魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 今回お送りするは、話の都合上入れざるを入れないエピソード。
 特に意味は無いかもしれないけれど、この後の展開に関わる話なので、読んでいただくと幸いです。


第1.5章 夏なんです
第1話 真夏のショートショート3連発


『新デバイスお披露目』

 

 

 

 レイからアリサとすずかのデバイスが完成したという話が出たのは、1学期最後の日であった。

 管理局からの報酬で手に入れたデバイス作成に必要な道具や材料を用いて、やっと今完成したのである。

 

「これでようやっと、2人も魔法が使えるようになるな」

 

 そういうレイの顔は満足げであった。

 

「それにしてもずいぶん時間かかったわね、普段のレイならもっと早く用意してそうなもんだけど」

「そうだね、ちょっと慎重が過ぎるような気がするけど」

 

 アリサとすずかは時間がかかったことに疑問を禁じ得ない。

 

「言うても1月半やで、資料読み込んで、原理理解して、組み立てて、それをするのにずぶの素人が掛けた時間が。それを思うと早いと思わへんか」

「それもそうね、ごめんなさいね、変なこと言って」

「いやいや、そう思うのも当然やろ。それに、なのはのレイジングハート並みの性能を出そうと思うたら、自然と時間がかかってなあ」

「「「そこまでやったの!?」」」

「まあ、仕上げはこの後CMの後で、ってな」

 

 

 

 

 

 放課後、金剛=ダイヤモンド邸に集合した5人は早速デバイスを確認することにした。

 

「これが、アリサ専用のデバイス、サンシャインホープ。ほんでもってこっちがすずか専用のデバイス、ムーンライトドリームや」

 

 オレンジ色の太陽を模した待機状態のデバイス、サンシャインホープと水色の三日月を模した待機状態のデバイス、ムーンライトドリームがレイの掌からアリサとすずかに手渡される。

 

「早速セットアップしてみい。バリアジャケットと杖については本人のイメージが元となる。しっかりイメージしてな」

 

 2人は頷くと、声を合わせる。

 

「「セットアーップ!」」

『『Stand by ready set up』』

 

 2人を光が包む。

 やがて光が晴れると、2人の衣装は変化し、バリアジャケットとなっていた。

 アリサは片手杖、すずかは身の丈ほどもある両手杖を携えている。

 

「どうやら成功したみたいやな」

 

 レイは満足げに頷く。

 

「以上はあらへんか?」

「ええ、大丈夫そうだわ」

「うん、こっちも大丈夫」

 

 アリサとすずかから無事にセットできたことを確認すると、レイは一つ大きくため息をついた。

 

「いやあ、一仕事ついたわ。これで後は論文の読み込みに集中できるもんや」

「アンタってやっぱり科学者なのね」

「そうどす、俺は物理学者。そんでもって魔術師や。異世界の科学的な魔法なんて魅力的な研究対象、手を付けんわけにはいかんやろ」

「レイくんにとっては魔法は研究対象なんだね」

「せやで、せやからちょっとお前さんらとは魔法へのアプローチが違うんや。せやから俺のデバイスは無し。システムが異なるからなあ」

「そんなことより、みんなで空飛ぶの!」

 

 なのは待ちきれなくなって声を上げる。

 

「わかったわかった、すぐに行こうではないか」

「あれ、レイくんとアフームちゃんも飛べるの?」

「「気合でどうにか」」

「「「出来るわけないでしょ」」」

 

 結界を張った5人は早速空を飛ぶ。

 最初は不慣れだったアリサとすずかも、しばらくすればきちんと飛べるようになっていた。

 夏はまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

『ユーノ・スクライアの使命』

 

 

 

 とある次元世界、ここでスクライア一族は遺跡発掘を行っている。ユーノももちろんここにいる。

 

「いやあ、大量大量。副葬品がこんなにあるなんて。しかも保存状態もいいし、色々解りそうだ」

 

 齢9にして、ユーノは博士号を持つ考古学者である。

 すでに一人前として扱われるユーノに同年代の友達は全くいなかった。

 孤独故に、年少故に、孤児であるが故にユーノは遠慮しがちなところがあった。

 しかし、同様に博士号を持つ天才、レイや精神年齢の高いなのは、アリサ、すずか、アフームらとの触れ合いと友情がユーノを変えた。

 虚空戦士(ハジケリスト)として目覚めたのもその一つだ。

 スクライア一族の元へ戻った時の驚かれようと言ったら、ユーノは今思い出しても愉快な気持ちになる。

 

「この形状は、数学的に見ても面白そうだ。レイが見たらどう思うだろう」

 

 いつかレイと一緒に仕事をしてみたい。

 考古学と数理物理学、全く異なる分野のコラボレーションが何を生み出すのか。

 ユーノはその時が来るのを胸を弾ませて待っている。

 

 

 

 

 

 その日はスクライア一族にとっての祭日である。

 何でも、一族の祖が出立した日を記念した日だそうである。

 普段は遺跡を漁る者達も、今日は休んで一族の歴史に思いを馳せる。

 そんな中、ユーノは長老に呼ばれていた。

 

「お呼びですか」

 

 恐る恐るユーノは長老のテントに入る。そこにいたのは長老一人であった。彼の家族は誰もいない。

 

「おおユーノや、こっちへ来なさい」

 

 長老に促され、ユーノは2人っきりのテントに座り込む。

 

「ユーノ、お前はいい出会いをしたようだな」

 

 おそらくレイたちのことであろう、とユーノは思った。

 

「いい出会いがいい変化をもたらす。お前はそれをしかと感じたことじゃろう」

 

 ユーノは力強く頷く。

 

「ユーノよ、これはお前が成人するまで秘密にしておくことであったが、わしも老い先短い、それにお前は成長した。言ってもよかろう。お前は一族を離れ遠い旅をする運命にある。その旅は一族の悲願にかかわる旅じゃ」

 

 ユーノは絶句した。衝撃の事実が次々と放たれたからだ。

 

「占いババを知っておるじゃろう。ババはお前が生まれた時、今の予言を受け取った」

 

 占いババというのは、スクライア一族のシャーマンである。

 

「そして、我が一族の悲願は、一族の歴史に大いに関係がある。この歴史は代々族長の身に受け継がれてきた秘密、それをお前に教えよう」

 

 ユーノは居住まいを正した。

 

「スクライア一族の祖は元々ある国の宰相を務めていた。大公の位をもらい、国を支えたという。その国の名はブリリアント帝国!」

「ブリリアント帝国!? 第6次元文化圏を余さず支配したあの!?」

「左様、戦乱のベルカをものともせずにしながらも、一夜にして消え去った大帝国。我らはその大公の末裔なのだよ」

 

 再びユーノは絶句した。

 

「我らがなぜ放浪を続けているのか、それは大公の悲願にある。それは皇帝家の末裔を探し出すことにある」

「でも、確かニュートラル皇帝家はすでに滅んだのでは……」

「滅んではおらぬ! 皇帝には2人の弟君がおられた。お2方は密かに亡命なされたのじゃ。いずことも知れぬ場所へな」

「……なぜ居所が分からないのですか?」

「伝わるところによると、急いで逃がすために、適当な転移を行ったと言われておる。故に居所がつかめんのじゃ」

「じゃ、じゃあ一族の悲願というのは」

「うむ、我らスクライア一族の悲願、それは皇帝家の末裔を探し出すこと。そして、ブリリアント帝国の復興である」

 

 ユーノは三度絶句した。

 

「長老にのみ伝えられる言葉がある、世が乱れ、悪しき神々が封印から解かれしとき、鍵を携えた皇帝が蘇る、と」

「鍵を携えた皇帝……」

 

 一瞬、ユーノの頭にレイの姿が浮かんだ。しかしユーノはかぶりを振って否定する。

 

「ユーノよ、お前はきっと皇帝とかかわることになる。一族の悲願に近づくのだろう。そのためには力がいる! ミッド式ではない、帝国に伝わる魔道術式が! 古のブリリアント式魔法をお前に伝授しよう」

 

 ユーノは生唾を呑みこんだ。

 これから訪れるであろう過酷な運命に覚悟するかのように。

 

 

 

 

 

『海鳴の三兄貴』

 

 

 

 兄貴とはある種の概念である。

 それでありながらそれは計測できる力のようなものでもある。

 1000Brほどもあれば、立派な兄貴としてカウントされるだろう。

 しかし、ここの兄貴たちは違う。

 何れも100000Brを超えるほどの兄貴力を持っているのである。

 

 

 

 

 

「つまり兄気とは、兄貴力が具現化したものなんですよ」

 

 これは三兄貴が兄貴の誓いを契る少し前の話である。

 レイ兄貴は翠屋で恭也兄貴、ケント兄貴に兄気の秘密について話していた。

 

「その兄気の力は強いのか?」

 

 恭也兄貴がレイ兄貴に問いかける。

 

「人によりますな、僕の兄気の性質は『金剛』、肉体を、精神を、物体を硬化し、強化する能力です。シンプルであるがゆえに強力であることは間違いないでしょう」

「では、僕らの兄気の性質は一体何だろう?」

「では、引き出してみましょか。お2人の兄貴力は相当なものです。命の危機と知りながら妹を助けに行くその覚悟は、高い兄貴力が期待されます」

 

 そういうとレイ兄貴は2人の兄貴の手を取ると、兄気を込める。

 

「これが、兄気……」

「感じる、力の高まりを……」

 

 恭也兄貴とケント兄貴は早速兄気に覚醒したようである。

 

「感じるのです、兄気の高まりを……」

 

 レイ兄貴が兄気を導いていく。

 その様子をなのは、すずか、アリサ、アフームが呆れつつも眺めていた。

 

「なのは、アリサ、今一体どういう気分かの?」

「なんか、お兄ちゃんが変な宗教にはまったんじゃないか心配になるの」

「私も、大体兄気って何なのよ」

「具現化した兄貴力、と言えばわかるじゃろうか」

「「「全然わかんない」」」

「! 見るがいい、兄気に目覚めるぞ!」

 

 みると、恭也兄貴とケント兄貴が兄気を習得したのか、ゆっくりと目を開ける。

 

「成程、理解した、これが兄気というものか」

「不思議な気分だな、なんというか、全てを理解したような、そんな気分だ」

「「「何か悟ってるー!」」」

「お2人共、性質は分かりますかな」

 

 レイ兄貴の一言に恭也兄貴とケント兄貴が頷いて答える。

 

「ああ、俺の性質は『剣閃』。肉体強化と、剣の強化のようだ。やりようによっては斬鉄も出来る様だ」

「僕の性質は『火焔』。兄気を焔に変えることが出来る様だ。体に纏うことも出来るみたいだ」

 

 3人の兄貴は頷き合う。

 

「「「我ら生まれし日違えど、妹を愛する心は同じ!」」」

「「「何か誓い合ってるーーー!」」」

「なんて感動的な場面なのじゃ。まさか『兄貴の誓い』が見られるとは」

「「「知ってるの!?」」」

 

 こうして、三兄貴はその仲を確かめ合ったのであった。

 その後も彼ら三兄貴は兄貴の修業を続けているという。

 

「「「兄貴の修業って何!?」」」




 遅ればせながらあいまいみー9巻とFSS DESIGNS 6 XROSS JAMMERを買いました。
 ちょぼ先生キレッキレだし、永野先生はいい仕事するし、言うことなし!
 あーあ、読者数伸びねーかな。
 あ、次回より、第2章が始まります。
 第1部も折り返し、乞うご期待!

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