僕・・ネビル・・ネビル・ロングボトム・・」
「そうか、ネビルって呼んでいいか?」
「・・うん・・いいよ・・」
か細い返事にでも嬉しそうに話してくれた少年に助けられて沢山の友達が出来て、今では誰とでものんびりとした話し方ではあるが話せるようになってくれた。
俺とオーガスタさんのお話は一生内緒だ。ネビルだけには両親の事を聞いたことを伝えた。
「辛かったら俺のところにいつでも来いよ。」
あいつの心の避難所になれたらと願って。
泣き笑いしたあいつは、本当に可愛い。
こんな風に誰かと繋がって、たくさんのダチを作っていって、楽しい学園生活送りたいもんだ。
「・・それ難しいよ?」
分かってるよお人好しの神様、ヴォルデモートが邪魔すんだろ?
「僕はそこは助けてあげられないよ。」
そこも分かってる、でも一つだけ欲しいものが出来た。
「お!ようやく?なんだい!!チート級の魔法?伝説の武具?」
それくれちまっていいのかよ、そうじゃなくて俺が欲しいのは「・・・・・・」だ。
「・・それ君が考えた?それとも先輩の入れ知恵?」
俺んだよ、あの邪神だったらもっとえげつねえもん頼むと思うぞ?
「・・魔法族が聞いたら君の事危険視すると思うよ?まあいいか、-対象者は一人-これが絶対条件だ。」
分かってる、使用対象者は一人だけだ。
俺の-スキャバーズ-は別の方法をとる。
-ネズミのペット-として一生を終えさせること。
「お前が俺の側を離れなけらば一生守ってやる。」と飼い殺しの方法を。
お人好しの神様がおっかない顔するほどの物を手に入れた。
形は素焼きの小瓶でポケットに入るサイズの物で出してくれた、これで持ち歩きも便利だ。
来年のホグワーツが楽しみだと思ってたらもう11歳、6月のドラコの誕生日に合わせて教科書や必要な物を皆で買いに行った・・なんとまたしても俺が買ったガリオンくじが当たって50ガリオン入ってきた。
流石におかしい!神様の奴の不正行為かと抗議したら「それ本当に君の強運だよ。」と保証された。
邪神野郎と違ってあの人嘘つかんし、気兼ねなくダイアゴン横丁を満喫してアイスクリーム屋で皆でワイワイ食べたのはいい思い出だ。
来年は子供達だけで来よう、パーシー辺りを保護者役にして。
俺はすっかりと忘れていた。この世界の-本当の主人公の-の境遇を・・悲しい生い立ちを。
次回ようやく原作開始です。