魔法神話 レイ&アフーム ~もしもリリなの世界にハジケた奴らと邪神が絡んできたら~ 作:ショーン=フレッチャー
男湯で 筋肉の華 咲き乱れ マッチョ芭蕉
「「「「「「誰!?」」」」」」
学校にて、レイは頭を抱えていた。
ノートには様々な論理記号が書き込まれ、授業のことは一切書かれていない。
やがて、結論が出たのか、顔を上げる。
そして大きく息を吐く。
誰もこの天才の所業を咎める者はいない。
咎めた所で聞く手合いではないのだ。
今は丁度算数の時間だ。
彼にとってはわざわざ話を聞くまでもない話である。
担任も彼に話を振る気配はない。
以前話を振り、割り算から純粋数学の問題の話をしようとして遮られたことがある。
それ以来、この若く気弱な担任はレイをどう扱うべきかという難しい問題に直面しているのである。
レイはそれを逆にありがたく思っていた。
数少ない研究の時間を邪魔しないでくれるのだから。
「なのは、なのは!」
「ふぇ?」
アフームがなのはを呼ぶが、なのはは気の抜けた返事をするだけである。
「やはり気になるのかの、マイケル富岡の現在が」
「違うよ! ……フェイトちゃんのことだよ」
「そうであったか、失敬失敬」
「フェイトって誰よ」
アリサが話に入ってくる。
すずかも一緒だ。
「うむ、フェイトというのはな、昨今妾達の頭を悩ませているジュエルシード強奪犯じゃ。何の目的で集めているのかわからない上、本人が話す気が毛頭なさそうなので交渉できず、レイも困惑している」
「そんな子がいるんだ」
すずかが頷く。
「私は、フェイトちゃんがどうしても悪い子には見えなくて、どうしてジュエルシードを集めているのか知りたいの」
「妾やレイとしても、ジュエルシードは危険物。勝手に持っていかれるのは困る。それにやっていることは犯罪じゃ。どこぞの誰かは知らんが、人の土地で勝手に動かれるのは業腹じゃとレイも言うておった」
「珍しいわね、レイが怒っているなんて」
「それだけ、今回の件で神経を使っておるのじゃろう。ハジケる時間が減って妾はつまらぬ」
「下手すりゃ地球の危機だもんね。そりゃレイくんも気を遣うよ」
「アイツは変なところで真面目だからねえ」
「うん、レイくんが相当イライラしているのは私も見てて分かるもん。フェイトちゃんが話してくれたら全部すっきり解決できるのかな」
「どうじゃろうか、なのはの言う通り、まるっと解決するのが理想じゃ。じゃが妾達は幼い。出来ることは限られておろう。妾もせいぜい出来ることはタンゴを踊ることしか出来ぬ」
「それの何が役に立つのよ。ああ、もう! 私がデバイスを持ってたらとっちめて話を聞きだすのに!」
「アリサちゃん、ちょっと過激だよ。でも私も話してくれない人にはイライラするかな」
「そうだよね、すずかちゃんもそう思うよね。どうしたらフェイトちゃんは話してくれるのかな」
「話してくれるような状況、そんなものがあるのじゃろうか」
4人とも頭を抱える。
アフームが突然口を開く
「合気道の達人塩田剛三曰く、合気道で一番強い技は自分を殺しに来たものと友達になることだそうじゃ」
「それが何なのよ」
「フェイトと友達になれば、話してくれるかもしれん」
「どうやって?」
「さあ? 妾にはわからぬ」
「「「ダメじゃん」」」
「一概にダメとは言えぬかもしれんぞ。巨大猫の件では何も話してくれんかったが、温泉のときには名前を言うてくれた。これは大きな一歩じゃ。もしかしたらフェイトは誰かに話したがっている可能性もあるかもしれん。次に会ったときに何を話すかが大事じゃな」
「そうだね、アフームちゃんの言う通りかも。私達だって出会いは最悪だったし」
「そうなのか? そういえば妾は其方たちがどのように友達になったのか知らぬ。参考までに教えてくれんか?」
「もともと私がすずかのカチューシャを羨んでつかみ取ろうとしたのが始まりだったのよ」
「そこになのはちゃんが止めに入って、なのはちゃんとアリサちゃんが喧嘩になって」
「その最中にすずかちゃんがやめて! って叫んだの。それで仲直りして」
「それで今に至るってわけよ」
「不思議じゃのう、出会いというのは。何が縁を結ぶかわからん。妾達もそうじゃ。出会いは誘拐事件からじゃったな。それが今では無二の親友じゃ。全く合縁奇縁とはよく言うたものじゃ」
「そうね、それだったらフェイトと友達になることもできそうな気がするわね」
「そうだよ、なのはちゃん。フェイトちゃんと友達になろう。そうすれば前に進めるかも」
「うん、そうだね。次にフェイトちゃんに会うときは私の思いを伝えてみる。言わなきゃ伝わらないもん」
「そうじゃ、その意気じゃ。妾達も応援するぞ。みんなで友達になりに行こう。レイも含めてな」
その日の夕方。なのはとフェイトは1対1で空中戦を繰り広げていた。
ジュエルシードの強制発動を感じ取ったなのはたちは現場に急行し、そこにいたフェイトたちを発見。
ジュエルシードは封印したものの、なのはに襲い掛かるフェイト。
ユーノを抑えるアルフ。飛べないために応援に徹するしかないレイとアフーム。三様の戦いが繰り広げられていた。
「私がジュエルシードを集めるのはユーノ君の捜し物だから、私はそのお手伝いで……だけど、お手伝いをするようになったのは偶然だったけど今は自分の意思でジュエルシードを集めてる。自分の暮らしてる街や自分の周りの人達に危険が降りかったら嫌だから」
なのははフェイトに自分の気持ちを伝える。
「これが私の理由!!!」
「……、私は」
「フェイト!答えなくていい!!!」
口を開こうとするフェイトにアルフが叫ぶ
「優しくしてくれる人達のとこで、ぬくぬく甘ったれて暮らしてる様なガキンチョになんかに、何も教えなくていい!私たちの最優先事項はジュエルシードの捕獲だよ!」
「誰が甘ったれや」
その声に全員が振り向く。
レイが怒気を孕んだ声を出したのだ。
「自分らだけが不幸やと思うな! みんなそれぞれ不幸なんや。それを、自分らだけが不幸な言い様、とんだ思い上がりやなぁ!」
「う、うるさい! 私らのことを何にも知らんくせに!」
「知らん? ああ知らんとも! だって自分ら何にも教えてくれへんもの! 教えてくれんくせにわかってくれ? 虫がええにも程があるわ!!!」
怒気がオーラとなって膨れ上がる。怒りのオーラにジュエルシードが反応する。
「ジュエルシードが暴走する!」
ユーノが叫ぶ。
と同時に暴風が吹き荒れ、両者のデバイスに罅が入る。
「そんな……、どうしよう」
なのはが力なく慌てる。
「このままだとまずい、封印を!」
「なら俺がやる、けじめはつけんとなぁ」
「でもレイには手段がないんじゃ」
「手段ならある! ただ反則なんやけどな。これやると俺しかジュエルシードを扱えんようになる」
そういうとレイは懐から銀色のカギを取り出し、ジュエルシードに向かって構える。
「
鍵がジュエルシードに刺さる。そのまま鍵を右回転させロックをかける。するとジュエルシードの暴走が止まっていく。
「暴走が、とまった……?」
レイはジュエルシードを掴み懐に入れる。
「このジュエルシードは俺が預かる。せやから」
レイの首元にボロボロの金色の鎌が突き付けられる。
「力づくで奪おうったってそうはいかん」
鍵で鎌が払われ、レイは背後のフェイトを蹴る。直撃したフェイトは吹き飛ばされる。
レイにアルフが迫る。
レイは襲い掛かる爪をするりとすり抜けると、懐に潜り込む。
「秘技『くすぐりアタック』!」
レイがアルフの脇腹をくすぐる。
その隙にアフームがアルフの背後に周っていた。
「からのバックドロップ!」
アフームがアルフを投げ飛ばす。
「というわけで、こいつは俺が貰てくで」
そういうとレイは早々にその場を去る。アフームもレイについていく。後に残された面々はそれを呆然と眺めるしかなかった。
次回、皆待望のあの男が登場!
物語が加速していくぞ~!