魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ。
 タンコブ。


第11話 クリスマス・キャロル

 レイ達が消え、固まっていたなのは達だが、すぐさまエイミィに確認をとる。

 

「っ! エイミィさん!」

(状況確認! 4人のバイタル、まだ健在!闇の書の内部空間に閉じ込められただけ。助ける方法、現在検討中!)

 

 エイミィの報告に少しだけ安心した顔をするなのは達だが顔を引きしめ闇の書を睨む。

 

「我が主も、あの子達も、覚めることない夢の内に終わりなき夢を見る。生と死の狭間の夢、それは永遠だ」

「永遠なんて無いよ……」

 

 闇の書の言葉になのはポツリと呟く

 

「皆変わってく、変わっていかなきゃいけないんだ。私も、貴方も!」

 

 闇の書は何も答えず、そのまま戦いが再開された。

 

 

 

 

 

 闇の書に取り込まれた四人は何もない空間を漂いながら、まどろんでいた。

 彼らは今、夢の中にいる。

 幸せな日常の夢に囚われようとしているのだ。

 その様子を闇の書の意思ははやてのそばで眺めている。

 彼女にはハジケが解らぬ。

 それ故、レイが口角を吊り上げたことに気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 海鳴市近海の海上、闇の書と戦うなのは達は苦戦を強いられていた。

 

(リンディさん。戦闘地を市街地から海の上に移しました。市街地の火災をお願いします!)

(大丈夫。今、災害担当の局員が向かってるわ)

(それから闇の書さんは、駄々っ子ですが何とか話は通じそうです。もう少しやらせてください)

 

 なのはは闇の書に目を離さないよう見ながらリンディとの連絡をとるとレイジングハートを持ち直す。

 

「いくよ!レイジングハート」

『Yes. My master. Reload』

 

 空になったマガジンを取り外し新たなマガジンを装填する

 

「マガジン残り3本…カートリッジ18発。スターライトブレイカー、撃てるチャンスあるかな?」

『I have a method. Call me Exelion mode.』

「ダメだよ!アレは本体の補強が済むまで使っちゃダメだって…私がコントロールに失敗したら、レイジングハート。壊れちゃうんだよ!?」

 

 レイジングハートの提案に戸惑うなのは。

 だがレイジングハートの意思は変わらない。

 

『Call me. Call me, my master』

 

 迷っていたなのはの顔が覚悟を決めると闇の書が話しかける。

 

「お前も、もう眠れ」

「何時かは眠るよ。でも、それは今じゃない。はやてちゃんも蒼馬くんもあすかくんもレイくんもアフームちゃんも助ける……それから貴方も!」

 

 レイジングハートから空薬莢が排出される

 

「レイジングハート。エクセリオンモード…ドライブ!」

『Ignition』

 

 レイジングハートの形状が変化し、より槍に近い形態に変わる

 

「繰り返される悲しみも、悪い夢も。きっと終わらせられる!」

『Photon lancer, genocide shift.』

 

 闇の書の周りに無数の魔力弾が生み出され2人は睨み合い、次の瞬間、空に無数の光が飛び交った

 

 

 

 

 

(眠い……眠い……)

 

 少女、八神はやてはそう思いながらもそっと目を開ける。

 すると目の前にいたのは、見た事のない長い銀髪と赤眼が特徴的な綺麗な女性がいる。

 

「そのままお休みを、我が主。貴女の望みは全て私が叶えます。眼を閉じて心静かに夢を見てください」

(私は……何を望んでたんやっけ……)

「夢を見る事、悲しい現実は全て夢となる。安らかな眠りを」

(そう……なんか?)

「私の本当の……望みは……」

 

 はやてはぼうっとした頭で必死に考える。

 自分の望みは本当にそんなものだったかを。

 

「私が……欲しかった幸せ」

「健康な体、愛する者達とのずっと続いていく暮らし、眠ってください、そうすれば夢の中で貴女はずっとそんな世界にいられます」

 

 その言葉にはやてはゆっくりと首を横に振る。

 

 そしてスッと眼を閉じ開いた時には先ほどまでボーッとしていたその瞳には光が灯っていた。

 その瞳で真っすぐ前を見据えながらはやては言う。

 

「せやけど……それはただの夢や」

「ただの夢でも、幸せであることは変わりません。ご覧ください」

 

 そういうと女性は3つのモニターを表示させる。

 それは3人の夢だ。

 

「彼らは安らかに、幸せを享受しています。それの何が問題なのでしょう」

 

 あすかの夢は家族の夢だった。

 はやてがいる、エストがいる、シグナムがいる、ヴィータがいる、シャマルがいる、ザフィーラがいる、そして両親がいる。

 家族と過ごせることがあすかの幸せだった。

 アフームの夢の舞台はなんともムーディーな空間だった。

 そこには三角木馬やら、鞭やらが散乱している。

 アフームはベッドの上で縛られ、目隠しされ、ギャグを噛まされていた。

 そこに人影が現れる。

 レイが鞭を手にしてアフームに迫る。

 

「ああ……、夢のような心地じゃ……」

「変態やーーー!!!」

 

 はやてが叫ぶ。

 

「何ですか! この娘の夢は! まごうことなき変態ではないですか!」

 

 女性が叫びながらアフームのモニターを縮小する。

 

「さて、最後の夢は」

 

 レイのモニターが拡大される。

 

「あの~、バレーやりたいんですけど」

「「意味わからーん!」」

 

 ゾンビがバレーボールをしているではないか。

 

「お前ら! 大会まであと1週間だ!」

「「「「「「監督!」」」」」」

 

 レイが監督としてゾンビたちの前に現れる。

 

「監督、森田の腕が取れました!」

「セロハンテープでくっつけとけ!」

「「セロテープで!?」」

「監督、川澄の首が取れかけてます!」

「ホッチキスはあるか!」

「「ホッチキス!?」」

「って、何やこの夢はーーー!!!」

「全くや!」

 

 レイがゾンビを火炎放射器で一掃する。

 

「よくも人の夢を覗いてくれたな! この落とし前どう責任つけてくれんねん、おお!?」

「ガラ悪ッ!」

「なんで、わかるのですか!?」

「今そっち行きますさかい、首洗って待っておくれやす!」

「なぜ舞妓はん!?」

「まさか!? 夢から覚めるなど、しかもここに来るなど不可能だ!」

 

 しかし、レイが懐から解放者の鍵(Remorter’s Key)を取り出し、かざすとモニターがドアの様に開き、レイがその姿を現す。

 

「来ちゃった♡」

「嘘ぉ!」

 

 銀髪の女性が取り乱すように叫ぶ。

 

「さて、こうして顔を合わせるんは初めてか? 闇の書、いや、夜天の魔導書」

「どういうことや? 話が見えんのやけど」

 

「はやては何も知らんかったな。OK、かいつまんで説明するとやな、闇の書は正式名称を夜天の魔導書というんや。ほんで歴代の主の誰かがプログラム弄った所為で闇の書という最悪の魔導書が完成したわけや。ほんで俺はそれを直そうと奮闘中やったんやけど」

「闇の書が起動してしまった、という訳やな」

「ビンゴ。それで、捉えられ、先程まで夢を見させられていたんやけど、俺の道具でここに来たっちゅう訳や」

「は~、ようわからんけど凄いわ」

「あなたは一体何をしにしたのですか、何故邪魔をするのですか」

 

 銀髪の女性がレイに問いかける。

 

「邪魔も何も、俺はただ地球を守りたいだけ、闇の書を夜天の書に戻したいだけや。それをあんたが邪魔しとんやろが」

「私はただ主の願いをかなえるだけ。邪魔なのは貴様の方だ」

「私、こんなん望んでない。貴女も同じはずや! 違うか?」

 

 はやてが叫ぶ。

 

「私の心は騎士達の感情と深くリンクしています、だから騎士達と同じように私も貴女を愛おしく思います。だからこそ貴女自身を殺してしまう自分自身が許せない、自分ではどうにもならない力の暴走、貴女を侵食する事も暴走して貴女を喰らい尽くしてしまう事も止められない」

「……覚醒の時に今までの事少しは分かったんよ、望むように生きられへん悲しさ、私にも少しは分かる、シグナム達と同じや。ずっと悲しい思い、寂しい思いしてきた。せやけど忘れたらあかん」

 

 そう言ってはやては女性の頬に手を伸ばし優しく触れる。

 

「貴女のマスターは今は私や、マスターの言う事はちゃんと聞かなあかん」

 

 そう言うと二人の足元に魔法陣が浮かび上がる。

 さらにはやては続けた。

 

「名前をあげる。もう闇の書とか呪いの魔導書なんて言わせへん。私が呼ばせへん」

 

 女性の眼に涙が溢れ零れ落ちる。

 

「私は管理者や、私にはそれが出来る」

「無理です……自動防御プログラムが止まりません、管理局の魔導師が戦っていますがそれも……」

「あきらめんな! 不可能など理論さえ示せば可能になる!」

「……止まって」

 

 はやては小さくそう呟いた。

 魔法陣の光がさらに強くなる。

 すると現実世界の方でも異変が起こった。

 

 

 

 

 

「何……?」

 

 先ほどから闇の書の意思の様子がおかしい事に気づくなのはたち6人。

 

「外の方、えっと管理局の方! そこにいる子の保護者、八神はやてです!」

「「はやてちゃん!?」」

「「「「はやて!?」」」」

「え、その声はすずかちゃんにアリサちゃん、なのはちゃんにフェイトちゃんにアリシアちゃん、かな?」

「うん、そうだよ。色々あって私達闇の書さんと戦ってるの!」

「ごめん、みんな。何とかその子止めてあげてくれる? 魔導書本体からはコントロールを引き離したんやけど、その子が止まらないと管理者権限が使えへん。今そっちに出てるのは自動行動の防御プログラムだけやから」

 

 そこにユーノとアルフが飛んでくる。

 ユーノは告げる、現状残されたたった一つのシンプルな策を。

 

「みんな! 分かりやすく伝えるよ、今できる事をみんなが出来ればはやては外に出られる」

 

 三人は驚きながらも大人しく言葉の続きを待つ。

 

「どんな方法でもいい、目の前の子を魔力ダメージでぶっ飛ばして! 全力全開、手加減無しで!」

「流石ユーノ君、分かりやすい!」

『It's so』

「うん、シンプルでいいね」

「ええ、それなら何とかなりそう」

 

 全員が杖を構える。ありったけの力をぶつけるために。

 

「エクセリオンバスター、バレル展開、中距離砲撃モード!」

『All right. Barrel shot』

 

 レイジングハートから衝撃波が放たれる。

 それに当たった瞬間、闇の書の意思の体を不可視のバインドが縛り上げた。

 

「エクセリオンバスター、フォースバースト!」

「バルディッシュ!」

「グレイブ!」

『『Zamber form』』

「サンシャインホープ! プロミネンスでいくわよ!」

『All light』

「ムーンライトドリーム、でっかいの行くよ!」

『O,K』

 

 全員それぞれが必殺の一撃の構えを取る。

 魔力を込める、ありったけの魔力を。

 ユーノに言われた通り全力全開の一撃を加えるために。

 それぞれの魔力はまるで比例するかのように高まっていく。

 

「ブレイクシュートッ!!」

「「雷光一閃ッ!!」」

「プロミネンススマッシュ!」

「フルムーンバースト!」

 

 それらは全く同じタイミングで一気に放たれた。

 5つの魔力は途中で混じり一つとなり強大な魔力砲となりて周囲を光で包み込んだ。

 

 

 

 

 

「夜天の主の名において、汝に新たな名を贈る。強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール――リインフォース」

「新名称リインフォース認識、管理者権限の使用が可能になります……ですが防御プログラムの暴走は止まりません、管理から切り離された膨大な力がじき暴れだします」

「んー……まぁ何とかしよ」

「そのために俺らがおるんやからな」

 

 はやての前に一冊の本が出現する。

 それをはやては優しくそして愛おしそうに抱きしめた。

 

「行こか、リインフォース」

「はい、我が主」

 

 こうしてはやては光の中に包まれていった。

 

 

 

 全力全開の一撃を放った後、7人は宙に浮かびながら様子を見ていた。

 すると橙の魔方陣が現れ、そこからとあすかが出てくる。

 

「マスター!」

 

「心配かけたな! エスト!」

 

 しかしレイとアフームはまだ出てこない。

 

『皆気を付けて! 闇の書の反応まだ消えてないよ!』

 

 エイミィから告げられた案の定の言葉を機にその場にいる者は一斉により警戒を強める。

 すると海の中から巨大な闇としか言いようのない何かが吹き出してきた。

 距離を取る五人、そこに再度通信が入った。

 

『皆、下の黒い淀みが暴走が始まる場所になる。クロノ君が着くまで無闇に近づいちゃ駄目だよ』

 

 戦いは終局へと確実に近づいていた。




 この作品のヒロインであるアフームちゃんはドMです。
 真っ当な人格を期待しないでください。
 この作品の中心人物である、金剛=ダイヤモンド兄妹はどっか頭のねじが外れているので付き合っていられますが、まともな人には劇物みたいな存在です。
 そんなアフームちゃんもいずれは母になります。
 最も、子供達も両親の影響を受けたせいか、真っ当には育たないようで……。
 ていうか、そこまで書くのにどれくらいかかるだろう……。

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