俺は弱ェやつが嫌いだ。
弱ェのに戦う奴らに虫唾が走る。弱ェのに体張って助けて、そんで結局ダンジョンで死ぬ。死ぬくらいならダンジョンに潜んな、泣き喚くくらいなら命を張るな。
だからジジィに連れられて、あったアイツも初めはそうだと思っていた。
〇月÷日
前のファミリアを抜けてロキファミリアに入った。
元々Lv3だったので難なく入れた。探索系のファミリアはいつも主戦力となれる人材を望んでる。何でもこのファミリアはもう一つ神ロキの方針があるらしいが知らねェ。
〇月=日
名ばかりの入団試験が行われた。
知らねェジジィが笑いながら出てきたから、蹴り殺してやろうと思い全力で蹴ったがジジィには全く効いてなかった。
有り得ねェ。
幾らLvに差があるからって、俺の全力を生身で食らってピンピンしてる訳がねェ。
クソッ俺は強くなった筈だ。テメェのケツはテメェでふけるくらい。守れることが出来るくらい。
これでも足りねぇのかよジジィ……。
〇月♡日
Lvが一つ下の女にあった。
6歳も年下でしかもLv2になれたのはヤベぇことだ。それくらい俺にもわかる。しかも、元『
アイズは強者だ。
もしかしたら俺はアイズが██████(黒く塗りつぶした跡)
もうだりィ。寝る…。
〇月)日
アイズに決闘を持ちかけた。
直ぐに頷き、剣を抜いた。俺も腕のプロテクターを前に出すように構える。
先日のジジィとの戦いは見られていたので、蹴りで意表を突くことは出来ない。むしろ手の内を明かしているぶん俺の方が不利だろう。
そんなの関係ねェ。今は俺が上だってことを知らしめてやる。
俺は確かに本気で戦った。勿論アイズも本気だった。だが、ある魔法がこの決闘に終止符を打った。
「
アイズがそう呟いた瞬間、嫌な予感がした。アイズが体に風を纏わせているので魔法の類だったのだろう。
慎重に、それこそ今まで以上に鋭い蹴りを入れたはずだった。
しかし、風は強すぎた。
俺よりも速く、そして
有り得ねェ。俺はLv3なら最速に一番近いだろう。その俺を
だが魔法を使ってステイタスの一つを超えたのなら、まだ納得出来る。
だが力と敏捷の二つもとなったらそれは納得出来ねェ。Lv2がLv3を完全に圧倒する。超えることが出来るくらい魔法なんてものを、一言呟くだけで超えられるはずがない。
だが押されたのは今の一撃だけ。
直ぐに起き上がり、もう一度今の以上の攻撃をすれば。アイズは対処できない。あんな芸当を二回も連続でこなすことなど不可能だ。
脚に力を入れ、アイズへと踏み込もうとした時。
「やめぇぇい!」
ジジィの声が爆ぜた。
あまりの爆音に鼓膜が痛む。
「何すんだジジィ!!」
そう反論したが、自身の違和感に気付く。
脚の装備が半壊していた。
結局俺はこの決闘で負けた。
Lv2の6つも下のガキに。
〇月〒日
ジジィが装備の点検に街へ行くからと無理矢理付いてこさせられた。ジジィには専属契約をしている鍛冶師がいるらしく、そいつの所に行くのだそうだ。
ケッと吐き捨て、そして悪態をつきながらジジィに従った。
何で俺がジジィに付き従わなきゃ行けねぇんだよ。
道中その胸の内を晒した。
ついこの間アイズに負けたばかりだということもあり、かなり俺は苛立っていた。それはもう、前のファミリアでアイツが死んだ時くらいには。
全てを吐き出し、そして全てを晒した。
して、帰ってきた言葉は意外なものだった。
「じゃからだろうが」
んでだよッ!!と反論するも聞く耳を持たず、笑いながら付いてこいと言うだけ。
こっちの気も知らずに呑気な奴。
道中ジジィは酒も買ったりなどして、呑気に食いもんも買ってる。
無駄な時間過ごさせやがって。
言わずもがなそこは鍛冶場で、女のヒューマンと男のエルフがいた。
あれは、確か間違いなければアイズの記録を破った『
アイツ、ヘファイストスファミリアだったのか。つゥか、何でそんな奴がここにいんだよ。
「椿!整備を頼む!!」
横でジジィがうるせェ声で椿に声をかけている。
こんなヒューマンにジジィは武器作って貰ってんのかよ。
褐色肌のヒューマンは武器の手入れを始めると思えば、隣のエルフと話し出した。ジジィもそれに気付きちょっかいをかけている。
ってかあれ、ドワーフの火酒じゃねぇか。アイズよりも小っせェガキがあんなもん飲めんのかよ。
存外飲めたようだ。しかもケロッとしてやがる。
気に食わねェ。
とりあえず俺はエルフにガンを飛ばした。
しかし、エルフに相手にもされず無言を貫く。
クソっ、癪だ。
アイズの記録を超えたという一点には賞賛する。だが、見ただけでわかる。あいつはエルフだ、なのに剣ばっかり打っている。そして周りに杖はない。
エルフが筋力で他種族に勝てるわけねェだろ。
その時俺は、完全に見くびっていたんだと思う。
だが奴は鍛冶師としては一級品のものだった。
奴の装備を見る。剣のことはイマイチ分からねェが、防具のことなら人よりは分かってるつもりだ。
あの脚の防具。あれは俺が以前付けてたやつより強ェ。
それだけは分かる。
そしてエルフが俺の視線に気付いた。
「興味あるのか?」
奴の声を聴いたのは初めてかもしれねェ。そしてその声音からは何も感じない。強者であるか、それとも弱者であるか。
俺にはそれが分からない。
成り行きで研究資料を見させてもらった。
俺が見込んだ通り、俺の防具よりも強いのが数値として証明された。
そして助言するかのように、女のヒューマンがある一つの言葉を発する。
「コイツはまだまだ新人だが、耐久と切れ味に関しては手前と同じ領域に来ておる。なぁに心配する必要はない、今すぐとは言えないが奴は手前達を超えるだろう」
やる気もねェ。
強いか弱いかも分からねェ。
鍛冶も俺は知らねェ。
確かに【正体不明】だ。神も粋なことするじゃねェか。
俺はこの日、自分がするなんて思っていなかった専属契約を自分から持ち出した。そして【絶対に砕けない】を信条とする鍛冶師との初めての会合だった。