魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ。
 仮面ってなんか厨二臭いよね。


第6話 願いはある、未来はない

「シグナム、はやてちゃんもうじき帰ってくるそうよ」

「そうか」

 

 はやてとの電話を終えたシャマルがシグナムに話しかける。

 現在八神家にはシャマルとシグナムザフィーラ、エストがおりヴィータとあすかがいない。

 

「ヴィータちゃんは、まだ?」

「かなり遠出らしい。夕方には帰るそうだ」

 

そう言いながらシグナムは冷蔵庫を開ける。

 

「貴方は? シグナム」

「何が?」

「大丈夫? だいぶ魔力が消耗してるみたいだから」

 

 シグナムの体調を心配するシャマル。

 

「お前達の将は、そう軟弱には出来ていない。大丈夫だ」

 

 そう言いながらペットボトルを取り出しシグナムはソファに座る。

 

「貴方も随分変わったわよね…昔はそんな風には笑わなかったわ」

「そうだったか?」

「貴方だけじゃない。私たち全員、随分変わったわ。皆、はやてちゃんが私達のマスターになった日からよね」

 

 シャマルは、はやてと出会った日のことを思い出す。

 

 

 

 

 

 6月3日午後9時5分八神家。

 広い家には車椅子の動く音と幽かに洗い物の音がする。

 車いすの音の主、はやては固定電話の前で止まると留守電再生ボタンを押す。

 

『留守電メッセージ、1件です。……もしもし?海鳴大学病院の石田です。えっと、明日ははやてちゃんとあすかくんのお誕生日よね。明日の検査の後、お食事でもどうかなーと、思ってお電話しました。明日、病院に来る前にでもお返事くれたら嬉しいな。よろしくね。……メッセージは以上です』

 

 石田先生からのメッセージを聞き少し笑顔になるはやて、返事は明日にしようと考え車椅子を動かし寝室に向かう。

 その後車椅子からベットに移り、ベットに横になりながら本を読む。

 

「あ、もう12時…」 

 

 読書に夢中になり過ぎ時計の時刻はもうすぐ日付が変わる時間になっていた。

 時計の針全てが12時を指す。

 そしてそれは目覚めた。

 後ろにある本棚から紫の光が輝きだす。

 不思議に思ったはやては振り返ると鎖に縛られていた1冊の本が光を放っていた。

 

「なに…?」

 

 突然のことに不安になるはやて、すると本はひとりでに浮くとはやての元に近寄ってくる。

 短い悲鳴をあげるはやて。

 本は自らを縛めた鎖を破壊すると、ページが開かれる。

 しかしページは全て空白で何も書かれてはいない。

 

『Anfang』

「あぁ、ああ……!」

 

 本が閉じ突如言葉を喋りだす光景に理解が追いつかないはやて。

 さらに自分の胸から半透明な球が出てきて更に混乱する。

 光が自分と本との間で球は止まると突然強い光を放ち部屋を包む。 

 

「つぅ……!?」

 

 あまりの眩しさに目をつむるはやて。

 光が弱まりゆっくりと目を開くはやての前には4人の男女が跪いていた。

 

「闇の書の起動、確認しました」

「我ら、闇の書の蒐集を行い。主を守る守護騎士にございます」

「夜天の主の元に集いし駒」

「ヴォルケンリッター、なんなりと命令を」

 

 現れたシグナム達は主の命令を待つ。

 ふとヴィータが顔を上げはやてに近づく。

 

(ねぇ、ちょっとちょっと)

 

 念話で跪いたままの3人に話しかけるヴィータ。

 

(ヴィータちゃん! シー)

(でもさぁ)

(黙っていろ、主の前で無礼は許されん)

 

 それにシャマルとシグナムが注意する。

 

(無礼って言うかさ。コレ)

 

 これまでの出来事にはやての頭はパンクしていた。

 駆け付けたあすかとエストが声を発する。

 

「なんや、この状況……」

「あの方々には覚えがあります。闇の書の守護騎士かと」

 

 2人を確認した守護騎士たちは身構える。

 

「何奴!」

「あいつ、黒騎士の女だ! きっとそこのガキが黒騎士だ!」

「いかにも、この方が私のマスターたる黒騎士です」

 

 ヴィータの指摘にエストは答える。

 

「黒騎士、貴様何者だ! なぜ主の家にいる!」

「俺は弟や! そこで伸びている八神はやての双子の弟、八神あすかや!」

「なっ!」

「主の、弟……」

 

 この騒ぎではやては目覚めるのだった。

 

 

 

 

 

「そっかー、この子が闇の書ってもんなんやね」

「はい」

 

 気絶から覚め、今の自分の状況を説明されたはやては手に持つ闇の書を見る。

 

「うーん、とりあえず分かったことが1つある。闇の書の主として守護騎士みんなの衣・食・住、きっちり面倒みなあかんゆうことや。幸い住む所はあるし、料理は得意や。皆のお洋服買ってくるからサイズ図らせてな?」

「「「「………」」」」

 

 それからしばらくの間、はやてと守護騎士達は静かで平穏な日々を過ごしていった。

 

「主はやて、本当によろしいのですか?」

「…何が?」

「闇の書のことです」

 

 シグナムははやてに闇の書について聞いた。

 

「貴方の命あらば、我々は直ぐにでも闇の書のページを蒐集し、貴方は大いなる力を得ることが出来ます。この足も治るはずですよ」

「アカンて」

 

 はやての足に触れながら確認するシグナム、しかしはやては首を横に振る。

 

「闇の書のページを集めるにはいろんな人にご迷惑をおかけせなあかんのやろ?」

「っ!」

「そんなんはアカン。自分の身勝手で人に迷惑をかけるんは良くない。私は、今のままでも十分幸せや。父さん母さんはもうお星様やけど。遺産の管理とかはおじさんがしっかりしてくれてる」

「お父上のご友人、でしたか?」

「うん、おかげで生活に困ることもないし。それに、今は皆がおるからな」

 

 そう言いシグナムに抱き着くはやて、シグナムも少し驚くが黙ってそれを受け入れる。

 

「はやて!」

「どないしたん、ヴィータ?」

 

 ヴィータが2人に近寄ってくる。

 

「はやて、冷凍庫のアイス食べていい?」

「お前、夕食をあれだけ食べてまだ食うのか!?」

 

 ヴィータの発言に呆れるシグナム

 

「うるせぇな、育ち盛りなんだよ! はやてのご飯はギガうまだしな!」

「しゃーないな、ちょっとだけやで?」

「うん!」

 

 元気よく返事をし、ヴィータは台所に向かう。

 

「シグナム?」

「はい?」

「シグナムは皆のリーダーやから約束してな?」

「はい?」

「現マスター八神はやては、闇の書には何も望みはない。私がマスターでいる間は闇の書のことは忘れてて」

 

 シグナムの目をしっかりと見て話すはやて。

 

「皆のお仕事は皆で仲良く家で過ごすこと、あすかとエストも含めてな、約束できる?」

「誓います。騎士の剣にかけて」

 

 

 

 

 

 しかしその平和な日々は終わりを迎えようとしていた。

 

「命の危険?」

「はやてちゃんが」

「ええ…」

 

ある日、病院の診察に行った後、部屋に残されたシグナムとシャマルは石田から聞かされた話に驚きを隠せないでいた。

 

「はやてちゃんの足は原因不明の神経性麻痺だとお話しましたが、この半年で麻痺が少しずつ上に進んでいるんです。この2ヶ月は特に顕著で、このままでは内蔵機能の麻痺に発展する危険があるんです」

 

 話を聞き2人はある確信を持った。

 原因は闇の書だ。

 闇の書の覚醒がはやての病状を加速させていたのだろう。

 

「助けなきゃ……」

 

 夜、2人にもはやての状態について話し、重い空気の中ヴィータが呟く。

 

「はやてを助けなきゃ!シャマル!シャマルならはやてを治せるだろ!?」

 

 瞳に涙を溜めながら縋るようにシャマルを見る。

 

「ごめんなさい。私の力じゃどうにも…」

「なんでだ、なんでなんだよ!」

 

 だが、シャマルに首を横に振られヴィータは大声を上げながら泣き崩れる。

 その様子を見てザフィーラはシグナムに視線を向ける。

 

「シグナム」

「我らに出来ることはあまりにも少ない」 

 

 手に乗せているレヴァンティンを軽く握るシグナム。

 

「主の体を蝕んでいるのは、闇の書の呪い」

 

 レヴァンティンを待機状態から展開し掲げる。

 それを見てヴィータ達も己のデバイスを掲げる。

 

「はやてちゃんが闇の書の主として真の覚醒を経れば…」

「我らの主の病は消える。少なくとも、進みは止まる!」

「はやての未来を血で汚したくないから人殺しはしない。でも、それ以外なら…なんだってする!」

「その話、俺たちにも乗らせてくれ」

 

 あすかとエストが物陰から姿を現す。

 

「はやてに生きていてほしいのは俺たちも一緒や。俺たちも共犯にさせてくれ」

「だがお前は主のたった1人の血のつながった家族なんだぞ! 危険な目には合わせられん!」

 

 シグナムの懇願をあすかは一蹴する。

 

「その気持ちは嬉しい。シグナムの立場なら同じことを俺も言うやろ」

「なら!」

「でも聞けん。当の昔に覚悟はできとる。はやてを治すためならなんだってする、てな」

 

 あすかの覚悟に守護騎士たちは胸を撃たれる。そして6人の思いがひとつになる。

 

(申し訳ありません、我らが主、ただ一度だけ、貴方との誓を破ります)

 

 そして6人は、はやてから授かった騎士甲冑を纏い別の世界に転移する。

 シグナム達の闇の書の蒐集が始まった時だった。

 

 

 

 

 

 仮面の男襲撃の翌日。

 本局の廊下を歩くクロノ、エイミィ、ユーノ、レイの姿があった。

 

「4人がかりで出てきたけど大丈夫かな」

 

 理由目的があってここに来たとは言え戦力を割いてしまった事がクロノにとってはやや気がかりだった。

 

「まぁモニタリングはアレックスに頼んできたし」

「戦力は十分やろ、それに情報収集に人手を割かん方がどうかしとるで」

「それはそうなんだが」

 

 クロノは自分とレイ双方を相手にして軽くあしらって見せたあの男は危険だと考えていた。

 それに仮面の男も加えれば向こうの戦力は7、対し残してきた戦力は6。

 自分やユーノが加われば数の上で優位に立て、戦術である程度の実力差も覆せるかもしれないが今の状況ではそうはいかない、戦術眼を持った現場指揮官がいないのだ。

 そうなればパワーアップしたなのはやフェイト達でも敵わないだろう、それを気にしていた。

 

「そういえば今回は闇の書について調査をすればいいんだよね?」

「あぁこれから会う二人はその辺に顔が利くから」

 

 そして4人はとある部屋へと入っていく。

 

「リーゼ。久しぶり、クロノだ」

 

 その姿を見ていたのは二人の耳と尻尾の生えた女性達、その片方が突然クロノに飛びかかり抱き着いた。

 

「クロ助 お久しぶりぶり~」

「ロッテ、は、離せコラ!」

「何だとコラ、久しぶりに会った師匠に冷たいじゃんかよ~」

「ア、アリア、これを何とかしてくれ!」

「久しぶりなんだし好きにさせてやればいいじゃない、それに満更でもなかろう?」

「そ、そんなわけがってうわあああああああっ!?」

 

 助け船を求めたのに見事に断られクロノは軽く絶望した。

 一向に離れてくれないロッテと呼ばれた女性に対し慌てふためき餌食になっている間にエイミィがもう一人の女性に近寄る。

 

「リーゼアリア、お久し」

「ん、お久し」

 

 そんな挨拶を交わしていると弟子であるクロノをたっぷりと堪能したロッテがエイミィに気が付く。

 

「リーゼロッテ、お久し」

「おぉ、エイミィお久しだ。ん? なんかおいしそうなネズミっ子とヘビっぽい子がいる。どなた?」

 

 おいしそう、そう言われてユーノは思わず引きつった笑みを浮かべる。

 レイもまたヘビと言われて微妙な顔をしていた。

 とりあえずその場にいる面々はソファに座る。

 

「なるほど、闇の書の捜索ね」

「事態は父さまから伺っている、出来る限り力になるよ」

 

 そんな中ユーノとレイは小声でエイミィに説明を求めた。

 主に目の前にいる女性二名について。

 彼女達はリーゼアリアとリーゼロッテの姉妹、クロノにとっては魔法と近接戦闘の師匠らしく魔法教育担当はリーゼアリアが近接戦闘教育担当はリーゼロッテが行っていたらしい。

 そして二人はあのグレアム提督の双子の使い魔でもあると言う。

 ちなみに元となった生物は猫だという。

 それを聞いた後手を振られたユーノは引きつった笑みを浮かべながらも手を振り返す。

 そうこうしてる内に話は進む。

 

「実は今回の頼みは彼等なんだ」

 

 ユーノに一斉に向けられる視線、そして放たれた第一声は。

 

「食っていいの!?」

「いっ!?」

「あぁ作業が終わったら好きにしてくれ」

「なっ、おい。ちょっと待て!」

「あの、痛くしんといて……」

「あんたはいいや」

「ガビーン」

 

 最早ぐだぐだである。

 だがそんな慌てふためくユーノとハジケるレイを見て一同は笑うのだった。

 それはそれとして本題が何なのかリーゼアリアが聞く。

 

「それで頼みって?」

「彼等の無限書庫での調べものに協力してやってほしいんだ」

「「ふーん」」

 

 再び向けられたリーゼ姉妹の視線にユーノは緊張のあまり思わず喉を鳴らすのだった。

 

「ユーノ、リラックスや、どんな時もハジケ魂を忘れんと」

「レイ、うん、そうだね。ハジケていないと」

「という訳でハイこれ、生インゲンジュース」

「わあい僕これ大好物! 頭脳労働にはこれが一番、ってんなわけあるかー!」

 

 今度はリーゼ姉妹の顔が引きつる番であった。




 この作品のオリキャラ3号、八神あすか君のモデルは、ファイブスター物語の黒騎士です。
 皆さんファイブスター物語は読んだことがあるのでしょうか。
 その人ならわかるネタで彼は構成されています。
 分からない人は、ぜひ読んでみよう!
 理解するのに時間がかかるぞ!

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