魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~   作:ショーン=フレッチャー

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 前回のあらすじ
 NOカレー、NOライフ。


第24話 さらば青春の光

 アースラのモニターにレイの姿が大きく映る。

 

「な、何でアイツが生きているんだ?」

 

 クロノが予想外の事態に思わずうろたえる。

 それと同時に、アースラは混乱に包まれる。

 モニターに映っているのは死んだはずのレイである。

 武装隊の一人が慌ててブリッジに駆け込んでくる。

 

「霊安室確認しました! レイ=金剛=ダイヤモンドの遺体がありません!」

 

 アースラにどよめきが広がる。

 

「どういう、ことなの?」

 

 リンディが思わず呟く。

 

「レイくんの遺体が消えて、レイくんが現れた? え?」

 

 フェイトも事態を飲み込めずにいた。

 

「……預言だ。預言の3行目」

 

 ユーノが思い出すように呟く。

 

「空腹の神と解放者にして皇帝なる者一度死して再び蘇る。預言は成就したんだ」

 

 ユーノの言葉を受け、アースラクルーのどよめきが更に強まる。

 

「じゃあ、あれって」

「本物の」

「レイくんってこと!?」

 

 アリサ、すずか、なのはが驚愕の表情に顔を染める。

 

「まさか、でも、生き返りなんて……」

 

 はやてが頭を信じられないものを見る目でモニターを見つめる。

 

「いや、あれは間違いなく私達の息子だ!」

 

 デビッドが断言する。

 

「魔力の量、質、以前よりも上がっとる、黄泉を見てさらに強くなったか!」

 

 櫻子が歓喜で顔をほころばせる。

 2人共涙があふれていた。

 

 

 

 

 

 ミスターNが実況を続けるビルの屋上でミスターNとレイが対峙していた。

 秩序六神も復活したレイに意識を向けている。

 ミスターNとレイは互いに不敵な態度を崩さない。

 先に口を開いたのはミスターNだった。

 

「亡霊が、君1人加わったところで何ができる?」

「妊娠と出産と授乳以外なら」

「そうじゃない、そうじゃないんだよ」

 

 ミスターNはレイのボケに頭を振る。

 

「這い寄る混沌、貴様の目的は大体わかった。あれやろ、アフーム=ザーの封印が外れたので、旧支配者を復活させましょう、ってところやろ」

「うん、そうだね」

「旧支配者の封印は今後次々と解けられていくやろう、すでに大元が外れておるんやからなあ」

 

 レイは一度目を伏せる。

 しかし、すぐにミスターNを睨みつける。

 

「せやけど、誰が貴様の思い通りに行くか。出てくる旧支配者は片っ端から潰していく!」

「君に出来るのかい?」

 

 ミスターNは嘲る様な調子でレイを煽る。

 しかしレイはそれを意に介する素振りは見せない。

 

「それを今から証明する」

 

 そういって、レイが取り出したのは、一束のセロリだった。

 

「破邪護聖剣セロリカリバー!」

「「「「「「セロリだーーー!!!」」」」」」

 

 レイがセロリを片手剣のように構える。

 アースラにいる面々とミスターNは一斉にツッコむ。

 

「Uh~頑張ってみるよ~少しだけ~」

 

 レイがセロリを振りかぶる。

 

「頑張ってみるよ~やれるだけ~」

 

 レイがクトゥルーの方を見据え、セロリが輝きだす。

 

「なんだかんだ言ってもつまりは単純に君の事、好きなのさ~」

 

 山崎まさよしのエモーショナルな歌詞と共にセロリが振るわれる。

 その瞬間、凄まじい衝撃が大地を、空を駆け巡った。

 斬撃がクトゥルーに直撃する。

 クトゥルーは苦悶の呻き声を上げる。

 

「今のは、レイ、なのか?」

 

 アフーム=ザーがやっとのことで体を起こす。

 その直後、大地が割れた。

 

「「「「「「何ィィィィィィィ!!!」」」」」」

「嘘だろ、オイ」

 

 ミスターNは思わず冷や汗を流す。

 

「まだ、終わらんよ」

 

 レイの言葉と共に裂け目から光が溢れ、大地が鳴動する。

 

「な、何だ?」

 

 ミスターNが呟いた瞬間、光の正体が大地の裂け目から飛び出してくる。

 

「極地『ペンギンちゃんインフェルノ』!」

「「「「「「無数のペンギン出てきたーーー!!!」」」」」」

 

 裂け目から無数のペンギンが天へと駆け上がっていく。

 その衝撃がクトゥルーを襲う。

 クトゥルーの呻き声はペンギンの飛翔に掻き消される。

 天へと駆け上ったペンギン達は宇宙空間へとたどり着く。

 

「「「「「「星座にペンギン座が無いのはなぜじゃー! byペンギン」」」」」」

「「「「「「わぁぁ! ペンギンが惑星を破壊している!?」」」」」」

 

 宇宙空間でペンギン達はそれぞれ進路を変えて、次々に惑星へ破壊活動を行っていく。

 その光景に思わずアースラの面々はツッコミを加える。

 

「貴様、その力は一体……!?」

 

 ミスターNがレイに問いかける。

 

「この力は地獄で受け取った、数多の虚空戦士(ハジケリスト)達の思い。そして、神々の意志でもある。今の俺は人にして神! 現人神という存在になった! 故に旧支配者と戦えるわけや」

「意味わかんないよ!」

「「「「「「成程、そういうことか!」」」」」」

「分かっちゃうの!?」

 

 心底理解したように頷く秩序六神にツッコむミスターN。

 

「レイ! レイなのか!?」

 

 起き上がったアフーム=ザーがレイの元へと飛んでいき、抱き着く。

 レイは勢いよく飛び込んできたアフーム=ザーを優しく抱きとめる。

 

「ああ、この通り生き返ったで」

「レイ、妾は、妾は……」

「わかってますって、良く決心してくれました。おおきに」

「レイ……」

 

 アフーム=ザーがこぼれそうな涙をふくと、ミスターNに向き直る。

 

「「見世物ちゃうぞ! ド助平が!」」

「「「「「「え、え~」」」」」」

 

 これにはアースラの面々もミスターNもどう反応していいのか分からなくなる。

 やがて、ミスターNはわなわなと震えだす。

 

「有り得ない! 有り得ないだろこんな展開! 死者が生き返ってパワーアップってドラゴンボールかよ!? 陳腐過ぎる!」

「「ところがどっこい……、夢じゃありません……! 現実です……! これが現実……!」」

 

 レイとアフームの鼻と顎が尖り、ざわ……、ざわ……、と効果音がする。

 その間もクトゥルーは動くことが出来ず、うずくまっている。

 

「このままではまずい、何か追加でしないと、ここまでとは予想外だ」

 

 ミスターNは何かをしようと腕を動かす。

 

「まあ、焦るな」

 

 レイはそれを見逃さなかった。

 一瞬で距離を詰めると、ミスターNの前髪を掴んで引き寄せる。

 

「何をしようというんや? 言っておくが、貴様は実況だけやっとればええ。こっからは、俺達のステージや」

 

 レイはミスターNの前髪を突き放すように離す。

 その勢いでミスターNは尻もちをつく。

 そのミスターNを秩序六神が取り囲む。

 ミスターNは歯噛みする。

 

「こやつは我々が見張っておこう。若殿、娘よ。思う存分暴れるがいい」

 

 クトゥグァがレイとアフーム=ザーに声をかける。

 レイとアフーム=ザーは秩序六神に向かって力強く頷くと、クトゥルーに向き直る。

 

「ほんじゃ、お言葉に甘えまして」

「妾達は楽しい楽しい邪神退治と行こうかの」

 

 レイとアフーム=ザーが浮かび上がる。

 

「這い寄る混沌、貴様が何を考えているのか、流石の俺でもわからん、せやけど、貴様のプランは潰す! クトゥルーの死をもって!」

 

 そして2人はクトゥルーへと高速で飛んでいく。

 後には、呆然と座るミスターNが残された。

 

「「Show must go on!」」

 

 レイとアフーム=ザーの声がクラナガンの空に響いた。

 

 

 

 

 

 レイとアフーム=ザーは空中でクトゥルーに相対する。

 レイの攻撃を受けてダウンしていたクトゥルーもようやく起き上がったところである。

 しかし、そこで手心を加える2人ではない。

 

「相手が生まれたてのベイビーなら、こちらは保育士でいく!」

 

 レイはクトゥルーをどう料理するか決めたようである。

 

「うん、うん?」

 

 しかし、レイの発言に対するクロノの疑問はもっともである。

 アースラにいる誰もが、レイの言葉の意味を理解することが出来なかった。

 

「いくで奥義『伝説の8人の保育士』!」

 

 レイの言葉と共に、アースラに映し出されるモニターの画面が変化する。

保育士ファイターⅥと書かれたタイトル画面。

 選択できるキャラは、侍、騎士、宇宙戦士、F1レーサー、ボクサー、マタギ、グリズリー、そして隠しキャラである。

 ただし、グリズリーを除く全てがレイのコスプレであるが。

 

「「「「「「格闘ゲームかよ!? ていうか碌なやつがいねえ!」」」」」」

「それじゃあこの方で」

「デストローイ!」

 

 アフーム=ザーが選択したのは隠しキャラの世紀末パンク男であった。

 

「「「「「「最悪なの選んじゃった!?」」」」」」

 

 世紀末チックなパンクファッションに身を包んだレイがパステルカラーのエプロンを着けて現れる。

 

「Cthulhu! 今から貴様を保育するから覚悟するんやな!」

「「「「「「保育って何だっけ!?」」」」」」

 

 余りにも格好に似つかわしくないレイのセリフにアースラにツッコミが響く。

 

「まずはお歌の時間や! 今日のお歌はYESのSiberian Khatruや!」

「「「「「「プログレ!? それ絶対お前の趣味だろ!?」」」」」」

「いいから歌えやー!」

 

 園児達が演奏するSiberian Khatruがクトゥルーの耳を破壊する。

 クトゥルーは耳と思しき部分を抑えるが、音はクトゥルーの耳に届き、クトゥルーの耳から血を思しき液体が噴出する。

 

「「「「「「何で!?」」」」」」

「どうやーーー!!!」

 

 レイはリック・ウェイクマンの如くマルチキーボードを操る。

 アフーム=ザーはスティーブ・ハウのようにギターを演奏する。

 そういうレイとアフーム=ザーの耳からも血が噴出していた。

 

「「「「「「何で!?」」」」」」

「お歌の次はお遊戯や! 皆でダンスや!」

 

 レイの声と共に音楽が流れ出す。

 明らかにそれは雅楽だった。

 

「「「「「「雅楽!?」」」」」」

 

 園児達は扇子を手に優雅に動く。

 クトゥルーは動く素振りを見せない。

 

「出来ない子は百叩き!」

 

 レイが竹刀を持ってクトゥルーを滅多打ちにする。

 

「「「「「「やりすぎだよ!」」」」」」

「お遊戯が終わればお昼ご飯! 今日のランチはー!」

「何かな? 何かな?」

 

 ワクワクしながらお昼を待つアフーム=ザーと園児達。

 

「素うどん」

 

 一気に全員のテンションが下がる。

 

「いいから食えや!」

 

 レイとアフーム=ザーがクトゥルーの顔面を巨大なオーラの手で巨大素うどんに叩きつける。

 

「「「「「「何してんの!?」」」」」」

 

 顔面をオーラの手で押さえつけられ、熱々のうどんに溺れるクトゥルー。

 やがてクトゥルーの顔がうどんから離される。

 クトゥルーの顔面はうどんのつゆですっかり濡れている。

 

「「お残しは許しまへんで!」」

 

 再び顔面をうどんに叩きつけられるクトゥルー。

 

「「「「「「やりすぎだよ!」」」」」」

「お昼の後はお昼寝の時間や!」

 

 レイの背後から6機の軍用ヘリが音を立てて現れる。

 

「抹殺『抹消指令(デリート・コマンド)』」

 

 軍用ヘリから打ち出される兵器の数々がクトゥルーを襲う。

 ミサイルや機関銃がクトゥルーの体をこれでもかと傷つけていく。

 

「「「「「「おねんねどころか永眠だー! ていうか質量兵器使ってるー!」」」」」」

「チッ、ならば子守唄ならええやろ!」

 

 レイは機嫌が悪そうに舌打ちをする。

 

「「「「「「舌打ち!?」」」」」」

「ねんねんころりよ!」

 

 巨大ギターをクトゥルーの脳天に叩きつけるレイ。

 

「ねんねんころりよ!」

 

 巨大ピアノでクトゥルーを轢くアフーム=ザー。

 

「「ねんねんころりよ!」」

 

 巨大ばちでクトゥルーを叩きまくるレイとアフーム=ザー。

 

「「「「「「これ子守歌という名の暴力だ!」」」」」」

 

 波状攻撃にさしものクトゥルーも気絶してしまう。

 

「さて眠ってもらって何なんやけど、おやつの時間や! 起きろ!」

 

 レイの蹴りがクトゥルーをたたき起こす。

 

「「「「「「理不尽だ!」」」」」」

「今日のおやつはー! プリン! さあ召し上がれ!」

 

 ここでファミコンRPGのエンカウント音のような音が鳴る。

 

『キラープリン が あらわれた!』

「「「「「「!?」」」」」」

 

 突如としてアースラのモニターがファミコンでのRPGのようなドット絵になる。

 画面には目が吊り上がり牙を剥いたプリンが映し出されている。

 

『クトゥルー の こうげき! キラープリン に 1 の ダメージ!』

「「「「「「!?」」」」」」

『キラープリン の 閃光覇王拳! クトゥルー に 9999 の ダメージ!』

『クトゥルー は しんでしまった!』

『おお クトゥルー よ しんでしまうとはなさけない!』

「「「「「「プリン強っ!」」」」」」

「さてクトゥルー、いよいよお迎えの時間や、あの世へのな!」

 

 そう言うと、レイとアフーム=ザーがクトゥルーを大型車で轢く。

 サイズ、質量を無視して撥ね飛ばされ、宙に浮くクトゥルー。

 

「ダメ押しの噴射『放課後ペットボトルロケット倶楽部』!」

 

 いつの間にかレイとアフームの傍に巨大ペットボトルロケットが設置されている。

 

「Fire!」

 

 ペットボトルロケットが発射される。

 ペットボトルロケットがクトゥルーの腹部を直撃する。

 そのままペットボトルロケットは大気圏を突破し、クトゥルーと共に宇宙へと旅立ったのであった。

 

「「「「「「宇宙まで飛んでったーーー!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 アースラでは打ち上がったクトゥルーを追っていた。

 オペレーターの1人がミッドチルダから上がってくる物体を発見する。

 

「高速かつ大質量の物体が地上から飛んできます! 間違いありません! クトゥルーです! ペットボトルロケットとクトゥルーです!」

「すぐに映し出してくれ!」

 

 オペレーターに指示を出すクロノ。

 オペレーターはコンソールを叩き、画面を切り替える。

 そこにはペットボトルロケットに腹を押し上げられているクトゥルーが映っていた。

 

「! クトゥルーの付近に熱源反応が2つ! これは!?」

 

 オペレーターが新たな反応を確認する。

 

「どうした!」

 

 クロノに促されオペレーターが映し出した画面には2つの人影が映っていた。

 レイとアフーム=ザーが宇宙空間に立っていたのだ。

 2人は銀色とも虹色ともつかぬ魔力を纏っている。

 

「あの2人……!」

「嘘、宇宙に素肌なんて!?」

 

 驚愕するアースラの面々に対し、レイとアフーム=ザーは涼しい顔だった。

 宇宙空間にて、レイとアフーム=ザーはペットボトルロケットに押し出されていくクトゥルーを見据えていた。

 

「のう、レイ、感じるかの?」

「ああ、ひしひしと感じる、世界中から信仰が集まるんを」

「レイも神格を得たんじゃな」

「ああ、不思議な気分や、ついこの前までただの人間やったのに」

 

 レイがしみじみと感慨深げに言う。

 そんなレイの横顔をアフーム=ザーはじっと見つめる。

 

「……のう、レイ、妾は其方を」

「その先は、俺から言わせてくれんか」

 

 レイがアフーム=ザーの方を見る。

 レイの人差し指がアフーム=ザーの唇に添えられる。

 レイとアフーム=ザーが互いに見つめ合う。

 

「俺は、レイ=金剛=ダイアモンドはアフーム=ザーを愛してます。人としても、神としても。あの日、あなたに出会ってから、ずっと」

 

 レイの言葉を受け、アフーム=ザーは顔を綻ばせる。

 

「妾も愛しておる。其方に助けられたその日から、ずっと」

 

 互いに微笑み合う。

 そして、クトゥルーへと向き直る。

 

「さあ、最後の仕上げや!」

「初めての共同作業じゃな!」

 

 レイとアフーム=ザーは互いの手を握り、ポーズをとる。

 

「「2人のこの手が真っ赤に燃えるゥゥ!」」

「幸せ掴めと!」

「轟き叫ぶ!」

「「爆熱! ゴッド・フィンガー!」」

「金!」

「剛!」

「「ラァァァブラブゥッ! 天驚ォォォォォォ拳!」」

 

 二人の掌から放たれた高エネルギーの弾がクトゥルーに向かっていく。

 そして銀色と虹色の光弾がペットボトルロケットを貫きクトゥルーに直撃し、大爆発が起きる。

 銀色とも虹色ともとれる光球がクトゥルーを包む。

 光球からクトゥルーの悲痛なうめき声が響くような気がした。

 爆発が収まると、塵一つ残されていなかった。

 宇宙は静寂を取り戻した、邪神の死によって。




 愛は次元世界を救う。
 世界は救われ、新たな神話が幕を開ける。
 人の時代は終わりを迎え、運命の輪は回転を始める。
 それは宇宙の折り返し、再び神の時代が始まる。
 次回、最終話。
 感想、お返事待ってます。

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