魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ
 全裸ブリッジ。


第21話 記者会見の女神

「古賀さん、この動画、世界中に一斉に配信されたということなんですけど、悪戯という可能性はないのでしょうか」

「あのですね、それについて政府と国連が時空管理局との関係について公式発表したでしょう。それ踏まえたうえでただの悪戯だったら、相当性質悪いですよ」

「そうですね、動画の中でミスターNを名乗る人物が殺害を告白しています。これがただの悪戯だとすると、本当に酷い話です」

「それで殺された少年なんですが、情報によりますと、IMS、地球側から外交を担当していたそうなんです。何でも天才少年として有名だったとか」

「ねえ、博士号持っていたんですってね」

「ええ、物理学、数学、魔術の博士号を持っていたそうで。それで彼は管理局との交渉を担っていたと」

 

 朝の情報番組では、昨日公開されたミスターNの動画について話していた。

 殺された少年の話題になったとき、恭也は彼がレイじゃないかという不安に駆られた。

 

「それで、IMSから正式に文書が発表されました。IMSの存在理念と活動内容についての報告。そして管理局との関係についても記されています。内容を要約しますと、IMS、国際魔術結社は人間社会の近代化、現代化に押されることで存在意義を失いつつある魔術を保護し、伝承していくという目的で設立された組織です。現在は国連の一部門として秘密裏に活動を続けてきましたが、先の動画でその存在が公表されたために今回発表を行ったということになります」

「昨日の集団ヒステリーでもそれを防ぐために活動してたらしいじゃないですか」

「はい、文書の中では集団ヒステリーについても記述があり、原因は古代の邪神の復活に伴う現象だと述べています」

「正直まだ信じられないですね。こんな話が実際に起こっているなんて」

「そうですよね、普通なら質の悪い悪戯で終わるんでしょうけど、国連の発表ですし、ねえ」

「更に、時空管理局ですか? 地球外の組織も出てくるし、まるでSFの世界ですね」

「しかし、これらは実際の出来事であり、実在する組織であることは間違いないようです」

 

 情報番組ではコメンテーター達が口々に事件について述べている。

 

「今わかっていることはこれだけですか?」

「はい、現在公表されている情報は以上です。国連からの文書と例の動画だけです」

「ちょっと正直話が急すぎて俺ついていけねえな」

「正直、私もです」

「だろ? 急に人類が滅ぶなんて言われても困るし、おまけに新しい組織が登場するしで、これからどうなってしまうんでしょ?」

 

 恭也はぼんやりとテレビを眺める。

 テレビの内容は正直頭に入ってこない。

 レイが死んだのではないか、そのことがぐるぐると頭の中を回り続ける。

 レイは本当に死んだのだろうか、それならばレイはどのような死に方をしたのだろうか。

 かつて兄貴の誓いを契った少年の眼差しが恭也の脳裏に浮かぶ。

 

「レイ、お前は……」

 

 恭也はソファにもたれかかり、天井を仰ぐ。

 

「えーと、すいません。唯今入ってきた情報によりますと、今回の件で事件解決に向けて動いている神々からの記者会見が行われるそうです。場所は次元世界で行われるそうですが、地球にも中継するとのことだそうです。繰り返しお伝えします……」

 

 

 

 

 

 時空管理局本局に設けられた会見場には所狭しと記者たちが詰めかけていた。

 誰もがこの前代未聞の記者会見を今か今かと待ち侘びている。

 地球にも公開されているであろうこの様子に誰もが注目していた。

 既に司会と見られる人物が準備をしている。

 間もなく会見開始予定の時刻になろうとしている。

 そして、会見開始時刻になった。

 その瞬間、ドアが開き、音楽が流れ始める。

 Emerson Lake & Palmarの『Karn Evel 9 1st Impression-Part2』だ。

 それと同時に7人の女性が入ってくる。

 ドレス姿の彼女達はアフーム=ザーと秩序六神である。

 彼女たちは一列に横並びになると、アフーム=ザーが手に持っていたマイクを構える。

 そしてアフーム=ザーは歌いだす。

 取材陣たちは何が起こっているのか一切理解できず、ただ固まっている。

 秩序六神はコーラスを務めているのか、時折マイクを構えては、何やら声を出す。

 5分近い謎の演目が終わると、彼女達は何事もなかったかのように、用意された席に座る。

 

((((((何だったの今の……))))))

 

 司会が気を取り直すように咳払いをする。

 

「えー、それでは、記者会見の方を始めさせていただきます」

 

 アフーム=ザーと秩序六神が立ち上がる。

 アフーム=ザーがマイクを持つと、口を開く。

 

「この度は、食品衛生法違反で世間を騒がせましたこと、誠に申し訳なく思います」

((((((いや、これ謝罪会見じゃないでしょ!?))))))

「冗談は置いておいて、この度は我々の開いた会見にお集まりいただきありがとうございますとでも言うと思ったか! 貴様ら人類が滅びたくなければ、我々の言うことをよく聞くのじゃな! ヴァーハッハッハッハ!」

((((((急に悪人面になったー!?))))))

 

 急変するテンションについていけない記者達。

 それを無視して会見は続く。

 

「妾の名はアフーム=ザーと申す。そして、隣に並んでいるのが妾の母上達である」

「クトゥグァだ」

「クトゥドェだ」

「クトゥクヒだ」

「クトゥシャだ」

「クトゥピェだ」

「クトゥジィだ」

 

 一同は自己紹介しながら席に座る。

 

「さて、皆の者は我々が本当に神なのか疑っておるのじゃろう? あの動画があるとはいえ、我々を疑う声が出てもおかしくはない。そこで、こんなものを用意した!」

 

 アフーム=ザーの声と共に、7つのバランスボールが用意される。

 

「これから皆の者には奇跡をご覧頂こう」

 

 そう言うと、いつの間にか、イルカの着ぐるみを着ているアフーム=ザーと秩序六神がバランスボールの前に立つ。

 そして、彼女達は一斉に腹這いになりながら、バランスボールの上に乗り続ける。

 そのまま彼女達は歯磨きをする。

 バランスボールの周りには、バーナーや画鋲が敷き詰められ、危険地帯となる。

 その状態で彼女達はバランスを取りながら歯磨きを続ける。

 

((((((いや、何コレ!?))))))

 

 誰もが困惑する中、一人声を上げる記者が現れる。

 

「ぬう、これは、『極度のプレッシャーの中歯磨きをするイルカの奇跡』!」

((((((知ってるの!?))))))

「知っているのか! ライデン!」

「うむ、聞いたことがある。かつて病気の妻を持つ男が神に祈りをささげていた時、夢の中に神が現れ、明日海に行けというお告げを為された。お告げの通りに男が海へ向かうと、切り立った岩の上でサメに囲まれながら歯磨きをするイルカが現れたという。男はイルカを自慢の拳法で助け出すと、お礼に真珠を貰った。男はその真珠を妻に渡すと、たちまちの内に病気が快復したという伝説が、虚空教団に伝わっている」

((((((マジで!?))))))

「恐らくこれはその時の奇跡の再現! 神自らがその御身を現したという証明に他ならぬ!」

 

 雷電と呼ばれた筋骨隆々の記者は涙を流し、感動している。

 

「ほう、貴様、名を何と申す?」

 

 クトゥジィが声をかける。

 

「はっ、ヘキサグラム・タイムズのライデンと申します。普段はスポーツ記事を担当しております」

((((((何でスポーツ記者が来るんだよ!?))))))

「成程、信徒であったか。見事な洞察力だ。褒めて遣わす」

「ははーっ!」

 

 ライデンは平伏する。

 その様子に他の記者達はついていけない。

 

「さて、これくらいでいいじゃろう。これで妾達が神であることは分かってくれたであろう」

((((((分かんねーよ!))))))

 

 イルカの着ぐるみのまま、アフーム=ザーと秩序六神は席に座る。

 

「恐らく、皆が気になっているであろう事柄は、先の動画の件じゃろう? あの動画が一体何者が発信し、どのような目的で発信したのか。皆の興味はそこに尽きると思う」

 

 動画の話が出てくると、記者たちは一斉に身構えた。

 

「あの動画で語られていることは、非常に業腹ものじゃが全て事実じゃ。奴の言う通り、このままでは人類は滅んでしまうであろう」

 

 会場内はざわつき始める。

 

「あの動画の発信者である這い寄る混沌は妾達の敵対者である。そして、彼奴の目的は人類に混乱と混沌をもたらすこと。奴の目的は貴様ら人類が慌てふためいている時点で達成されておるのじゃ」

 

 場内のざわつきは収まらない。

 

「だが、貴様らは幸運である。何故なら妾達が復活しておるのじゃからな。混沌を破壊し、秩序を創造する我らがいる以上、彼奴に勝手な真似はさせん」

 

 アフーム=ザーは胸を張る。

 

「とはいえ、妾達も未だその力は不完全である。全力を出せるとは言い難い。そこで皆の者に頼みがある。妾達の勝利を祈って欲しい。その祈りが妾達の力となり、彼奴等を打ち砕く力となろう。我ら神の力の源は信仰にある。それはすなわち、どれだけ知られているかの一言に尽きる。今回の一件で貴様らは邪神の存在を知ったであろう。それは奴等へ力を供給することになる。奴らは畏れられることで力を蓄える。だが、逆に妾達の存在を知り、妾達に祈れば、その力は妾達に向けられる」

 

 アフーム=ザーは突然立ち上がる。

 

「故に祈れ! 彼奴らを滅ぼせと妾達に祈れ! 虚空教団だけでは足りぬ! 多くの者達の祈りが要る! 貴様ら人類ではどうしようもないこの悲劇を覆してと祈るがいい! さすれば、妾達が貴様らに代わり彼奴ら邪神を滅ぼしてくれよう」

 

 秩序六神も立ち上がる。

 

「我らに祈りを!」

「「「「「「我らに祈りを!」」」」」」

 

 7柱はガッツポーズをしながら、スローガンを掲げる。

 その様子にカメラのフラッシュが焚かれる。

 フラッシュを焚かれながら、7柱は手をばたばたとシンクロさせながら謎のダンスを踊りだす。

 ひとしきり撮影が終わると、司会が口を開く。

 

「それではただ今から質疑応答の時間といたします。質問のある方は手を上げてから指名いたします」

 

 数名の記者が手を上げる。

 司会が一人を指し示す。

 

「それでは、そちらの方」

「はい、クラナガン・ポストのビショップです。地球との外交関係についてはどうだったのでしょうか?」

「知らぬ」

 

 アフーム=ザーは真顔で答える。

 

「そういうのは担当者の仕事であって、妾達の仕事ではない。ただ、これは外交官本人から聞いた話なのじゃが、概ね良好ではあったそうじゃ。まあ詳しいことは機密にもかかわるじゃろうし、ほとんど話してくれんかったがな」

 

 ビショップ記者は座り、新たに記者たちが手を上げる。

 

「では、そちらの方」

「はい、ミッドチルダ・ニュースのディノです。動画を投稿したとされるミスターNとはどのような関係なのでしょうか?」

「不倶戴天の敵じゃよ。奴は4億年前、母上達に狂気を植え付けおった!」

 

 その言葉にどよめきが起きる。

 それは、4億年という数字のせいかは分からないが。

 

「妾が生まれたのはその直後。故に妾は生まれた時から狂気に侵されておった。奴のせいで多くの時間を失っておったのじゃ。妾が正気に戻ったのが今から6年前になる。母上達は2年位前じゃったか。本当にごく最近まで妾達は奴に植え付けられた狂気に苦しんでいたのじゃ。どれほど苦しい日々じゃったか、貴様らには想像もつかんじゃろう」

 

 アフーム=ザーの言葉に、誰もが口を閉ざす。

 

「ともかく、奴は我々の憎き敵じゃ。しかし、強力な神であることもまた事実じゃがな」

 

 ディノ記者は座り、また記者たちが手を上げる。

 次の記者は先程の筋骨隆々の大男、ライデンだ。

 

「ヘキサグラム・タイムズのライデンです。今回殺された少年ですが、公式発表が無いので独自に集めた情報によりますと、もしや殺された少年というのは我らがキング。キング・オブ・ハジケリストその方なのではないのでしょうか!」

 

 その質問にアフーム=ザーは一瞬躊躇うような素振りをする。

 アフーム=ザーは一息つくと、意を決したように口を開く。

 

「左様、先の戦いで這い寄る混沌、いやミスターNじゃったか、彼奴に殺されたのは紛れもなくキング・オブ・ハジケリスト、レイ=金剛=ダイヤモンドじゃよ」

「何と……」

 

 ライデンは絶句する。

 

「此度の戦いでレイは我々のブレーンを務めておった。妾達はレイの指示通りに動くことで、辛くも勝利を得ることが出来た。レイの指揮下に加わったのは我ら神々に、レイの両親、神々に認められた英雄2人、それから管理局の巡洋艦丸々一つじゃ。これだけの面々の頭脳となったのじゃぞ、並大抵の頭脳と精神が無ければ出来る仕事ではない。それをレイはやり切った。惚れ惚れする見事な仕事っぷりじゃったよ」

 

 アフーム=ザーは高らかに歌うようにレイの業績を語りだす。

 しかし、すぐに沈んだ顔になる。

 

「奴さえ来なければ、奴がレイを殺さなければ、ハッピーエンドになるはずやったのに。それ以前の管理局とIMSとのいざこざもレイがいれば丸く収まるはずじゃったのに」

 

 アフーム=ザーは天井を仰ぐ。

 

「何故レイが殺されなければならぬのじゃ。レイがいなければ今までうまくまとまっていた事案がおかしなことになるぞ。そうか、奴はそれが目的か。レイがいなくなったことでこじれ始めるであろう管理局と地球の外交関係を肴に酒を飲む気じゃな。あの性悪め」

 

 アフーム=ザーの顔は醜く歪む。

 

「それだけではない、レイと言うブレーンを失った妾達は嘗ての様に隙が生まれておる。そこを突かれてしまえば、嘗ての狂気の日々に逆戻りじゃ。レイ亡き今、妾達の狂気を解放できる者はいない。最悪じゃ」

 

 アフーム=ザーが再び天を仰ぎ、それから前を向く。

 

「貴様らにも伝わったかの。妾達が憂慮していることが。たった一人の少年の死が、これだけの影響を与えておるのじゃ。貴様らには関係ないとは言わせんぞ。既に貴様らは巻き込まれておるのじゃ。この悪意の奔流にな」

 

 アフーム=ザーの顔は真剣そのものではあったが、その目に光は宿っていなかった。




 記者会見によって信仰を高めようとする神々。
 その間にも這い寄る混沌による邪悪な計画は進んでいく。
 果たして、この事件が辿る結末とは!?
 次回、世界の中心で奴が産声を上げる。
 感想、お返事待ってます。
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