魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ 作:ショーン=フレッチャー
新デバイス完成! レイとアフームは無いけど。
「みんな落ち着いて聞いてね、みんなのデバイスに新しいシステムを積んでるの」
「新しい……」
「システム?」
誰もがそれとなく呟く。
「その子たちが望んだの。自分の意思で、自分の思いで」
なのはたちは己の相棒に目を向ける。
「呼んであげてその子たちの新しい名前を」
全員が呼ぶ、己の生まれ変わった相棒を。
「レイジングハート・エクセリオン!」
「バルディッシュ・アサルト!」
「グレイブ・アサルト!」
「サンシャインホープ・ブレイズ!」
「ムーンライトドリーム・フロスト!」
その瞬間、バリアジャケットが、杖が、新たな形となって姿を現す。
その形にヴィータとザフィーラは驚く。
見覚えのある機構がそこにあった。カートリッジシステムだ。
『『Assault form, cartridge set』』
『Flare mode, standby ready』
『New moon mode, standby ready』
『Accel mode, standby, ready』
「私達は貴方達と戦いに来たわけじゃない。まずは話を聞かせて」
「闇の書の完成を目指している理由を」
構えるヴィータとザフィーラに対しあくまで話し合いを望むなのは達。
「あのさ、ベルカの諺にこういうのがあんだよ。和平の使者なら槍は持たない」
それをヴィータはにべもなく突っぱねる。
「成程、それは道理やな」
レイがその言葉に同意する。
「どういう意味?」
なのはの質問にレイは答える。
「交渉の場に寸鉄を帯びる奴は信用できん、といったところやろか」
「大体そのような話だ。それとヴィータ、それは諺というより、小話の落ちだった気がするのだが」
「う、うるせえ! いいんだよ、細かいことは!」
「そうそう、細かいことはどうでもええ。大事なのはそっちは交渉のテーブルに着く気はないということやな」
「当たり前だろ」
「ならばこちらにも考えがある。何が何でも平和的に交渉で解決して見せる! これが俺の覚悟や!」
次の瞬間、レイは服を脱ぎ棄て、ビキニ姿となった。
「夏! 先取り!」
「「「「「「何やってんのお前!?」」」」」」
「次の夏はグラデーションが来る!」
「真面目に交渉する気あんのか!」
場が完全に緩み切ったとき、結界が破られ、侵入してくるものが3名。
「シグナム、あすか、エスト……」
「すまない遅……、うわあ変態!」
「あいつアホちゃうか」
「誰が変態や!」
「「「「「「お前だよ」」」」」」
「レイの筋肉! ぺろぺろ! ぐへへ」
トライバイセップスでポージングするレイとその上腕二頭筋を舐めるアフーム。
「……みんな、手は出さないでね」
「作戦通りじゃな、よかろう、なのはの一騎打ちはいつものことじゃ」
アフームの言葉が口火となって全員が散開する。
なのは対ヴィータ、シグナム対フェイトとアリシア、アルフ対ザフィーラ、アリサ対黒騎士、すずか対エストといった状況になる。
「では我々は闇の書探しと行きますか」
レイ、アフーム、ユーノ、クロノは闇の書を持っているであろう、もう一人の騎士を探すことになっていた。
しかしクロノが疑問を呈する。
「しかしいいのか? 君たちの実力なら、騎士の相手をした方がいいんじゃ」
「今回の場合、勝っても負けても困るからなあ。なるべく時間を作るかつ早く探し出すならこの布陣がベストや」
「君がそういうならそうするが」
そういうと4人は散開する。
それぞれの戦いが繰り広げられる中、シャマルが結界を見つめていた。
彼女は今ザフィーラと念話している。
(状況はあまり良くないな、シグナムやヴィータが負けるとは思わんがここは退くべきだ、シャマル何とか出来るか)
(何とかしたいけど局員が結界を維持してるの、私の魔力じゃ破れない!)
(止むを得ん、アレを使うしか)
(分かってるけど、でも……)
その時、カシャンとシャマルの後頭部に何かが突きつけられた。
突然の事にシャマルは思わず念話を止めてしまう。
(シャマル? どうした、シャマル)
「捜索指定ロストロギアの所持、使用の疑いで貴方を逮捕します。抵抗しなければ弁護の機会が貴方にはある。同意するなら武装の解除を」
後ろにいたのはクロノだった。
シャマルを発見したクロノは密かに高度を下げ後ろから接近、デバイスを突き付けたのである。
これで事件は終わりかと2人を見つけたレイはゆっくりと接近する。
だがクロノの後方に魔方陣が現れる。
「執務官殿! 後ろ!」
「え?」
クロノのさらに背後に出現した何者。
咄嗟の事にクロノは急いで振り返ろうとするが遅かった。
気が付けば腹部には蹴りが入れられクロノは吹き飛ばされていた。
隣のビルのフェンスに叩きつけられるクロノ。
「くっ、仲間?」
「エイミィ、今のは!?」
「分かりません! こっちのサーチャーには何の反応も、なんで、どうして?」
突然の出来事に大慌てになるアースラの面々。
クロノを蹴り飛ばしたのは仮面の男だった。
それは管理局の網に引っかかることなく現れたのだ。
「執務官殿!」
レイはクロノを心配しつつも、仮面の男を見やる。
「お前は何者だ! 連中の仲間か!」
クロノの問いに仮面の男は答えない。
返事はシャマルの足元の魔方陣だった。
「させるか!」
レイとクロノは両側から挟み撃ちにしようとする。
それを仮面の男は回し蹴りで文字通り一蹴して見せた。
「こやつ、強い!」
レイの感想ももっともだった。
この男は体術のみで2対1という不利な状況を渡っているのである。
レイが、前衛を、クロノが後衛に回り仮面の男に相対する。
「六角如意金剛棒」
レイがどこからか六尺ほどの金属棒を取り出す。
それを振り回して仮面の男に立ち向かう。
クロノも魔力弾で応戦する。
しかし全ての攻撃がいなされるか、防がれるかで決定的なダメージは与えられなかった。
「捕縛『キャッチ・ザ・レインボー』!」
籠目上の網が仮面の男を捕らえる。
しかしそれすらも力業で突破されてしまう。
「ならば蜘蛛『スパイダーウェブ乱れ撃ち』!」
今度はか細い糸で縛り上げようとする。
しかしそれもまた破壊されてしまう。
「あかん、手詰まりや」
レイはさっさと白旗を上げる。
「闇の書よ、守護者シャマルが命じます。眼下の敵を打ち砕く力を、今、ここに。」
シャマルが砲撃の準備をする。
仮面の男が守っている。
最早止めるすべはない。
「今は動くな」
「何!」
「時を待て、それが正しいとすぐにわかる」
「訳の分からないことを!」
「おるよね、訳わからんこと言うて黒幕ムーブする奴」
「お前も変なことを言うな!」
「撃って、破壊の雷!」
『Beschrieben』
魔力球から雷が放たれ、結界を破壊し始める。
「すまん、テスタロッサ! この勝負預ける!」
「シグナム!」
「ヴォルケンリッター鉄槌の騎士、ヴィータ。あんたの名は?」
「なのは、高町なのは」
「高町なぬ、なぬ、ええい!呼びにくい!」
「逆ギレ!?」
「ともあれ勝負は預けた! 次は殺すかんな! 絶対だ!」
「あっ、えっと。ヴィータちゃん!?」
「仲間を守ってやれ。直撃を受けると危険だ!」
「えっ? あ、ああ」
「結界が壊れる。ここまでやな」
「どういうことよ!」
「勝負ここまで。私たちは引きますので」
「何で! どうして!」
各所で戦いが終わろうとしている。
結界が割れ、雷が降り注ぐ。
その間に守護騎士たちは去っていったのだった。
戦いが終わった後、ハラオウン家兼時空管理局出張司令部でミーテイングが行われていた。
カートリッジシステムの説明の後、話は守護騎士についてに移っていった。
「問題は彼らの目的よね」
「えぇどうにも腑に落ちません、彼らがまるで自分の意思で闇の書の完成を目指していると感じますし」
「それって何かおかしいの? 闇の書ってのも要はジュエルシードみたく凄い力が欲しい人が集めるもんなんでしょ? だったらその力が欲しい人のためにあの子達が頑張るって言うのもおかしくないと思うんだけど」
アルフの疑問にクロノとリンディが答える。
「第一に闇の書の力はジュエルシードみたいに自由な制御の効くものじゃないんだ」
「完成前も完成後も純粋な破壊にしか使えない、少なくともそれ以外に使われたという記録は一度もないわ」
「それともう一つ、闇の書の守護騎士達の性質だ。彼らは人間でも使い魔でもない」
その言葉に一同は驚く、だがクロノの言葉は続く。
「闇の書に合わせて魔法技術で作られた疑似人格、主の命令を受けて行動するただそれだけのプログラムに過ぎないはずなんだ」
「意思疎通のための対話能力は過去の事件でも確認されてるんだけどね、感情を見せたって例は今まではないの」
だがそこでまた新しい疑問が湧く。
「でもあの帽子の子、ヴィータちゃんは怒ったり悲しんだりしてたし」
「シグナムからもハッキリ人格を感じました」
「感情がないなんて風には到底見えなかったよな」
誰もがその言葉に頷く。
さらにフェイトは言う、シグナムは仲間のため主のために為さねばならない事があると言っていた、と。
それを聞いたクロノは少々暗い表情を見せるのだがそこにリンディが助け舟を出した。
「まぁそれについては捜査に当たってる局員の情報を待ちましょうか」
「転移頻度から見ても主がこの近辺にいるのは確実ですし案外主の方が先に捕まるかもしれません……それにしても闇の書についてもう少し詳しいデータが欲しいな」
そう言ってクロノの目線はユーノに向けられる。
「ユーノ、明日から少し頼みたい事がある」
「え? 別にいいけど……」
「何? 何するん?」
クロノのユーノへの頼み事とは何なのか。
レイは気になる様子で尋ねるもはぐらかされるのであった。
そういえば、うちの主人公はリリなの世界にいるくせにデバイスを持っていないんですね。
まー必要としていないってのもありますけど、それ以前にコイツのスタンスを表してもいるんですよね。
それについては、後程明らかになります。
それがこの作品の特徴であり、他の作品との差別化でもあります。
ていうか、レイは一兵卒ってキャラじゃないですよね。
どちらかというと指揮官なんです。
だからこの人、チート能力で無双する気が全く無い。
だから負けるときは負けるんです。