魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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前回のあらすじ
 時の庭園、崩壊、せず!



第12.2話 聞き分けの無い人々

 遡ること数分前。

 クロノたちとはぐれたレイとリニスはプレシアの書斎にいた。

 

「確実にここにあるんやな?」

「はい、プレシアが証拠として残してあるはずです」

「ならちゃっちゃか探すとしますか。崩壊が進まんうちに」

「ヒュードラの資料はここに固まっています。恐らくその中にあるのでは」

「ならそこを重点的に探すとしますか」

 

 レイとリニスはあるものを探していた。

 それはレイの推理を裏付けるものである。

 

(アルハザード、ねえ。嫌な奴を想像してしまうわ。まさかネクロノミコンと関係があるとは思えんし)

 

 レイはリンディとプレシアの会話を聞きながら資料を漁る。

 

(虚数空間も、奴に見えて敵わん。全ての時空に隣接しているとは、まるで一にして全、全にして一そのもののようや)

 

「見つかりました!」

 

 リニスが声を上げる。

 リニスの手にはヒュードラの設計図が2枚握られていた。

 

「どれどれ」

 

 レイが二名の設計図を子細に眺める。

 プレシアの元では今クロノが声を張り上げている。

 レイは設計図を比べ終えると、一つ大きくため息をつく。

 そして思い切り口角を上げる。

 

「予想通りや」

 

 レイはそう呟くと、設計図を放り出しプレシアの元へと向かうのだった。

 

「急ぐでリニス! プレシアは死ぬ気や!」

「っ! はい!」

 

 リニスが慌ててレイの後についていく。

 レイは胸元から解放者の鍵(Remoeter’s Key)を取り出す。

 

「そろそろ足元が覚束なくなってきおったな」

 

 

 

 

 

 駆動炉を封印し終えたなのは達が合流する。

 

「役者は揃ったようやな」

 

 レイが声を上げる。

 

「あなた、どうやって、いったい、崩壊を。それに、リニスまで、どういうこと?」

「黙れババア! 手札を晒す阿呆がどこにおる!」

 

 プレシアの疑問を一喝する。

 

「私がここに居るのは彼に、レイに助けられたからです。そして彼との契約によりここに居ます。プレシア、あなたを止めるために」

「私を、止めるため? 下らないわ、あなたたちに何が出来るというの」

「妊娠と出産と授乳以外なら何でも」

 

 レイのジョークに全員の力が抜ける。

 

「お前そんなこと言ってる場合か!」

 

 クロノのツッコミが入る。

 

「おかしい、この必殺ジョークが通じんとは」

「「「「「「時と場所を弁えて!」」」」」」

 

 次の瞬間、レイの顔の横を電撃が通過する。

 プレシアの攻撃だ。

 レイの頬に切り傷が刻まれ、血がつうと流れる。

 レイはにやりとほくそ笑んだ。

 

「「「「「「レイ!」」」」」」

「「レイくん!」」

 

「俺の必殺ジョークでそんな反応をする奴は初めてや」

「黙りなさい。私を止めた気でいるようだけど、まだジュエルシードはこちらにあるのよ。これでアリシアを復活させることが出来るの。邪魔をしないで頂戴!」

「いんや、邪魔させてもらいます。今のあんたにアリシアを会わせるわけにはいかんからなあ。大切なことを見失い、無視しようとしているあんたには」

「っ! 黙りなさい!」

 

 プレシアの電撃がレイに襲い掛かる。

 レイはそれをするりとかわすと、プレシアに向かって突進する。

 レイはリボルバーを2丁、右手に白、左手に黒いリボルバーを構える。

 プレシアが召喚魔法を使い、成人男性大の傀儡兵を召喚する。

 

「っ! 不味い!」

 

 クロノが声を上げる。

 しかしレイは意に介することなく、傀儡兵に銃撃を試みる。

 放った魔力弾は傀儡兵の体に弾かれる。

 

「ほう」

 

 レイはそう呟くと、にやりと笑う。

 

「それは私が所有する傀儡兵の中でも最高傑作! 倒すには並みの魔導士が100人は要るわよ。あなた一人ではどうすることもできないわ」

「ほう、そんなら確かめさせてもらいますわ。俺が一体何人力なのかを」

 

 レイは懐から六角如意金剛棒を取り出すと、六尺ほどに伸ばす。

 

「さあて、傀儡兵君、簡単に壊れてくれるなよ。久々に手ごたえのありそうな相手なんやから」

 

 

 

 

 

 プレシアの猛攻になのは達は動けないでいた。

 障壁を張り、耐えるも、前に進むことや攻撃すら困難であった。

 ただ一人、アフームを除いては。

 アフームはプレシアの弾幕をひょいひょいと躱していく。

 ゆっくりと、だが確実に前進していた。

 プレシアに焦りの表情が現れ始める。

 

「ああ、もう! 当たりなさい!」

「じゃが断る」

 

 飛び跳ねるように電撃を躱すアフーム。

 そこへプレシアの誘導弾が襲い掛かる。

 

「これならどうかしら!」

「危ない!」

 

 フェイトが思わず叫ぶも、アフームの表情に焦りはない。

 2、3ステップを踏み、誘導弾をかわす。

 アフームをすり抜けた誘導弾は曲がり切れずに床に衝突したり、互いにぶつかり合って消滅する。

 

「今度はこちらの番じゃ!」

 

 アフームの両手にはラーメンの湯切り用のざるが握られている。

 中には熱々の麺が茹でたてのまま入っている。

 

「ホワッチャアアアアアア!」

「あっつう! 熱い!」

 

 熱々のゆで汁が障壁を通過してプレシアにかかる。

 

「あれは、質量攻撃として認識していいのだろうか……」

 

 クロノが疑問に思う中、アフームの熱湯攻撃は第2波に及んでいた。

 

「美味『紅茶の美味しいラーメン屋』!」

 

 熱々のティーバッグを振り回すアフーム。

 熱がるプレシアは攻撃に集中できない。

 

「うおおおおおお!」

 

 その隙をついてアルフがプレシアに接近を試みる。

 しかしその爪は障壁に阻まれ通らない。

 

「くそっ!」

「邪魔よ!」

 

 プレシアの杖が振るわれ、電撃が2人を襲う。

 

「がああああああ!」

「ん気持ぢいいいいいい!」

 

 プレシアの電撃に苦しむアルフに対し、アフームは周囲がドン引きするほど快感に身を悶える。

 

「あの、アフーム? 大丈夫?」

 

 見かねたフェイトが声をかける。

 

「心配するでない。妾はドMじゃ」

 

 頬を赤く染め、荒い息でアフームは答える。

 フェイトにはその言葉の意味は解らなかったが、碌でもない意味であることは容易に想像できた。

 

「なら、これならどう!」

 

 プレシアの杖が鞭へと変化する。

 プレシアが鞭をふるう、狙いはフェイトだ。

 フェイトは恐怖で身を縮こませる。

 目をつぶりぎゅっと耐えるフェイト。

 乾いた鞭の音がする。

 しかしフェイトに鞭が襲うことはなかった。

 

「大丈夫かの?」

 

 アフームがその身を挺して守ったのだ。

 

「アフーム!? 大丈夫なの!?」

「心配するでない、妾は痛みを感じぬ体質なのでな」

 

 再び鞭が振るわれる。

 狙いはクロノだ。

 

「くっ!」

 

 しかしクロノに鞭が届くことなない。

 再びアフームがその身を挺して守ったのだ。

 

「ハア、ハア、その鞭を見ていると、こう、SMへの趣味嗜好がむらむらと湧き上がってくる! さあ打ち込んでくるがいい! 強く打ち込んでくるがいい! ボロボロになるまで打ち込んでくるがいい!」

 

 荒い息でプレシアに迫るアフーム。

 プレシアは恐怖を感じた。

 これほどの恐怖は己の寿命を悟った時ぐらいであった。

 それほどまでに目の前の少女は恐ろしく映った。

 いくら攻撃しても当たることがなく、攻撃が当たっても快感に変えてしまう。

 プレシアはすっかり戦意を喪失してしまった。

 しかし、かろうじてかぶっていた狂気が彼女を奮い立たせる。

 

「そんなに痛いのが好きなら思う存分味あわせてやるわ!」

「待ってました!」

 

 アフームが狂喜を満面に押し出す。

 プレシアは気圧されるも、必死に狂気を取り繕うのだった。

 

 

 

 

 

 レイと傀儡兵との戦いは、レイの腹にカジキマグロが突き刺さるという形を迎えていた。

 

「何でですか!?」

「くっ、おのれ、まさか野生のカジキに襲われるとは、不覚」

「何故ここにカジキがいるのですか!?」

 

 リニスのツッコミが響き渡る。

 

「ふむ、硬い、早い、強いの三拍子そろったお人形やな。これは手強い」

「レイさん! 手助けを!」

「いや、要らん。この程度、倒せんで金剛=ダイヤモンド家を継げるか」

 

 傀儡兵が動く。

 レイはじっと動かずにその挙動を観察する。

 傀儡兵の剣戟がレイに襲い掛かる。

 レイは手にした如意棒でそれを防ぐ。

 5合近く打ち合うと。傀儡兵が離れる。

 先程からそれの繰り返しだ。

 レイから仕掛けることはない。

 カウンターで打ち返すことはあっても、自分から仕掛けに行くことはしなかった。

 傀儡兵が魔力ビームを放つ。

 レイはそれをひらりと躱す。

 すぐさま傀儡兵が動き、レイに切りかかる。

 レイがそれを躱し、防ぐ。

 レイがカウンターを傀儡兵の胴に決める。

 しかし、傀儡兵の体に傷がつくことはなかった。

 ふうとレイが一つため息をつく。

 

「いやあ、参った参った。これでは千日手やないか」

「ですから、手助けすると!」

「要らん。それに何ができる? 俺の骨すら断ち切る打ち込みを跳ね返す手合いに」

 

 それを言われリニスは憮然とした。

 それと同時に、目の前の少年の実力が自分とは隔絶していることに気付かされた。

 

「なら、どうするというのです!?」

「切り札を切る」

 

 レイはこともなげに言う。

 

「今まで観察して分かった。こいつは強い! 硬いし速い。しかしそれだけや。厄介なギミックがあるわけやなし、非常にシンプルな手合いや。この手合いに必要なのは純粋なスペック差。これから一時的にそれを引き上げる」

 

 そういうとレイは手で印を結ぶ。

 

「願い奉る、願い奉る。雷神よ、我は汝の僕なり」

 

 傀儡兵が切りかかってくる。

 

「汝が僕、雷の吸血鬼を我が身に宿し給え」

 

 レイは剣をするりと避ける。

 

「我は汝が僕なり。雷の元素を宿し僕なり」

 

 再び傀儡兵が切りかかる。

 

「我は雷の吸血鬼なり。我が血の一滴で身を替え給え」

 

 レイはそれを危なげなく避ける。

 

「急急如律令!」

 

 唱え終わると同時にレイの体が変質していく。

 レイの体から電気が迸る。

 

「この姿は1分しか持たん。早々に決めるで」

 

 傀儡兵が切りかかる。

 しかしレイは避けようとしない。

 

「危ない!」

 

 リニスが思わず叫ぶ。

 レイの体を捕らえたその剣は、いともたやすくその体をすり抜けた。

 

「え!?」

「今俺の体は雷の元素のみで構成されとる。従って物理攻撃の類は俺には効かん。そして」

 

 傀儡兵の体からバチバチと音を立てて電気が走る。

 

「触れれば超高圧電流が襲い掛かる」

 

 傀儡兵の体は高圧電流に触れたことで制御が困難になっていた。

 動く様子が見えない。

 

「さて、とどめといきましょか」

 

 そう言うとレイは傀儡兵に向かって突進する。

 

「右手に電子ジャー!」

 

 レイの右手に電子ジャーが現れる。

 

「左手に電子レンジ!」

 

 レイの左手に電子レンジが現れる。

 

「エレクトリックパワーボム! ぶっ壊れろ!」

「何ですか!? この攻撃!?」

 

 レイは両手の家電製品を思いきり傀儡兵の頭部を挟むように叩きつける。

 傀儡兵の頭部はひしゃげ、原形を失う。

 ふらふらと制御を失い、倒れ込む傀儡兵。

 やがて、傀儡兵は爆発する。

 爆炎を背にレイは静かに言葉を発するのだった。

 

「お前さんは強かった。だがハジケが、足りんかったな」




 全5話構成なのでこのようなタイトルになりました。
 それよりも、みんなラヴクラフトを読んだことはあるかな?
 私の自宅にはネクロノミコンが4冊あるぞ!
 エイボンの書だってあるんだ!
 皆も魔導書を読んで、このくそったれた人生を変革しよう!
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