魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ
 最後までゆっくりしていってね!!!


第11話 奴は何処へ行った?

 サンボーン太平洋古代遺物研究所の中をクロノ、ユーノ、ヴィクトリアは走っていく。

 やがて、一つの部屋の前で止まる。

 

「恐らく、この部屋の下にハートストーンがあるはずだ」

 

 ユーノがレーダーを眺めながら呟く。

 クロノとヴィクトリアが警戒しながら、ドアを開ける。

 その部屋には大量のモニターがあった。

 部屋の奥には回転椅子があり、誰かがモニターを眺めている。

 モニターに映っているのは、門前での戦いの様子、魔法少女と幻想少女の戦いの様子が映し出されている。

 

「よくぞここまで来たな」

 

 椅子が回転し、座っている者の姿が露わになる。

 座っていたのはコアラの着ぐるみを着たアフームだ。

 

「アフーム……」

「ハートストーンは何処にある!」

 

 クロノの声を受け、アフームは黙って下を指さす。

 クロノたちは下を見る、しかし床には入り口らしきものは見当たらなかった。

 

「分からぬじゃろう? 貴様らが求めるものは厳重に管理してある。アリの子一匹入る隙間もなくな」

「恐らく、そこにある機械にパスワードを入力するタイプの入り口じゃないかな?」

 

 ユーノは己の推理を述べる。

 

「ご名答。ちなみに妾はそのパスワードを知らぬ。レイならば知っておるがな」

「そのレイは何処にいる」

「さあ? 答える義理は無いのでな」

 

 クロノの問いをさらりとアフームは流す。

 

「渡すつもりなど欠片も無いようだな!」

「当然じゃろう、そのために妾達は備えてきたのじゃから」

「……僕の砲撃でぶち抜けるか?」

「そんなことはさせぬよ」

 

 アフームの周りに6色のエネルギー体が現れる。

 

「その前に妾が貴様らを潰す」

 

 

 

 

 

 同時刻、アースラブリッジ。

 リンディ、プレシア、シャマルが事の成り行きを見守っていた。

 

「徹底的にいやらしい手を打ってくるわね、レイくんは」

 

 プレシアが呟く。

 

「ええ、こちらの人員も時間も奪うようなやり方です。たどり着くまでにずいぶん時間を使っている。相手もSランク相当の使い手ばかりです。こちらの人員がわずかに上回ってなければ厳しい状況でしたね」

 

 シャマルがレイの策を分析する。

 

「でも何か変ね、この策は時間稼ぎを目的にしているみたい」

「私もそう思います。レイくんがこれだけで終わるとは思えません。現にレイくんが姿を見せていませんから」

 

 プレシアとシャマルの言う通りと言わんばかりにそれぞれの戦いは膠着している。

 一つとして終わった戦いがないのだ。

 

「姿を見せないレイくん、一体何が目的なの?」

 

 リンディが思案する様に手を組み、目を閉じる。

 

「レイくんの目的はハートストーンを集めないようにすること。ならば、今の状況ですることは何?」

「時間を稼いでまでしたいこと、何かしら?」

 

 誰もが頭を抱える。

 

「考えられるのは何らかの妨害工作。そのために時間を必要としているとか」

 

 シャマルが呟く。

 

「もしくは私たちの目をくぎ付けにすること。この状況から離れられないようにすること」

 

 プレシアが呟く。

 

「こうして私達を思考させることこそレイくんの策かもしれません」

 

 リンディが顔を上げる。

 

「有り得るわね、あの子性格悪いから」

 

 プレシアがその意見に賛成する。

 

「でも何もしてこないってことはないと思いますよ」

 

 シャマルが意見する。

 

「そうですね、気を付けましょう。レイくんが何をしてきてもいいように」

 

 3人が注意深くモニターを眺める。

 モニターには各所での戦いが映し出されている。

 1つとして決着がついた様子はない。

 そして、いずれにもレイは映っていない。

 

 

 

 

 

 門前ではレイの兄弟子達によってザフィーラが抑えられていた。

 

「くっ、厄介な」

「それが我々の仕事なんでね」

「悪いがおとなしくしていてくれよ」

 

 ヴィータと櫻子が互いの得物をぶつけ合う。

 

「流石は守護騎士、といったところやろか」

「アンタも流石はレイの母親だな」

 

 ヴィータは距離をとると、カートリッジを切る。

 

「テートリヒ・シュラーク!」

 

 しかし櫻子はヴィータの攻撃を後ろに飛んで躱すと、そのまま小手に棒を打ち込む。

 

「ぐっ!」

 

 ヴィータが顔をしかめる。

 

「その攻撃は隙が多い。うちには通じひんで」

「くそっ!」

 

 シグナムとデビッドもまた激しい打ち合いをしていた。

 何合も打ち合いが続く。

 やがて互いに距離をとる。

 

「流石はレイの父、カートリッジを切る隙すら与えんか!」

「それは厄介なのでね、悪いがそれは切らせないよ」

 

 デビッドが再び打ちかかる。

 シグナムはそれをひたすら受ける。

 変幻自在の棒の打撃にシグナムは苦しみながらもなんとか防いでいた。

 

「そらっ!」

「ぐっ!」

 

 デビッドの突きがシグナムの鳩尾に吸い込まれる。

 シグナムは膝をつく。

 

「手ごたえが薄い、バリアジャケットと言うのは本当に厄介だね」

「その防御を突き抜けておきながら……!」

 

 シグナムは立ち上がると、デビッドに切りかかる。

 デビッドはそれを容易く受け止めるのだった。

 

 

 

 

 

 あすかが右手のダッカスで切りかかるも、妖夢はそれを白楼剣で防ぐ。

 あすかが左手のバッシュで攻撃を繰り出す前に妖夢の楼観剣があすかに襲い掛かる。

 あすかは思わず後ろに飛んで、回避する。

 そこへ、妖夢が楼観剣で突きを繰り出す。

 あすかはなんとかそれをダッカスで振り払うと、バッシュで切りかかる。

 だが、それも白楼剣で防がれてしまう。

 先程からあすかは攻めあぐねていた。

 それがあすかの焦りを加速させる。

 

「あなたの剣には迷いがある」

 

 妖夢が突然言葉を発する。

 

「あなたは今の任務を疑いながら剣を振っている。それでは私に勝つ事は出来ません」

「黙れ!」

「私も非才浅学の身ですが、今のあなたは見るに堪えない。さっさと降伏したらどうです。別に命はとりませんよ。レイさんとはそういう約束ですから」

「黙れ!」

「先程からそれしか言えないのですか。正直がっかりです。レイさんの友人で剣の道を行くものと聞いていましたから期待していたのですが」

「黙れ」

「その齢では十分練られた剣でしょう。ですが、今のあなたには決定的に足りないものがある。それは剣を振るう理由です。今のあなたの剣には何も籠っていない。空虚な剣です」

 

 あすかは何も言うことが出来ず、ただ立ちすくむことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「ブラッディダガー!」

 

 はやてが赤い短剣を咲夜に向かって放つ。

 咲夜はそれをさも当然といった風に避け、ナイフを投げ返す。

 

「パンツァーシルト!」

 

 はやては盾でそれを防ぐ。

 その隙に、咲夜に背後に周られる。

 

「隙だらけよ」

 

 咲夜がナイフを投擲する。

 

「っ! パンツァーシルト!」

 

 はやては何とかそれを防ぐ。

 

 しかし、視界に咲夜の姿は無い。

 

「っ! 何処や!」

「ここよ」

 

 咲夜はいつの間にかはやての頭上にいた。

 

「幻符『殺人ドール』」

「パンツァーシルト!」

 

 放たれるナイフの弾幕に、はやては堪えることしか出来ない。

 

「無様ね、回避出来ないからそうやって亀みたいに籠っていることしか出来ないのよ」

「何やと!」

「事実じゃない。それにあなたは私には勝てないわ。私は時を支配することが出来るのよ」

 

 咲夜の言葉にはやてははっとする。

 今までの瞬間移動の種が割れたと同時に、自分では彼女に対抗できる方法が分からなかったからだ。

 

「分かったらとっとと降参しなさい。別に命を奪うつもりはないわ」

「……本当に時を支配しとるんか? 別の能力ってことはないやろ?」

「私は嘘をつくつもりはないわ。でも信じられないのならこのまま戦い続ける? 私は別にいいわ。遊んであげる」

「調子に、乗るな!」

 

 それでもはやてが出来ることはなかった。

 

 

 

 

 

 すずかは襲い掛かる数多の鈴仙に苦戦していた。

 右や左から弾幕を撃ってくる鈴仙に、何とか対処しようとするも、何発か喰らってしまう。

 倒れ込むすずかを見て鈴仙はばつの悪そうな顔をする。

 

「これ、倒れるまでやるの? 正直いじめみたいでやる気無くすわ」

 

 鈴仙はぼそりと呟く。

 すずかはなおも立ち上がろうとする。

 

「見ていられないわ。そこまでして戦う理由って何?」

「……レイくんがどうしてこんなことをするのか、確かめたいから」

「最初からあの子は目的を話してるわよ。心臓の欠片を渡さない。それだけよ」

「それだけのためにこんな大騒動を起こしたの!?」

「それだけ、ね。あなた達はあれが何なのか全く判ってないのね」

「どういうこと!?」

「あなた達が真実を知る必要は無いわ。もっとも私も全てを知っているわけではないのだけれど」

 

 鈴仙はルナティックガンをすずかに向ける。

 

「大人しくしていれば、これ以上危害は加えないわ」

「ふざけないで!」

 

 すずかは再び立ち上がる。

 鈴仙はすずかをかわいそうなものを見る目で眺めた。

 

 

 

 

 

 アリサは地に伏していた。

 先程から早苗の放つ有り得ない機動を描く弾幕に次々とぶつかってしまったのである。

 

「なによ、これ、有り得ないわ」

「ふふん、これが私の能力『奇跡を起こす程度の能力』です。上手い具合に奇跡が起きているみたいですねえ」

「奇跡ですって!? そんなアホな能力に私は負けたの!?」

「それが事実です。神の奇跡の前にひれ伏しなさい」

「これじゃ、アイツを1発殴ることすらできないじゃない!」

「1発殴ってどうするつもりなんです? 争いを止めるよう説得するんですか? 残念ですが無駄ですよ。あの子は止まりません。奇跡でも起きない限りね」

「その奇跡を起こしなさいよ! アンタ、何でレイに手を貸すのよ! 戦争を起こすような奴に!」

「別に私は管理局と地球が戦争になろうが関係ありませんし。その辺りはレイさんが何とかするでしょう。問題は心臓の欠片を奪われることなんですよ。それが悪人の手に渡ることは何としても阻止しなければなりません」

「私達が悪人ってわけ!?」

「あなたたち管理局が全員善人なら話は早かったんですがねえ。レイさんは最初から管理局を信用していなかったみたいですよ。現に心臓の欠片は全て集まろうとしています。そのような状況で欠片を渡す事は出来ませんよ」

「あれは、一体何なのよ」

「魔王の心臓です。少なくとも私はそう聞いています。それが正しいかどうかは分かりませんが」

 

 早苗はお祓い棒をアリサに向ける。

 

「あれが目覚めるのは私達にとって死活問題なんです。残念ですが、ここでゲームオーバーになってもらいますよ。ギブアップは受け付けますよ」

「誰がするか!」

 

 アリサは立ち上がる。

 早苗はにっと笑うと、再び空に舞い上がるのだった。

 

 

 

 

 

 アリシアは肩で息をしていた。

 先程から文に攻撃を当てることが出来ず、撮影されてばかりいたのである。

 時折、放たれるスペルカードもアリシアを苦しめていた。

 

「肩で息をし、頬を紅潮させる少女。いい構図ですねえ」

「ふざけないで! あなたさっきから何なの!? 撮影ばっかりして!」

「撮影も何も、私は新聞記者ですから。まあ、今回の撮影は趣味のようなものなんですが」

「あなた、本気で戦っていないの!?」

「私は何時でも本気ですよ? 本気で取材をし、本気で撮影します。別に私は貴方を攻撃する理由がありませんし。あなたが私を倒せばここから解放されるんです。いい加減当てたらどうです?」

「言われなくても!」

 

 アリシアは大量の電撃を放つ。

 しかし、文はそれを一瞥するだけで躱してしまう。

 そこへ、鎌の一撃が文に襲い掛かる。

 文はそれを体を逸らすことで躱し、一枚写真を撮る。

 

「遅い、遅いんですよ。私に攻撃を当てたくばもっと速くなって下さい」

「くっ!」

 

 アリシアはグレイブをぎゅっと握ると、再び文へと向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 フェイトは追い詰められていた。

 魔理沙の放つ弾幕を避け切ることが出来ず、あまつさえ自分の攻撃を当てることが出来ないのである。

 

「おいおい、もうへばったのか? もうちょっと骨があると思ったんだけどなあ」

「くっ! 舐めないで!」

「そう言われても、お前、弾幕ごっこじゃとっくにアウトだぜ? 気合で堪えているみたいだが、それもいつまで続くか分からん。悪いことは言わないから降参したらどうだ?」

「ふざけないで! 私達はレイに確かめたいことがある! だからあなたを倒して前に進む!」

「それが出来ればの話だけどな。今のお前じゃ無理だ。覚悟を決めたあいつの死元にも及ばないよ。それに何を確かめる気だ? あいつは目的を言っているぜ、心臓の欠片を渡さないってな」

「それだけなの? 本当にそれだけのためにこんな事態を招いたの?」

「さあ、私はあいつじゃないから分からないが、少なくとも色々な理由で異変を起こす奴を私は知っているからな、本当にそれだけかもしれないぜ?」

「それを確かめるためにも、あなたを倒す!」

「やってみな、私はそう簡単に倒せる手合いじゃないぜ」

 

 魔理沙が加速する。

 フェイトもそれに付いていくが、明らかに差が開きつつあった。

 

 

 

 

 

 なのはは霊夢に滅多打ちにされていた。

 自慢の防御力も霊夢の戦闘力の前には意味をなさなかった。

 砲撃や魔力弾を当てることすら敵わず、いとも容易く懐に入られ、お祓い棒で滅多打ちにされる。

 霊夢の蹴りでなのはは吹き飛ばされる。

 

「もういい加減諦めなさい。あんたじゃ私には勝てないわ」

「それでも、それでもあきらめる事は出来ないの!」

「物分かりの悪い子ね、そんなにあいつに会いたいの?」

「だって、レイくんがこんなことするとは思えない! 管理局と争うなんて間違ってる!」

「悪いけど、あんた達と戦うよう話を持ってきたのは他でもないあいつよ」

「嘘! レイくんがそんなことするはずが無い!」

「話が通じないわね。あいつにはこうせざるを得ない理由があるのよ」

「その理由って何!?」

「面倒臭いから聞き流してたわ、どうでもいいもの」

 

 霊夢の言葉になのはは絶句する。

 

「私のすべきことはこの異変が拡大しないようにあんた達の邪魔をすること。それだけ分かってればいいわ」

「レイくんは、何のために戦っているの!?」

「そんなの私が知るわけないじゃない」

 

 なのははレイジングハートを構える。

 一方の霊夢はただ自然体で立っているだけだった。

 

 

 

 

 

 アースラに忍び寄る一つの小さな影がある。

 それは人間大の柱時計、時空往還機である。

 内部の空間にはレイと3体のゆっくりがいる。

 

「ゆっくりスタサファに反応は無し。ゆっくりサニーとゆっくりルナチャ能力発動!」

「「ゆっ!」」

 

 時空往還機の姿が消え、駆動音も消える。

 ステルス機と化した時空往還機はアースラ艦内へと侵入する。

 気密性の高い壁をすり抜けるように時空往還機はアースラ艦内に侵入していく。

 何かを探すかの様に時空往還機はアースラ艦内を移動していく。

 やがてある場所へとたどり着く。

 そこはハートストーン保管室だ。

 

「さて、ハートストーンは……」

 

 時空往還機がぐるりと回転し、保管室の様子を窺う。

 

「!?」

 

 その様子にレイは驚く。

 ハートストーンが一つも無いのだ。

 

「まさか……」

 

 レイは思考の海に潜る。

 ぶつぶつと何かを呟きながら俯く。

 やがて、閃いたのか、顔を上げる。

 

「不味い、これは不味いで」

 

 レイは帽子を開くと新たなゆっくりを召喚する。

 

「ゆっくり小町! 最短距離で戻る! こことサンボーンの距離を縮めろ!」

「ゆっ!」

 

 そしてレイは全速力で時空往還機を動かすのだった。




 衝撃の告白から一日経ちましたが、皆さんいかがお過ごしですか?
 戦いは激化し、レイの策が冴え渡ります。
 しかし、どうやら完全にレイの想定内とはいかなかったようです。
 果たして、失われたハートストーンはどこへ行ったのでしょう?
 そしてそれぞれの戦いの行方は?
 待て次回!

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