魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ 作:ショーン=フレッチャー
レイ視点での物語が増えます。
今回は少々短め。
第1話 発端
「地球での事件に
第6地上本部長モーリーン・クロフォードは秘書のニオにそう尋ねた。
「はい、噂レベルですが、その可能性があると」
「何だい、噂レベルかい。そんなんであたしの耳に入れるんじゃないよ」
「噂と言っても信憑性は高いです。現に事件を担当した執務官や提督による現地の声が聞こえてきますから」
「あの2つの事件は管理局内でも相当有名だからね。ハラオウン親子は相当名声を手に入れたんじゃないのかい」
「ええ、特に闇の書事件を永久に解決したと言い切れるほどの活躍をしたわけですから」
「だろう、どうやったのか知らないが、上手くやったもんだ」
「その件に、件の
「闇の書の解決にかい? まさか、あの事件でかかわったのは9歳のガキ共だっていうじゃないか。ただの魔力が大きいだけのガキだろう?」
ニオはかぶりを振る。
「それが、その例の
「まさか」
「彼が無限書庫でプログラムを組んでいたのを幾人もの局員が見ています。彼は見るたびに衣装が変わっており。ある時はチアガール、ある時は着ぐるみといつ着替えたのかわからないほど早着替えを行ったそうです」
「その組んでいたプログラムってのも気になるが、意味もないのに早着替えをするそのハジケっぷりは本物としか言いようがないね。本物ならね」
モーリーンはいつの間にか、その
第6次元文化圏以外の
今までほとんど見つからなかった、レア中のレアである。
「出来ることなら資料映像が欲しいねえ。そいつが本物と分かる奴が」
「そういうと思って用意しておきました」
「流石ニオちゃんだ。こういう時は仕事が早い」
モーリーンはニオが用意した資料映像を見る。
用意されたのはレイとアフームによるゴボウしばきあい対決と、ジュエルシード発動体との戦い、トマトの雨が降る映像。そして闇の書戦での映像である。
モーリーンはひとしきり映像を眺めると、やがて口を開く。
「ああ、本物だ。近年稀に見る
「やはり厳しい環境が彼らを育てたのでしょうか」
「そうだろうね、うちは否が応でも
「おまけに、彼らは強い」
「ああ、強くてハジケている。彼らならいずれ長らく空位だったキング・オブ・ハジケリストの座を明け渡してもいいかもねえ」
モーリーンの発言にニオは眉をひそめる。
「外部の人間がキングになるというのは相当な反発があると思いますが」
「言わせたい奴にゃ言わせときゃいいさ。単にあたしらの実力がないだけだろう。弱者の戯言なんか気にする必要なんてないのさ」
「……それが出来るのは一部の強者のみです」
「この子たちはきっとその一部さ。会えばわかる」
「では、セッティングしますか?」
「ああ、頼むよ。これだけの逸材だ、他のところじゃ扱えないだろうさ」
「それなんですが、彼、地球側の外交官になったそうで、引き抜きは難しいかと」
「……オーマイガッ!」
「ほんならこれで合意ということで」
「ええ、お願いします」
「こちらこそ」
2月も半ばという頃、地球ではなのは達の管理局での勤労条件を取りまとめており、今やっと終わったところである。
地球側の代表としてレイとデビッド、櫻子が、管理協側の代表としてリンディとレティ・ロウランがこの会見に臨んでいた。
会談の中心はレイと管理局の人事担当であるレティが執り行っていた。
櫻子とデビッドはあくまでレイの補佐という形である。
レティは当初この幼い外交官の手腕を甘く見ていた。
リンディから再三の警告を受けたにもかかわらず、合意内容はやや地球に有利な条件で取りまとめられてしまったのだ。
合意内容としては、中学卒業までは嘱託魔導士としてフルタイム勤務を行わないこと。
管理局からの無理な勧誘は行わないこと。
何よりも本人たちの意志と体調が最優先とされた。
さらに、怪我した時のために保険も適用するよう求められ、レティは泡を食った。
ここまで矛盾なくしかも地球側有利に事を進められては、管理局としては意地でも要求を通したい部分があった。
それすらも、レイの手によってあらかじめ読まれていたのか、すんなりと通され、レティは役者の違いを思い知ったのだった。
櫻子とデビッドもほとんど口を挟むことがなかったから、レイの思惑通り、いや、地球の思惑通りに事が進んだのは間違いないであろう。
「僭越ながら、お食事の方をご用意させていただきましたので、よろしければどうぞ」
「え、ええ頂きます」
そういうと、金剛=ダイヤモンド親子は席を立った。
レティは小声でリンディに言った。
「あなたの言うとおりね、舐めていたらこの様だわ」
「でしょう、彼、政治力ヤバいくらい高いのよ」
「それで
「この程度で参ってもらうのは困るわ、彼、戦っても強いんだから。この地球で起きた2つの事件も、彼無くしては完全な解決には至らなかったと思うほどよ」
「上の連中はどう思うかしら」
「彼を脅威に感じるとは思えないわね。ただの子供と侮って、痛い目を見るのが見えているわ」
「今回はこの程度で済んで良かった、と思うべきかしら」
「今回はこちらの要求も通っているし、さほど悪い結果ではないと思うわ。でもこの後が辛いわね、彼、目的のためならえげつない手を打ってくることもあるから」
「想像するだに怖いわね」
「そうよ、何考えているのかわからないから、恐ろしいのよ」
そうこうしているうちに、レイから食事の準備が整ったとの知らせを受ける。
リンディとレティはレイについていくのであった。
「こうしてみるとただの上品な男の子なのに」
「あんな恐ろしい外交官になるのかしら」
やがて食堂につくと、そこにはアフームが待ち構えていた。
「ようこそ、妾のディナーショーへ」
「「ディナーショー!?」」
「食事と共に音楽を味わっていただきたく、こうしておもてなしする所存じゃ」
「ささ、どうぞお席へ」
レイに促され、席に座るリンディとレティ。
「早速最初の曲は、キング・クリムゾンで『21st Century Schizoid Man』」じゃ」
「お楽しみに」
奏でられるハードなイントロにリンディとレティの頬は軽く引き攣るのだった。
地球と管理局との勤労条件合意がまとめられてから数日後の放課後、レイはあすかに呼び出されていた。
屋上で相対する二人。
互いに会話はない。
やがて、あすかが口を開く。
「レイ、お前に聞きたいことがある」
「何や」
「転生者、という言葉に聞き覚えはあるか?」
転生者という言葉にレイが目を丸くする。
「ということは、お前さんもか」
「! やはり、お前も転生者か!」
「お互いにその様やな」
レイが頷くと、あすかは丹田に力を籠める。
「一つ聞きたいことがある。お前はこの世界で何をする?」
「どういう意味や?」
「俺はこの世界で剣が振れるからこの世界にいる。剣を振るうために転生したといってもいい。お前の目的は何や? 何がしたくてこの世界に居るんや?」
レイは少し思案すると、口を開いた。
「俺はこの世界に危機が迫っていると聞いて、それを解決するよう頼まれたんや」
「危機!? それは一体何や!」
「さあ? それは分からん。それを解決するために俺はこの世界で力を手に入れた。ご丁寧にバックストーリーまでつけてな。この世界で俺が為すべきことは世界の危機を救うこと。それはどうやら俺の転生前に身に着けた知識が役に立つんやそうや」
「お前は一体、転生前に何をしてたんや?」
「それは、内緒。それよりも、お前さんは生前、黒騎士にあこがれとったんか、何代目が好きなん?」
急に話を振られて、面を食らうあすかだったが、ちょっと頭をひねった後、答える。
「ドラグーン公は理想的な黒騎士だと思う。またグラード・シドミアンもいい黒騎士だと思う。エストが殉じる位やからな。デコースは、賛否はあるが一流の騎士であることは間違いないな。俺は割と好きや。ちょっと決められんな、これは」
「なかなかのFSSフリークなようで。やっぱ好きな機体は?」
「バッシュ! ダッカスだな。俺の剣も同じ名前だ」
「旧設定の懐園剣みたいやったな、お前さんの剣は」
「そう! バッシュは魔力剣で、ダッカスは実体剣にしてもらったんや。おかげで、ミッド式もベルカ式も両方使えて便利やで」
「後は剣技か。FSSの剣技を使えるようにしたんやな」
「そう! でも流石にかーちゃんキックは習得できんかった」
「あれはなあ。女の強さの象徴みたいなもんやから。お前さんに習得は出来んよ」
「俺はイマラかーちゃんにはなれんのか」
「無理無理、男に母親が出来るとしたら、それは最早別の何かやで」
2人は笑い合う。
「せやなあ、あとは炎熱、電気、氷結の三種変換が出来るようになったくらいやな」
「ほう、大したもんを要求したんやな」
「そうでもないさ、ただ、俺は剣を振れればいいだけ。そのついでに人助けが出来れば丁度ええってもんや」
「無欲やなあ。俺も大概やけど」
「お前はどうなんや。どういう特典をもらったんや?」
あすかの言葉にレイは一瞬で真面目な顔になる
「……まずは俺を
「その設定とはなんや?」
「それは言えん。これは世界の危機にかかわる話やからや」
「なあ、世界の危機って一体何なんや? お前は何を知っているんや?」
「……俺が知っているんはそれが起こるということだけ。いつ、どこで起こるんは分からん」
「なんやそれ」
「お前さんも気を付けとき。いつどこで何が起こるかわからんのやから」
レイの目はいつになく真剣そのものだった。
皆さんはキング・クリムゾンを聞いたことがありますか?
前回も出てきたけど、私は好きです。
ファイブスター物語を読んだことがありますか?
あれは面白いです。
好きなものを好きと言い切る強さを皆さんが持てますように。
誰かの趣味を笑わない世界が来ますように。