魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ。
 レイの見た目がヘビっぽいことが判明しました。


第7話 現実なんて壊れてしまえ

 レイとユーノが無限書庫に旅立った翌日、一行はフェイトとアリシアの携帯を選ぶためにショップにいた。

 

「レイ曰く、新しいものを買うときは、スペックよりも直感を大事にした方がいいそうじゃ」

「そうかもね」

 

 アフームの言葉にすずかは頷く。

 

「でもスペックは大事よ、カメラの画素数や、メモリの量は使いやすさにつながるし」

「それもまた道理じゃ」

 

 アリサの言葉にアフームは同意する。

 

「「じゃあ、何を選べばいいの?」」

 

 フェイトとアリシアはすっかり混乱していた。

 

「妾がおすすめするのはコレ!」

「「「「「「パパイヤじゃん!?」」」」」」

「基礎スペックが高いからの、使い勝手はいい方じゃと思うぞ」

 

 パパイヤが中割れする、中は液晶画面とボタンがある。

 

「「「「「「ほんとに携帯だった!?」」」」」」

 

 

 

 

 

 一方無限書庫ではリーゼ姉妹が唖然としていた。

 何しろつい先ほど検索魔法と並列思考(マルチタスク)を覚えたばかりの少年が猛スピードで書物を仕分けしているのである。

 

「外れ、外れ、外れ、外れ、当たり、外れ、外れ、外れ」

 

 姉妹は当たりと言われた本と外れの本を読み比べてみる。

 成程当たりの本に比べ、外れの本は情報量が少なく、大したことは書いていない。

 

「これ、私達いる?」

 

 リーゼロッテの呟きももっともである。

 目の前の少年2人で一体何人分の情報検索を行っているのやら。

 

「レイは情報の仕分けとまとめが上手いね、下手すりゃ僕より上だよ」

「速読と並列思考(マルチタスク)の数はユーノが上やな、こればっかりは年季の差やろうけど」

 

 2人の天才少年が互いの健闘をたたえ合う。

 

「やっぱりもう少し深層に行きたいね」

「うむ、ある程度は分かるが、それ以上を追うには深く潜る必要がありそうやな」

「「という訳で深層突入の許可を」」

 

 リーゼ姉妹の顔が引き攣るのだった。

 

 

 

 

 

 海鳴市ハラオウン・テスタロッサ邸ではなのはたちが待機しつつフェイトとアリシアに携帯の使い方を教えていた。

 そこにエイミィが帰ってくる。

 

「おかえり! エイミィ!」

「うん、ただいま。あ、みんないらっしゃい」

「お邪魔してます。エイミィさん」

「「「お邪魔してます」」」

 

 エイミィは玄関で軽く挨拶をしキッチンに向かい買ってきた食材を袋から出しながらなのは達に聞く。

 

「艦長、もう本局に出かけちゃった?」

「うん。アースラの武装追加が済んだから試験航行だって、アレックス達と」

「て事は、アルカンシェルか、あんな物騒なもの、最後まで使わずに住めばいいんだけど」

 

 嫌と言わんばかりの顔をするエイミィ。

 アルカンシェル、時空管理局が保有する艦艇武装の中でも最大級の威力を誇る魔導砲であり、その一撃はアースラ程の時空航行艦を簡単に葬り去ることが出来る代物である。

 

「クロノくんもいないですし…戻るまではエイミィさんが指揮代行らしいですよ」

「責任重大だね」

 

 なのはがリンディからの伝言を伝えると、子犬状態のアルフがジャーキーを食べながら呟く。

 

「ぐっ、それもまた物騒だ。まっ、とはいえそうそう非常事態なんて起こるわけ……」

 

 言い切るよりも早くアラーム音が部屋に鳴り響くと、空中にモニターが浮かぶ。

 EMERGENCYと言う文字列が現れる。

 

「……起っちゃったみたいですね」

「フラグ乙、じゃな」

 

 手に持ったかぼちゃが音を立てて転がった。

 

 

 

 

 

 無限書庫の深層は危険であると言われている。

 それだけではなく貴重な資料が収められているため、無闇に立ち入らせないようにしているともいわれている。

 その深層をレイとユーノは進んでいた。

 周囲は武装局員で固められている。

 おっかなびっくりの武装局員に対し、レイとユーノはわくわく顔であった。

 何しろ彼らは人類未踏破の偉業に挑戦しようとしているのである。

 それは無限書庫の底に行くというものであった。

 きっかけはレイの一言だった。

 

「もっとも古い情報って、何やろ?」

 

 その一言が、ユーノの考古学魂に火をつけた。

 名目は闇の書の情報で侵入したのだが、彼らの冒険者スピリッツが冒険へといざなった。

 本が紙から羊皮紙、パピルス、木片、竹簡、粘土板、石板と変化していく。

 

「成程、封鎖するわけや。ここには人類の歴史が詰まっとる。下手に侵入されでもしたら、都合の悪い歴史が公開されてしまうなあ」

「確かに危険だね、権力者にとっては毒が詰まっているようなものだよ」

 

 天才2人は人類の歴史を眺めながら奥へ奥へと進んでいく。

 

「ここまでの資料の数、管理システムがあってもおかしくないと思うんやけど」

「毒を封じるときに一緒に封じたんじゃない?」

 

 やがて、最深部にたどり着く。そこにはレイにとって見慣れたものがあった。

 

「何で、これが……」

「レイ、どうしたの?」

 

「このマーク、我が家の紋章と家紋と同じ、金剛六芒星(ダイヤモンド・ヘキサグラム)や」

 

 無限書庫の底に刻まれたそのマークは正六角形の頂点を全て結んだ六芒星と六方十字を組み合わせた形であった。

 

「でもこれって、ブリリアント帝国ニュートラル王家の紋章でもあるんだよ!」

「どういうことや、偶然の一致とは到底思えん!」

 

 その時だった、扉から音声が流れる。

 

『複数の人物を認識、開門します』

 

 六芒星の中心、正六角形が開く。

 

「行ってみるか」

「うん」

 

 2人は開いた穴へと入ろうとする。

 慌てて武装局員が引き留め、安全確認をする。

 中には笠と腕で構成された機械が数多くある。

 

「おそらく管理システムだろうね」

「しかも戦闘もこなせそうや」

 

 一番奥にはカプセルの中に入った緑髪の女性がいた。

 

『ようこそ! 人類の英知、無限書庫管理センターへ! 管制人格のソフィアと申します。あなた方は何を求めに来ましたか?』

「これは……」

 

 誰ともなく呟き、誰もが絶句する。

 

『もしかして私の体ですか? いや~ん、エッチィ♡』

 

 全員がずっこける。

 

「こいつハジケリストか!」

 

 レイが叫ぶ。

 

『おやぁ、この中に私のマスターとしてふさわしい人がいますねぇ~』

「しかも融合機≪ユニゾンデバイス≫!?」

 

 ユーノが叫ぶ。

 

『そ~れ~は~、お前だーーー!!!』

 

 ソフィアが勢いよくカプセルを突き破り、ユーノの前に立つ。

 

「結婚してください」

「「「「「「結婚!?」」」」」」

「這いつくばって靴を舐めろ、そうすれば考えんでもない」

「「「「「「ヒデェ!」」」」」」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 そういいながらソフィアはユーノの靴を舐める。

 

「「「「「「した!?」」」」」」

 

 

 

 

 

 呆然としていたエイミィを正気に戻し、現在の状況を確認するなのは達。

 現在モニターにはシグナムとザフィーラ、黒騎士とエストが映っている。

 

「文化レベル0、人間は住んでない砂漠の世界だね、結界を張れる局員の集合まで最速で四十五分、まずい状況だよ」

 

 見つけたはいいが局員の集合までそれだけかかるとなれば逃がす確率はかなり高い。

 そんな中フェイトとアリシアとアルフが顔を見合わせて頷き合う。

 

「エイミィ、私達が行く」

 

 続いてアリサとすずかも同行を申し出る。

 

「私も行くわ」

「私も、3人だけじゃ足りないし、数の優位は欲しいでしょ」

 

 それを聞いたエイミィは暫し考え込んだ後コクリと頷き

 

「うん、お願い。なのはちゃんとアフームちゃんはバックス、ここで待機して」

「はい」

「うむ」

「行くよ、バルディッシュ」

「グレイブもいい?」

『『Yes, sir』』

「気を付けるのじゃぞ」

「うん」

「任せなさいって!」

 

 アフームは送り出しながらも、ある懸念を抱いていた。

 仮面の男についてだ。先の戦いで、経験豊富なレイとクロノのコンビを前にして一蹴してのけた仮面の男。

 正体不明のその存在が乱入すれば数の優位は簡単に崩れる。

 つくづく最悪な状況だとアフームは思った。

 こんな時レイがいれば、少なくとも足止めか時間稼ぎは出来るだろう。

 では自分なら? 少なくともレイの様にしぶとく戦える自信はない。

 感じる胸騒ぎを抑え込みつつアフームはモニターに目をやるのだった。

 

 

 

 

 

「ヴィータが手こずるわけだな……少々厄介な相手だ」

 

 目の前にいる長い体を持った巨大生物、それを相手にシグナムはやや苦戦を強いられていた。

 そしてカードリッジシステムを使おうとしたその時、背後から巨大生物の尾が飛び出し、さらに触手が伸びる。

 完全に不意をつかれたシグナムはその触手に縛られてしまう。

 

「しまった……ッ!」

 

 どうにか逃れようとするが巨大なだけありその力は強く逃れる事が出来ない。

 そんなシグナムを仕留めようと巨大生物はその鋭い尾の先端を突き出す。

 

『Thunder blade』

 

 それは空から降り注ぐ雷の剣によって防がれた。

 その雷の剣を放ったのはフェイトだ。

 フェイトはさらに手を振り上げる。

 

「ブレイク!」

 

 すると雷の剣は爆発し、巨大生物は倒れるのだった。

 一方ザフィーラの方にもまたアルフの姿があった。

 

「ご主人様の事が気になるかい?」

「……お前か」

「ご主人様は一対一、こっちも同じだ」

「シグナムは我らが将だが主ではない」

「あんたの主は闇の書の主、っていうわけね」

 

 対峙するアルフとザフィーラ。そしてフェイトとシグナムもまた対峙する。

 黒騎士にはアリサが、エストにはすずかが相対する。

 アリシアは後詰めだ。双方状況は一対一を複数作る形になった。

 

『フェイトちゃん、助けてどうするの!? 捕まえるんだよ!』

「あ、ごめんなさい。つい」

「礼は言わんぞ、テスタロッサ」

「お邪魔でしたか?」

「蒐集対象は潰されてしまった」

 

 そう言いながらシグナムはカードリッジを装填する。

 

「まぁ悪い人の邪魔が私の仕事ですし」

「そうか、悪人だったな、私は」

 

 ぶつかり合う互いの視線。

 そんな中再び警報が鳴り響く、もう一か所で問題が発生したのだ。

 エイミィは慌てながらもう一か所の方をモニターに映す。

 そこに映っていたのはヴィータの姿、その手には闇の書が握られていた。

 

「本命はこっち! なのはちゃん、アフームちゃん!」

 

「はい! でもその……」

「ん?」

「一対一が良い、そう言いたいんじゃろ?」

 

 なのはの言いたい事をアフームが代弁した。

 その言葉になのははただ頷く、エイミィはこんな状況下でそんな悠長な、と言っている。

 

「エイミィ、ここはなのは一人に任せるがよかろう。まだあの仮面の男が出て来ておらん、どちらに現れるか分からんが警戒が必要じゃ。奴が現れればその時は妾が出よう」 

 

「分かったよ、それじゃあなのはちゃんお願い。引き続きアフームちゃんは待機で」

「はい!」

「了解じゃ」

 

 去り際なのははアフームに近づいてくる。

 そしてありがとう、と告げて出ていった。

 こんな時レイならどうするだろうか。

 もっといい策を提示するのでは? 

 考えても、出てこなかった。

 今この場に彼がいないことが激しく悔やまれた。

 

 

 

 

 

 管理局本部、ある一室でリンディはグレアム提督と話をしていた

 

「久しぶりだね、リンディ提督。闇の書の事件、進展はどうだい?」

「なかなか難しいですが、上手くやります」

 

 闇の書の件について聞かれ、それとなく答えると紅茶の入ったカップを手に取り口に運ぶ。

 

「君は優秀だ。私の時の様な失態はしないと信じているよ」

「夫の葬儀の時、申し上げましたが。あれは提督の失態ではありません」

 

 カップを机に戻しグレアムに視線を戻す。

 

「あんな事態を予測できる指揮官なんていませんから 」

 

 穏やかな口調で話すリンディ。それをグレアムは無言で見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 その頃、無限書庫で闇の書に関する情報を集めるユーノとレイ。

 手伝いとしてリーゼロッテがベルカ関係の書籍の山を運んでくる。

 レイはソフィアと共に端末をいじりながら作業をしている、チアガール姿で。

 

「リーゼロッテさんは前回の闇の書の事件を見てるんですよね?」

「うん、ほんの11年前の事だからね」

「その、本当なんですか?その時にクロノのお父さんが亡くなったって…」

 

 闇の書を調べるにあたりユーノが最初に目を通したのは、前回の闇の書の事件だった。その報告書から知った事をロッテに聞く。

 

「……ほんとだよ。私とアリアは父様と一緒だったからすぐ近くで見てた」

 

 書籍を宙に浮かし当時のことを話すロッテ

 

「封印したはずの闇の書を護送中のクライド君が、あっクロノのお父さんね? クライド君が護送艦と一緒に沈んでいくところ」

「すいません。嫌な事を聞いてしまって」

 

 暗い顔をするロッテを見て謝るユーノ。

 

「ううん、一応けじめは付けてるからね、っと」

 

 特に気にした様子も見せないロッテ。

 するとロッテの通信用の端末がアラームを鳴らす

 

「あ〜、ごめん。もう教導の時間だから戻らないと」

「いえ。元々忙しいのに付き合ってもらってありがとうございます」

「いいのいいの。それじゃ頑張ってね~」

 

 手を振りながら無限書庫を後にするロッテ。

 それを見送りユーノは再び手がかりを探し始めるのだった。

 レイは静かに見送るだけだった。

 

「ツッコミは無しかい」

 

 

 

 

 

 それぞれの戦いは激化していた。

 フェイトとシグナムは切り結び合う。

 アルフとザフィーラは拳をぶつけ合う。

 黒騎士とアリサは剣を交わし合う。

 エストとすずかは遠距離で攻撃を飛ばし合う。

 その様子をアリシアは見ながらも周辺を警戒していた。

 いつ仮面の男が出てくるかわからないからだ。

 レイとクロノを一蹴した相手に勝てるとは思わなかったが、時間稼ぎくらいは出来るだろうとは踏んでいた。

 一方なのはとヴィータはドッグファイトへと移行していた。

 

「ディバイン、バスター!」

 

 しかし、なのはの砲撃は突如現れた仮面の男によって防がれてしまう。

 

「アフームちゃん!」

「うむ!」

 

 エイミィに促され、2人は出撃しようとする。

 しかし出撃はかなわなかった。

 フェイトとアリシアの胸から手が伸びていた。

 その体を貫いていたのは、仮面の男だった。




 オリキャラ4号のソフィアさん登場。
 この人は第3部以降で活躍する予定です。
 この人が封印された経緯も第3部で明かされる予定です。
 この人のせいでユーノ君が思いっきり強化されます。
 

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