魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ 作:ショーン=フレッチャー
「竜巻警報発令! 竜巻警報発令! 付近の住民は落ち着いて避難してください!」
アースラ艦内、リンディとレイが睨み合っている。
先の意見の相違の所為である。
お互いに最適な落としどころを探り合っているのだ。
その緊迫した空気に誰もが口をつぐみ、息をのんでいた。
やがて同時に大きくため息をつく。
リンディが先に口を開く。
「今回の件は互いの目的の違いが生んだものでした。もう少しそちらに配慮するべきでしたね」
「いえ、こちらこそ勝手な真似をしました」
「これ以上この件については掘り下げないことにしましょう」
「それがお互いのためになりますな」
ようやっと全員の顔に安堵の表情が浮かぶ。
「次は無いようにしましょう」
「そうしましょう」
「さて、問題はこれからね」
リンディが話題を変える。
「クロノ、事件の大元について何か心当たりが?」
「はい、エイミィ、モニターに」
「はいはーい」
どこからかエイミィの声が聞こえると会議室の机の真ん中に立体映像が現れ1人の女性が映る。
「あら、彼女は」
「そう、僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師。プレシア・テスタロッサ。専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でありながら違法研究と事故によって放逐された人物です。先程の攻撃魔法と魔力波動も一致しています。そしてあの少女フェイトは恐らく…」
「フェイトちゃん、あの時母さん、て」
クロノの説明になのはが先程のことを思い出す。
「親子、ね……」
「その、驚いてたって言うより、なんだか怖がってるみたいでした」
レイは黙って何やら思案している。
「エイミィ、プレシア女史についてもっと詳しいデータは出せる?」
「はいはい! すぐに探します」
しばらくして再びエイミィの声が響きだす。
「その駆動炉ヒュードラの事故が原因で地方の研究所に、事故に関しても色々揉めたらしいです。しばらくは辺境で研究をしていたらしいですがしばらく後に行方不明になって、それっきりのようです」
「家族や行方不明になるまでの行動は?」
「その辺は綺麗さっぱり抹消されてます。本局に問い合せて調べてもらってます。一両日中には結果が送られるそうです」
エイミィの報告を聞き、手を顎に当てるリンディ
「……あれだけの魔力を使った後では向こうもそうそう動きは取れないでしょう。その間にアースラのシールド強化もしないといけないし」
「貴方達は一休みしておいた方がいいわね、一時帰宅を許可します。ご家族と学校に少し顔を見せておいた方がいいわ」
どこか薄暗く不気味な空間、そこでフェイトは傷だらけになって倒れていた。
そのような状態のフェイトにアルフが慌てて駆け寄る。
体の至る所に鞭による傷が刻まれて最早痛々しいなどと言う状態ではない。
アルフは部屋の奥を睨み付ける。
一方プレシアはと言うとフェイトを傷つけた事など気にする素振りも見せずにジュエルシードを眺めていた。
「たったの9個、これで起動出来るかどうか、分からないわね」
突然プレシアが咳き込む、すると真っ赤な血がその口から吹き出し床を汚す。
口元を押さえていた手も真っ赤に染まっていた。
「あまり時間はないわ、私にもアリシアにも……!」
すると突然部屋の壁が轟音を立てて崩れる。
立ち込める煙の中現れたのはアルフだった。
プレシアは無反応のままジュエルシードに意識を傾けている。
アルフは一歩、また一歩とプレシアを目指して歩いてくる。
そして一飛びの間合いに入った瞬間、飛びかかった。
だがそれはプレシアが張った障壁により容易く阻まれる。
それでもアルフは何度もぶつかり、障壁を破壊する事に成功した。
障壁を破ったアルフは怒りに身を任せてプレシアの胸倉を掴む。
「あんたはあの子の母親で! あの子はあんたの娘だろ! あんなに頑張ってる子に、あんなに一生懸命な子に、何であんな酷い事が……ッ!?」
この時アルフは気づいた、プレシアの目が虚ろであることを。
彼女には自分の言葉なんて欠片もその心に届いていない事に。
もはや彼女の意識はジュエルシード以外に向いていなかった。
本能的に危険を感じ後退しようとした時にはもう遅かった。
プレシアの一撃がアルフの腹部に直撃しアルフの体は軽々と吹き飛ばされる。
「あの子は使い魔の作り方が下手ね、余分な感情が多すぎる」
「ぐ、うぅ、フェイトは、あんたの娘は、あんたに笑ってほしくて優しいあんたに戻ってほしくてあんなに……!」
「フン」
アルフの必死の訴えはプレシアにはまるで届かない。それどころか取り出した杖をアルフに向ける。
「邪魔よ、消えなさい!」
「……ッ!」
プレシアはアルフに魔法を放った。
朧げな意識の中アルフは必死に転移呪文を唱える。
アルフは光に包まれ転移した。
放課後、なのはたちはバニングス邸にいた。ここでアルフらしき橙色の毛の狼が保護されたと聞いてきたのである。
(アンタらは……)
アルフが念話で話しかけてくる。
「これ以上話さなくてええ、傷に障ります」
「あんた、温泉のときに念話してきたやつね。なんでそうなってるのかわかんないけど」
(アンタらがいるってことは管理局の連中も見てるんだろ)
(時空管理局のクロノ・ハラオウンだ。正直に話してくれるなら悪いようにはしない。もちろん君の主、フェイト・テスタロッサのことも)
(なら、全部話すよ。でも約束して、フェイトを助けておくれ!あの子は何も悪くないんだ!)
(約束しよう)
クロノの返答を聞いて、アルフはこれまでの事情を話し始めた。
(君の話と現場の状況、そして彼女の使い魔アルフの証言を聞く限りこの話に嘘や矛盾は無いようだ)
(クロノ、プレシア・テスタロッサはどうするのじゃ?)
(僕らは艦長の命令があり次第、プレシアの逮捕に変更する事になる。君たちはどうする)
アフームの質問に対するクロノの返答は公僕のそれだった。
(私は、私は、フェイトちゃんを助けたい! フェイトちゃんが悲しい顔は私もなんだか悲しいの。だから助けたい! 悲しいことから。それに友達になりたいって伝えたその返事をまだ聞いてないしね)
(右に同じく。ここにいる連中全員が同じ気持ちや)
(分かった。フェイト・テスタロッサについては君たちに任せる)
(なのは、だったね。頼めた義理じゃないけど、お願い、フェイトを助けて。あの子、今本当に一人ぼっちなんだよ)
(うん、大丈夫、任せて)
朝が来る。全ての決着をつけるために、少年少女たちは海浜公園に集う。
「ここならいいよね。出てきてフェイトちゃん」
『Scythe. Form』
突然バルディッシュの声が聞こえ、全員がそちらを見ると電灯の上にフェイトが立っていた。
「フェイトもう辞めよう。あんな女の言うこともう聞いちゃダメだよ!このままじゃ不幸になるばっかりじゃないか…だからフェイト!」
アルフが説得を試みる。しかしフェイトはゆっくりと首を横に振る。
「それでも私はあの人の娘だから」
フェイトの変わらぬ意思を聞くとなのはは変身する。
「ただ捨てればいいって訳じゃないよね。逃げればいいって訳じゃもっとない。…切っ掛けはきっとジュエルシード、だからかけようお互いが持ってる全部のジュエルシードを!」
『Put Out』
レイジングハートから11個のジュエルシードが現れる。
『Put Out』
同じくバルディッシュからも9個のジュエルシードが現れる
「それからだよ…全部、それから」
なのはとフェイトが構える。
「私達の全てはまだ始まってもいない。だから、本当の自分を始めるために……始めよう。最初で最後の本気の勝負!」
アフームが前転しながら、二人の間に割って入る。
「ファイッ!!!」
レイがコングを鳴らす。
決闘が始まる。
今日はハジケ度数が低いなあ。
でも安心してください、明日はたっぷり出番があります。
そう言えば、UAが1000人を突破しました。
ひとえに読者の皆さんのおかげです。
今後も応援よろしくお願いします。