魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ 作:ショーン=フレッチャー
2人は出向中!
業務は丸投げ!
首都防衛隊の業務はクラナガン市内における魔法強行犯罪の検挙と摘発が業務である。
読者諸兄に分かりやすく伝えるとすると、警視庁の機動部隊のようなものと考えていただければいい。
言ってしまえば実働のプロであり、暴力犯罪には必ず呼ばれる部署である。
この日、ゼスト隊は逃走する強盗犯を追いかけていた。
しかし、強盗犯は速さに自信があるのか、中々捕まらない。
クイントはウイングロードを展開してガリューと共に追いかけるも、強盗犯にどんどん差をつけられてしまう。
そこへ、レイとアフームが木馬に乗って強盗犯を追いかける。
木馬はジェットエンジンがついているせいか、有り得ない速度で強盗犯を追いかける。
しかし、その差はなかなか埋まらない。
(ちっ、速さが足りん。このままではエンジンが焼け付いてお釈迦になる)
レイは心の内で舌打ちすると、犯人をじっと見据える。
後部座席に乗るアフームは心配そうにレイを見つめる。
「……アフーム、これを犯人に撃ってくれ」
レイがアフームに吹矢を手渡す。
アフームは頷くと、吹矢を構え、強盗犯に向けて撃った。
しかし、針は強盗犯の服に刺さっただけで、何の効果も強盗犯に与えられなかった。
「エンジンがもう駄目や。止まる!」
そう言うとレイはエンジンを停止させる。
その瞬間、木馬は大爆発を起こすのだった。
「「「「「「何で!?」」」」」」
隊員たちの総ツッコミが沸き起こる。
レイとアフームは真っ黒焦げになっていた。
「おのれ犯人め、卑怯な真似を」
「「「「「「多分それ犯人関係ないよね!?」」」」」」
一方レイは帽子からパラボラアンテナを出して何やら交信していた。
「コウシンチュウ、コウシンチュウ」
「「「「「「何してんの!?」」」」」」
そこへ、ゼストが現れる。
「誰も捕まえられなかったか、くそっ!」
「隊長殿、悔しがるんはまだ早いですよ」
レイがゼストに言う。
「さっき種を蒔きました。すぐにでも犯人は見つかりますよ」
「何だと!」
「細工は流流、仕上げを御覧じろ、ってな。今はまだ逃走中。奴が動きを止めた時がチャンスや」
「金剛=ダイヤモンド、お前は一体何をした?」
「なあに、古典的な手です。そしてすごく有効な手です」
レイはにやりと笑う。
全て計算通りであるかのように。
強盗犯はほくそ笑んでいた。
金は手に入るわ、管理局は撒けるわで見事に犯罪計画通りの事が進んだのだ。
後はこの金を隠して、ほとぼりが冷めたころに回収する。
完璧な計画だ、完璧すぎて笑いすら起きてしまう。
強盗犯はにやけそうになる顔を必死でこらえながら住宅街を歩く。
「おいおい、どこへ行こうというんや? 銀行強盗はん」
目の前に銀髪銀眼の少年が現れる。
よく見れば先程自分を追いかけてきた管理局の少年ではないか。
慌てて後ろを振り向く。
そこには多数に管理局員が待ち構えていた。
また前方を見る。
さっきよりも人数が増えている。
強盗犯は上に逃げようと上を向く。
そこには、壺を持った少女が天から落ちてきた。
「逮捕しちゃうぞ!」
少女の掛け声と共に強盗犯の頭に壺が被せられる。
強盗犯は壺を取ろうとするが、なぜか外れない。
「クックック、貴様には散々苦労させられたのでな。この熱した鉄の棒を押し付けるくらいはええやろ?」
「「「「「「ダメでしょ!」」」」」」
「え~、じゃあ用意したスタンガンも?」
「「「「「「ダメに決まってる!」」」」」」
「じゃあ妾が用意したこの氷柱で己奴のケツの穴からぶっ刺してやるというのも?」
「「「「「「殺しにかかってるよね、ソレ!」」」」」」
「あれもダメ、これもダメ、全く世知辛い世の中になったもんや」
「コンプライアンスを順守するのは大変じゃのう」
「「「「「「コンプライアンスとかの問題じゃないから!」」」」」」
強盗犯はあまりの恐ろしい会話に腰が抜けてしまった。
「とりあえず、強盗犯は逮捕やな、一課の皆さんに引き渡すとしますか」
強盗犯が捜査一課に引き渡される。
この時、レイは思った。
(この瞬間、犯人に勢いをつけてカンチョーしたらどうなるんやろなあ)
「論功行賞、論功行賞♪」
アフームは初めての逮捕に浮かれていた。
「さて、皆戻るぞ」
ゼストに促され、隊員たちは隊舎へと戻るのであった。
「成程、発信機か」
「ええ、犯人の服に吹矢で発信機を取り付け、それを追ったんです」
ゼストはレイから何をしたのかについて報告を受けていた。
「発信機は魔術で構築した魔力の針。それを相手の体に浸透させることで気付かれずに相手の体そのものが発信機になるわけです」
「そんな技術が……」
ゼストは驚いていた。
自分たちが学んできた魔法とは異なる体系の魔法技術にである。
「僕は大規模な破壊よりも、これの様な細やかな技術の方が得意なんです。それに、便利ですしね、こうした技術は持っていれば持っているほど」
「確かにそうだ」
ゼストはレイに対する認識を変えつつあった。
この少年は戦闘もこなせるが、それ以外の技術を用いることに長けている。
チームに一人いれば、痒い所に手が届く存在だろう。
実際に彼はいかなるポジションもこなせることが訓練で分かっている。
人より知識があり、更に経験を積もうとするその姿はゼストにとって多少は好ましく映った。
(才能に溺れているどころか、うまく乗りこなしている)
ハジケた言動さえ目をつぶれば完璧超人といってもいいだろう。
(しかし、キング・オブ・ハジケリストなんだよな)
ゼストはこの少年が第6次元文化圏の最高権威を持っていることがいまだに信じられなかった。
普通にしていれば、人当たりの言い、大人しい少年ではあるのだが。
「報告は以上か?」
「ええ、後は報告書の通りです」
「わかった、下がっていい」
「お疲れの出ませんよう」
そう言うと、レイはゼストのデスクから離れる。
(報告書も完璧に仕上げるんだよなあ)
ゼストは鍛えがいの無いこの少年に物足りなさを感じていた。
自分のデスクに戻ったレイは一つ大きなため息をつく。
「報告は終わったの? 早いわね」
クイントが話かけてくる。
「ええ、大して書くこともなかったもんで」
「何言ってんのよ、今回の逮捕はレイくんのおかげで出来たようなものじゃない」
「そうでしょうか、僕はただ発信機を取り付けただけなんですがねえ」
「それがすごいのよ、どこで身に着けたのよ、そんな技術」
「実家で教わりました」
「そういえば、レイくんの実家って、魔法の名家なんだって?」
メガーヌが話に入ってくる。
「ええ、まあ、両親ともに1400年続く家ではあります」
「「1400年!? ちょっと想像もつかないわね」」
「レイの家は魔術の家としては最古級じゃ。それ故、他の家からも一目置かれておる。レイはその跡取り息子なのでな、両家の魔術をこれでもかと叩きこまれておる」
アフームがまるで自分が褒められたかのように言う。
「魔術だけでなくて、武術、礼法、教養も叩き込まれております。正直詰め込みすぎかもしれませんが」
「いやいや、その年でその立ち振る舞いは凄いわよ。余程厳しい躾だったんじゃない?」
メガーヌがレイに問いかける
「意味が分かれば、頭に入ってきます」
「その意味を理解できるのがすごいわよ。家の娘達にも見習わせたいわ。元気ばっかり有り余って」
「ははは、うちの妹達もそんなもんです。少々元気が余り過ぎてる。そこが可愛いんですが」
レイが時計を見る。
「おや、もうこんな時間、参りましたな、ポートの時間に間に合いそうもない」
「大丈夫?」
クイントが声をかける。
「ええ、いざとなればホテルを使用しますんで」
「ダメよ、子供だけでホテルなんて」
「そうは言いましても」
「うちに泊まっていきなさいよ。困っている同僚を見擦れるほど鬼じゃないわ」
「しかし、旦那さんに迷惑では」
「いいのよ、連絡すればいいし。それにOKするに決まってるわ」
「いやしかし申し訳ないですよ」
「泊っていきなさいよ、心配なのよ、子供だけでホテルなんて」
「……そういわれるのでしたら。お言葉に甘えまして」
「出た! 京都人のコミュニケーション『3度断る』~。レイのこれは久々じゃ」
「何それ?」
メガーヌが疑問をぶつける。
「奥ゆかしい京都人のコミュニケーションじゃ」
「そう、随分面倒くさいわね……」
「まあそういうことならゆっくりしていきな」
ナカジマ家で待ち構えていたのはクイントの夫、ゲンヤだった。
「「お邪魔します」」
「待ってな、今飯用意してやっから」
「ありがとうございます、わざわざすいまへん」
「なあに、いいってことよ」
すると、ゲンヤの影から2つの影が見える。
レイとアフームは屈むと、その2人に向かって挨拶をする。
「初めまして、お母さんの同僚の、レイ=金剛=ダイアモンドです」
「同じく、アフーム=Z=シルバーじゃ」
「ギンガ・ナカジマです。8さいです」
「スバルです。6さいです」
「はい、よろしく」
「大分手馴れてるわね、妹がいるせいかしら?」
クイントがギンガとスバルを抱きかかえる。
「かもしれませんなあ」
レイは何の気なしに言う。
「先シャワー浴びてしまいましょ、その間に夕飯が出来てると思うから」
「あ、僕は後で」
「そお? じゃあアフームちゃんは?」
「家主を置いてシャワーは浴びれんよ」
「ここはお客様から浴びてもらわないと」
「いやいや、ここは家主が」
「……このやり取りまたやる気?」
「それがマナーですから」
結局、アフーム、レイ、クイントの順で入ることになった。
「おや、シチューですか」
「おう、たっぷり食いな」
夕食はシチューだった。
レイ達はテーブルに着く。
「細君には負けます」
「やっぱりか?」
「僕も大概健啖家ですけど、細君には参ります」
「うちはクイントだけじゃなくて娘たちもよく食うからなあ、ほれ、鍋がこのサイズだ」
ゲンヤが示した鍋の大きさは寸動サイズであった。
「ワアオ、エンゲル係数が大変そうで」
「エンゲル係数?」
「家庭の支出における食費の割合です。地球ではよう使われるんです」
「ほう、案外平気だ、お互い稼いでいるし、近くに安くて大量に買えるディスカウントがある。工夫すりゃどうとでもなるもんだ」
「御見それしました」
レイはスプーンを口に運ぶ。
物音は一切立たない。
アフームもまた物音を立てずにシチューを食べる。
「相変わらず上品ね、やっぱり厳しくしつけられているのかしら」
「ええ、マナーは特に、一つ一つの所作に気を付けるように言われとります」
レイが音を立てることなくシチューをすくう。
「おかげでどこへ行っても恥ずかしくない子供が出来上がりましたわ。よそで恥をかかないのは本当にありがたいのじゃ」
アフームもまた音を立てることなくシチューを口に入れる。
「うちの子たちもこれくらい厳しくしつけた方がいいのかしら」
「いやあ、ここまでは別にいいと思うぜ。だがせめて口の周りを汚さないようにしてくれればいいんだがな」
クイントとゲンヤが娘たちの躾を口に出す。
「女の子は元気な方がいいと言っとりませんでしたけ?」
「前言撤回、上品さも必要だわ」
レイとアフームは食べ過ぎたことを気にして、天むすになっていた。
「ねえ、それなあに?」
そこへスバルがキング・オブ・ハジケリストの証を指さし尋ねる。
「これは世界一の
「へー、世界一なんだ」
「そう、俺は世界一の男」
「「すごーい」」
「ふふん、せやろ、世界一やから筋肉だってある。見よ! このセクシーボディを!」
レイはいきなり上半身裸になると、アドミナブル・アンド・サイのポーズをする。
10歳とは思えぬ腹筋が現れる。
ギンガとスバルはぽかんとする。
「子供たちに変なもの見せないで」
クイントが冷たくツッコむ。
「ならば妾も見せてやろう、キングの相棒のハジケを」
「いや、いいから」
クイントの制止も聞かず、アフームは全身に力を籠める。
すると、アフームの背中から白黒一対の羽が生えたのであった。
「「「「羽生えた!?」」」」
「堕天使……!」
その後、本当に堕天使シェムハザが降臨する事態になったが、レイ渾身の土下座でどうにかなった。
書けた……!
久々に物語が進んだ……!
この勢いで第3章を書き終えてしまおう!
それが終われば第3部だ!
皆! 感想書いてくれよな!