蟲の女王   作:兼無

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待っていて下さった方には申し訳ない。
大幅な改変です。11以前に変更はありませんので、追って読みなおす必要はないかと思います。


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 それにしても。

 

「他のマスターもこんなに多忙なのか? 私だけなら聖杯とやらを呪ってやりたいよ、まったく」

 

 言峰教会から出てまだ五分と経っていないのに、そいつはそこに立っていた。

 

「よう、また会ったな嬢ちゃん」

 

 あの青い軽装鎧にはいやというほど見覚えがあったし、真っ赤な槍が通り魔ではないと教えている。まあ通り魔の類ではあるのだけれど。

 

「随分と暇なようだな、ランサー」

 

 ランサーが槍を構えて静止した。

 サーヴァントぐらいは呼ばせてやるぞ、と言う事だろうか。

 お喋りには乗ってくれないらしい。取り敢えずとばかりに回路に火を入れる。

 

「さあ、ライダーを出せよ、お嬢ちゃん」

 

 私をライダーのマスターだと思っている?

 ランサーペアの戦略は敵戦力の正確な測定。故に消去法でアサシンのマスターと見抜いた上で声を掛けてきたかと思ったがそうではないようだ。

 家へ襲撃してきたことから間桐を参加者と知る者。にも拘らず私がマスターだと思っている者。

 現段階で特定は不可能だが、一人、心当たりが出来た。

 背後に立つ教会を振り返ろうとして、やめる。

 目の前のランサーがそれを許すとは思えないし、

 

「…………タイミングが際どすぎる」

 

 仮に言峰がそうならば、もう少し疑われない機会を狙うだろう。

 

『どうする、皐月?』

『考える。後は合わせろ』

「なんだ、サーヴァントも呼ばずに死ぬのが望みか?」

 

 ぐぐ、とランサーの槍に力が入る。

 

「いや、勘違いをしているようだから言っておくが、私はマスターではないぞ」

「…………おいおい、よせよ。こんな夜更けに監督役の所まで出向く以上聖杯戦争の関係者には違いないだろうが」

 

 舌打ち混じりの返答はつまらない会話で興を削がれたことに対するものだろう。

 ランサーは好戦的な性格らしい。

 

「それは否定しないが。教会のスタッフかも、とか考えなかったのか?」

 

 言峰の卒の無さは知っているが、聖杯戦争にまつわる一切の揉み消しを一人で担うのは無茶だ。慣例として教会からこの時期のみ送られてくる者達が居ることを私は前もって知っているし、多少頭が回れば予想することもできるはずだ。

 システム上必要な要素ではないとしても、聖杯戦争を円滑にすすめる上で、監督役とそのスタッフに好き好んで穂先を向けるマスターはいない。

 これはつまり、私を教会とは無関係だと断じるに足る情報を持つ者か、その程度の判断もできない阿呆でなければ起こせない状況。

 

「…………スタッフねえ。嬢ちゃんはそうなのかい?」

「違うから、まあお前の行動はそうおかしくはないんだが」

 

 そうだと言ったところで聞きやしないだろうし、証明するためにのこのこと教会に出戻っても、そもそも虚言なので意味が無い。

 良くて監督役から減点を貰う程度。悪ければその場で制裁。

 手詰まり気味な状況では、時間稼ぎ程度の嘘しか思いつかない。

 一方ランサーは私の肯定に気を良くしたらしく、その表情に獰猛さが宿る。

 随分とせっかちなようだ。

 

「しかしマスターじゃないとはな。あんまり無抵抗のガキをやるのは面白く無いんだが」

 

 形だけの構えだったランサーの四肢に力が込められる。

 必至の幻影が網膜に焼き付く。こんなところで死んでいられるか。

 考えねばならない。

 ハサンの言を信じるなら、ハサンに頼るのは得策ではない。ハサンではランサーに抗し得ない。

 しかし、現状は他の手段を許さない。

『ハサン、頼めるか?』

『無論、命とあれば。しかし勝ちの目が無いとまでは言わないが……………』

『いや、防戦一方でも構わない。それと悟られるのは不味いかもしれないがな』

 これまでに二度、ランサーの戦闘に遭遇している。

 一度目は放課後の学校。衛宮という闖入者によって戦闘は中断されたが、ハサンはランサーを手抜いていると評した。

 二度目は間桐の家。ライダーと相対したランサーはあっさりと撤退を選んだ。

 彼らの戦略は徹底した他陣営の戦力査定。

 ここで間違える訳にはいかない。

 乱雑に象を成す思考が、論理的に、直感的に事象を結びつけ、或いは切り離す。

 脳裏に引っかかる懸念はタイミングの悪さ。

 つまりは言峰綺礼。

 半信半疑だが陽動は打っておくべきだ。

 

「冗談だろう? ただ、命を取られるぐらいなら、マスターぐらいやってやるさ」

 

 強くランサーを睨み返す。

 

「──────蟲毒の壷で我は謳う──────」

 

 私が選んだのは召喚を模したアサシンの実体化。

 ランサーを打倒するならばハサンの気配遮断は潰せないアドバンテージだが、ランサーとの引き分けが目的の今は無用だ。

 むしろ不意の一撃を根に持って追撃などされてはたまらない。

 マスターではないという私の虚言を嘘にしない為にも、この欺瞞は必要だ。

 こっちはあまり期待していないが、ハサンの姿はまあセイバーに見えなくもないだろう。 クラスをアサシンと侮ってこの場で勝敗を決しようと逸られては困るのだ。

 戦力査定というだけならば、藪蛇を嫌ってランサーが退く事も見込める。

 とは言え、わざわざ単騎で間桐の屋敷にやってきた事を考えれば他所でも同じ事をやっている可能性がある。

 もし私達がランサーに取っての七騎目ならば、クラスを見抜かれるも同然の振る舞い。

 ことアサシンというクラスにおいてその所在を明確にするのはデメリットでしかない。

 そのことに満足して引いてくれるなら御の字、欲を出してこの場での打倒を視野に入れられた場合は、全力で戦って無様に逝く事にしよう。

 そうならないよううまく事を運ぶのが私の役目なのだが。

 右手の令呪に重なった蟲に許容外の魔力を注ぎ込む。令呪の起動のカモフラージュになればいいが、サーヴァントというのは目が良いらしい。

 普段の私ならまずやらない無策。苦い笑みが溢れるのも已む方無しだ。

 魔方陣を組まず、詠唱すら省略した強引な契約だ。成立させるための条件は魔力の量と加速。

 過剰量の魔力をきちんと変換するために、最悪の効率で空気中の水分を操作する。

 熱量への介入が最も容易そうだが、

 

『それ、熱くないんだろうな?』

 

 ハサンのわがままでボツになった。

 

『…………………霊体に影響が無いようちゃんと取り計らう』

 

 ハサンの要求に応えるべくプロセスを変更し、魔術行使を準備する。

 要は召喚を模した靄が出ればいいのだ。難しく考えるな、私。

 限定礼装『蟲の匣』を起動。左腕を為している蟲達が形を変え体内を駆け巡る。

 メイン六十本とサブ二十三本三列からなる本来並列な魔術回路が、左腕に擬態した蟲と刻印虫で作り上げた擬似的な回路で直列した円陣に組み直される。

 ほぼ間を置かず限定礼装『蟲の檻』から流入するオドが、歪な構造の魔術回路を自壊寸前で疾走する。

 あとは解き放つタイミングだけを間違えなければ形にはなるか。

 過負荷に刻印虫の回路が焼き切れ、許容外のオドの奔流に回路が軋み悲鳴をあげる。

 騙す以上は迫真でなければならない。多少の痛みは覚悟の上だ。

 

「――――告げる。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 一息での詠唱には何一つ言霊など乗っていない。

 ほぼ同時、前方一メートルの地点、二メートル四方に魔術的手法で集められた水分子が飽和水蒸気圧に従って科学的に液化する。

 幸い周囲は花壇に囲まれて塵には恵まれている。過飽和は避けられそうだ。

 加減を誤らぬよう、環境への操作を断続的に行う。

 現象の準備こそ科学を逸脱しているが、現象自体は科学の範疇。エーテルで構成されるハサンには影響するまい。

 そこまでの気配りが必要なのか甚だ疑問だが。

 空気の流れを操作し、靄を下に押し流す事でハサンを喚び出した状況を視覚的に再現した。

 水はともかく風の操作は専門外。ましてこういう細々とした魔術は最も私が苦手とする分野。実に酷い魔力効率だ。

 晴れていく靄の中、ハサンの姿が見える。

 

『皐月は舞台の裏方とかできそうだな』

 

 余裕綽々といった風情のハサン。いっそ楽しそうな気配すらするのは気のせいではあるまい。

 

『どこで身に付けた、そんな知識』

 

 慣れない魔術に疲弊しきったマスターを放って一体何を考えているのか。分からなくはない。しかし、後は任せておけとどうして素直に言えないのだろうか、こいつは。

 

「サーヴァントアサシン、召喚により参じた………………などと呑気なことを行っている場合ではなさそうだな」

 

 油断なくランサーを見据えたまま、ハサンは剣を抜く。

 見抜かれていればお笑いにしかならない茶番だというのに、なかなか堂に入った演技だ。

 

『お前だって役者になれそうじゃないか』

『………………皐月は案外根に持つな』

 

 軽口を叩きながら、私の目はランサーを凝視している。

 

「随分と待たせてアサシンとはな。ちったあ楽しめるんだろうな、てめえ」

 

 果たしてランサーには気づいた様子がない。

 気付いた上で気付かない振りをしているのか。

 小手調べと言わんばかりに払われる横薙ぎの一撃をハサンが手甲で摺上げた。そのまま一歩前に出るハサンを引き戻した槍の穂先でランサーが牽制する。

 見る限りハサンの動きに淀みはなく、またその表情にも陰りはない。

 

「ま、仮にも英霊ならこれくらいはできるわな」

「返す言葉もないな。あまり侮っているとあらぬところで命を落とすことになるぞ、ランサー」

 

 楽しげに鼻を鳴らすランサーと、憮然とした態度のハサン。

 放っておいても大丈夫そうなのでさっさと逃げることにする。

 ゆっくりと下がる私を視野にいれつつ、ランサーはハサンから目を逸らさない。追わないでくれるらしい。

 

『一切を任せる。適当なところで退き上げてこい』

『分かっている』

 

 確かな返事を背に私はその場を後にする。撤退を前提としている以上、私がこの場に留まってもハサンの邪魔にしかならない。

 あとはハサンに期待するとしよう。

 

 

 

 

 

「サーヴァントを置いて自分はさっさと逃げるってか。大した奴だな、お前のマスターは」

 

 くるりと槍を取り回し、拳一つ分、ランサーは槍を短く握った。

 

「居ても邪魔にしかならない。弁えていると俺は判断した」

「そりゃどうだかな」

 

 軽口を叩きながらもランサーの槍は止まらない。

 ランサーがわずかに短く槍を握り直したのは、一歩前に出た俺が懐に入るのを警戒してのことだろう。

 逆に言えばその僅かな握りの差で、俺の動きに対応出来ると踏んだということだ。

 仮にも英霊、その目測に誤りは無いだろう。俺もその対応で正しいと判断した。

 皐月がどう見たかはともかく、やはりランサーの技量は俺を上回っている。

 リーチの差は如何ともしがたく、俺がランサーに脅威を与えるためにはあの槍に相対してなお間合いを詰める必要がある。

 ものは試しと無造作に更に一歩を踏み込む。

 

「っとぉ」

 

 とたん鋭さを増す突き。俺は後退を余儀なくされる。

 たった一歩の距離がランサーの質を大きく変える。

 直線的で早いだけだった突きは防ぐことすら難しい槍衾に姿を変え、いささか大振りだった払いは、腰を梃子にした重い物へと切り替えられる。

 やはりこれでは届かない。次はもう一手凝らす。

 牽制の突きを捌き、払いを逸らし待ち続ける。

 そうして待ち続け、極稀に予告なく現れる本命、心臓狙いの一撃を半歩横に滑ることで中心線からずらし半身に躱す。

 それが槍である以上、加えられる動作は払いか引き戻し。

 ランサーが選んだのは後者で、俺の要求を満たす物。

 引き戻される槍と共に一歩を踏み出す。

 ランサーの眼がわずかに鋭さを増した。

 この位置ならランサーはまだるっこしい牽制などしてこない。必殺を意図した槍ならば、その軌跡を絞る事ぐらい容易く、そして今の俺にはランサーの次の手に対応する用意がある。

 予想される全ての攻撃を払い、或いはかわせる運動。それらは更なる一歩を踏まえた物。意識は更に研ぎ澄まされ、視野はランサーの両腕に集約される。

 が、その一撃がこない。

 代わりにランサーが一歩下がった。

 たった一歩下がるだけで、俺が積み上げた思考を無駄にできるのだから随分と割に合わない遊びだ。

 

「なかなかどうして、やれるじゃねえか、アサシン」

 

 そう、遊びだ。ランサーにやる気があれば、サーヴァント中最速と謳われる脚力を活かさない手はない。

 にも関わらず突っ立ったまま槍を振り回したのは、俺の戦力を測るため。

 しかし、皐月が予想するように敵サーヴァントの実力を測り、聖杯戦争を有利に戦おうなどとこの男は思っていない。

 武人でこそないが、生き残るため武芸を磨いた身には分かる。

 己が全力で戦うに足る相手か、戦って楽しめる相手かどうか、ただそれだけしか頭にないのだ。

 

「手を抜かれた状況でようやく、というところだがな」

 

 ランサーの言葉は俺を下に見た物だが、この条件下では俺がランサーに届かないのは事実だ。

 ランサーが手を止めたのは疲労からではなく、取り敢えず真面目に戦うに値すると俺を評したから。

 つまりはここからが本番で、俺はそんなものに付き合うわけにはいかない。

 

「素直じゃねえか。なんだ、あんなマスターでも逃がせればそれで満足ってか?」

「そのために喚ばれたのなら、役割を果たすのみ。命に忠実なのがアサシンの売りだ」

「はっ、会ったばかりの奴になんだってそう忠義立てするんだかな。名誉の戦死とか好みなのかい?」

 

 なんとか顔には出さなかった。欲しかった言葉をランサーから引き出した。

 皐月の懸念は取り敢えず解消されたと見るべきで、これ以上ランサーに付き合う義理はない。

 時間にして三分ほどは稼げただろうか。皐月の身体能力なら十分距離は取れているだろう。

 

「言っている意味が分かりかねるな。それでは今から俺が死ぬと言っているようだ」

「………………そう言っているつもりだが?」

 

 ランサーの肩に担がれていた槍が、再び穂先を俺へと向く。

 慌てることなく手は懐に。かつて忌避し、さんざん面倒をかけてくれた物に助けられるとは不思議なものだ。

 一切を任せると皐月は言った。ならばそれに応えよう。

 

「生憎だが帰って来いとマスターが仰せでな」

「お、おい、どこにいったてめえ」

 

 あたりを見回すランサーの動きは奇襲に備えた見事なものだが、生憎俺は一歩も動いていない。

 ただ、見えないだけだ。

 エデンの果実に魅せられれば、英霊といえども洗脳は免れない。

 とは言え破ることが出来ない物ではない。

 今のうちに引き上げるとしよう。

 

 

 

 

 

 強化した体を駆りひたすらに走る。

 人気のない道を選んでいるとはいえ、誰かに見られでもしたら都市伝説になりかねない。

 認識阻害の魔術もこれだけ派手に動きながらでは満足のいく成果を挙げてはいないだろう。

 遠坂の事をとやかく言えないな、と笑おうとして失敗した。

 心肺機能は蟲の補助を受けてかろうじて機能していると言っていい。

 ただ速く走るという行為を命じられた肉体は無駄な動作を許容しない。

 はぁはぁと浅く早い呼吸はまるっきり犬か何かで、我ながら浅ましい限りだと自嘲したところで、走り疲れた犬のように私は大きく姿勢を崩してつんのめった。

 顔から倒れこむようなことこそ無かったが、時速五十kmで抱きしめてくれたコンクリートは綺礼の拳ぐらいには優しい。

 ごろごろと転がった挙句、壁にぶつかって止まった私。

 強かに打った肩を押さえながらずるりと身を起こす。

 一体なんだって言うんだ、全く。

 

『ハサン、一声かけろ!』

『すまん、忘れていた』

 

 もちろん転んだ八つ当たりをしたわけではない。

 馬鹿な演技に魔力を使い果たし、なけなしの魔力を強化と認識阻害に割いて走っているというのに、突然ハサンにごっそり魔力を持っていかれた。

 強化が切れれば当然私の脚は速度に耐え切れずもつれる。受け身を取れたのは一重に綺礼のお陰と言えるだろう。

 こんな状況に置かれているのは綺礼のせいなのかもしれないのだけど、取り敢えず感謝してやろう。

 魔力切れでは必死に走ったところで思うように距離は稼げない。とはいえ二、三分走ったから距離にして三キロ弱の余裕はある。

 サーヴァントがどれくらいの速さで走れるのかなんて知らないが、ハサンに返答する余裕があったところを見れば歩いたって問題あるまい。

 

「いったい何に使ったんだ、あいつ」

「宝具を使わせてもらった」

 

 独り言に返事があるのはもう慣れた。

 

「無事で何よりだ。にしても宝具を見せたのはやりすぎじゃないか?」

 

 任せると言ったのは私だが、そこまでのサービスは予期していない。

 他の参加者はいざ知らず、私にはボーナスステージがあるかもしれないのだ。伏せておける手札は多いに越したことはない。

 

「向こうはそれと気付いていないはずだ。それより皐月、あの茶番だが」

「思い出したくもないんだが、聞くよ」

「ランサーは騙せたみたいだ」

 

 まあ騙せなかったら本当に馬鹿みたいなのでよしとする。

 それよりもこれからのことだ。

 

「ハサン、大事な話がある」

「聞こうか」

 

 解れた会話に緊張が戻る。

 

「情報収集はやめだ。以降私の警護を頼む」

「……………おい、まさかさっきので怖気づいたのではないだろうな? その程度の物だったのか、お前の願いは」

 

 ハサンの顔は失望というより憤怒に近く、それは私達の関係が良好な証だ。

 しかし言葉をケチったのがまずかった。

 

「ちがう、他所から取れる情報はもう無い、というだけの話だ。ランサーのように自分を使って戦力査定なんてお前にはできないだろう?」

「それはそうだ。俺は暗殺者だからな」

 

 いっそ皆殺しにしていいなら話は別だが、聖杯戦争自体には不要な条件を私は満たそうとしている。

 桜の生死。衛宮の生死。遠坂と桜の因縁。

 マスター殺しを旨とするサーヴァントを駆って、うち三騎のマスターの生存を必要とする重しが私を縛っているのだ。

 それだけ? 

 馬鹿を言ってはいけない。キャスターが落ちた今、サーヴァントは残すところ六騎。

 今上げた条件に抵触しないのはわずかにランサーとバーサーカーのみ。

 ランサーにこちらから接触するには運がいるし、バーサーカーはまあいろいろと無理がある。

 

「それで様子見か」

「事態が動くまでの、だけどな」

 

 バーサーカーに関してはマスター殺しを狙えないという事はないだろうが、マスターはアインツベルン。馬鹿でかい城に居を構える御三家の一角だ。

 しちめんどくさい罠が仕掛けられているのは想像に難くない。

 それに現状、最も難しい立場にあるのはランサー陣営だ。

 規格外のバーサーカーは当然、残りの四騎は2つの陣営に分かれている。

 マスターが割れていないという一事が状況を五分にしているだけで、動かせる戦力に不安を抱えている。なまじ情報を揃えているからこそ動きにくいはず。

 

「現状問題なく動けるのは遠坂達とアインツベルンだけだな」

 

 だから動いて問題ない方々に動いてもらおうというわけだ。

 

「それは構わんが、ランサーは置いても他陣営から見て一番弱そうなのは間桐じゃないのか?」

 

 間桐のサーヴァントはライダーのみ。ランサー以外はそう認識しているはず。

 

「その通りだ。当然そのあたりも考えてあるから、まあ見ていろ」

 

 ランサーのお陰で奇襲の恐ろしさは身にしみた。

 だから次はそのあたりにつけ込んでみようと思う。




なんだかギャグっぽいことになってしまった。いっそ全部書きなおせばいいものを、リサイクルにこだわった結果がこれ。
しょうがないね。

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