魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ。
 はやて、闇堕ち。


第10話 運命なんてら・ら・ら

「くっ、フルムーンにスペルカード、段ボールにガムテープで補強した最強の盾が破られるとは……」

「「「「「「それじゃダメでしょ!」」」」」」

「しかしとんでもない魔力量じゃ。まともにやり合えば負けるのは確実じゃ」

 

 アフームの言う通り、正攻法で勝てる相手ではないことは全員感じ取っていた。

 そこにユーノとアルフが現れる。

 

「「みんな!」」

「ユーノ君!」

「アルフ!」

 

 だがこれで状況が好転するとは言い難かった。

 

「結界か……!」

「前と同じ閉じ込めるやつだね」

「やっぱり、私達を狙ってるんだ……」

「今、クロノが解決法を探してる。援護も向かっているんだけどまだ時間が」

「それまで私達で何とかするしかないか……」

「目的は、はやての救出。そのためには奴さんの意思をくじく必要がある。策は任せい。奴さんを悲劇の運命から救い出そうやないか」

 

 

 

 

 

 一方この状況を引き起こしたリーゼ姉妹はと言うと、少し離れたビルの上で状況を見守っていた。

 姿は仮面の男に戻っている。

 

「持つかな、あの9人は」

「暴走開始の瞬間までは持ってほしいな」

 

 そんな会話をしていると突如として周囲に光の粒子が上がる。

 何事かと思っていると光の縄が二人を縛り上げる。

 そこにやってくる人物が一人。

 

「ストラグルバインド……相手を拘束しつつ強化魔法を無効化する」

 

 そこにいたのは黒衣の魔導師、クロノだった。

 クロノはさらに説明を続ける。

 

「あまり使いどころのない魔法だけどこういう時には役に立つ」

 

 そう言って杖を振るう。

 

「変身魔法も強制的に解除するからね」

「「うああああああっ!?」」

 

 仮面の男達が光に包まれ、変身魔法が解除される。

 

「クロノ、この……っ」

「こんな魔法教えてなかったんだがな……」

「一人でも精進しろと教えたのは君達だろう、アリア、ロッテ……」

 

 

 

 

 

 クロノはリーゼ姉妹を捕縛後移送、グレアム提督共々局員に監視させる事にした。

 そこでクロノはグレアム達から話を聞いていた。

 

「リーゼ達の行動は貴方の指示ですね、グレアム提督」

「違う、クロノ!」

「私達の独断だ、父さまは……」

「……ロッテ、アリア、いいんだ。クロノはもうあらかたの事を掴んでる、違うかい?」

 

 グレアムの問いにクロノは答えない。

 だがその沈黙は肯定とも受け取れた。

 クロノは喋りだす、今まで調べその末に掴んだ事を。

 そして最後に一言。

 

「見つけたんですね? 闇の書の永久封印の方法を。転生機能を持つ闇の書を封印するには、主ごと封印する必要がある…八神はやてが罪人になる前に封印を実行しなければならない。そう言う事ですね」

 

 グレアムは言う。

 両親に死なれ体を悪くしたはやてを見た時心は痛んだが運命だとも思ったと。

 はやての生活の援助をしていたのも永遠の眠りにつく前くらい幸せにしてやりたかったからだと。

 

「封印の方法は闇の書を主ごと凍結させて次元の狭間か氷結世界に閉じ込める、そんなところですね」

「そう、それならば闇の書の転生機能は働かない」

 

 これまでの闇の書の主達もアルカンシェルで蒸発させてきたりしてきた、それと何も変わらない。

 

「クロノ、今からでも遅くない、私達を解放して」

「違法だと分かっているのにみすみす自由にする訳には行かない」

「アンタの父さんだってそんな決まりのせいで死んだって言うのに! そんなに決まりが大事なのか!! このまま暴走して何もしなかったら星ごと撃ち抜く破目になる事位わかってるんだろ! アタシ達が何もしてなくたって、こんな悲劇がずっと続くだけだ! アンタはそれでもいいの!?」

 

 だがクロノは首を縦には振らなかった。

 

「その時点ではまだ闇の書の主は永久凍結をされるような犯罪者じゃない、違法だ」

 

 ロッテは食い下がる、だがそれはグレアムによって止められた。

 クロノは席を立つ。

 去り際にクロノはさらに言う、法以外にもそのプランには問題があると。

 凍結の解除はそう難しくない、どんなに守ろうと隠そうといつかは誰かが手にして使おうとするだろうと。

 それよりかは今進行している修復プランの方がよほど建設的だ、と

 

「現場が心配なので、すいません、一旦失礼します」

 

 そんなクロノをグレアムが呼び止めた。

 そしてアリアに言う。

 

「デュランダルを彼に」

 

 リーゼ姉妹はやや渋ったがやがてスッとクロノの前にそれを差し出した。

 

「どう使うかは君に任せる、氷結の杖、デュランダルだ」

 

 

 

 

 

「スレイプニール……羽ばたいて」

 

『Sleipnir』

 

 闇の書の意思が背中の羽をはためかせ空に羽ばたく。それが開戦の合図だった。

 

「全員、作戦通りいくで!」

 

 レイの掛け声で散開する。

 レイの作戦とは、まずは高機動で囲んで叩く、というものである。

 相手の出方が分からない以上対応しやすい状況を作る必要がある。

 それがレイの考えだった。

 手始めに左右からレイとあすかが金属棒と剣で接近戦を挑む。

 2合3合と打ち合う。

 そこへアルフとユーノのバインドが掛けられる。

 しかし、砕け、の一言でバインドは無残にも破られる。

 そこへなのはとフェイトの砲撃が放たれる。

 

『Plasma smasher』

「ファイア!」

『Divine buster, extension』

「シュート!」

 

 放たれる二つの魔力砲は勢いよく闇の書の意思へと迫る。

 だが、闇の書の意思は一切よけず、盾、の一言だけで展開された二枚の盾で防ぎ切った。

 そして攻撃へと移る。

 

「刃を以て、血に染めよ」

『Blutiger Dolch』

「穿て、ブラッディダガー」

 

 実体化するは血の色をした鋼の短剣。

 それらは闇の書の意思の360度周辺に出現したかと思うと一斉に放たれ高速で全員に迫る。

 しかし、それが届くことはなかった。

 

「目には目を、弾幕には弾幕を! 某メイド長用スペルカード発動や!」

「「幻夜『誰も知らないワンナイトラブ』!」」

 

 レイとアフームが同時にスペルカードを発動させる。放たれた弾幕が赤い短剣を弾いていく。

 

「弾幕の張りが甘い。近接も型がない。ということはやはりそうなるな」

「何故邪魔をする」

 

 闇の書の意思が問いかける。

 

「ん? 何故? そら決まっとるやろ。あんたが間違っとるから、助けなあかんもんがおるからや」

「そうか、邪魔をするならばお前も、ブラッディダガー」

『Blutiger Dolch』

 

 今度はレイの方向へ向けて短剣が放たれる。

 

「なんの! 弾幕ごっこで鍛えた俺のチョン避けを見るがええ!」

 

 それをレイは細かく動いてかわしていく。

 しかし1本だけ回避不能の短剣がある。

 

「「「「「「レイ(くん)!」」」」」」

 

 全員に悲鳴が上がる。レイに短剣が刺さる、その瞬間レイを光が包み込む。

 

「必殺の喰らいボムや、浄化『12人の怒れる清掃業者』!」

 

 掃除道具を模した弾幕が闇の書の意思に襲い掛かる。

 

「「「「「「何この技!?」」」」」」

 

 しかし、闇の書の意思は動ずることなく盾で防いでしまう。

 

「ノーカンや、ノーカン! 弾幕は避けんか!」

 

 レイがわめくも闇の書の意思は次の行動へと移った。

 

「咎人達に滅びの光を」

 

 浮かび上がるのは桜色の魔法陣。

 そして集まるは周囲の魔力達、ここにいる全員があの魔法を知っていた。

 その特徴的な輝き、魔力が集まっていく動作。

 

「まさか……」

「あれは……」

「……おいおい、そんなのアリか」

 

 誰もが絶句する。

 誰が予想しただろうか、他人の魔法を使えるなど。

 

「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ」

「スターライトブレイカー……!?」

 

 なのはの言葉の通りそれは間違いなくスターライトブレイカーだった。

 

「貫け、閃光」

「全員退避ーーー!!!」

 

 レイがあらん限りの大声で叫ぶ。

 その瞬間を待っていたかのように各々がめいめいの方へと逃げていく。

 スターライトブレイカーの射線にはいらないように気を付けながら。

 

「みんな、こんなに離れなくても」

「至近で喰らったら防御の上からでも落とされる。回避距離を取らなきゃ!」

 

 フェイトの実体験の籠った力説に全員が同意する。

 

「射線が俺の方に向いとるやないかーい!」

 

 残念なことにレイがターゲットのようだ。

 

「スターライトブレイカー」

「いややー! 死にとうないー!」

「ひどいの!」

「こうなったらあの技しかないわ!」

 

 レイが覚悟を決め、スターライトブレイカーに相対する。

 

「鬼面『オラオラオーラ』! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

 

 レイは謎の凄味を発する。

 ただそれだけである。

 

「「「「「「口だけだー!」」」」」」

 

 全員防御を固めながらツッコむ。

 桜色の魔力法にレイが飲み込まれていく。

 その衝撃が全員の防御を削っていく。

 

「レイは!? どうなったの!?」

 

 アリサの声と共に煙が晴れる。

 そこにレイの姿はない。

 

「そんな……」

 

 すずかが悲痛な声を上げる。

 

「俺はここやー!」

 

 上空から声がする。

 見上げるとそこにはたんこぶをこしらえたレイが空を舞っている。

 

「「「「「「タンコブ1個ーーー!?!?!?」」」」」」

「本日2度目の喰らいボムや! 喰らえーッ! 沈没『タイタニック・ラブストーリー』!」

 

 空から船のような弾幕が降りてくる。

 闇の書の意思はそれを盾で受け止める。

 

「下からも喰らうがええ! 噴火『パニック・イン・ポンペイ』!」

 

 アフームが下から突き上げるように弾幕を放つ。

 それもまた盾で受け止められる。

 

「それを待っていた!」

 

 レイとアフームが闇の書の意思の懐に入り込む。

 

「「極悪奥義『苦巣愚離』!」」

 

 レイとアフームが闇の書の体をくすぐり始める。

 

「ッ! やめろッ!」

 

 集中を乱された闇の書の意思の盾は制御を失い、消え去る。

 そして弾幕が襲い掛かる。

 レイとアフームは避けながらなのはたちの元へと戻る。

 しかし、直撃したはずの闇の書の意思にダメージらしき形跡は見られなかった。

 

「「うそーん……」」

 

 落ち込むレイとアフーム。そこにエイミィから念話が入る。

 

『みんな、クロノ君から通信! 闇の書の主に……はやてちゃんに投降と停止を呼びかけてって!』

 

 その言葉に全員が顔を見合わせて頷く。

 やることは決まった。

 

「攻撃は無し! いつでも回避できるようにして呼びかけるように! 安心せい! 俺は暗黒面に落ちた友人への呼びかけ近畿大会ベスト64や!」

 

「「「「「「何その大会!?」」」」」」

 

「ちなみに妾はベスト32じゃ」

 

「「「「「「すごいの!? それ!?」」」」」」

 

「優勝は僕です」

 

「「「「「「ユーノ(君)が!?」」」」」」

 

 そして、念話で呼びかけ始める。

 

(はやてちゃん、それに闇の書さん止まってください! ヴィータちゃんを傷つけたの私達じゃないんです!)

(シグナム達と私達は)

「我が主はこの世界が、自分の愛する者達を奪った世界が悪い夢であってほしいと願った。我はただそれを叶えるのみ、主には穏やかな夢の内で永久の眠りを。そして愛する騎士達を奪った者には永久の闇を」

「闇の書さん!」

「お前も、その名で私を呼ぶのだな」

「ッ!!」

「下や!」

 

 レイの叫びと共に全員が宙に浮かび上がる。

 すると地面は割れ中からは触手が飛び出す。

 触手は全員の体に素早く巻き付くと締め上げる。

 

「それでもいい、私は主の願いを叶えるだけだ」

「願いを叶えるだけ? そんな願いを叶えてはやてちゃんは本当に喜ぶの!? 心を閉ざして何も考えず主の願いを叶えるための道具でいて貴女はそれでいいの!?」

「我は魔導書、ただの道具だ」

 

 だがなのはは食い下がる。

 誰もが見逃さなかった。

 闇の書の意思が涙を流しているのを。 

 

「この涙は主の涙、私は道具だ。悲しみなど……ない」

「「バリアジャケット、パージ!」」

『『Sonic form』』

 

 フェイトとアリシアがバリアジャケットをパージし、その余波で絡まっていた触手が吹き飛ぶ。

 

「「「秘技『縄抜けマジック』!」」」

 

 レイ、アフーム、ユーノは縄抜けの要領で触手から抜け出す。

 

「悲しみなんてない……? そんな言葉をそんな悲しい顔で言ったって誰が信じるもんか!」

「そうよ、アンタには間違いなく心があるはずよ……ただの道具なんかであるはずがない」

「そうだよ、貴女にも心があるんだよ。悲しいって言っていいんだよ!? 貴女のマスターは、はやてちゃんはきっとそれに応えてくれる優しい子だよ!」

「だからはやてを解放して、武装を解いて! お願い」

 

 暫しの沈黙が場を制する。

 答えが返って来るまで全員は待ち続けた。

 しかし、突如として地鳴りが響き、火柱が上がる。

 

「早いな、もう崩壊が始まったか。私もじき意識を無くす、そうなればすぐに暴走が始まる。意識のあるうちに主の望みを……叶えたい」

『Blutiger Dolch』

 

 その言葉と共に闇の書が光を放つ。

 そして闇の書の意思が手を構えた瞬間、なのは達の周囲に血の色をした鋼の短剣が出現する。

 

「闇に、沈め」

 

 その言葉を放った瞬間、短剣が射出され、大きな爆発を起こした。

 

「プロミネンスウォール!」

『Prominence Wall』

 

 しかし、それで沈むわけがなかった。

 アリサの防御で全員無事である。

 

「この……駄々っ子!」

『Sonic drive』

「言う事を……」

『Ignition』

「聞けっ!!」

「フェイト! くっ!!」

「お前達も我が内で眠るといい」

 

 次の瞬間、光が全員を飲み込もうとする。

レイが、アフームが、あすかが、他の面々を突き飛ばしたことで彼女たちは無事だった。

しかし彼らは闇の書の意思に飲み込まれてしまう。

 

「あすか!」

「レイくん!」

「アフーム!」

「全ては…安らかな、眠りのうちに」

 

残された面々はただ名前を叫ぶことしか出来なかった。




 もう少しで、もう少しで、オリジナルストーリー編が始まる!
 多分ですが、相当長くなることは確実です。
 皆さん、覚悟してください。
 相当な原作改編やオリジナル設定があります。
 何ていうか、我ながらやりすぎた感が凄いぞ。

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