魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ 作:ショーン=フレッチャー
ボガン! はい消えた!
6個目のハートストーン発掘は順調に進んでいた、関係者のモチベーション低下とは裏腹に。
盗聴盗撮装置の件があって以降、明らかにアースラの士気は低下していた。
レイが行ったかもしれない、犯罪行為。
今となっては確かめようがないが、状況的にレイが最有力容疑者であることに変わりはなかった。
当のレイは海鳴に帰っておらず、どこにいるのかわからない状態である。
ヴィクトリアはこの状況を危険視していた。
辺境の管理外世界に一杯食わされたのだ。
上層部が知れば直ちに交流禁止になってもおかしくない。
現状では疑惑にとどまっているが、いつ堪忍袋の緒が切れるか分からない。
そうなれば、管理局と地球の間に待っているのは何であろうか。
ヴィクトリアは想像を巡らすのをやめた。
自分は一局員なのだ、政治に関わることはない。
一方で、容疑者とされているレイという少年は今回一緒に仕事をしている少女達と同年齢なのに、見事に政治をこなしている。
ヴィクトリアは未だレイに会ったことはない。
しかし、相手が相当な海千山千の強者であることは想像がついた。
(この事件、簡単に終わることはなさそうね)
ヴィクトリアは溜息をついた。
「見つかったーーー!!!」
ユーノの声がする。
彼も相当無理をしているであろう。
目の下に隈がある。
「封印されていない、ということは、やはり……」
ユーノは顎に手を当て、何やら思案する。
(それでも、私達は止まらないわ)
ヴィクトリアは天を見上げた。
スポットライトが焚かれる。
議場の中央のレイが照らされる。
中年女性の声がする。
「情報収集がばれたようですね」
「申し訳ありません」
「証拠は残してはいないでしょうね」
「勿論、時限式で爆発する術式を取り付けました。外してから10分後には跡形もなく消滅しているでしょう」
「それならば良いのですが、まさか足がつくような真似はしていないでしょうね」
「まさか、疑惑は抱かれたかもしれませんが、疑惑だけで私を捕まえることなどできませんよ。この件で私が捕まることはありません」
「そう、それならば良いのです。あなたはこれからのIMSを担う人材です。その意味が分からないとは思いませんが、一挙一動が我々を動かすことを忘れないでください」
「承知しています」
続いて、しわがれた男性の声がする。
「それで、新しい情報源はどうなっている」
「一応、私が構築した魔導生物を送り込んでいますが、あくまで一時的なものです。今回の件が片付くまで持つようには設計していますが、それ以上は難しいかと」
「それで構わない、もう十分管理局の航行部隊の情報は手に入った。貴殿を通じて地上本部の情報も手に入っている。十分だ」
「そう言って頂けると幸いです」
「管理局が相当我々を侮っていることがよくわかった。このままではサンボーンにあるCの心臓を手に入れに来るであろうな」
「このままいけばそうなるでしょうな」
「貴殿が進めている、サンボーン防衛計画はどうなっている」
「すでに幻想郷からの応援人員とは話を付けました。後は向こうが武力行使に出てくるかどうかを見極めるだけです」
「向こうはまずどのような手で来ると思う?」
「今回Cの心臓を収集している部隊の指揮官は親地球といってもいい人です。最初はアポイントを取って交渉に臨むでしょう」
「その時、我々の要求が通ると思うかね」
「彼らも組織人ですからね、恐らく彼らの上司は我々の要求を呑むことはないでしょう」
「非常に簡単な要求なのだがね」
「彼らのプライドがそれを許さないのでしょう。管理局上層部の腐敗っぷりは見ていて鼻をつまみたくなりますから」
「要求を呑むということは、辺境の管理外世界に屈するということか」
「そうですな、彼らには圧倒的武力という自信の裏付けがありますから。我々が言うことを聞くならともかく、逆は彼らの神経を逆撫でするでしょう。勝てる自信があるだけ、始末に負えまへん」
「厄介だな、よくもまあそんな組織相手に今まで交渉できていたものだ」
「相手が良かったものですから、それに相手に飴は与えていましたから。文句をつけられん様に」
「流石だな」
「恐縮です」
続いて若い女性の声がする。
「それでは、今回の作戦では勝つ自信はどれくらいなのでしょうか」
「今回の作戦に限って言えば、ほぼ我々が勝つでしょう。こちらは向こうの情報を持っていますが、向こうは何も知らないわけですから」
「その後は、我々は勝てるでしょうか」
「局地的な勝利は可能でしょう、ですが大局的な勝利となると首を横に振らざるを得ません」
「やはり、物資物量の差ですか」
「人員の差もあります。私が提出した次元世界の魔法の資料の中に
「それで魔導士を封じることが出来ますからね、我々の魔術はAMFの対象外なようですし、一方的な展開になりそうですね」
「問題はAMFを大量配備できるかどうかなんですがね、そのためには更なる研究が必要でしょう」
「そうですか、それまで引き延ばすことは可能ですか」
「難しいでしょう、先に管理局上層部の堪忍袋の緒が切れる方が早いでしょうな」
「随分と切れやすいように思えますが」
「最悪を想定すれば、そうなります」
「わかりました、我々も状況を見て判断することにします」
「お願いします」
野太い男性の声がする。
「引き続き情報収集とサンボーン防衛を進めてくれ。くれぐれも管理局に心臓を奪われるような真似はしないように」
「心得ております」
「それから、
「心得ております」
レイが頭を下げると、スポットライトが消される。
議場は闇と静寂の空間へと変わっていった。
7つ目のハートストーン発掘も順調に進んでいた。
ただし、ユーノは巨大ロボットに乗って発掘していたが。
「許せないんだよーーー!!! 貴様らみたいな惑星育ちのお坊ちゃんはーーー!!!」
そう言いながらユーノは巨大なスコップで地面を掘り返している。
(なんかあのロボット
あすかはその様子を眺めながら、もう読むことの出来ないファイブスター物語に思いを馳せていた。
「男の子って、好きだよね巨大ロボット」
すずかが呟く。
「せやなあ、あすかもずっと眺めてるし。男の子の味なんやろか」
はやてがしみじみと言う。
「それにしても、ユーノ君の行動は意味が分からないの」
なのはが呆れたように言う。
「なんで
アリサが呟く。
「さあ、わかんない。そう思うと第6次元文化圏って魔境だね」
アリシアの言葉に全員が頷く。
「でもレイってその第6次元文化圏のトップなんでしょ」
フェイトの言葉に全員黙り込む。
「レイくんか、本当にレイくんがあんなことをしたのかな」
すずかが俯き気味に言う。
「わからないわ、状況はアイツがやったってことになってるけど」
アリサもその口調は重い。
「でも、証拠がない、レイがやったっていう確実な証拠が」
アリシアの顔は暗い。
「うん、証拠は消えちゃったし、封印した方法も分からない。レイを追求する材料がないもの」
フェイトも目を伏せて言う。
「レイくんならこういう完全犯罪をやりかねん。でも、うちは信じたい。レイくんがやってないって」
そう言うはやての顔は暗かった。
「レイくん、今どうしているのかな……」
なのはが沈んだ声で言う。
そのまま全員黙り込むのだった。
「出てきたぞーーー!!!」
ユーノの声がスピーカー越しに響く。
「封印されていない! これもだ! 犯人はやはり手が出せないんだ!」
木の下でレイが瞑想している。
風が吹き、レイの髪がそよぐ。
レイの表情は一切動かない。
しかし、どこか苦しそうにも見える。
その苦しみを振り払おうとしているのか、レイは瞑想を続ける。
やがて、レイは一つ大きな溜息をつくと、目をゆっくりと開ける。
レイはペットボトルのミネラルウォーターを一気に喉へ流し込む。
再び溜息をつくと、再び瞑想を始めようとする。
「ここに居たのか」
そこへアフームが現れる。
「レイよ、何をそんなに苦しんでおる」
アフームの問いかけにレイは一呼吸置く。
「死が近づいていると思うと、怖くて怖くて仕方がないんや」
「それは誰であれ同じだと思うのじゃが」
「せやなあ、皆同じや。皆いずれ死ぬ。それなのに、俺は必死で足掻こうとしとる」
「皆同じじゃよ。皆生きたくて足掻いておる」
「せやなあ、皆同じや。皆生きたい。その当たり前のことが恐ろしゅうて敵わん!」
レイが叫ぶ。
「俺は何のためにこうして戦っとるんや? 管理局相手に大立ち回りして、Cの心臓を守ろうとしておる。それは世界のためでもあるし自分のためでもある。分からなくなってもうた。俺は世界のために戦っとるんか? 自分のために戦っとるんか? いろんな人を巻き込んだ挙句、結局は何のために戦っとるんか判らない状態になってしもうた。俺は、一体何をしとるんや?」
アフームは黙ってレイの慟哭を聞いていた。
「俺が恐れているものは何や? 俺の死か? 世界の崩壊か? 管理局との戦争か? 世間からの評価か? 何や、俺は一体何が怖いんや!? どうして俺はこんなに怖い思いをせんといかんのや!? ああ怖い! 原因不明の恐怖が俺を苛む! あらゆるものが怖い! 今すぐ逃げたい! どこか遠くへ! 何にも関係ないどこか遠くへ!」
レイは膝をつき、顔をうずめる。
アフームはそんなレイを優しく抱きかかえる。
「レイは、誰よりも頑張っておるよ。妾が知っておる。たった一人で巨大な敵に立ち向かっていることを、妾が知っておる。誰よりも孤独な戦いをしていることを、妾が知っておる。安心するがよい、妾が知っておる。レイの戦いを、その孤独な戦いを。世界中の誰もがその戦いを知らずとも、妾が知っておる」
レイはアフームの胸の中で嗚咽を漏らす。
「妾はレイの味方じゃ。何時如何なる時であろうと、妾はレイの味方であり続けよう。例え世界がレイの敵となったとしても、妾だけはレイの味方であり続けよう。だから安心して妾に全てを委ねるがよい。レイは甘えるのが下手じゃからな。妾には何時でも甘えてよいのじゃぞ」
アフームはレイを優しく抱きすくめる。
レイはアフームの胸の中で泣き崩れるのであった。
8個目のハートストーン発掘も順調であった。
森の民ヤムーに囲まれている以外は。
「「「「「「何この生物ーーー!!!」」」」」」
ユーノは気にせず発掘を続けている。
「言いましたよね、保管するときはバラバラにしておくようにって」
「何でしていないんですか?」
「「「「「「喋った!?」」」」」」」
森の民ヤムーは口々にハートストーンの保管方法について追及する。
「そう言われましても、上が保管について何も言ってこないんです。報告したのに」
ユーノは肩をすくめる。
すると森の民ヤムーの目の色が変わる。
「愚かな人間どもよ、いずれ貴様らには災いが降りかかるであろう」
「我々の忠告を無視したことを後悔するがいい」
「いずれ悪夢の神が目覚めるであろう」
「その時貴様らは真の邪悪というものを知るであろう」
森の民ヤムー達は口々に不吉なことを言っていきながら光と共に消滅していく。
「森の民ヤムー、その口は真実しか語らないという」
「「「「「「知ってるの!?」」」」」」
「僕は一体何を発掘しているんだ? この先の未来に一体何が待っているというんだ?」
ユーノは芝居がかった様子で大声を上げる。
「この仕事、ただでは終わらない気がする。おお神よ! 教え給え! この先僕たちに何が待ち受けているのか!」
大袈裟な振りで芝居を続けるユーノ。
そんなユーノをなのは達は微妙な目で見つめるのだった。
「教えて進ぜよう」
天から光が降り注ぎ、何かが降臨する。
それは手足の生えた魚の骨だった。
「「「「「「何かよくわかんないものが降臨してきたーーー!!!」」」」」」
「おお、カツオ神様が降臨なされた……」
ユーノは感動のあまり涙を流す。
「全ては預言の通りに、預言はつつがなく実行される」
そう言うとカツオ神はスケボーに乗って何処かへ去っていくのだった。
ユーノは五体投地でカツオ神を見送る。
なのは達はそれを何とも言えない目で見つめるのだった。
レイくんだって人間です、時には泣きたい時だってあります。
でもレイくんは強がりなので滅多な事では人前で涙を流す事なんてありません。
レイくんを襲う6年毎の死の運命が一体どのようなものなのか。
森の民ヤムーはそれについて語ることはないでしょう。
そしてカツオ神が告げた言葉の意味とは一体?
物語は進みます、否応なく、誰もが望まない方向へと。
感想、お返事待ってます。