『私は存在してはいけない』
※デマーシアとガレンに幻想を抱いている人間が執筆しています

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if-もしも魔力に目覚めたのがラックスではなくガレンだったら

 ガレン・クラウンガードは規範が服を着て歩いているような男だった。デマーシア貴族の長男として生まれ、王家に仕える崇高な使命を持っていた。そして何より、生まれながらに定められた使命に心から恭順していた。

 

 破ったところで罰則のない規則も律儀に守った。

 

 だが、たった一つの目覚めが彼の運命を永遠に変えてしまう。

 

 デマーシアの法は語る。魔法とは邪悪そのものであると。心から信じて生きていたガレンには、自分が魔法使いになった事を受け入れられずにいた。

 彼に妹ほどの柔軟性、規則を疑うような思考があれば話は違っただろう。

 

 要するに、真面目過ぎたのだ。上手に嘘をつける男ではなかったガレンは、妹に態度の変化について尋ねられた。

 ガレンはあいまいな返事を返すと、ラックスはまあいいわとそれ以上を追求しなかった。

 

 『魔法使いは邪悪である』そして『私は魔法使いである』ならば、必然的に『私は邪悪である』という事に他ならない。彼は一つ目を否定するという発想に至らず、二つ目を最初こそ否定し続けた。魔力の持ち主が自分以外の誰かであったら目をそらし続けることもできたかもしれない。だが、自分自身が持っている魔法の力は日に日に大きくなり、無視するのも限界に達した。つまり、必然的に答えは。

 

 デマーシアの中に邪悪が潜むなら、滅ぼされねばならない。

 悩みに悩みぬいたガレンは一つの決断を下そうとした。

 たった一人のメイジを殺す、それだけのことが彼にはできなかった。

 

 何度も試みては止める中、妹にその様子を見られてしまう日が訪れた。ラックスは慌ててガレンを止めた。

 最近様子がおかしいと思ったら。何をそこまで思い詰めているの。

 ガレンは答えられなかった。ラックスは深く追求しなかった。私は味方だから、とだけ告げた。けれど、彼女は真実を知らないからそう言えるのだ。

 

 その日からしばらくして、ラックスが何かを調べていることに気づく。魔法についてだった。気が気でなかった。知っているんだろうか。気づいているなら何故通報しないのだろうか。

 

 全ての人々に否定される夢を何度も見た。主であり何より親友でもである王子ジャーヴァン四世に「私を殺してくれ」とまで言う始末であった。当然ジャーヴァンは理由を問うた。ガレンはデマーシアに相応しくないからだと答えた。ジャーヴァンは笑った。ガレンがデマーシアに相応しくなければデマーシアは無人になってしまう。

 結局秘密は明かせなかった。

 

 

 長い間悩み続けたガレンだが、彼はついに公衆の面前で魔力を解放してしまう。罪なきデマーシア市民を襲う者を止めたのは事実だが、それでもガレンが犯罪者と呼ばれるには十分すぎた。

 

 『犯罪者』は裁判の場でこう言った。邪悪なのは私だけだ、家族には手を出さず私だけを殺してほしいと。堕落する前に殺してくれ。デマーシアの為に。

 

 面会に来たラックスは、ガレンの馬鹿と叫んだ。邪悪とか化物とかならともかく馬鹿と呼ばれる理由が思いつかなかった。ラックスは言った。自分を殺す法に、何故従おうとするの。それって自分の命より大事なの?

 ガレンは答えた。自分がデマーシアの民に害をもたらすことが耐えられないと。

 

 知ってたわ。魔法使いだってこと。ラックスはガレンにそう言った。

 それなら何故明かさなかった、私を差し出せばせめてラックスだけは守られるだろうに。

 ガレンの言葉にラックスはまた馬鹿と叫んだ。兄を殺して得る名誉なんていらないわ。

 いっそ逃げちゃいましょ、どこかへ。

 

 家族の悪を見逃す行為もまた邪悪ではないか。ガレンはそう思いながらも、心揺れた。死など恐れない男だと周りには評価されているが、それでも何も思わないわけではない。

 

 しかし、結局ガレンは牢に残ると決意を固めた。ラックスは本当馬鹿ね、と泣きながら笑っていた。

 

 

 ガレンの家族思いな態度、そして市民の命を救った行動から殺さなくてもいいのではないかという世論が流れ始めた。

 彼は知らず知らずのうちに『本当に全ての魔法使いは邪悪なのか?』という疑念を周りに与えていたのだ。

 

 そして、結局、ガレンは許されることになった。

 

 当時のデマーシア王子ジャーヴァン四世の「ガレンが真に邪悪になったら王族として、友として殺してでも止めてみせる」という言葉は長く市民に語り継がれ、伝説として人々に愛されている。




最初2人で脱走するエンドも考えてました。けれど、ガレンには使命に殉ずる人であってほしかった。

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