魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

54 / 74
 前回のあらすじ
 武士THEユーノさん……。


第5話 穴だらけの推理、穴の無い対策

 4つ目のハートストーンを発掘するため、とある次元世界に降り立った、ユーノ達。

 発掘活動と称し、ユーノはなぜかだだっ広い荒野にライン引きで石灰の線を引き始めていた。

 その様子を無言で見つめるなのはやヴィクトリア達。

 

「これって発掘活動なのかしら?」

「「「違うと思います」」」

 

 ヴィクトリアの疑問に、異口同音に即答するなのは、はやて、アリサ。

 ユーノが描いているのはどうやら魔法円のようなもののようだ。

 

「最近、ユーノ君が分からないよ……」

「安心しなさい、私達も分からないから」

 

 困惑するなのはにアリサは慰めにもならないことを言う。

 そうこうしている間に、ユーノのライン引きが終わる。

 続いてユーノは何やら呪文を唱え始める。

 

「「「「何やってるんだろう……」」」」

 

 困惑を通り越して呆れ返るしかない。

 すると魔方陣が光り、謎の怪物が召喚される。

 

「「「「何か召喚してるーーー!!!」」」」

「私は森の民ヤムー」

「「「「喋った!」」」」

「これをどうぞ」

 

 そう言うとヤムーの舌が伸び、そこからハートストーンが現れる。

 

「それではさようなら」

 

 そう言うとヤムーは蒸発する様に光と共に消えていくのだった。

 

「あ、そうそう、この欠片は一か所に纏めておいて置かず、必ず距離を置いて保管する様にして下さいね」

 

 そう言い残し、ヤムーは消えるのだった。

 

「発掘終了! さあ、戻ろうか」

「ねえ、最後に何か言ってなかった?」

 

 アリサの言葉にユーノは俯く。

 

「……一応胸にとどめておくよ。森の民ヤムーは真実のみを語るから」

「「「「ユーノ君は何を知ってるの?」」」」

「知ってる事だけさ、さあ、戻ろう。これも封印処理がされている。一体誰が……」

 

 

 

 

 

 スポットライトが焚かれる。

 レイの姿が露わになる。

 前回と同様、すり鉢状の会議場の中心にレイがいる。

 相変わらず周囲は暗く、何も見通せない。

 

「幻想郷との交渉はどうなっている」

 

 野太い男性の声がする。

 

「順調に進んでいます。派遣人員についての交渉も済んでいます」

「そうか、全ては順調に進んでいるようだな」

「恐縮です」

「幻想郷再現計画の方はどうなっている」

「そちらの方も問題なく。実験は成功しています」

「それでは、手筈通りサンボーンに幻想郷を再現できるという訳か」

「ええ、テストは行いますが、順調にいけば問題なく幻想郷を再現できるかと」

「見事な手腕だ」

「恐縮です」

 

 続いて老女の声がする。

 

「管理局はどのような状況ですか」

「先程、4つ目のCの心臓を確保したことがわかりました」

「ああ、なんてこと!」

「私の独断ですが、Cの心臓に処理を施しています。私の力がどこまで及ぶかわかりませんが、保険として」

「続けて頂戴、不安材料は取り除くに限るわ」

「畏まりました。処理は続けます」

 

 今度は若い男性の声がする。

 

「こういっては何だが、皆さん神経質になりすぎでは? 確かに奴は恐ろしいですが、適切な対処をすれば防げるのでしょう?」

「そうもいかない事情があります。特に私にとっては」

「……君の6年毎の死の運命については聞き及んでいる。例の預言の件もだ。君が特にこの件については神経質になっている気がする。確かに死は恐ろしいが、過剰に恐れているような気がするよ」

「私は出来る手を全て打っているだけです。万に一つの抜かりのせいで、世界に危機をもたらすわけにはいきませんから」

「管理局がCの心臓を蒐集しているからといってそれが奴の完全復活に繋がるとは限らないし、管理局がサンボーンのCの心臓を手に入れに来るとも限らない。過剰に恐れることで外交に支障をきたすことも問題だと思うのだが」

「そちらについては問題ありません。適切な外交処理を行っています」

「君は管理局がCの心臓を手に入れに来ると思っているのかい?」

「……十中八九確保に向かうでしょう」

「それを外交ルートで潰す事は出来るかい」

「難しいでしょう。向こうにとっては辺境の管理外世界としか考えていませんから。仮に実務担当がそう思っていなくとも、彼らは組織の人間です。上からの命令には背けないでしょう」

「こじれるのは必至か」

「ほぼ間違いなく」

「なら最後にものを言うのは武力か。我々魔術師は研究者だからね。戦闘は本分じゃないし、戦闘魔術師の数も減っている。質だって良くはない。君達ぐらいだよ、質を維持し続けているのは」

「恐縮です」

「その君達が幻想郷に援軍を頼んだ。そこまでしないと勝てない相手かい?」

「我々だけでは勝つでしょう。しかし、最終的には負けるでしょう」

「それは、規模の問題かい?」

「はい。出来ることなら、ある程度勝った上で講和に持ち込むのが最善ですが、そうもいかない可能性が高い。皆様にはミッド式魔法とベルカ式魔法の情報をお渡しします。これを活用していただきたい」

「頑なに情報公開を拒んできたのに、今更かい?」

「事態がそれだけ逼迫していると思って頂きたい」

「君も大変だね」

「それほどでもありません」

 

 レイが頭を下げる。

 別の女性の声がする。

 

「今回の事件は予想していたものより大きく変化しました。あなたが持ってきた情報は有益でしたが、事態が大きくなり過ぎたようです。その部分をあなたに一任する形になっています。その双肩に世界の命運がかかっていることを努々忘れることの無いよう」

「承知しています」

「勿論、あなた自身の命もね」

 

 レイが再び頭を下げると、スポットライトが消える。

 闇と静寂が空間を包んだ。

 

 

 

 

 

「解析結果が出ました」

 

 エイミィの声がブリーフィングルームに響く。

 

「前回と同じ封印です、封印されたのも発掘から約3時間前。前回と全く同じです」

「決まりだな、これは明らかに何者かが目的をもって封印をしている。これは事件だ」

 

 クロノが腕組みをして言う。

 

「問題は誰が、どんな方法でやったかなんですがね」

 

 ヴィクトリアが言うと、全員頭を抱える。

 

「それなんですけど、誰がやったかについては判ったかもしれないんです」

「それは本当か!」

 

 クロノが声を上げる。

 

「うん、だけど、驚かないで。現在管理局に登録されている封印系の希少技能(レアスキル)を片っ端から当たってみたら、一つだけ一致するパターンがありました」

 

 エイミィは一息つくと、再び話し始める。

 

「レイ=金剛=ダイヤモンド、彼の所有する解放者の鍵(Remorter’s Key)とパターンが一致したんです」

 

 どよめきが起きる。

 

「レイと、一致した!?」

「まさか、レイがやったというのか!」

「結果ではそう出ているの、これは間違いないよ。何度も確かめたもん」

 

 誰もが驚愕を隠せない、ヴィクトリアを除いては。

 

「それの何が問題なの? 彼が犯人で確定じゃないの?」

「……問題は、方法と、彼の立場です」

 

 リンディが重々しく口を開く。

 

「まず、彼がどのような方法で犯行を行ったのかが解りません。周囲に何の痕跡も残さずにハートストーンだけを封印した方法が分からなければ彼を逮捕する事は出来ません」

「そんなの逮捕してから吐かせればいいだけじゃないですか」

 

 ヴィクトリアの反論にクロノは首を振る。

 

「それは出来ない。彼は地球の外交官だ。余程のことがない限りこちらから手を出す事は出来ない。もし、証拠不十分のまま逮捕すれば、外交問題になりかねない」

「面倒臭い相手ね」

 

 ヴィクトリアが不満そうに呟く。

 

「そうだ、面倒臭い相手だ。自分の立場を盾にしている。それだけじゃない、やっていることも軽犯罪だ。違法渡航も、勝手な封印も」

 

 クロノが忸怩たる思いをぶつけるように言う。

 

「とにかく、今のままではレイを逮捕する事は出来ないし、逮捕したところで送検も出来ない。何としても、証拠を集めなければ」

「問題はまだあるよ。どうやってレイが情報を集めているかも問題だよ」

 

 ユーノの指摘に一同頷く。

 

「情報を手に入れる方法、次元世界を移動する方法、周囲に何の痕跡も残さずにハートストーンだけを封印する方法。それらが分からなければレイくんを逮捕する事は出来ません」

「一体どうやって……」

 

 クロノの呟きに答えられるものはいなかった。

 

 

 

 

 

「ぬわああああああん、疲れたんもおおおおおおん」

「随分とお疲れのようじゃな」

 

 ソファに寝っ転がるレイにアフームは声をかける。

 

「そりゃそうよ、IMSと幻想郷を往復しながら、管理局の機先を制してCの心臓を封印しとるんやから。ああ、体が3つあればええのに」

「まるでヘカーティア殿じゃな。ま、実際便利そうではあるが」

「便利やろなあ、あー羨ましい」

「……ある程度は人に任せる事は出来んのか? 見ていると心配になってくるぞ」

「俺にしか出来んことが多すぎるからなあ。それに、動いとらんと不安で仕方がなくなってくるんや。止まれんよ」

「レイは心配症じゃからな」

「常に最善を尽くすだけや。備えあれば憂いなし。今までも、そうやって俺は生きてきた」

 

 アフームは床に正座すると、ポンポンと膝を叩く。

 

「膝枕、するかの?」

「……お願いします」

 

 レイはアフームの膝に頭を乗せる。

 

「あー何もしたくない。でも何かしなくちゃいけない。何この二律背反」

「珍しいのう、レイが甘えてくるなんて。いつもは妾が甘えてばかりじゃからなあ」

「包容力のある男も時には甘えたくなる夜もあるんや」

「そんな夜を共に過ごせる女がいて幸せじゃな」

「ああ、勿体無いぐらいに」

 

 無言のまま時間が過ぎていく。

 時計の音だけが部屋に響く。

 そこへ、アリアとアウラ、使用人の女性が部屋から出てくる。

 

「「おなかすきましたー、姉上ー。あ、兄上お帰りなさい」」

「ただいま、そろそろご飯にしますか」

「そうじゃな」

 

 レイはむくりと起き上がると、テーブルへ向かう。

 アフームは少し名残惜しそうにすると、立ち上がり、テーブルに向かう。

 

「今日の夕餉は何ですか?」

 

 レイが使用人の女性に聞く。

 

「今日はカレイです。煮つけにしました」

「ほう」

 

 そう言いながらレイはテーブルに箸を並べる。

 その背後には棺の様な柱時計がでんと置かれていた。

 その時計には文字盤が無く、4本のねじれた針が不規則に回っていた。

 

 

 

 

 

 5つ目のハートストーン発掘現場。

 

「どーしてまた封印されているんだーーー!!!」

 

 ユーノの叫び声が辺りに響き渡る。

 

「ユーノ君、大丈夫?」

 

 すずかが声をかける。

 

「これ絶対情報漏洩してるって。どこからか漏れてるって」

「ねえ、何の話?」

 

 アリシアが声をかけてもユーノの様子は変わらない。

 

「これは管理局の威信にかかわる大事件やでーーー!!!」

「お前、頭大丈夫か?」

 

 あすかの声すら今のユーノには届かない。

 

「とにかく戻りましょう。ユーノ君も落ち着いて」

「あびばあべばほきゃらほ~い」

 

 ヴィクトリアに促され、アースラへと戻る一行。

 ユーノの顔面は崩壊したままだった。

 

「またか……」

 

 アースラで出迎えたクロノは開口一番呟いた。

 

「ハートストーンを解析に回してくれ」

 

 ハートストーンを職員に渡すクロノ。

 

「一体どこから情報が洩れているんだ。盗聴器の類は見つからなかったし、特定の術式が掛けられた様子はない。くそっ、これは本当にレイの犯行なのか? それすらも疑わしくなってくる」

 

 ぶつぶつと呟くクロノ。

 

「なんか、みんなピリピリしているね」

「そうだね、何かあったのかな」

「良くないことであることは分かるんやけど」

 

 すずか、アリシア、あすかが不安そうに様子を窺う。

 

「ヴィクトリアさん、何かあったんですか?」

 

 アリシアがヴィクトリアに尋ねる。

 

「今はまだ何も話せないわ。何もわかっていないの。それがみんなを苛つかせていることだけは言っておくわ」

「何もわかっていない、ですか」

 

 すずかが呟く。

 

「なんか、不穏な雰囲気やな、レイとアフームは学校来とらんし、アースラは原因不明の現象に苦しんどるみたいやし。なんか大事件でも起こるんちゃうか」

「いやいや、2つの件は関係ないでしょ。レイもアフームもIMSからの仕事で忙しいだけだし、これが終わればまた来るようになるって」

「せやな、俺の思い過ごしか」

「そうそう、この仕事だってそれほど難しいものじゃないし。なんか大事件に繋がってるわけないって」

「そうだね、そうだよね」

 

 しかし、3人の言葉とは裏腹にユーノの顔は渋かった。

 

(言えない、預言の件があるなんて。もしかしたらレイがこの件に関わっているなんて、とてもじゃないけど言えない!)

 

 ユーノの苦悩をよそに、3人は談笑を続ける。

 誰もこの事件がどう解決を迎えるのか予想もつかなかった。




 さあ事態は進行していきます!
 次々と発掘されるハートストーン!
 繰り広げられるレイの暗躍!
 サンボーンってどこ!?
 レイにかけられた犯罪疑惑!
 何故か書かれている謎の柱時計!
 君達はこの先の展開を予想できるか!
 感想、お返事待ってるぜ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。