魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ
 レイ、逮捕される。


第8話 王者

 レイは椅子に縛られ、熱光線を浴びせられていた。

 

「くっ、なんて奴だ、もう奴は4日もこの拷問に耐え一言も喋らん」

「有り得ない、人間じゃないぞこいつ。鬼だ、鬼の子だ」

 

 2人の男がレイの耐久力に恐れおののいている。

 

「あれほど眩しい熱光線を一睡もできず浴び続ければ普通なら発狂もの。それが奴は何だ、気を失うどころか隙あらば我々を殺す気まんまんじゃないか」

 

 この時、レイが初めて反応した。

 

「!? 今誰かまんまんっていいました?」

 

 エロトーク大歓迎。

 

 

 

 

 

 

「グハッ! フフフ中々やるではないか」

 

 ドラゴンはレイのハジケに吐血する。

 

「どうや、俺のハジケの味は」

「フフフ、攻めるばかりがハジケではないぞ、少年。次は我のハジケを喰らうがいい」

 

 

 

 

 

 夜中、一人で住宅街を歩くドラゴン。

 

(腹減ったな)

 

 ふと見ると、餃子の自動販売機があるではないか。

 

(買ってみるか、餃子)

 

 コインを入れ、ボタンを押すドラゴン。

 軽快なお囃子と共に出口から囃子が出てくる。

 そして餃子が出てきた。

 

「餃子です」

 

 その言葉と同時に、餃子は天高く舞い上がるのであった。

 

(……食いたかったな、餃子)

 

 

 

 

 

「ガフッ! フッ、この程度、耐えきってやったわ」

「なかなかやるではないか、そう来なくてはな」

((((((なにこれ))))))

 

 なのは達は困惑していた。

 我々は一体何を見せられているのだろうか、そんな気分であった。

 

「なんてハイレベルな戦いなんだ……」

「ああ、妾達では入ることも出来ぬ」

「「「「「「わかっちゃうの!?」」」」」」

 

 ユーノとアフームはこの戦いを理解しているようだ。

 

「強さが分かるのも実力のうちってね。2人ともいい線行っているんだが、あと一歩足りなかったね。かくいうあたしもそうなんだけどさ」

 

 モーリーンは冷や汗をかきながら戦いを見つめる。

 

「貴様ほどの虚空戦士(ハジケリスト)ならば、これが解らぬはずがない。行くぞ! 5腕時計!」

「なんのレンガ!」

「ほう、ならばここはボンドで行かせてもらおう」

「なっ! これではリップクリームが使えん!」

「そこにしょうゆを出す。この意味が解るな?」

「くっ、龍神コンボか! ならばここは焼き芋を使う!」

「なっ! 焼き芋だと! しかも2本!」

「秋姉妹バンザーイ!」

 

 光と共に決着がつく。

 

「くっ、我の負けか……」

「焼き芋の有無が勝敗を分けたな」

「アンチルールにより我はしょうゆをかぶる。明細表を切れ! 次のステージの選択権は貴様にある!」

「明細表は切らん。使い方が分からんからな」

「馬鹿な! 自殺行為だぞ!」

「リップクリームがあればそれでええ」

「成程HP回復にあてるという訳か。ならば我はライトサイドから攻めさせてもらうとするかククク」

「チッ、卑怯な」

((((((……全然わからーん!?))))))

 

 なのは達はレイとドラゴンの戦いを理解することが出来なかった。

 

「レイが焼き芋を使っていなかったら、僕たちまで被害が及んでいた」

「「「「「「そーなの!?」」」」」」

 

 ユーノが冷や汗をかく。

 

「このバンダナを身に着けるんだ! さもないと死ぬぞ!」

 

 ユーノとアフームから受け取ったバンダナを前にどうしていいか分からなくなるなのは達。

 

(考えろ、戦いには必ずルールというものがある。一見意味不明だが、必ずルールというものが存在するはずだ、考えろ、考えろ!)

 

 シグナムは必死にこの戦いを理解しようと努めていた。

 

「それでは第2回戦を始めます」

「いつでもどうぞ」

 

 ドラゴンが尾の先にクマのストラップをつけて、両腕だけで全身を支えている。

 レイは机に頭を挟まれながら、足裏に優勝カップを乗せている。

 

「「「「「「全然わからーん!!!」」」」」」

 

 クマのストラップが優勝カップに収められる。

 

「「ポン!!!」」

 

 一陣の風が2人の間をすり抜けていく。

 

「2回戦目は引き分けか」

「せやけど、俺はこの戦いでジョアを3つ手に入れたで」

「全然わからーん!!!」

「どうしたん、シグナム!?」

「主よ、わからないのです! この戦いが!」

「うちも、わからんよ」

 

 はやては早々に理解することをあきらめていた。

 

「ほらもう目を離したすきに何してんのかさっぱりやわ」

 

 はやての言葉と共にシグナムは崩れ落ちる。

 一方レイとドラゴンは両手首を縛り、吊り下げた状態で、吊り下げられたジャガイモを口で奪い合っていた。

 

「表参道、表参道」

「ルーブル、ルーブル」

 

 この戦いも決着つかずで流れることになる。

 

「3回戦目も引き分けか」

「結局キムチはお流れか、仕方あるまい」

 

 なのは達は理解することをあきらめた目でこの戦いを眺めていた。

 

「3回戦目も引き分けとは、なんてハイレベルな戦いなのじゃ」

「うん、レイが取った1回戦目が効いているとはいえ、流石ドラゴン。一歩も引けを取らない戦いだ」

「全くだね、このままあの子の優勢勝ちという訳にはいかなさそうだ。どちらかが次、必ず仕掛けるよ」

「「何だって!?」」

 

 モーリーンの言葉に反応するアフームとユーノ。

 

「お互い体力の限界がきている。ドラゴンが決着を早めようと決闘(デュエル)を挑んだのはいいが、1回戦目であの子が勝っちまった。だからここまでの泥仕合になっちまったのさ」

 

 モーリーンの言葉通り、レイとドラゴンは荒い息をしている。

 

「どうやら貴様には運がなかったようだな」

「何!?」

「たった今我は握力計を手に入れた。その意味が解るな?」

「……龍神コンボの完成か!」

「そうだ、これで貴様には万に一つの勝ち目が無くなったわけだ」

「……まだ俺には焼き芋がある」

「焼き芋ごときに何ができる!」

 

 龍神コンボの効果で焼き芋が割られてしまう。

 

「! 焼き芋が!」

 

 ユーノが声を上げる。

 焼き芋の断面が露わになる。

 それはきれいな黄金色と紫色だった。

 

「!? 2色だと! まさか!」

「この瞬間を待っとった。貴様の龍神コンボは止められん。ならばそれを乗り越える方法を探すのみ。そして見つけたんや。蜘蛛の糸をな」

「だ、だが2色の焼き芋だけでは!」

「忘れたか? 俺がゆっくりを従えている事を。来い! ゆっくり静葉とゆっくり穣子!」

「「ゆーっ!」」

 

 2体のゆっくりがレイの帽子からその姿を現す。

 

「あ、あああ」

「光の芋と闇の芋、2つの芋が合わさりて陰陽の狭間を行かん! いくで! 神へと至る12の言葉! シイタケ、紅葉、栗、イチョウ、コンタクトレンズ、汗拭きシート、免許証、電子辞書、ピルケース、尿瓶、いかだ、女子高生!」

「あああ」

「今こそその姿を顕現せよ! 無限陰陽神! アウトゥムヌス・ソロル!」

 

 2体のゆっくりが芋から放たれた2色の光に包まれその姿を変える。

 それはまさに女神だった。

 赤と白と黒の三色で彩られた女神がその姿を現した。

 

「「「「「「ド凄いの召喚したーーー!!!」」」」」」

「神の召喚、だと! まさか実現させるとは!」

「貴様の龍神コンボを上回る神の召喚! 形勢逆転や!」

「いや! まだ終わってはいない! 消臭スプレーがある! これで防御は完璧なはず!」

「残念やけど、俺は3色ボールペンを持ってるんや。消臭スプレーは使えんで」

「な、何だと……!」

「止めや! アウトゥムヌスインパクト!」

 

 アウトゥムヌス・ソロルから光線が放たれる。

 龍神はそれを黙って受け入れるしかなかった。

 

「……見事だ」

 

 そう言い残し、龍神は光線の中に消えた。

 光線が晴れると、そこには何も残されていなかった。

 

「終わった、のか?」

 

 レイが片膝をつく。

 そこになのは達が駆け寄ってくる。

 

「「「「「「レイ(くん)!」」」」」」

「みんな」

「大丈夫か! 体は無事か!」

「大丈夫や。ちょっと疲れただけや」

 

 すると龍神のいたところに何かが落ちていることにレイが気付く。

 レイは近づいてそれを手に取る。

 

「これは……」

 

 それは黄金で出来たネックレスだった。装飾はなく、シンプルにHとだけ純金の文字が掛けられている。

 

「これは、間違いない! キング・オブ・ハジケリストの証だ!」

 

 ユーノが叫ぶ。

 

「「「「「「ええっ!?」」」」」」

 

 みんなが驚愕する。

 まさかこんなシンプルなものだとは思わなかったからだ。

 レイはそれを自らの首にかける。

 

「キング・オブ・ハジケリスト、レイ=金剛=ダイヤモンド! ここにあり!」

 

 レイが高らかに名乗りを上げると、会場から割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こる。

 ここに、新たなキング・オブ・ハジケリストが誕生したのだった。

 

 

 

 

 

 それからは怒涛の日々だった。

 相次ぐ報道陣からの取材の依頼。

 テレビ出演の依頼。

 多くの仕事をこなして1週間後、ようやく帰る前日になって休みが手に入ったのであった。

 ブリリアント屈指のリゾートビーチでレイ達は僅かなバカンスを楽しんでいた。

 

 レイとあすかは一足先にビーチに立っていた。

 ただし、レイは宇宙服を着ていたが。

 

「お前暑くないんか?」

「意外と快適」

「……そうか」

 

 あすかはツッコミを放棄していた。

 

「ツッコんでくれんと寂しい」

「お前常にそれを求めてんのな」

虚空戦士(ハジケリスト)にとってツッコミは愛ある行動やから」

「意味わからん」

 

 あすかは同い年でありながら偉業を達成した友人を誇りに思うと同時に嫉妬していた。

 かくいう彼も唯一無二の称号『黒騎士』を持つのだが、彼は未だ己を未熟と考えていた。

 

「どんな気分や? 虚空戦士(ハジケリスト)の頂点というのは」

「現実感がないな。今だ夢の中にいるみたいや」

「でも現実やろ?」

「ああ、ここにあるものは現実や」

 

 レイは首にかかっているキング・オブ・ハジケリストの証を掴む。

 

「キング・オブ・ハジケリストは虚空教団の教主でもある。従って俺は宗教家としての最高位の称号を手に入れてしまったことになる。参ったなあ、俺はまだ修行中の身やのに」

「まだ、強くなる気か?」

「いんや、神職として、ドルイドとしての魔術の修業や。無論まだまだ強くはなる。せやけどもっと精神の修業もせんとなあ。魔術師として、宗教家としてはそっちを疎かにするわけにはいかん」

「精神か、剣を振ることしか出来ん俺にはどうしたらいいのかわからない分野や」

「剣術でも必要やと思うで。心技体揃ってこその武の道や。武の目的の一つには神羅万象との和合という側面もある。それはいわゆる神との合一であったり、悟りを得るといったことかもしれん。武を極めるということは、人生を極めるということかもしれん」

「そうか、なら目指して見るんもええかもな」

「俺も宗教家として目指す部分や。お互い頑張って目指すか?」

「……せやな」

 

 あすかはこの友人には敵わないと思ってしまった。

 同時に、この頭のいい男が目指すものが自分と重なっていることがどうしようもなく嬉しかった。

 そこへ、水着に着替え終えた女性陣が現れる。

 

「「「「「「おまた……、何で宇宙服!?」」」」」」

「これこれ、これを待っとったんや」

 

 そう言うとレイはようやく宇宙服を脱ぐ。

 

「さて、皆俺のキング・オブ・ハジケリスト獲得に付き合うてくれてほんにおおきに。ささやかなれど今日はここを貸し切りにした! 思う存分海で遊ぶがええ! 思いっきり真夏の海でハジケるがええ!」

「「「「「「おーーーっ!!!」」」」」」

 

 誰ともなく天に拳が突き上げられる。

 夏はまだ半ば、されど、歴史と思い出に残る夏になった事は間違いないだろう。

 

「のう、レイよ」

「何や?」

 

 アフームがレイに話しかける。

 

「キングとなった気分はどうじゃ?」

「……最高に興奮するわ!」

 

 そう言うとレイとアフームは揃って海へと駆け出すのだった。




 うう、体調が回復しないよー。
 この一週間で数百字しか進んでいない。
 皆さんも季節の変わり目には気を付けてください。
 マジで、健康は大事です。
 ところで、次回から第2章に入ります。
 お楽しみに。

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