魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ。
 なのは勝利。接戦を制するは新魔法。
「「「「「「何このスポーツ新聞の見出しみたいなの!?」」」」」」



第12話 運命は混迷の扉の中

「クロノ君どこへ?」

「現地に向かう。元凶を叩かないと」

「私も行く!」

「僕も行こう」

「分かった」

 

 プレシアが引き起こした次元断層を食い止めるため、クロノが向かおうとする。

 それについていこうとするなのはとユーノ。

 

「悪いが、俺は残る」

「レイ、なぜ……」

「やることがある。それが終わったらすぐに向かうわ」

「やることって何だ?」

「……仕事や。直さなあかんもんが仰山あるんでな。フェイトについては任せぇ。全部きっちり直したる」

「……任せるぞ」

「任せぇ、アフーム、先行っとれ」

 

 レイに見送られるクロノたち。フェイトは呆然自失のまま座っている。

 アルフがそれについてい励まそうとするも、何も出来ないでいる。

 

「フェイト、元気を出せ」

 

 レイがフェイトと同じ目線になるよう座る。

 レイの睫毛6本が長く伸び囚人たちが懸垂の様に捕まっている。

 鼻の上には看守らしき小人が竹刀をもって立っている。

 

「「「「「「フェイトさん、元気を出してください!」」」」」」

「「「「「「フェイトさん、元気を出してください!」」」」」」

「「「「「「フェイトさん、元気を出してください!」」」」」」

「バカヤロー! そんなんでフェイトさんが元気になるか!」

「「「「「「フェイトさん、元気を出してください!」」」」」」

「「「「「「フェイトさん、元気を出してください!」」」」」」

「「「「「「フェイトさん、元気を出してください!」」」」」」

 

 看守が睫毛を竹刀で叩くと、その振動で数人の囚人が落ちていく。

 フェイトはそれを呆然と眺めていた。

 

「そうですよ、それでフェイトは元気になりませんよ」

 

 フェイトとアルフは聞き覚えのある声にはっと上を見上げた。

 そこにはレイの帽子から上半身を出した猫耳の女性がいた。

 

「リ、リニス……?」

「はい、リニスです」

「な、何でここに……?」

「私も色々あったんですよ。それより行かなくてもいいんですか?」

「え?」

「プレシアのところへ行かなくてもいいんですか?」

「でも、母さんは、私のこと、いらないって……」

「フェイト、お前は母親に死ね言われたら死ぬんか?」

「え?」

 

 レイの質問に面食らうフェイト。

 

「俺は今回の事件はどうにも腑に落ちん。プレシアは何か重大な嘘をついているような気がするんや。俺はそれを暴きに行く。フェイト、お前さんはどうしたい? プレシアのお人形のままでいるか、娘としていくのか。今ここで選ばんと後悔するで、きっと」

 

 レイの頭からリニスが足を出す。そして2人は転送ポートへと向かう。

 

「待って!」

 

 フェイトが叫ぶ。

 

「生きていたいと思ったのは母さんに認めて貰いたかったから、それ以外に生きる意味なんかないと思ってた。それが出来なきゃ、生きてちゃいけないんだと思ってた。…捨てれはいいってワケじゃない、逃げればいいってワケじゃ、もっとない。」

 

 フェイトの手にはボロボロとなった待機状態のバルディッシュが握られている

 

「私達の全てはまだ始まってもいない」

 

 バルディッシュが杖に変わる。

 だがその姿は全体に罅が走り、今にも壊れてしまいそうだ。

 

「私、まだ始まってもいなかったのかな? バルディッシュ」

 

『Get Set』

 

「ならこれから始めればええ。フェイト・テスタロッサはここから始まるんや」

 

 レイが振り返り、手を差し出す。

 魔力の譲渡が行われ、バルディッシュが修復されていく。

 

「私達の全てはまだ始まってもいない」

 

 フェイトはバリアジャケットを身につけ、レイの手を取る。

 

「だからホントの自分を始めるために、今までの自分を終わらせる」

 

 魔法陣がフェイトの足元から広がる。4人は時の庭園へと転移した。

 

 

 

 

 

 時の庭園内部ではなのは、ユーノ、アフーム、クロノが傀儡兵と交戦していた。

 魔力弾が、魔力刃が、バインドが飛び交う。

 

「チッ、数が多い!」

 

 クロノの悪態をよそに次々と湧いて出てくる傀儡兵。

 彼らの中に焦りが生まれる。

 その焦りが決定的な隙を生んだ。

 なのはの背後に斧を持った傀儡兵が現れる。

 

「なのは! 後ろ!」

 

 ユーノの叫びでなのははようやく気付く。

 しかし気付いた時にはもう遅かった。

 斧がなのはに向かって振るわれる。

 

「きゃああああああ!!!」

 

 その瞬間、何かが傀儡兵にぶち当たり、風穴を開けた。

 

「待たせたな! 諸君!」

 

 そこにいたのは、数多の猫に率いられし伝説の車両、ピクルストレインである。

 先頭車両にはレイがいる。

 

「「「何だアレ!?」」」

「あれはピクルストレイン! 希望の未来を掴むことが出来るという伝説の列車だ!」

 

 ユーノが説明口調で叫ぶ。

 

「ぷしゅー」

「ああっ! ドアが閉まる! 待って、僕等の夢と冒険……」

 

 ピクルストレインに駆け込むユーノとアフーム、そこに傀儡兵の攻撃が入る。

 

「「「ぎゃああああああ!!!」」」

((((((当然の結果だ……))))))

「なのは、大丈夫?」

「フェイトちゃんこそ、もう大丈夫なの?」

「私は平気、母さんに確かめなくちゃいけないことが出来たから」

 

 再会を喜ぶなのはとフェイトに対し、クロノの顔は渋い。

 

「レイ、彼女は一体何者だ?」

 

 クロノがリニスを示す。

 

「初めまして、元プレシア・テスタロッサの使い魔のリニスです」

「プレシアの使い魔だと! 何でレイと一緒に居るんだ!?」

「話せば長くなるのですが……」

「時間がない! 今は味方という認識でいいんだな!」

「ええ、私としてもプレシアは止めたいですから」

 

 頷き合うクロノとリニス。

 しかしその時間が隙を生んでしまった。

 いつの間にかなのはたちは傀儡兵に囲まれている。

 

「今ので囲まれてしまったぞ。どうする」

「どうするも何も、こういう時は一点突破と相場が決まっとります。まあ、俺に任せといてください。魚符『ドキッ! 魚だらけの鳥人間コンテスト』!」

 

 レイを中心に魚型飛行機の弾幕が傀儡兵を襲い始める。

 一体、また一体と傀儡兵が破壊されていく。

 

「今や! 全速前進!」

 

 全員で目的の方向へと走っていく。

 障害となる傀儡兵は弾幕でおしゃかになるか、攻撃を喰らって壊れるかであっという間に包囲網を突破していた。

 いつの間にか駆動炉へと続くエレベータの前にたどり着いていた。

 しかし、レイとリニスが途中ではぐれたのかいない。

 

「あの二人、追いついて置いて……、まあいい、急ごう。ここからは二手に分かれよう」

 

 駆動炉を止めるチームにはなのは、ユーノ、アフームが。

 プレシアに向かうのはクロノ、フェイト、アルフ、である。

 クロノは考える。

 レイとリニスの行方である。

 この10日間、レイ=金剛=ダイアモンドという人物を観察して分かったことは、彼は無意味な行動はとらないというものであった。

 全ての行為に意味がある。

 一見無駄だと思われるバカな言動も後々になって意味が解るものが多かった。

 それ故、はぐれたのも何か意味があるのだろう、とクロノは考えた。

 今は彼を信じるしかない。

 クロノは先頭を切ってプレシアの元へと駆け出していった。

 

 

 

 

 

 その頃プレシアはリンディと念話で会話をしていた。

 

「忘れられし都、アルハザード。そこに眠る秘術は存在するかどうかすら分からないただの伝説です!」

「違うわ、アルハザードへの道は次元の狭間にある! 時間と空間が砕かれた時、その狭間に滑落していく輝き。道は確かにそこにある」

「随分と分の悪い賭けだわ、貴方はそこに行って一体何をするの? 失った時間と犯した過ちを取り戻す?」

「そうよ、私は取り戻す。私とアリシアの過去と未来を! 取り戻すのよ…こんなはずじゃなかった、世界の全てを!!!」

 

 その時、突如背後の瓦礫が吹き飛んだ。

 中から現れたのは頭部から血を流しているクロノだった。

 

「世界はいつだってこんなはずじゃない事ばっかりだよ! ずっと昔からいつだって、誰だってそうなんだ! こんなはずじゃない現実から逃げ出すか、それとも立ち向かうかは個人の自由だ! だけど自分の勝手な悲しみに無関係な人間を巻き込んでいい権利は、どこの誰にもありはしない!」

 

 クロノの言葉がプレシアに突き刺さる。

 だがプレシアは癇癪を起こしたように雷を撃とうとする。

 だがそれは空中から降り立った一人の少女の姿を見る事によって止められた。

 降り立ったのはフェイトとアルフ。

 二人はプレシアの姿を真っすぐ見据えている。

 

「何をしに来たの」

 

 そう言い放つプレシアだがフェイトは怯まない。

 

「貴女に言いたい事があって来ました」

 

 フェイトは語る。

 

「私は、アリシア・テスタロッサじゃありません。貴女が作ったただの人形なのかもしれません、だけど私は、フェイト・テスタロッサはあなたに生み出してもらって、育ててもらった貴女の娘です」

 

 フェイトは真っすぐな眼をして真っすぐな言葉を放つ。

 

「だから何? 今更あなたの事を娘と思えと?」

「貴女が、それを望むなら。それを望むなら、私は世界中の誰からもどんな出来事からも貴女を守る。私が貴女の娘だからじゃない。貴女が私の母さんだから」

 

 ふと昔の記憶が蘇った。それはアリシアに誕生日のプレゼントは何がいいか聞いた時の事。

 

「うーんとね……あ、私妹が欲しい!」

 

 そう言ってアリシアは笑っていて、困りながらも約束をしてしまった自分がいた。

 楽しかった日々の中のほんの一ページに過ぎないから今まで気づかなかった。

 けれど確かに約束して今、目の前にはアリシアと瓜二つのフェイトがいる。

 だがそれが今更なんだと言うのだろう。

 もう戻れない、例え手を差し伸べられているとしてもその手を取る資格はないのだから。

 だからプレシアは狂気の仮面を被る。

 

「くだらないわ」

「っ! まずい!」

 

 クロノが言うが早いか再び時の庭園が揺れ始める

 

「艦長!庭園が崩れます。戻ってください!この規模なら次元断層も起こりませんから!クロノ君達も早く!崩壊までもう時間がないの!」

「了解した! フェイト・テスタロッサ! 2人共!」

 

 エイミィからの指示に従いフェイト達に声をかけるクロノ、だがフェイトはプレシアを見つめたまま動かない。

 

「私は向かうアルハザードへ、そして全てを取り戻す!」

 

 プレシアの足元が崩れ虚数空間にアリシアの入った器ごと落ち、なかった。

 プレシアの背後から人影が現れる。

 

「おいおい、家族を置いて、どこへ行こうというんや?」

 

 現れたのはリニスと、解放者の鍵(Remoeter’s Key)を携えたレイだった。

 

「時の庭園、封印完了。これ以上の崩壊はさせへんで」




 我ながらニッチな分野ではあると思います。
 ボボボーボ・ボーボボ、クトゥルフ神話、ファイブスター物語、ちょぼらうにょぽみ。
 これを機にこれらの作品を知っていただけると幸いです。
 え? これらの要素がまだほとんど無いだろうって?
 まだ彼女たちと邪神を絡ませるわけにはいきませんよ。
 邪神の本格参入は第2部第3章までお待ちください。
 現在ここを執筆中です。
 作者が一番書きたかったところ!
 ここの反応次第で、Stsまでやるかどうか決めたいと思います。

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