比企谷八幡と黒い球体の部屋―外―   作:副会長

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妖怪よりよっぽど――『化物』ではないか。


妖怪星人編――57 月へ手を届かせた男

 

 鞍馬天狗を下し、障害を取り除いた後の空の旅は快調に進み――それから間もなくして、無事、彼等は目的地に辿り着く。

 

「…………来たか」

 

 青き龍が高度を落として着陸してくるのを、隻腕の鬼が見上げる中――藤原道長(ふじわらのみちなが)藤原公任(ふじわらのきんとう)、そしてぬらりひょんとその息子を筆頭とする百鬼夜行ご一行は。

 

 赤き月へと伸びる巨大なる『手』の根元――土御門邸跡地たる『黒炎上跡』へと到着した。

 

「おお! 遠くから見てもデカかったが、近くで見るとこれはこれで壮観じゃのぉ!」

 

 誰よりも早く、子供のように龍の背中から降りたのは漆黒の髪に全身を包まれた怪しい妖怪だった。

 溜息を吐きながらも、一早くその男に続いたのは長身の犬頭の男。それに張り合うように続いたのはつい先程まで敵だった筈の赤面長鼻の天狗だった。

 

 隻腕の鬼は、そんな見ず知らずの妖怪達――内一体は偶に主の元を訪れた時に顔を合わせることはあったが――の奇行を一瞥するだけで放置し、彼等のようにはしゃぐこともせず、ゆっくりと、その気品に恥じない優雅さで龍の背中から降りてきた貴族の男を出迎える。

 

「予定より遅いな。藤原道長」

 

 ぶっきらぼうにそう言い放つ鬼に、この国の権力の頂に立つ人間の男は、いつもの無表情の上に、ほんの少しの笑顔を携えながら答える。

 

「待たせてしまって申し訳ない、『勾陳(こうちん)』――いや、茨木童子(いばらきどうじ)。少々、空が混んでいてな」

 

 道長に続いて龍を降りた公任は、長年に渡り傍に侍った幼馴染として、道長がいつになく上機嫌なことに気付く。

 

(……無理もないか。道長にとっては、正しく念願の瞬間だ)

 

 公任は初めて見る伝説の鬼――茨木童子を目に前にして感じる少なくない恐怖心を誤魔化すように目を逸らして――その巨大な『手』を見上げる。

 

 遥かなる月、天に浮かぶ赤き月まで伸びて――そして、届いたという、その『手』に。

 

 圧倒され、絶句し――そして、高揚する。

 

 遂に、道長の――『人間』の手は、遥か彼方たる『月』の元にまで、届いたのだ。

 

「――それで? 言われた通り、あんたをこの『手』の元まで送り届けたわけだが……儀式とやらは道中に無事に済ませたのか?」

 

 そんな鬼と人間達の会話を見下ろすように――最後まで龍の背中に残っていた、黒と桜の斑髪の半妖とその仲間達は。

 

 安倍晴明(あべのせいめい)から、そして藤原道長から、この空の旅における太政大臣の護衛を任じられた若き妖怪の卵達は。

 

 一斉に龍の背を飛び降りて、まっすぐに彼等の元に歩を進める。

 

 その表情が硬いのは、肝心なその任務を、自分達の力だけで成し遂げることが出来なかったという自覚があるからだろう。

 親世代――百鬼夜行の幹部達の手助けがなければ、彼等だけでは鞍馬天狗を打倒することが出来なかった。

 

 だが、道長は、そんな暗い表情の若き妖怪達を労うように「――無論だ」と太鼓判を押す。

 

「よくやってくれた、若者達よ。君達のお陰で、私はこうして無事に、『回廊』の入口へと辿り着くことが出来た」

 

 そして――と、道長は。

 

 赤き月を、そこに向かって伸びる『手』を見上げて――己が手も、その『手』に重ねるように、真っすぐに、月へと伸ばす。

 

「――ここに、『儀式』は完了した」

 

 瞬間――道長の言葉に、呼応するように。

 

 彼等をこの『黒炎上跡』まで運んだ――『青龍』が、咆哮した。

 

「LUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」

 

 それは、正に『高位存在』たる――『龍』の大いなる力。

 

 初めから事情を把握していた茨木童子、そしてぬらりひょんが目を細め。

 

 犬神、鞍馬、白夜、長谷川といった、歴戦の百鬼夜行の幹部妖怪達が全力で警戒を露わにし。

 

 何も知らされていない公任が、そして鴨桜ら青き卵達が、何も考えられず圧倒される中。

 

 天に向かって嘶く『青龍』の身体が――突如として、『黄金』に発光し。

 

 そして、『赤き月』に向かって伸びる『手』も、同じく『黄金』に輝き出した。

 

「――――これは」

 

 漆黒の闇に包まれ、鮮血に染められる平安京の中で、ただ一ヶ所、この世のものとは思えない、美しく輝く――その『手』に。

 

 誰もが呆然と見惚れる中――淡々と、道長は語る。

 

「――『龍脈』と、呼ばれるものがある。それはこの日ノ本に張り巡らされる、『星の力』が流れる血管のようなものだ」

 

 当然、その脈の太さは一定ではない。

 多くの力が流れる『(スポット)』はこの国の至る場所に点在し、その場所付近には特別な現象が発生することがある。

 

 よって、長い歴史の中で、自然とその『点』周辺には、有名な寺社が建立されたり、祀られたり、信仰を得たり――いわゆる、『パワースポット』と化すのだが――。

 

 道長と晴明は、それを――その『龍脈』に流れる『星の力』を、『人』の手で操ろうと試みた。

 

「『星』には、『意思』がある。自身の危機を感じた時、『星』は『世界』に干渉する」

 

 安倍晴明は、藤原道長にかつて語った。

 

 母なる『星』には『意思』があると。

 己に危機が迫った時――外なる襲来者たる『外来種』に脅かされた時、己を守るべく『星』の力を行使することがあるのだと。

 

 正しく、外なる星からの襲来者たる『外来種(妖怪)』に対抗し、『星の力を与えられた戦士』たる『安倍晴明(英雄)』が創り(生み)出されたように――と。

 

 だからこそ、あの男は、己が主の荒唐無稽たる野望に対し。

 

 月へと手を届かせる――そんな無理難題たる馬鹿な夢を叶えるべく、こんな奇策を、有り得ない『計画(プラン)』を提言した。

 

 それは――つまり。

 

「『星の力』を高める為に、意図的に『外来種』を――『()()()()()()()。徹底的に『人間』を――『在来種』を、つまりは『星』を追い詰める為に」

 

 日ノ本を――『人間』を滅ぼし得る『妖怪勢力』を作り、それを人間達の最終要塞たる平安京で激突させる。

 それにより、平安京を流れる『星の力』――つまりは『龍脈』を極限まで活性化させて、史上最大規模の『儀式場』を作り出す。

 

「こうして『場』と『エネルギー』を用意した後は、『チート』――安倍晴明の出番だ。必要な材料を揃えた上で、前代未聞たる『月へと手を伸ばす術』を完成させる」

 

 空前の『(スポット)』と化した平安京――その中でも特に強力な二つの『点』を結び、『滑走路』と化し。

 

 そこを最も『星の力』と相性がいい『高位存在』たる『龍』を渡らせることで、妖怪大戦争という未曽有の『危機(バフ)』により最大に活性化している『星の力』を『蒐集』させ。

 

 集めた『星の力』によって『手』を――『回廊』へと覚醒させ、月へと渡る『道』を作った。

 

「以上で、『儀式』は完了した。後は――」

 

 遂に完成した、この黄金に輝く『回廊』を通り――『月』へと辿り着く。それだけだ。

 

 道長は、その言葉と共に、一枚の術符を無造作に放る。

 

 それは『青龍』と共に晴明から託された、もう一体の『十二神将』。

 

「…………『天空(てんくう)』」

 

 呟いたのは、道長の語る言葉の殆どの意味を理解出来ず、ただ呆然と事態に流されていた公任だった。

 

 安倍晴明が十二神将の、文字通りの一角。

 霧や黄砂、雷を呼ぶとされる、美しき一角を携える青白き天翔る馬――『天空』。

 

 現れたそれに恐れることなく跨りながら、道長は言う。

 

「皆のもの、大儀であった。我はこれより『月』へと赴く。君達はこれよりは思うがまま好きにし、この妖怪大戦争を生き延びてくれ」

 

 天馬の上からの道長の言葉に、ぬらりひょんは「……ほお」と目を細めて、にやりと笑いながら。

 

「それはつまり、儂等はお主らの『計画』に付き合う必要はないということか?」

 

 妖怪大将がそう繰り出す言葉に、頂に立つ人間は「無論だ」と端的に答えながら、無表情のその顔に、やはり小さく笑みを作り出しながら言う。

 

「今宵、お主は欲するものに手を届かせる。それを掴み取るか、掴み損ねるかは、お主次第だ――晴明からの言葉を、お主に伝えよう。ぬらりひょん」

 

 道長の笑みに――ぬらりひょんもまた、笑みを向ける。

 好戦的な笑みと、そして鋭い何かのぶつけ合いに、張り詰めた空気が流れる中――道長は茨木童子に向けて「そうだ、お主にもまた、晴明から言付けを頼まれていたのだった」と。

 

 藤原道長は、茨木童子に向けて、何とはなしに言う。

 

「『勾陳――否、茨木童子よ』」

 

 その託された言葉に――茨木童子は、その目を見開く。

 

「『お主も――()()()()()()()』」

 

 まるで、全てを見透かすような、その白き陰陽師からの言の葉と共に。

 

 茨木童子を縛り付けていた――『式神』たる拘束が解き放たれて。

 

 十年ぶりに――『茨木童子』は、『自由』となる。

 

「――――――っ!?」

 

 今、起きたことを――正確に理解出来たものは、恐らくは茨木童子以外にいないだろう。

 

 道長からの晴明の言葉は、あくまでぬらりひょんらに言ったものと同じように、自由行動の許可という意味として受け取られる筈だ。

 

 もしかしたら道長は晴明から聞かされていたのかもしれないが――他者経由の言付けという形ですら、十二神将という強大極まる式神を解放することが出来るなど、まさか想像出来る筈もないが――その言の葉の重さは、恐らくは茨木童子にしか分からない。

 

(――本当に、全てを見透かした……化物のような『人間』だ)

 

 茨木童子は、十年ぶりに自由となった身体――『式神』ではない己の身体を確かめるように、グッと、己に最後に残された隻腕の拳を握る。

 

「おい――藤原道長」

 

 そして、青白く輝く馬を翻し、『回廊』へと向かおうとした男の背中に、鴨桜は声を掛けて。

 

「――『誓い』を、忘れるなよ」

 

――藤原道長! 俺はテメェが気に食わねぇ!!

 

 距離は離れながらも、あの時と同じようにドスを真っ白な切っ先を突き付けながら、真っ直ぐに斑髪の青年は頂たる人間を見据える。

 

――テメェで始めた戦争だ。全部、テメェが何とかしろ

 

――誓え。お前の命に代えても、この平安京を滅ぼさねぇと。それを果たさなければ、俺は例え月まで追いかけてでもテメェを連れ戻す。

 

 首だけで振り返りながら、道長は吐き返された唾に応える。

 

 いつものように――「無論だ」、と。

 

「誓おう。私は必ず、この平安京に帰ってくる」

 

 戦争を起こした張本人が言うには、余りにも白々しい言葉を堂々と放つ、その姿に。

 

 鴨桜は――本当に、と、白刃を仕舞う。

 

「……………クソが」

 

 本当に、自分は何も知らなかった。自分は――余りにも子供だった。

 

 本当に――この世界は、どこもかしこも――化物だらけだ。

 

 そう口を閉じて、無意識に俯く鴨桜の背中を、父たるぬらりひょんと、相棒たる士弦だけが見遣る中で、既に前を向いていた道長は。

 

「では、行こうか、公任よ。我らが夢の地へとな」

「え、あ――お、俺も? 『天空』の背中に乗せてくれるのか?」

 

 急に声を掛けられて戸惑う公任のそんな言葉に、道長は、無論だ――と、肯定はせずに、「何を言う」と、笑みを向ける。

 

「今こそ、お主の()()()()()()だ。何の為に――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 その言葉と共に、()()()、と、公任の身体の奥深くが脈打つ。

 

 藤原公任の中に宿る『それ』が、目覚めの時に歓喜して暴れ出す。

 

「この回廊は安倍晴明の『術』だ。この中を通ることが出来るのは、晴明が術の対象とした『藤原道長()』と、同じく晴明の呪力の宿った――『式神』だけだ」

 

 道長のそんな言葉の最中にも、どくん、どくんと公任の中のそれの脈は強くなっていく。

 

 かつて道長の危機を救う為にしたこの禁じられた契約も――()()()()()()と、そう『計画』で決まっていたことだという道長に、公任は――獰猛に笑う。

 

 その牙を覗かせて、心の底から――歓喜して。

 

「――この、()()()

()()()()()()()。『十二神将』――『白虎』よ」

 

 うぉぉおおおおおおおおおおおお――と、藤原公任は天に向かって咆哮する。

 

 大陸から伝わった物語に――『人虎伝(じんこでん)』というものがある。

 傲慢なる男が、人を疎んだ果てに病に侵され正気を失い――虎に成り果てる物語。

 

 その伝説を再現するように、一人の男は――白き虎へと姿を変えた。

 

 ぬらりひょんが、鴨桜が、茨木童子が瞠目する。

 同じく『十二神将』だった隻腕の鬼も、『白虎』の正体を知ったのは今宵が初めてであった。

 

 その正体が『人間』の――それも藤原道長に最も近き友人であったことに。

 

 名立たる妖怪達は――揃って、恐怖する。

 

 これが――『人間』。

 日ノ本を支配する『在来種』。これまで数多の『外来種』を駆逐してきた暫定勝者。

 

 その頂たる『人間』は、天翔る馬に乗り、(おお)きな白き虎を引き連れ――『月』へと旅立つ。

 

「では――さらばだ、妖怪諸君」

 

 そう言い残し、道長は『天空』を翔けさせる。

 

 黄金に輝く『手』――『回廊』の中に、畏れもせずに飛び込んでいく。

 

 一際強い光を放つと、次の瞬間には――その姿を消失させていた。

 

 黄金に輝く『青龍』は巻物へと戻り、やはり発光しながら消失して――『黒炎上跡』に残ったのは。

 

 全てを『人間』の『手』で踊らされた、立ち尽くす妖怪達のみで。

 

「…………ふっ。『人間』か」

 

 妖怪(儂ら)よりよっぽど――『化物』ではないか。

 

 そう言って、誰よりも『人間』を知る妖怪――ぬらりひょんは、吐き捨て。

 

 しばし、沈黙が降りた後、「……では、儂らも奴の言う通り、好きにさせてもらおうかの」と呟き。

 

「戦争は――まだ終わっておらぬ」

 

 己が息子に向かって「鴨桜――お主はどうするつもりじゃ?」と問い掛ける。

 

 鴨桜は、無意識に俯いていた頭を上げて、「――決まってんだろ」と、そう、己に言い聞かせるように、強く言う。

 

「――平太達だ。アイツ等を――『家族』を守る。それが、俺の『戦争(やるべきこと)』だ」

 

 その息子の言葉に、ぬらりひょんは「……その通りじゃな」と、笑みを向けて言う。

 

「日ノ本だの星だのは、そういうのが好きな奴等に任せておけばよい。儂らは底辺妖怪(わしら)らしく、儂らの世界を守る為に戦えばよいのじゃ」

 

 ぬらりひょんはそう言って、噛み締める様に煙管(キセル)を咥える。

 道長や晴明のように巻物から出現させたりしない。合図を送ったわけでもない。

 

 だが、声なき求めに応じるように――格好つける総大将の元に、百鬼夜行の仲間である一反木綿(いったんもめん)がどこからともなく現れた。

 

「龍の背中も悪くなかったが、儂はやっぱりお主の上の方が座り心地がよいわい」

 

 そう言ってひょいっと胡坐を掻いたまま飛び乗ると、続いて長谷川と白夜が乗り、「新たに家族となった鞍馬じゃ。仲良うせい」と、犬神と共に己の横を飛ぶ天狗を紹介すると。

 

 息子に向かって、ぬらりひょんは手を伸ばす。

 

「――乗れ。平太達の居場所は、護衛させておる儂の百鬼夜行(かぞく)から届いておる。お前の家族ならば儂の家族じゃ。共に守ろうではないか――のう、『二代目(むすこ)』よ」

 

 鴨桜は父のそんな言葉に、露骨に顔を顰めながらも。

 

「――ああ。力を貸してくれ、『総大将(オヤジ)』」

 

 そう言いながら、その手を取り、一反木綿の背中へと飛び乗った。

 

 長谷川と白夜は目を合わせ、月夜と雪菜は驚きを共有して目を見開き。

 

 犬神は微笑み、鞍馬は表情を変えず――そして、士弦は。

 

「…………」

 

 何も言わず、ただその背中を見続けながら、次いで一反木綿の上に乗った月夜と雪菜の後に続いた。

 

「――それじゃあ、儂らは先に行かせてもらうが、お主はどうする?」

 

 行き先が特にないなら、儂らと一緒に来るか――と、一反木綿の上から投げ掛けたぬらりひょんの言葉に。

 

「……いや、生憎だが俺には俺の――『戦争(やるべきこと)』がある」

 

 ずっと前から、ずっと、ずっと――その為に生きてきたと、そう語らんばかりの、茨木童子の眼に。

 

「……そうか。無粋じゃったの」

 

 幸運を祈るぞ、お前もなと、ただそれだけを言い交わして。

 

 一反木綿は『黒炎上跡』を後にし――やがて、『手』の黄金の発光が終わると。

 

 月へと伸ばされた巨大なる『手』は、まるで幻のように、その姿を消失させた。

 

「――役目を終えたか」

 

 ならば、いい加減に返してもらおう――そう言って、茨木童子は、黒炎上跡の地面に向かって、鋭く深く、拳を振るう。

 

 舞い上がる黒く焦げた土――その中、かつて土御門邸があった、その地の深く――巨大な手の『根元』から。

 

 太く、逞しい――巨きな鬼の、『右腕』が出土した。

 

「――十年ぶりだな」

 

 十年前、茨木童子は安倍晴明に『式神』にされ。

 十年前、茨木童子は渡辺綱に『右腕』を切断された。

 

 十年――長いようで長く、まるで永劫のように永い時間であったが。

 

「ようやくだ――やっと、この時が来た」

 

 長く苦しい永劫の果てに、『式神』の楔から解放され、『右腕』を取り戻した最強の赤鬼は。

 

「――待っていてくれ、酒吞(しゅてん)。あと、もう少しなんだ」

 

 手に入れた自由と、取り戻した右腕を持って。

 

 ずっと、ただ、その為に生きてきた――己が悲願を、果たすべく、己の戦場に向かって歩き出す。

 




用語解説コーナー57

・月へと手を届かせる方法

①『星』の危機感を煽る為、『在来種』たる『人間』を滅ぼし得るまでに『妖怪勢力』を強化する。
 妖怪側に『人間』の息がかかった幹部を送り込んだり、人間の負の感情を膨れ上がらせて妖怪の糧となる『畏れ』の感情を提供したり、秘密裏に妖怪側との外交官を用意したりしていた。

②『人間』の滅亡の危機クラスの大戦争を平安京を舞台に引き起こさせる。

③これにより最大級に強化された『星の力』を、『龍』を使って蒐集し、材料を確保する。

④平安京を儀式場として展開した術式の基点たる『手』の元に、龍を使って蒐集した『星の力』を届けて、起動する。

⑤これにより、月にまで届く『手』の形をした『回廊』が完成。

 ざっくり書くとこんな感じです。
 無論、細かい軌道修正やら仕掛けなどもあるのですが、大体はこれが『計画』の大筋です。

 こうして道長は、無事に月へと辿り着くことが出来ました。

 しかし、彼の野望は、『月』に辿り着く――それ自体では、無論、なく。

 彼が求めた『月』――それを手に入れられるかどうかは、まだ、これからで。

 藤原道長の『戦争(たたかい)』は――これからです。
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