魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ
「パパ、どうして戦争は無くならないの?」
「みんな自分の事が一番かわいいからさ」


第9話 カリフォルニア・コネクション

 スポットライトが焚かれる。

 議場中央のレイが照らされる。

 中年男性の声がする。

 

「やはり管理局はこちらの要求を拒否してきたか」

「ええ、最早武力衝突は避けられません」

「是非も無しか」

「我々の意見は平行線をたどっています。向こうは初めから交渉する気なんて無いのでしょう」

「向こうの現場担当とは友好な関係を築いてきたのだろう。どうだったね、向こうの様子は」

「かなり動揺していましたよ。泣き落としまで使ってきましたから」

「やはり管理局は上と下の意識乖離が激しいな」

「上層部が現場を軽視していることの証左です」

「それで数多くの悲劇が起こるわけだ」

「仰る通りです。今回もまたその一つでしょう」

 

 続いて老女の声がする。

 

「あなたはさほど動揺していないようですね」

「ええ、予想はしていましたから。今までそれに備えてきましたからね」

「あなたの友人が人質として作戦に加わるようですが」

「それも想定していました。既に奪還作戦を構築しています」

「……随分と用意がいいことですね」

「私に出来ることを全力で行っただけです」

「流石としか言いようがありません、これだけの働きがあれば、IMSの将来は安泰ですね」

「恐縮です。ですがこれだけの働きが出来たのも皆様の助力があってこそです」

 

 続いて、若い男性の声がする。

 

「今回の戦いの勝率はどれくらいかな」

「今回の戦いに限って言えば、十中八九勝てるでしょう。こちらは向こうの情報を確保しています。それに対し、向こうは我々がどのような作戦を構築してくるのかわからないまま行動することになるでしょう」

「一方的な戦いになる可能性が高い、そう言う訳だね」

「今回に限ってはですが」

「それ以降の戦いは分からないという訳か」

「ええ、AMF(アンチマギリングフィールド)の研究が急がれます」

「それがあれば有利になる。我が結社でも研究を進めているよ」

「有難う御座います」

「まさか、こんなことが切っ掛けで戦争になるなんてね」

「私としても非常に驚いています。もう少し粘り強く交渉してくるものだと思っていました。管理局上層部の短絡さを一応想定しておいて正解でした」

「君の準備の良さには舌を巻くよ」

「恐縮です」

 

 続いて中年女性の声がする。

 

「もう間もなく、奴が復活します。何が起こるか分かりません。何としても、Cの心臓を外部に出さないように。深きものども(Deep one’s)が狙っている可能性があります」

「重々承知しています。私にお任せください」

「あなたも気を付けてください。死の運命はまだあなたに取り付いています」

「心得ています」

 

 レイが頭を下げると、スポットライトが消される。

 辺りは闇と静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

 サンティアゴの街をクロノは歩いている。

 その目的はハートストーンの位置の割り出しと、敵地の視察である。

 町の外れで転移した後、クロノは徒歩でサンティアゴの街を歩き、ハートストーンの具体的な位置を求めている。

 数学的に考えれば複数の地点でハートストーンの方向が分かれば、そこから引くことが出来る直線の交点にハートストーンがあることが分かる。

 クロノは現在、その作業を行っている。

 サンティアゴは日本より緯度が低く、カリフォルニアの陽気が容赦なくクロノに突き刺さる。

 クロノは額の汗を手で拭うと、再び歩き始める。

 海鳴とは趣の異なる街に、一瞬だけクロノは任務を忘れてただ散歩を楽しんだりした。

 だが、すぐにこれが仕事であること、これから戦いが待っていることを思い出すと、流石に気分が沈んだ。

 やがて目的のサンボーン太平洋古代遺物研究所にたどり着く。

 海沿いに建てられたこの研究所は一見すると何の変哲もない建物のようであった。

 しかし、直にここが戦場になるのかと思うと、クロノはやるせない気持ちになった。

 鞄の中のレーダーのスイッチを押し、ハートストーンの情報を得る。

 その時だった、後から声をかけられる。

 

「おや、奇遇ですな、執務官殿」

 

 聞き覚えのある声に思わず振り向く。

 そこにはレイが手を振りながら立っていた。

 

「Hello 執務官殿。ここで会ったのも何かの縁、お茶していかへん?」

「あ、ああ」

 

 クロノは咄嗟のことに反応が遅れる。

 そして思わず気の抜けた返事をしてしまった。

 レイが案内した喫茶店は研究所から程近いところにある、品の良いこぢんまりとした店だった。

 

「執務官殿、何飲みます?」

「僕は、コーヒーを、いただこうかな」

「そうですか、じゃあ俺はアッサムを」

 

 レイが手際よく店員に注文する。

 クロノの気は張りつめていた。

 レイの目的が分からない、何よりここは敵地だ、そうしたことがクロノを緊張へと駆り立てる。

 

「別に取って食いやしませんよ」

 

 レイがクロノに言う。

 

「そんなことしたらあかん事ぐらいようわかっとります。無事に返しますんでご安心ください」

 

 それでもクロノの緊張は抜けなかった。

 クロノは深呼吸をするとレイに向かい合う。

 

「よく僕の居所が分かったな」

「研究所に近づく事ぐらい予想つきます。郊外で転送したんでしょう? お疲れかと思って」

「……レイ、君は僕たちをどう思う」

「どういう意味です?」

「地球と管理局との関係はこじれてしまった。君が地球の外交官として様々な要求をするのは分かる。その上でだ。レイ=金剛=ダイヤモンド個人としての意見が聞きたい」

 

 丁度、頼んでいたものがテーブルに置かれる。

 レイはアッサムで喉を潤すと、静かに口を開く。

 

「一言で言うと、哀れやな、と」

「哀れ、だと?」

「ええ、上層部は何も知らない事が哀れでしょうがない。現場の人達はそんな上司に振り回されて哀れでしょうがない」

「そうか、君にとって管理局は哀れな組織なんだな」

「そうですね、ま、将来の幹部候補の人に言う言葉やないですけど」

「……金言痛み入る」

「現場レベルでは嫌いやないですよ。それなりにいい関係を築けてきたと今でも思っとります。ただ、タイミングが悪かった」

「ユーノは後悔していたよ。もしもハートストーンを発掘していなければ地球との関係は悪くなることはなかったのに、と」

「彼の責任やないです。全ては巡り合わせが悪かったんです」

 

 クロノはコーヒーに口をつける。

 

「君はこの戦いの中でどういう位置づけに居るんだ?」

「一応、この戦いでは指揮官をやることになってます」

「君が指揮官か、恐ろしいな」

「負けるつもりはありまへんよ。この戦いも、これからも」

「……僕たちだって面子がある。管理局員としての面子が」

「なら、ぶつかり合うだけですな。僕にも負けられん理由がある」

「お互い組織に属すると大変だな」

「ええ、特に仮想敵だった場合は」

「……地球はそう思っていたのか」

「いつ管理されるか戦々恐々としとりました。その水際に立っとったんが僕なんですよ」

「……大した胆力だ」

「お褒めに預かり恐悦至極」

 

 お互い、カップに口をつける。

 

「これを飲み終わったら、もう僕たちは敵同士なんだな」

「そうですな、そう思うと感慨深いものですわ」

「……君とはこんな形で戦いたくなかった」

「管理局と戦争なんて真っ平御免ですわ」

「地球とはずっといい関係でいられると思ってた」

「いつ組み込まれるのかと思うと冷や冷やしとりました」

「いい友人と出会えたと思ってた」

「厄介な敵になると思うてました」

「……これで最後かもしれないんだな」

「最後にしては苦すぎる」

 

 クロノはカップの中身を飲み干す。

 

「……御馳走様」

「支払いは誘った方が払う、これギャルの鉄則」

「……君はギャルじゃないだろう」

 

 レイは肘をつき、掌で頬を支える。

 

「マッジで~」

「……失礼する」

「戦場で会いましょう」

 

 クロノは足早に店を出る。

 その顔は今にも泣きそうであった。

 

 

 

 

 

 海鳴、八神邸。

 シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リインフォース、エストはリンディと通信していた。

 

「我々がその仕事を受けなければ、主とあすかの無事が保証されないということか!」

 

 シグナムの怒号が響く。

 

「……ええ、上はそのつもりでいるようです」

「ふざけるな! そのような仕事、騎士の誇りの風上にも置けない!」

「私もそう思います。こんな作戦、私だって指揮したくはありません」

「なら!」

「ですが! 私は管理局員です。上からの指示は絶対なんです」

 

 今にも泣きそうなリンディに守護騎士たちは何も言えなくなる。

 

「作戦に参加すれば、命の保証はするんだよな」

 

 ヴィータが呟く。

 

「はい、それは保証します。はやてさんとあすかくんだけではありません。他の皆さんの命も保証します」

「それは、上からの指示かしら?」

 

 シャマルが問いかける」

 

「……私の独断です。そこまでは上は何も言ってきませんでした」

「我々が泥を被れば、安全は保障されるのだな」

 

 ザフィーラが確認する。

 

「はい、確実に保証します」

「今の管理局は信用できん、だが、参加せざるを得ないか」

 

 リインフォースがやれやれといったように言う。

 

「そうですね、我々には選択の余地がありません」

 

 エストが静かに言う。

 

「皆さんにはご迷惑をおかけします」

「全くだ、こんなことはこれきりにしてもらいたい」

「……ありがとうございます」

 

 シグナムの言葉に、リンディは頭を下げる。

 守護騎士たちは微妙な顔でモニターを眺めるのであった。

 

 

 

 

 

 サンボーン太平洋古代遺物研究所、会議室。

 ここに戦闘魔術師達と、研究所の幹部職員が集められていた。

 

「先程、管理局から最終通達が来ました。これで引き渡さなかったら、強硬手段に出るようです」

 

 レイが管理局からの通達を伝える。

 

「……とうとう来たか」

 

 所長が息をのむ。

 

「あれは集めてはいけないものだ。何としても死守してもらいたい」

「ええ、わかっています。そのために我々がいます」

「頼むよ、この戦いに人類の存亡がかかっているんだ」

「重々承知しています」

 

 会議室を無音が包む。

 

「……我々はそろそろ避難した方がいいかね」

「ええ、お願いします」

「よろしく頼むよ」

「ええ、お任せください」

 

 そう言うと職員たちは退室する。

 

「ではここからは、ブリーフィングに入ります」

 

 そういってレイはスライドを表示する。

 

 

 

 

 

 アースラ、ハートストーン保管室。

 ヴィクトリアがここに立っていた。

 集められた8つのハートストーンを眺めながら、微笑む。

 

「あれ、何しているんです」

 

 そこへユーノが入ってくる。

 

「ああ、ユーノ君、いえね、もうすぐ作戦が始まるでしょう。ここでモチベーションを高めているのよ」

「今回の作戦はみんな気乗りしていませんから」

「そうね、あまり気持ちのいい仕事ではないわね」

「……どうしたらいいんでしょうね、この気持ち」

「どんな気持ちなの」

「友達が政治に利用されて争い合う、そんな事件に巻き込まれた気持ちです」

「経験がないからわからないわ」

「でしょうね、滅多に起こることじゃないですよ」

「私からいえることは一つ、目的を見失ったら駄目よ」

「目的、ですか」

「ええ、今回の目的は何? それさえわかれば自然と何をすべきか見えてくるわ」

「……ありがとうございます、少し気分が晴れた気がします」

「どういたしまして、さ、作戦の準備をしましょう」

「はい」

 

 そういって2人は部屋を出る。

 ハートストーンは脈動を続けている。

 

 

 

 

 

 壮麗な宮殿の中にレイはいた。

 宮殿の奥の奥、その宮殿の主の部屋にレイはいた。

 

「成程、貴殿の不安は分かった」

 

 荘厳な男の声が響き渡る。

 

「奴の心臓を横から掻っ攫う者がいてもおかしくはない。ましてや、それが揃っているのだ。手を出さんとは限らん」

「私の懸念はそれだけではありません。そのような者がいたとして、その者が奴の復活に手を貸せば必ずや地球は大混乱に陥るでしょう」

「文明の崩壊は必至か」

「左様で、そうなれば、奴が次に目をつけるのは他の次元世界。その中には別の邪神が支配する領域もあるはず。そうなれば、戦争が起きることになるでしょう」

「我々だけでは抑える事は出来ないかもしれんな」

「それどころか、人類が滅亡する方が早いでしょう」

 

 両者は黙り込む。

 

「全ては未然に防がねばならず、奴はここで殺しておかねばならぬ」

「仰る通りです」

「そのために全力を尽くすのは当然だ。それが我々の使命だ」

「微力ながら僕もその活動に参加しています」

「貴殿のおかげで戦力は充実しつつある。今この時でなければ動く事は出来なかっただろう」

「恐縮です」

「奴の復活に合わせ、我々も動く。出来ることなら時空管理局も味方につけたかったが」

「恐らくそれは難しいでしょう。共通の敵が現れない限り」

「あくまで対岸の火事か、愚かなことだ」

「その愚かさに私は振り回され、このような事態に陥ったのです」

 

 両者は再び黙り込む。

 

「いよいよ作戦開始だな」

「はい」

「すぐにあの2人を派遣する。時空往還機に乗って行くから時間が多少かかると思うが」

「ありがとうございます。あのお2人がいれば100人力です」

「そう言ってくれるとあの2人も喜ぶ。存分にその力と知恵を振るうがよい」

「誠に有り難く」

 

 そう言うとレイは一礼して、退出する。

 交戦開始まで、24時間を切るところであった。




 ポプテピピック見ました?
 まさかクトゥルーがあんな大活躍するなんて、思ってもみませんでした。
 しかし、大川ぶくぶの書いたクトゥルーは原作に忠実なので僕は許します。
 それはそうと、物語はいよいよ佳境を迎えます。
 管理局とIMS、相容れない2つの組織がぶつかり合う。
 果たして、この事件にかかわる者たちの辿る運命とは?
 ヴィクトリアは何故ハートストーンを眺めていたのか?
 レイが訪れた宮殿とは一体?
 レイが最後に助けを求めたのは誰なのか?
 次回、避けられぬ戦いが幕を開ける。
 感想、お返事、待ってます。
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