ここではない場所、どこか遠い理想郷に憧れる、ありふれた夢見る
彼女は平安でも指折りの歌人・
歴史に名を残す偉大なる父を尊敬していた――だが、そんな父が時折みせる、とある顔が、彼女はとても嫌いだった。いや、分かり易く――恐れていた。
元輔は穏やかで優しく聡明な父ではあったが、歌の評判とは裏腹に官位に恵まれない男だった。
毎年の春、朝廷で官職が発表される季節になると、いつもはユーモア溢れる父親の顔が、険しく、冷たく――抜け落ちたかのように、無になるのだ。
幼少の頃より聡明だった少女は、その瞬間が何よりも嫌いだった。
尊敬する大好きな父親が、まるで妖怪のように
自分など及びもつかない程の才覚を誇る父ですら、本当に欲しいものは手に入らない。
それは余りにも無情で、救いのない話であるように思えた。自分はそんな救いのない世界にいるのだと、とても悲しいくてたまらなくなるのだ。
そんな幼少期を過ごした彼女は、いつからか完成された理想郷を求めるようになった。
誰しもが救いを受けられる理想郷、美しく完璧な世界――そんな浄土を語る仏の教えに、耳を傾け続ける日々を送っていた。
だが、それほど熱心に浄土に憧れていながらも、彼女は出家し世を捨てることはしなかった。
彼女を現世に引き留めるのは、いつだったか父が、ぽつりと零した、とある一つの言葉だった。
妖怪へと堕ちてしまうのではないかと、恐ろしいまでに強く官位を欲しがる父に対し、幼き少女はある日、たまらずに問うたのだ。
どうして、そこまで――と。
父は、たった一言、痩けた頬を震わし、こう答えた。
「――
それは、彼女という人間の心に深く刻みこまれた根源となった。
あの父が、あそこまで求めた――華とは、何なのか。
それを知りたいが為に、彼女は浮世に残り続けたといっていい。
しかし、それが何なのか、女である自分も見ることが出来るものなのかも分からないまま、彼女は時代に流され続けていく。
最初の夫である
五歳だった息子は則光の跡取りとして相手方に引き取られ、彼女の元には何も残らなかった。
再婚をしようにもこれぞという相手がおらず――そして彼女自身が、当時としては異例なほどに、結婚こそが女の幸せ、絶対の使命だという風潮に同調できない女性だった。
愛した相手に、ただ一人、唯一の相手として最大限に愛されたい。
一夫多妻が当たり前だった時代に、有力貴族でもない一人の女が抱くには余りにも高い理想だった。
女はみだらに外出するな、女は夫や家族以外に顔を見せるな、女はこうするべきだ、女はこうしてはいけない、女は、女は、女は――そんな息が詰まるような世界に、彼女は声には出せない不満を溜めこんでいた。
だからこそ、まるでそんな世に反抗するように、別世界への――浄土の世界へと憧れを強くし、説法を聞くべく家の外へと出て、諸方に歌と手紙をやり取りするようになった。
まるで女である自分の才覚を見せつけるようなそのやり方は、多くの人にとって、はしたないと侮蔑されるようなものだった。
だが、彼女はどうでもいいといわんばかりに、それを続けた。
まるで、誰も自分のことなど分かってくれないと、強がり拗ねる子供のように。
そんな日々を過ごすうちに、一年、また一年と歳をとっていった。
しかし、彼女も下級とはいえ貴族の娘であるが故に、結婚からは逃れられない。
二十五歳となった年、二人目の夫を迎えることになった。
これまで散々、正室でなくては嫌だ、第二、第三の女がいる男は嫌だと、父に妹の面倒をみるように頼まれていた兄たちによる様々な勧めを断ってきた彼女だったが、遂にその頭を縦に振らざるを得ない相手を宛がわれたのだ。
二人目の夫――
燃え上がるような恋ではなかったが、歌や文に明るく穏やかな信義との夫婦生活は大きな波乱はなく順調のように思えた。
しかし、彼女の中には、満たされぬ何かが燻り続けていたのだろう。
父亡き後、己が支えを失ったかのような不安定さに襲われた彼女は、見えない不安を打ち消すように、己の才覚を、再婚後も――否、再婚前よりも更に激しく振るい、自ら家中を切り盛りするようになった。財務を管理し、家の様々なことに口に出し、来客に対しても堂々と対応するようになった。
女がこうして前に出ることに露骨に顔を顰める男も多い時代だったが、信義が穏やかに笑って許してくれる夫であったことも幸いし、徐々に彼女は機知に富む才媛であると貴族界でも評判になっていった。
そして、信義と結婚して三年が経ったある日。
かつて短い期間ではあるが出仕したことのある小野宮家から手紙が届いた。
そこには新たな出仕先を紹介したいと記されていた。
新しい世界への憧れが未だに強かった彼女は、それに二つ返事で了承した。
だが、肝心のその出仕先を聞いた時、彼女は思わず凍り付くことになる。
その出仕先とは、どんな有力貴族の家でもなく――この世で最も浄土に近い場所であった。
こうして彼女は、己が清少納言となる場所に――己の全てを変える場所に。
平安京の――日ノ本の中心地。
+++
花山帝の後に即位した若き賢王、一条天皇の正妻――中宮となった妃。
藤原兼家の後釜として権力を順当に引き継いだ藤原道隆の長女。
容姿端麗、頭脳明晰と評判の女性であり、一条帝よりも三つ年上ながら――この時、未だ十七才。
自分よりも十一も年下ながら、この国で最も貴い女性として君臨するかの御方の元へと出仕する――それを聞いた時、彼女は思わず竦み上がり、現実を疑った。
確かに、権力を掌握する関白・道隆が、
だが、下級貴族の娘であり、既に二十八才の自分に声が掛かるとは夢にも思っていなかった。
中宮の女房とは内裏の華だ。それはすなわち中宮の華であり、中宮定子という存在の一部とならなくてはならない。
はっきりいって気後れした。余りにも畏れ多い。
だが、内裏といえばこの世で最も浄土と近い場所――今、自分が暮らす不完全な世とは異なる、完璧で美しい世界に憧れる彼女にとっては、正しく夢のような話であることも間違いない。
そして、最終的には、畏れよりも憧れが勝り――彼女は足を踏み入れた。
ずっと憧れ、恋い焦がれ続けた場所――輝く貴い世界である内裏に。
しかし、華やかな世界に震えながら飛び込んだ彼女を待っていたのは、顔を赤くしない日はないという恥ずかしめの連続だった。
覚悟をしていたつもりだったが、中宮の女房として求められるものは当然のように高く、それなりに聡明であるという自負のあった自分でも、所詮は下級貴族と自虐してしまう程には、物や常識を知らなかったのだと思い知らされた。
そして、自分以外の女房達は、やはり自分なんぞよりも遥かに若く、そして美しい女性ばかりだった。家柄も申し分なく、それに相応しい教育を受けたエリート揃い。
自分についてくれた上司である弁のおもとという女房は、女房の中では年を取った女性という意味で「おもと」という呼び名で呼ばれていたが、そんな彼女ですら自分よりも五つも年下であり、癖髪がコンプレックスの自分など見る影もなくなる艶やかな髪の美人であった。
なんと場違いな所に来てしまったのだろうと、毎晩のように涙を流していた。
彼女達に比べれば、自分は知識も華も自信もない、見所も面白味もない中年でしかない。
そうして完全に心が折れてしまった彼女は、人目につくことを嫌い常に隅っこへと身体を隠し、顔を伏せ続けた。
このままお暇をもらうまでじっとしていよう――そんな風にして、再び彼女は流されるがまま日々を過ごそうとして。
憧れ続けた世界で、自分はどうしてこんなにも惨めでいるのだろうと、絶望のままに全てを諦めようとして――そして。
その声は、天から差し伸ばされたかのように、俯く彼女の頭上へと降ってきた。
顔を上げなさいと、優しく顎を持ち上げるように。
+++
「そこに隠れているのは誰かしら?」
まるで天から声が届けられたかのようだった。
耳から侵入した響きが脳を通り過ぎ、そのまま心臓を鷲掴んだかのような感覚。
思わず顔を上げてしまう。
これまでずっと伏せ続けていた顔を、恥ずかしくて面も上げられなかった顔を上げる――そして、ここで初めて、彼女は真正面からその存在を確認した。
余りにも畏れ多く、こうして内裏へ参上してからも、遠目からしか拝謁することが出来なかった存在。
今日のように、滅多にない近くに侍ることになった際でも、まるで太陽を直視しないようにするかのように、顔を伏せ続けて見上げることすら叶わなかった――宮中の華。
中宮定子を――彼女は、初めて直視した。
美しかった。余りにも、美しかった。
美しく、麗しい、正しく天から降り立ったかのような美女だった。
この時代の美人の証ともいえる艶々とした長い黒髪はまるで雪解けの清流のようで、癖だらけの自分の髪とはとても同じ女の髪とは思えぬもので。
こちらを見てくすりと微笑むその顔は、美男と噂される父・道隆のものとはまた違い、けれど、同性で十以上も年上の自分すらも、向けられただけで思わず胸が高鳴る輝きに満ちたもので。
彼女はただただ、顔を赤くして惚けるばかりだった。
それをいつもの自省だと思ったのか、定子のすぐ傍に侍る、女房の中でも筆頭のような役割をしていた宰相の君は、からかうように定子に言った。
「肥後のおもとですよ、中宮様」
宰相の君の父は藤原重輔という男で、彼女の今の夫の父である藤原元輔の弟である。
つまり彼女にとって宰相の君は義理の従妹なのだ。勿論、宰相の君の方がずっと若く、中宮の女房としての職歴も長く立場もずっと高いのだが、彼女にとってはこの時点で数少ない、比較的近い距離感で接することが出来ていた女房だった。
だからこそ、顔を真っ赤にして硬直する彼女を気遣う意味で、こんな返しをしたのだろう。
先述の通り「おもと」というのは年が上の女房に対する
「こちらへおいで」
中宮定子が、くすりと笑いながら彼女を呼ぶ。
ぽんぽんと自分の近くの畳を叩きながら、己の傍へと招き寄せる。
彼女は更に顔を真っ赤にし、瞳もうるうると潤わせながら首を振った。
そんな彼女に定子は尚もくすりと笑い、宰相の君は「ほら。中宮様がお呼びですよ」と動けない彼女を引っ張った。
面白がってと、思わず宰相の君を睨んだが、義理の従妹は義理の従姉のそんな視線をまるで意に介さずに引っ張り続け「連れて参りました」と定子の傍まで運ぶとそそくさと自分は離れていってしまう。
気が付いたら、彼女は定子と二人きりになっていた。
無論、見えないだけで宰相の君を初めとした御付きは傍に控えているのだろうが、少なくとも今、この場所は、中宮定子と肥後のおもとの二人だけが、淡い灯火が照らす空間に身を寄せ合うような距離で存在するだけだった。
定子は文机の上に広がった大層な値打ちの絵を指差して、これは何という物語のどんな場面だったかしら、この絵は誰が描いたものかしらと彼女に質問を投げ掛ける。
彼女はただただ無様に狼狽えながら碌に返事も出来なかった。
定子はそんな彼女に呆れることなく、次々と優しく問いを重ねていく。
余りにも穏やかなその声に、心臓の音が聞こえてしまうのではと恥ずかしがっていた彼女も、段々と顔を上げられるようになった。
そして、遂に直視した定子の横顔に、手を上げれば触れることすら出来てしまいそうな程に近くに居る中宮定子に、彼女は再び見惚れてしまう。
ああ、美しい。この方は、その全てが美しい。
容貌も、御髪も、声も、息も、そして――心も。
こんな醜く無様な「おもと」に、こんなにも優しく接してくださる。
絵がよく見えるように近くに置かれた灯火は、きっと、間抜けに惚ける年増の女の見るに堪えない顔を明るく照らしているのだろう。いつもの自分なら、死にたくなるくらいに羞恥に悶えていた筈だ。
でも、今ばかりは、自分の顔を覆うことが出来ない。
妖しく照らされる中宮の美貌を、もっとよく見ていたい――そんな傲慢な欲望に、抗うことが出来ない。
「これ。わたしではなく、絵をしっかりと見なさいな」
余りにも不躾な熱視線を送る彼女に、定子はくすりと笑いながら言った。
彼女は慌てて絵へと視線を戻す。このやり取りで緊張が解けたのか、そこからは少しずつ、彼女は中宮の問いに答えられるようになった。
すると、初々しいものを見遣るようだった定子の表情が、段々と感心するようなものへと変わっていった。定子は更に彼女に質問し、彼女はたどたどしくはあるがそれに答えるというやり取りが――明け方まで続いた。
それに彼女が気付いた時、忘れかけていた羞恥が再びぶり返し始めた。
暗い夜中とは違い、眩い日中に自分の醜い容姿が中宮定子に見られることにやはり抵抗を覚えたのだ。
そんな彼女の様子に気付いた定子は、最後の問いとして彼女にこう問いかけた。
「この絵に相応しい詩は何だと思う?」
それは『
白氏文集はとても長大な詩集ではあったが、この時代の宮中ではポピュラーなものであったので、彼女も反射的に香炉峰の雪の詩を諳んじる。
「香炉峰の雪は簾を――」
その時、彼女はハッと気が付いた。
香炉峰の雪は
既に夜は明けている。外では明るい陽射しの下に雪が降り積もった美しい景色が広がっている筈。でも、この部屋の格子と
定子はくすりと笑って、彼女に言う。
「また、来るのですよ」
彼女は慌てて頭を下げて、そそくさと定子の元を後にした。
すると彼女と入れ違いに何人もの女官達が部屋に入り、するすると格子と御簾を上げていく。
差し込んだ眩い陽射しに思わず目を細めた彼女は――続いて思わず息を吞んだ。
そこには、見たことのない輝きを放つ雪景色が広がっていた。
彼女が恐ろしい場所だと思っていた内裏――貴い場所であるこの地に降り積もった雪は、こんなにも特別な光を放つのだ。
彼女がずっと顔を伏せて、見ないようにしていただけで、こんなにもすぐ傍に、見たことのない世界は広がっている。
(……それを、中宮様は教えて下さったのだ)
彼女は思わず涙を溢れさせた。
そして、一つの決意を固めて自分の局へと戻った彼女の胸中を読んだかのように、その日の日中に、彼女の元へと文が届いた。
その文の主と、内容を読んだ時――彼女は改めて、こう思ったのだ。
(なんという御方が、この世にいらっしゃるのだろう)
その文の送り主は――中宮定子。
内容は、ただ一言――心が決まったら、いらっしゃい。
それを読んで彼女の心は決まった。
そして、まだ日が沈みきらない、醜い姿を隠してくれない、太陽が健在の日中のこと。
彼女は再び、中宮定子の元を訪れた。
眩い陽射しが雪を照らし輝く中、彼女は必死に顔を上げて廊下を進む。
(……応えなければ。この貴い期待に応えなければ、私は――)
しかし、到着した中宮の御座所を見て、彼女は再び無様を晒した。
なんと中宮の御座所は再び格子を閉ざされ、まるで夜のように真っ暗だったのだ。
中では昨夜のように灯火で照らされ、幾人かの女房と中宮が何てことないように他愛の無いお喋りに興じている。
ぽかんと口を開けた間抜け顔で入ってきた彼女を見て、悪戯が成功したといわんばかりに一同が揃ってくすくすと笑う。
そんな彼女に中宮は一言、こう問うたのだ。
「香炉峰の雪はいかがかしら?」
その言葉を聞いた瞬間、彼女は再び涙が溢れそうになるのを堪えた。
胸の中に火が灯ったのを感じた。心の底からこう思えたのだ。
(――ああ。私は、この御方に出会う為に生まれてきたのだ)
華が、みたいのだ――己の根源に刻み込まれた、父の言葉が蘇る。
それに、胸を張って答えることが出来る。
父よ、華はあった。私は出会えた。
(この御方こそが、私の――華だ)
彼女はそのまま真っ直ぐに、中宮定子に見詰められるままに――閉ざされた格子へと歩み寄る。
そして、いつまでも開いてくれるなと願い続けたそれに向かって、夜が更けた証であり、朝が来ていない証でもあるそれを――彼女は自ら開けた。
開けやすい一枚格子ではなく、より固く閉ざされた二枚格子を――それは一枚格子が南にあり、二枚格子が西に面していたからだ。
たっぷりと陽射しが差し込む――より眩く明るい西面に。
女房達が感嘆の声を漏らす。定子は、優しく目を細めていた。
強烈な光に彼女は照らされる。これまで顔を伏せ、存在を消し続けた彼女を、後宮の特別な光が照らしている。
西面には真っ白に広がる雪景色があった。
もし一枚格子の南面を選んでいれば、これほど見事な雪景色は見えなかっただろう。
「香炉峰の雪は簾をかかげて看る……なるほど、だから二枚格子を一枚だけ開けたのね」
「詩は勿論、知っていたけれど……こんな風に見せるなんて、まるで思い至らなかった……」
女房達が揃って彼女の咄嗟の振る舞いを称賛する。
そして、その中の一人の女房が、感心しきったといった口調でこう言ったのだ。
「中宮様の女房は、まさにこうあるべきだわ」
その言葉を聞いて、彼女は再び思わず涙ぐみそうになった。
けれど、折角、そのような言葉を貰えるようになったのに、ここでそんな無様を晒すわけにはいかないと、彼女が咄嗟に目を逸らすと――そこで、本当に嬉しそうに目を細めて微笑む中宮を見た。
定子は、彼女が開けた格子の向こう側に広がる雪景色を見て。
「…………本当に、綺麗な雪ね」
その言葉と、その表情を見て、彼女は自分が中宮の期待に応えることが出来たのだと確信する。
震えるような喜びを覚える彼女に、定子が優しい笑みを向けると。
「――
女房達がハッとし、彼女は何が何だか分からずに呆けた。
この時、中宮定子ははっきりと、彼女のことを「清少納言」と呼んだ。
彼女の父の姓である「清原」、夫の官職である「少納言」を組み合わせたものであったが――中宮がそう呼んだということは、彼女自身も少納言と、
父があれ程に欲した官位――それをたった一言で授けることが出来る、皇家の力。
人の運命を、人生を、操る権能。
人を見抜き、人を導き、開花させる才能。
中宮――藤原定子。
僅か十七才の少女の放つその王威に、人の上に立つ君主としての、その華に。
彼女は――清少納言は、ただただ感動し、敬服した。
そして、生涯の忠誠を誓い、膝を着いて頭を垂れた。
こうして彼女は――己の全てを尽くし仕える主と出会ったこの日、清少納言となったのだ。
用語解説コーナー⑨
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官職や位階による序列が重要視された平安社会において、任官・叙位の順番によって一﨟・二﨟・三﨟と数字で区別されたり、先に任じられたものを上﨟、後から任じられた者を中﨟・下﨟などと区別する習慣が生まれ、やがてそれがそのまま秩序として用いられるようになった。これ
女房の世界においても上﨟・中﨟・下﨟の区別があったが、その区別は実家の家格に影響され、上﨟は公卿の家の娘がなるのが例であり、中﨟は五位以上、下﨟は六位官人か社家出身の女性が就くこととされていた。