魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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前回のあらすじ
 ドM、覚醒。



第12.4話 目覚めし者たち

「もう、嫌……。誰かどうにかしてよ……」

 

 プレシアは童女の様に泣きじゃくっていた。

 

「まだか!? おかわりはまだか!? 早う! 早う鞭を!」

 

 アフームは全身をくねらせながら、プレシアに鞭の催促をする。

 

「誰か、助けて……」

 

 プレシアの心はすっかり折れていた。

 大魔導士と謳われたプレシア・テスタロッサもドM相手は初めてだったのだろう。

 目の前には攻撃を快感へと変えている少女がいる。

 他の連中を攻撃しようとしても、自分から当たりに行くその様は滑稽を通り越して恐怖だった。

 プレシアはがっくりと膝をつく。

 その目には涙が浮かんでいた。

 

「何とかして……」

 

 プレシアが呟いたその瞬間。

 

「新手の悪霊確認!」

「あひぃぃぃぃぃぃん!」

 

 レイがバズーカをアフームに向かってぶっ放したのだ。

 

「「「「「「ええええええ!?」」」」」」

「おいおい、何を勝手に楽しんでるんや」

「す、済まぬレイ。目的をすっかり忘れておった」

「そう、俺たちの目的、ねずみ講の勧誘にな」

「「「「「「犯罪だよそれ!」」」」」」」

「違うじゃろう、妾達の目的は法外な値段で布団乾燥機を買わせることじゃろう」

「「「「「「それも犯罪だって!」」」」」」

「レイもアフームも何を言っているのやら、僕たちの目的はこの家の金品を漁ることだろう?」

「「「「「「ユーノ(くん)が一番悪いよ!」」」」」」

「とまあ、冗談はここまでにしておいて」

「置いた冗談は妾が預かっておこう」

「プレシア・テスタロッサ、気は済んだか?」

 

 プレシアは答えずに、レイから目を逸らす。

 レイは手を後ろに組むと、静かに語り始めた。

 

「えー、今回の事件、非常に不可解な点がありました。プレシア・テスタロッサの動機です。果たして彼女が本当にアルハザードに一縷の望みをかけていたのでしょうか? 一流の科学者であった彼女が一か八かの賭けに出るでしょうか?」

「何が言いたいんだ」

 

 クロノが口を挟む。

 

「僕はですね、今回の事件がどうもちぐはぐでしょうがなかった。しかし、ある人物を中心に据えるとしっくりくることが分かったんです」

「それは……?」

 

 なのはが問いかける。

 レイは頷くと、口を開いた。

 

「フェイト・テスタロッサ。彼女こそ、今回の事件の要だったんです」

 

 全員に動揺が走る。

 

「マッジで~」

 

 アフームがギャル口調で返す。

 

「順を追って説明しましょう。俺の推理をね」

 

 レイの口角がにやりと上がった。

 

「事件の発端は26年前のヒュードラ事故。あの事故でプレシア・テスタロッサは病魔に侵され、アリシア・テスタロッサは亡くなった。そのアリシア・テスタロッサのコピーが、フェイト・テスタロッサ。ここまでは皆さん周知の事実でしょう」

 

 フェイトがその顔に影を落とす。

 なのはが心配そうにその顔を覗き込む。

 レイは意に介することなく推理を展開する。

 

「おそらくですが、プレシア・テスタロッサ、あなたの病状は相当ステージが進行しているのではないでしょうか?」

「……ええ、そうよ」

「となると問題は残されるフェイトになりますな。9歳の幼子が1人で生きていけるとは思えん。そのためには何かしら保護責任者がいる。しかしその伝手はない。恐らく当初の計画では全く違った青写真が描かれとったんでしょうな」

 

 プレシアはだんまりを決め込む。

 

「しかしここで計画が狂う、ジュエルシードが手に入らなかった。あまつさえ辺境の次元世界にばらまかれてしまった。ここで計画は変更される。ジュエルシード探索の過程で管理局に保護されるように仕向けるように。その際彼女に一切の責が及ばないように虐待しているという事実を付け加えて」

 

 プレシアの目が見開かれる。

 プレシアがレイの方を見る。

 

「じゃあ、母さんは」

 

 フェイトが顔を上げる。

 

「この事件は最初からフェイト・テスタロッサを生かすために仕組まれた事件やったんですよ」

「……違うわ」

 

 プレシアが呟く。

 

「私はアリシアを蘇らせるの、そのためにジュエルシードが必要で、私の体では取りに行けないから、フェイトを利用しただけ。それが事実よ」

「プロジェクトF.A.T.E.、死者をコピーすることで蘇生を実現する計画でしたか? フェイト命名の理由は、記憶の転写に失敗したから、別人格となってしまったから。それでも、あなたにとっては娘やった。違いますか?」

「……違うわ。あの子は道具よ、アリシア復活のための道具なのよ」

「いい加減にしんさい!」

 

 レイが声を荒げる。

 

「いつまで現実から目を背け続ける気や! 逃げんな! 娘から逃げんな! あんたは、娘から母親を奪うんか!」

「仕方ないじゃない! 時間がないのよ! 私にはもう、残された時間がないのよ」

 

 プレシアの慟哭が響き渡る。

 

「じゃあ、どうすればいいわけ!? 私はどうしたらよかったのよ!?」

「そんなこと知るか!」

「「「「「「ええーーーっ!?」」」」」」

「だが、時間は作れるで、あんたが己の罪と向き合う時間くらいはな」

「……どういうこと」

 

 レイの口角がにやりと上がる。

 

「あんたは最後の最後で幸運を掴めるんや。この俺が、あんたの病気の進行を遅らせ、アリシアを生き返らせると約束しよう」

「「「「「「はい!?」」」」」」

「今、何と言ったの?」

 

 プレシアがレイに聞き返す。

 

「あんたの病気の進行を遅らせ、アリシアを生き返らせると言ったんや」

「馬鹿なことを言うな! 死にかけの人間を治す事も、死者の蘇生も、不可能だ!」

 

 クロノが声を荒げる。

 

「今回ばかりはそれを可能にする方法があるんや。それに、俺は冗談は言っても嘘は言わん!」

「いや、結構嘘ついている気がするの」

 

 なのはのツッコミを意に介さず、レイは話を続ける。

 

「ただしこれは約束してほしい、報酬の件や」

 

 プレシアがごくりと唾をのむ。

 

「報酬はあんたが所有している魔法関連の雑誌、論文等の閲覧を無制限で許可してもらうこと! あんたの蔵書を余すことなく俺の目に触れさせることや!」

「……それでいいの?」

「俺が大金を積んでも欲しいもんや」

「……わかったわ。それでいいのなら」

「! 交渉成立やな」

 

 レイは満面の笑みで答える。

 

「レイくん! あなた何を要求したか分かっているの!」

 

 リンディがたまらず声をかける。

 

「わかっとります。あくまで個人用にとどめます。僕としても急激なブレイクスルーは望むところやない。地球人類が自らの手で発見してこそや」

「だといいのですが……」

「これでも科学の子、哲学はしっかり身についとります」

 

 レイが自信たっぷりに言う。

 

「では早速アリシアの蘇生に取り掛かるとしますか」

「今ここで出来るのか!?」

 

 クロノの驚愕をよそにレイはいそいそと準備を進める。

 

「まあまあ細工は流々仕上げを御覧じろ、ってな。まずは肉体を温めて細胞を活性化させると同時に皮膚から栄養を吸収させるキエエエエエエ!」

 

 そういうとレイはいつの間にか用意された風呂桶にポッドの中身ごとアリシアを勢いよく移し替える。

 なのはは風呂桶の中身を見る。

 風呂桶には野菜がゴロゴロと入っており、ブイヨンの香りがする。

 

「これブイヤベースだ!」

「ブイヤベース?」

「地球のお料理。簡単に言うと野菜スープなの」

「「「「「「野菜スープ!?」」」」」」

「ちょっと! 丁寧に扱って頂戴!」

「設定温度は40度、さあてまずは肺の水を抜く!」

 

 プレシアの非難もどこへやら、レイはアリシアの胸に手を置く。

 

「ハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマーハンマーカンマー」

 

 するとアリシアの口から液体があふれ始める。

 

「成程、あの呪文は液体をコントロールする呪文なんだね」

 

 ユーノが納得したように頷く。

 

「いや、別に関係ないんやけど」

「「「「「「じゃあ何で唱えた!?」」」」」」

「ノリで」

「「「「「「ノリ!?」」」」」」

「ブイヤベースの温度も丁度良くなってきたな、アリシアの体温が上がるまで待つ、と。その間にプレシアはん、あんたの診察を済ませてしまいましょ」

「……ええ、わかったわ、でもこの病気は治ることがないわ」

「それは俺が判断することです。いいからいいからー信じて信じてー」

 

 いつの間にか用意された椅子にプレシアを座らせ、レイは診察を始める。

 

「スキャン! ……ふうむ、リンカーコアらしき器官に異常な膨らみが見えますな。癌のようなものか。よくもまあ今日まで生きてこれたもんですわ」

「言ったでしょう、この病気は治ることがないって」

「これは俺でも、持って10年が限界でしょう」

「嘘!? そこまで延ばせるの!?」

「上手くいけば、ですがね。後はあなたの気力次第です。俺が出来ることは膨らみを抑えることだけ、切除は出来まへん」

「それでもお願いするわ、ここまで来たら何だって試してやるわ」

「その意気です。気合が無ければ治るもんも治りませんで。しかし、今は少々時間が足りひん。先にアリシアの蘇生を仕上げてからプレシアはんに取り掛かりましょ」

 

 そういうとレイはアリシアの入った浴槽に近づく。

 何やら複数の装置をアリシアに取り付けていく。

 

「全身の温度は、うん、丁度ええな。後は心臓にパルスを送って、と」

 

 アリシアの胸に電極が取り付けられている。

 

「スイッチオン」

 

 びくんびくんとアリシアの体が痙攣する。

 

「んーやや強めやけどこれくらいやないと厳しいからなあ。後は蘇生呪文やな」

「「「「「「今までの科学的な部分は何処へ行ったの!?」」」」」」

「アフーム、準備するで」

「はいな!」

 

 そういうとレイとアフームはギターを取り出し歌いだす。

 フリッパーズギターの『カメラ! カメラ! カメラ!』だ。

 

「「「「「「どう考えてもそれ蘇生呪文じゃないよね!?」」」」」」

 

 きれいなハモリで歌いきると、2人は満足げに頷くのだった。

 

「やれることはやった、あとは結果を待つだけや」

「「「「「「どこが!?」」」」」」

「さあてと、ちょいと休憩でもしますかな。おやつにしましょ」

「「「「「「呑気だな!」」」」」」

「え!? おやつ!?」

 

 ブイヤベースからざばりとアリシアが起き上がる。

 

「「「「「「ホントに生き返った!?」」」」」」

 

 プレシアは体をわなわなと震わせる。

 夢にまで見た光景が目の前にあるのだ。

 アリシアが生きて、ドーナツを頬張っている。

 

「これおいしい! どこの店の?」

「俺の手作りや」

「マジで!? 器用だね」

「ア、 アリシア?」

 

 プレシアがアリシアに声をかける。

 

「あ、お母さん。ヤッホー私生き返ったよ」

「「「「「「軽っ!」」」」」」

 

 プレシアがアリシアに勢い良く抱きつく。

 

「アリシア、アリシア……」

 

 その声は涙声に代わっていく。

 

「お母さん、無茶しすぎだよ、もう」

 

 そう言うアリシアの目にもうっすらと涙が浮かんでいた。

 アリシアもプレシアを抱き返すのだった。




 フリッパーズギター、好きですね。
 1stアルバム収録の『ボーイズ・トリコに火をつけろ』がお気に入りだったりします。
 こんな感じで私の好きな曲が作中に出てくることがあります。
 是非、私の年齢を考察してみてください。
 正解した方には715フレッチャーをプレゼント!
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