青い燕が虚空に描いた暗号によって示されていた次なる目的地は――旧土御門邸――『黒炎上跡』。
前哨戦たる前夜祭において、この平安京でも最も豪奢だった藤原道長の屋敷が、黒い炎によって跡形もなく焼け落ちた、無残極まるその場所に、
「――御頭!」
その存在の正体に気付き、貞光と季武は足早に駆け寄る。
貞光はもとより、武士として小柄である季武よりも低い背丈に、不釣り合いな程に大きな鎧を纏った武者。
そんな体躯を補うようにいつも身に着けている威圧感を放つ鬼の仮面は、何故か今は身に着けていなくて、パッと見は戦火に彷徨う迷子のようだったが、他ならぬ頼光四天王である彼等は、当然として、かの武者の仮面の下の素顔を知っていた。
「よく来た――そして、よく生き残った。貞光、季武」
仮面を外したことにより、ありのままの少年としての声でそう言う頼光に、貞光は頭を下げたまま「勿体無き御言葉です」と言い、そして尋ねる。
「……御頭は、如何にして此処に?」
「お前達と同じだ。――青き燕によって、晴明殿によって、此処に導かれた」
そう言って、頼光は頭を下げる貞光と季武から視線を上げて、辺りを見渡す。
黒く燃え、黒く燃え尽きた、黒炎上跡を。
草木すら一本たりとも残らぬ、何もかも真っ黒に燃え尽きた――戦場跡を。
「……………」
目を細めて、何かを見詰めるようにしながら、頼光は再び貞光に問うた。
「お前達は、晴明殿からどこまで知らされた?」
「……詳細は、何も。ただ、一刻も早く此処に来るようにと、それだけを伝えられました」
そうか。ならば、私が晴明殿により託された、これからの段取りについて簡単に語ろう――と、晴明は未だに膝を着いて頭を下げる二人の四天王に立ち上がるように命じながら、両者に背を向けて、ゆっくりと歩き出した。
「私はお前達より少し早く、この黒炎上跡に辿り着いた。恐らくはそれを見越してだろう。私にはもう少し詳しく、晴明殿が描くこれからの計画が伝えられた」
頼光は、ある場所――まるで何かを掘り起こしたかのような、不自然な穴がある場所の前で足を止めて、語る。
「今宵の戦争の号砲となった、『月へと伸びる手』――その手首の根元、起点が此処――『黒炎上跡』だ」
そのことには、貞光と季武も気付いていた。
戦争が始まると同時に出現した、平安京の何処からでも確認できた巨大な『手』。
この場に辿り着く少し前に、それこそ平安京全土を呑み込まんばかりの強烈な発光と共に、唐突にその『手』は姿を消していたが――。
「その『手』は太政大臣様――
人間を月へと送り届ける秘術――省略すると言われたが、そんな荒唐無稽なことを唐突にさらりと言われて、季武はギョッとし、貞光も表情を険しく固めていたが、振り向いた頼光はそんな二人の心中を慮ることなく、これまたさらりと――彼等にとって、とても重要な『作戦』を口にした。
「今宵、この『黒炎上跡』に残った莫大なる『星の力』――これを以て、我等は今度こそ、かの妖怪王の器、大江山の頭領――『
貞光が、季武が、今度こそ表情を消して、息を吞む。
酒吞童子――大江山の主、鬼の頭領、妖怪王の器――最強の妖怪。
十年前の鬼退治において、かの鬼に言いようのない敗北を喫した彼等にとって、その鬼は正しく不俱戴天の仇であり――その埒外の強大さを、その身を以て痛感している存在でもあった。
「……御頭」
だからこそ、かの存在を完膚なきまでに無力化する――そんな術が存在するのかと言われて、簡単に信じられる筈もない。
それが自らが仕える主の言葉でも、それが平安最強の陰陽師の言葉であろうともだ。
そんな感情が透ける季武の言葉に、皆まで言わせず頼光は、再び彼に背を向けて、その『計画』の詳細を語る。
「先程も言った通り、今、この場所には『星の力』が凝縮している。人間を月まで送り届けるという、荒唐無稽なる奇跡を実現させる為にな。それは晴明殿が意図的に龍脈を操作にして集めたものだが、それはあくまで今宵限りの限定的な操作であり、時と共に集めた力は再び元の形の流れに戻っていく――だが、それは裏を返せば」
今宵に限れば、それほどの奇跡を実現させ得るということだ――そう呟きながら、頼光は手に持っていた術符を『
それは、青い燕が頼光の下に、『
ひらりと、それが穴に吸い込まれていった瞬間――黒く燃え尽きた旧土御門邸の庭に、噴き上がるように光の柱が昇った。
それは『月へ伸びる手』程に劇的なものではなかったが、ぼんやりと幻想的に現れたその光は、黒く染まった地面に、大きくとある紋様を描いているようだった。
円の中に五本の線によって星が描かれたそれは――
紛れもない、安倍晴明が術である証である紋様。
「一体――いつから、どこまで、『奴』が見透かしていたのかは分からない」
奴――と。
この時、初めて、頼光は晴明をそう呼んだが、絶句する貞光と季武の方を振り返った時には、少年は表情を消しており、真っ直ぐに、己が配下達に固く告げる。
「酒吞童子は殺せない。だが、今宵、この場所ならば、奴を千年封じることが可能であると、晴明殿は仰った」
しかし、当然、それには相応の代償が伴う――頼光はそう、一度目線を下ろしながら呟く。
酒吞童子は殺せない。
その無限ともいえる再生力は、肉体の損耗は勿論、妖力に対しても適応される。
仮に、首はおろか、その少女が如き体躯を木端微塵に吹き飛ばした所で――酒吞童子は再生するだろう。
酒吞童子は、そういった存在であり、そういった怪異なのだ。
なればこそ――殺さずに封じればいいとは、当然、十年前も『人間』は考えた。
しかし、十年前においては、かの安倍晴明ですらそれを成し遂げることは不可能だと断じた。
理由は単純で、酒吞童子程の存在を封じるにおいては、当然、それに相応しい出力が必要であったが、それだけの呪力は晴明も、頼光も、金時も、綱も、持ち合わせてはいなかった。
だが、今宵においては、それを星の力を持って補うことは出来る。
故に――封印術式を発動することは可能。
しかし、先述の通り、一ヶ所に集めた莫大なる『星の力』は、時と共に元の流れに戻っていく。
なればこそ、その術式を継続させる為の、別の力が必要だ。
少しでも長く酒吞童子を封じる力が――少しでも長く、日ノ本に平穏を齎す為の、犠牲が。
「――貞光。季武」
故に、頼光は――源頼光になると、そう誓った少年は。
真っ直ぐに、己の部下を――源頼光が、己が四天王に相応しいと集めた、誇り高き四天王に向けて、言う。
「
その言葉に、貞光は己が胸に拳を打ち付け、季武は破顔する。
「――無論です。我らが主よ」
「命じてよ。君は、僕等の主なんだからさ」
それで、
頼光は一度だけ小さく笑みを浮かべると、再び表情を消して、五芒星の紋様を指し示して説明する。
「この結界の基点は五つ。この結界の中心に酒吞童子を導き、中に入れた上で、私と四天王がそれぞれの基点の上に立ち、結界を発動する手筈になっている」
円と五芒星が交わる五つの点。
そこに五人の呪力を持つ人間が立ち、呪力を流すことで結界は発動される。
「結界を維持する為には、我々が呪力を流し続ける必要がある。よって、我々は結界の内側に入り、酒吞童子と共に、この地に封じられることとなる」
故に――犠牲。
源頼光と四天王は、酒吞童子を道連れにする形で、かの最強の妖怪を千年に渡り封じることとなる。
結界の中の一日は、現実世界の一年に相当するという。
つまり、千年の封印を保つ為には、およそ千日に渡り、呪力を流し続けることになる。それは正に地獄の拷問に等しい苦痛だろう。
その凄惨な事実を知らされながらも、貞光も季武も、
「――つまり、一番の難関は、酒吞童子をこの結界内に入れること、ですね」
貞光はそう断じる。
酒吞童子は幼稚だが、愚かではない。
この黒炎上跡に満ちる莫大なる『星の力』も感じ取るだろうし、そこに晴明の五芒星が浮かんでいるとなれば、馬鹿正直に足を踏み入れることはないだろう。
故に、力尽くで、無理矢理に、酒吞童子を結界へ放り込む役が必要となる――あの、酒吞童子をだ。
そして、その大役を任せられたのは、源頼光――では、なく。
「晴明殿は、その役目を――金時に命じたそうだ」
貞光や季武と肩を並べる頼光四天王の一角であり。
酒吞童子と、最も強き因縁を持つ戦士である。
「俺では無理だった。……僕では、アイツに――酒吞童子には、敵わなかった」
源頼光は、この妖怪大戦争において酒吞童子と一早く邂逅し、刃を交えている。――そして、その上で、その刃は、かの鬼に届かなかった。
かの妖怪王の器を、倒すことは、出来なかった。
そして、それを見透かしていたかのように、安倍晴明は酒吞童子を封印場所へと誘導する大役を、頼光ではなく、坂田金時に任じたというわけだ。
貞光も、季武も、何も言わない。
己が主の力を疑っているわけではない――だが、分かっていた。
今宵、この場面において、酒吞童子を力尽くでどうにか出来る可能性がある逸材は。
坂田金時という男を置いて、他には存在しないだろうと。
「僕では届かなかった。兄さん……綱……茨木童子、そして酒吞童子。選ばれたモノしか立つことが許されない、あの『領域』に――僕では、辿り着くことが出来なかった」
大江山の鬼退治。その頂上決戦にして最終決戦。
外れしモノ達だけが、文字通り立つことを許された戦場。
源頼光を受け継ぐことになる少年が、鬼女紅葉が、そして金時が、這いつくばり、観ていることしか出来なかった――あの『領域』。
十年間、死に物狂いで修行して強くなり、神秘殺しの異名を、名刀・童子切安綱を継承するに至っても、終ぞ――辿り着くことは出来なかった世界。
「晴明殿は、兄――源頼光や、綱、そして伝説の坂上田村麻呂殿や俵藤太殿といった彼等を、『星に選ばれた戦士』と呼んでいた。妖怪――『星の外敵』が、力を増し、脅威が増大した時、
恐らくは晴明自身も、その『星に選ばれた戦士』なのだろう。
選ばれしモノ。資格を持つモノ。頂上へと、領域へと、至る可能性を秘めるモノ。
「僕では無理だった。けれど――もし、新たに、その領域に足を踏み入れる可能性を――天賦の才能を、持つモノがいるとするならば」
今、この時代――妖怪最盛のこの時代において・
新たにその領域へと辿り着く、その
それは、恐らく――たった、一人。
「僕ではない。貞光、季武――お前達でもない」
頼光からの、その断言に、貞光も季武も、不満を漏らすどころか、神妙に頷いて見せる。
今宵の戦争においてさえ、『黒い嵐』に蹂躙され、天邪鬼という敵幹部も取り逃がした自分達に、そんな資格がありやしないことは分かっている。
分かっている――分かっていた。
不安定で未熟。けれど、その身に秘める才能は、他の誰よりも金色に輝いている弟分。
頼光は、彼等の心中も代弁するように――その、英雄の可能性を持つ卵の名前を、口にする。
「坂田金時――アイツだけが、頂の領域へと足を踏み入れる、その
だからこそ――きっと。
アイツならば、何とかしてくれる。この大役を成し遂げてくれると。
頼光は、貞光は、季武は、真っ直ぐに――その方角を向いた。
巨大な二つの力の激突――離れたこの場所まで衝撃が伝播する、その邂逅の方角を。
+++
それはまるで、戦火に迷う幼子のようだった。
ふらふらと、頼りない足取りで、轟々と燃え盛る街を彷徨う少女。
「きゃぁぁぁあああああああああああああああああああああああ!!!」
「いやぁぁ!! いやぁぁぁああああああああああああああああ!!!」
「助けてぇぇえええええ!! 救けてぇぇええええええええええ!!!」
つんざくような悲鳴。
突き刺すように――放たれる、拒絶の言葉。
それらは全て――真っ赤に染まる、幼い少女に向けて放たれていた。
「こっちに来ないで――化物ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」
がらがらと、燃える家屋が焼け落ちる。
その凄惨な光景を背景に、真っ赤な少女は――小さな鬼は、無表情に、ただ己を拒絶する人間に向かって、首を傾げる。
この人間は――何を叫んでいる?
何を怯えている? 何を恐れている?
自分はまだ、何もしていない。
ただ歩いているだけだ。ただ探しているだけだ。
ただ――此処に、いるだけだ。
まだお前に牙を剥けていない。爪を見せていない。
何の感情も――何の殺意も、向けていない。
それなのに、何を恐れる? 何を怯える? 何をそんなに――拒絶するというのか。
(…………意味が……分からない……)
少女は何も分からない。幼い鬼は、何も理解出来ていない。
今日に至るまで、終ぞ少女は、何も理解することが出来なかった。
人間とは何か――まるで興味も湧かなかったが故に、知ることはなかった。知ろうとすることが出来なかった。
か弱い彼ら彼女らにとって――自分がどのように見えているのか。
隠すまでもなく剥き出しの角が、無防備に放たれ続ける妖気が、人間という脆弱な生物にとって、どれほどに恐ろしくて堪らないのか。
彼女は分からない。彼女は知らない。彼女は理解出来ない。
それでも――それ、だからこそ。
――……………ごめんな、
分からないから、知らないから、理解出来ないから。
それが――どうしようもなく、
(………………五月蠅い)
耳障りな悲鳴が止まない。
自分を見て逃げ出す人間が。自分を見て恐れる人間が。
五月蠅くて、鬱陶しくて――だから、彼女は。
人間が虫を払うように――虚空を、払って。
破壊を――無造作に、振り撒く。
「――――
少女が、手を払った――それだけで、燃え盛る戦場の炎が暴れ狂う。
焼け落ちる家屋が吹き飛び、無力な人々が宙を舞う。
そして、酒吞童子の目線の先にいた、彼女にウザいと、明確に敵意を向けられた女は。
一睨みされる、酒吞童子に視覚される――ただそれだけで、全身を縫い留められるような恐怖で動けなくなり、ゆっくりと、自らに向かって死が迫りくるのを感じた。
幼い鬼が払った『
そんな儚い未来を――英雄の
目の前に雷が落ちる。
彼女を襲う『死』を、『破壊』を、『空』を木っ端微塵に打ち砕いた。
そして、雷が晴れると。
恐ろしくて堪らない『鬼』の姿を隠すように、まるで壁のように大きい背中が立っていて。
彼女に向かって、逃げろと告げた。
そんな優しい声に引っ張り上げられて、背中を押されて、女はよたよたと覚束ない足取りで走り出す。
背中は、そんな彼女に向けられ続けていて。
英雄は――ただ目の前の、化物だけを見据え続けていた。
「――――待たせたな」
その男は、
この国の男児ではおよそ見られない金髪金眼。
鍛え抜かれた身体は、まるで神に与えられたが如く常人離れした
雷と共に現れた英雄――
真っ直ぐに、ただひたむきに――その少女だけを見詰めていた。
「お前に会いに来た――
再び、ガラガラと、また一つ、焼け落ちた家屋が崩れていく。
炎上する平安京――その炎が揺らめき。
泣きそうな顔の少女が、目の前にいるかのような錯覚が
「――――っ!」
坂田金時は目を瞠る――が、瞬きを一つすると、そこには凍ったように何の表情を浮かべない、感情を感じさせない少女が。
この国で最も化物な怪物――酒吞童子が、炎の中で佇むだけだった。
「……………」
金時は、己を戒めるように――龍へと変わった右拳を握り込み。
「…………ひとつ………だけ…………」
掠れたような、小さな声で。
「さい……ごに……いちどだけ…………もう一度だけ……………聞く」
無感情に、無表情で、零れた――その呟きを、拾う。
小さな、とても小さな赤鬼は。彷徨う迷子のような幼い鬼は。
その小さな手を――何もかもを切り裂く爪の生えた手を、金時に向かって差し出して。
「――わたしのものになって」
金時は――今度こそ、絶句する。
目を見開いて、握った筈の拳も緩んで。
そして、溢れる何かを、必死に己の中に押し留める。
(……だから、お前は。他の奴に、俺を殺させるなと命じていたのか)
それはかつて――幼馴染の少女に、言われた言葉。
同じく幼かった金時が、裏切り、反故にした――
英雄を夢見ていた少年が、手酷く傷つけた少女の笑顔。
(……お前は、ただ――もう一度)
ただ――もう一度。
あの時の――答えを、聞きたい為に。
炎上する平安京を彷徨い歩いた少女は、最後にもう一度と、その手を、あの日の少年に向かって差し出して。
「
それでも――少年は。
それでも――――英雄は。
それでも――――――坂田金時は。
その手を取らず、首を振って、今再び――拒絶する。
「俺は――『人間』なんだよ」
だから、お前と同じ所には行けない――そう言って、龍の右拳を再び握り込み、人の左手で、肩に担いだ、鉞を構える。
妖怪を――退治する為の、武器を、構える。
「俺は、『
人間であることを――選んだ少年は。
英雄となることを――目指し続けた男は。
かつて泣かせた少女に向かって――退治すべき、化物に向かって、大声で宣言する。
何かに決別する覚悟を、誰よりも己に向かって叫ぶように、鉞を振るう。
「酒吞童子を退治するのは――この、坂田金時だっっ!!!!」
再び、雷が落ちる。
ガラガラと、何かが崩れ――そして、始まる。
「……………そう」
雷の中から、平然と少女が歩み出る。
その足取りには、もはや些かの――迷いも、ない。
「――なら、もう――いらない」
破壊を振り撒く爪を、死を齎す殺意を――少女は目の前の英雄に向ける。
「死んで――金時」
襲い掛かる化物に、そして、逃れられない過去に。
「死ぬのはテメェだ!!! 酒吞童子!!!」
今、再び――坂田金時は、戦いを挑む。
用語解説コーナー64
・星に選ばれた戦士
星人の力が活発化すると、星の自衛能力の一環として、在来種を強化するといった現象が発生する。
この時代の日ノ本の人間は、妖怪に対抗出来るようになる為に、『呪力』といった力に目覚める人間がいる。こういった人間達が、陰陽師や武士や僧兵、より強い力に目覚めた者は『英雄』と呼ばれる存在になるが――中には、文字通り桁違いの力を授けられる、『星』が特別な力を与える『選ばれた戦士』が存在する。
その代表例が、『坂上田村麻呂』であり、『初代頼光』であり、『渡辺綱』であり、『俵藤太』であり――そして、【安倍晴明】である。
そして――今。
その『至高の領域』に、新たに足を踏み入れようとしている戦士がいる。
この時代の日ノ本において、その領域に達する可能性のある、最後の英雄。
坂田金時――彼は、果たして、その域に達することが出来るのか。
ただ一つ、確かなのは、そこは只の入口に過ぎないということだ。
何故なら、彼が正に相対している――仇敵にして宿敵である鬼は。
正に、その至高の領域に達している――最高峰の化物なのだから。