魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ 作:ショーン=フレッチャー
ネバネバネバネ~バ。
「イエ~イ、勝った勝った~!」
「人間舐めんな~!」
砂に埋まった戦闘機人たちを眺めながら、レイとアフームは思いっきり煽っていた。
戦闘機人たちはゆっくりと立ち上がり、2人を射殺すように見つめる。
しかしレイとアフームはそれを意に介そうとしない。
「「「貴様らは、殺す!」」」
「あれあれ~、いいのかなあ~、こっちには人質がおるんやで」
レイがそう言うと、無敵要塞ザイガスのドーム部分が開き、中から三角木馬に拘束されたセインが現れる。
セインは悲痛なうめき声を上げながら必死に抵抗する。
「ふん、簡単なお使いもこなせないような奴なんていらないわ」
「姉としては助けた方がいいと思うのだが」
クアットロは見捨てる発言をし、チンクは助けようと提案する。
「私はどちらでもいい」
トーレは興味が無いようだった。
「ふむ、賛成1、反対1、どちらでもない1か、意見統一せいやーーー!!!」
レイがバズーカを戦闘機人たちに打ち込む。
「「「ぐああああああ!」」」
「ちっ、どうせ逃げられるんや。ここは武士の情け、見逃したる」
レイが手元のスイッチを押すと、三角木馬が浮上し、戦闘機人たちの方へと飛んでいく。
「「「え」」」
「ああああああ!!!」
三角木馬が戦闘機人たちのいる地点に着弾し、大爆発を起こす。
「「「「ぎゃああああああ!!!」」」」
「見逃すとは言ったが、逮捕せんとは言うとらん。おとなしくお縄を頂戴されるんやな」
レイがロープを手元でぱんと鳴らす。
「まだよ! まだ手はある!」
クアットロはまだ足掻こうとする。
「新型ドローンか? 奴らに効くとは思えんが」
「このままではドクターに合わせる顔がないわ! 何としても奴らを始末する!」
クアットロの声と共に多脚戦車のような形のガジェットが2体召喚される。
「……無駄なことを」
レイの呟きにクアットロが反応する。
「殺す! 殺してやる!」
ガジェットの鎌がレイに襲い掛かる。
それをレイは危なげなく避けると、二丁拳銃で鎌のついたアームを吹き飛ばした。
「だから言うたのに」
レイとアフームはスペルカードを構える。
「「土符『デッド・オア・アライブ回転流砂』!」
回転する砂の渦が2つ巻き上がり、ガジェットを貫通する。
ガジェットは2、3歩よろけると、爆散する。
爆発の後には、ガジェットの残骸が残るのみで戦闘機人達はいなくなっていた。
「逃げられたか」
「その様じゃな」
レイとアフームは一つ大きくため息をつくと、無敵要塞ザイガスに向かって歩きだした。
研究施設で採取されたデータの中にあったのは、レジアス・ゲイズとジェイル・スカリエッティとのやり取りであった。
「どういうことか説明してもらうぞ、レジアス!」
首都航空隊、管理官室。
ゼストが眼前のレジアスを睨みつける。
レジアスの前にはスカリエッティとのやり取りが突き出されている。
レイは手を後ろ手に組み、ふらふらと部屋を歩く。
「これは僕の単なる想像なんですが」
レイが口を開く。
「あなたはスカリエッティから技術提供を受けていたのではないのですか? その見返りに、捜査状況をリークしスカリエッティを逃がしていた」
レジアスの目が見開かれる。
「その目的は、地上本部の戦力増強。違いますか?」
「仕方なかったんだ……」
レジアスが絞り出すように声を出す。
「今の陸には金がない、人もいない。全部海の連中に持っていかれてしまう。そんな中成果を上げるにはこうするしかなかったんだ」
「犯罪者と手を組んでもか!」
ゼストが激高する。
「お前だってわかるだろう! 今の陸がどうしようもない状況であることくらい! そんな中上からは成果を求められる! マンパワーではどうしようもないところまで来ているんだ! これ以上成果を出すにはこうするしかなかったんだ……」
「だからと言って、犯罪者と手を組む理由にはなりまへん」
レイがぴしゃりと言い放つ。
「僕も今の陸がええ状態であるとは到底思えまへん。陸には安定した状態でもらわないと地球としても困ります。あなたはそれを裏切ったんです。下手をすりゃ、犯罪者を誘致する所だったんですよ」
「ならわしはどうすればよかったんだ!」
「……今の海偏重の状況は広域次元犯罪者の増加が原因だと思われます。その捜査を海のみで行っている組織体制がこの歪みを生んでいると僕は考えます。順当に偉くなるしかない。組織改革できるくらいには。それぐらいしか僕には思いつきません」
「それには、時間がかかるだろう……!」
レジアスが静かに怒りをにじませる。
「ええ、時間がかかります。それが組織というものです。あなたはよくわかってらっしゃるのでは? それに我慢できなかった、あなたの弱さが招いた錆ですよ」
レジアスの体が小さく震える。
「とはいえ、このメールだけではあなたをどうこう出来んのですがねえ」
「……そうだ、お前を罰することはこのままでは出来ん」
ゼストが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「管理局は身内に甘いようで、少なくともあなたは今のままだと降格された後、ほとぼりが冷めたころにしれっと元の地位に返り咲くんでしょうな」
レイがぼやく。
「そんなことはさせまへんで。あんたには相応の罰を受けてもらう。せやから今は罰は与えん。罪の意識に苛まれ続けろ、レジアス・ゲイズ」
レイの迫力に、レジアスはたじろぐ。
「そういえばあんた、以前俺の友人達を犯罪者呼ばわりしたな。あんたも犯罪者のくせに」
レジアスは膝をついた。
「何だこれは」
ジェイル・スカリエッティはクアットロやセインから提出された映像を眺め呟いた。
「ドクター、任務を達成できず申し訳ありませんでした。いかなる罰も受け入れます」
クアットロが苦々しく、絞り出すように声を出す。
「いや、私の認識が甘かったようだ。まさか
ジェイル・スカリエッティは静かに言い放つ。
「これで私たちの情報が管理局に流れた、がこちらもキング・オブ・ハジケリストと魔術師の情報を手に入れることが出来た。非常に得難い情報だったよ。戦闘データとしては誰もが羨むものだろうね。私たちの情報と引き換えにしてもいいくらいのデータだ。むしろ良く帰ってきてくれた。ここで捕まると更なる損失を追うことになるからな」
スカリエッティの言葉は何処か事務的な雰囲気を含んでいる。
「ところで、彼らとの戦いはどうだったかね、直にやり合った感想を聞きたい」
「意味不明でした」
トーレがいの一番に口を開く。
「私の速度を見切るのはまだわかります。私の力を受け流すのもまだわかります。しかし、攻撃方法が訳が分からない! 妙にドロドロしているし、痒いし、ねばねばしているし、なぜあんなもので攻撃しようと思ったのか理解に苦しみます」
「私の場合も似たようなものです。異常なまでの回避力と防御力は厄介そのものとしか言いようがありません。それにシェルコートを貫通するほどの拳を連続で打ち込んでくる攻撃力。我々戦闘機人のスペックを上回っているのが謎です。あれは人間じゃない」
チンクが不愉快そうに話す。
「そうよ、人間じゃないわ! あの回避力! 360度ガジェットに囲まれておきながらレーザーを全て回避するってどういうことよ! あまつさえ手鏡で跳ね返すなんて。手鏡よ! 手鏡! あんなので跳ね返されるなんて末代までの恥だわ。それにⅣ型をあんな一瞬で壊すなんて。もう、何なのよアイツら!」
クアットロは憤然とまくしたてる。
「私としては、なんで私を捕まえられたのかが不思議でしょうがないです。ディープダイバーは完璧な能力ですよね? なんで掃除機でどうにかできるんです? しかも人間ボウリングって、あれ完璧に人間として終わってる奴のすることです。あいつ人格がおかしいとしか思えません」
「「「それには同意する」」」
セインの感想に3人は異口同音に同意する。
「人格も、行動も何もかもがおかしい、か。理性ある狂人といったところか。これは厄介だ。ククク、この世界は退屈だと思っていたら、とんだ研究対象に出会ってしまったようだ!
スカリエッティは喜色満面といった様子で天を仰ぐ。
「そういえば、もう一つ見つかった研究施設があったな。どうせあそこも管理局の手が入るだろう。そこで鬱憤晴らしではないが、ちょっと仕掛けてみようじゃないか」
スカリエッティが不敵な笑みを浮かべる。
その様子に戦闘機人たちは妙な頼もしさを覚えた。
時空管理局本局、カーテンの奥の奥、最高評議会。
360度を覆うモニター群の中に、円筒形の水槽が3つ置かれている。
水槽の中には脳髄が1つずつ入っている。
「議長、スカリエッティがゼスト隊の始末に失敗しました」
『書記』と記された水槽から声がする。
「とんだイレギュラーだ。原因は」
『議長』と記された水槽が返事をする。
「第92管理外世界からの出向者です。キング・オブ・ハジケリストのレイ=金剛=ダイアモンド。それと同等の
「予定ではどうだったかな」
『副議長』と記された水槽が問いかける。
「ゼスト隊の生き残りは全員人造魔導士の素体として活用する予定でした。また、メガーヌ・アルピーノの娘をスカリエッティに引き渡す予定でした」
「大いに計画が狂ったな」
「他に奴に提供できる素体はないか」
「いくつか見繕ってレジアスを通じて送り込ませます」
「これ以上レジアスとスカリエッティを近づけすぎるのはやめておこう。すでにつながりはばれた。新たな窓口を作ってやらなければならん」
「レジアスは分かりやすい男だったからな。御するのは楽だったが。次の奴はどうしようか」
「それもいくつか見繕いましょう」
「レジアスにはまだ正義でいてもらわなければ困る。地上の人間には人気があるからな」
「そう、我々が時空管理局だ。我々が管理するのだ」
「これでよかったのか?」
廊下を歩く中、ゼストが呟く。
それは自問自答のような問であった。
「他にどうもできんでしょう、証拠としては弱すぎるんですもの。それよか、利用する方が現状としてはええと僕は思います」
ゼストの顔が苦々しく歪む。
「隊長の思いも解ります。ですが、この件を終わらせるには、管理局は複雑怪奇になりすぎた。一筋縄ではいかんことになってもうたんです」
「……どうしてこうなったんだろうな」
「管理局の上層部の考えは僕にはわかりません。ですがいくつか言えることがあります」
レイはゼストに向き直る。
「いずれ管理局は破綻します。それも近いうちに。そうなったとき、この世界に正義はあるんでしょうか?」
「……あると信じたい。正義は管理局にあるんじゃない。誰もが持ち得るものだ」
「それが舌先三寸の弱々しいものでも?」
「……それでも、俺は正義があると信じたい」
無言で廊下を歩く二人。
「もうすぐお前達の出向期間も終わるな」
「そうですな、終わってみれば早いもんでした」
「次が最後の仕事になるのか」
「ええ、また戦闘機人関連で?」
「ああ、海の連中が見つけたらしい」
「かなり大規模な編成になるそうですね。見知った顔ばかりでした」
「海のハラオウン提督を中心とした編成だそうだ。俺たちも先の経験から呼ばれた」
「なら、存分に働かんと。海ばっかりという訳にも行きまへんからなあ」
「ああ、これ以上レジアスに悪事を働かせるわけにはいかん」
「ええ、何事も無ければええんですが」
レイが遠い目をする。
合同任務まであと1週間である。
いつの間にかUAが5000人を超えていました。
いやあ、めでたい。
この勢いで何とか完結を目指します。
それにしても、今回はハジケ成分が足りないなあ。