氷皇の「さばき」   作:†アルティメット⭐設定厨†

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エタらなかったので初投稿です。


第1章 ~魔導交流戦とミッドでの生活と~
新学期、そして始まりへ


高校に入学して、もう一週間が経過した。

 

入試の時、あらゆる手を尽くして妨害して来た教師陣だったけど……映像脅しの効果だろうか。特に何かされることもなく、アタシ『達』は普通の学生生活を謳歌していた。

 

 

 

「ファナフロスト、この問題を解いてみなさい」

 

「ファナフロストさん、まずはお手本をお願いします」

 

「ファナフロスト君、ミラージュハイドは使えますか? いえ、使えなくてもいいんですが、魔法は見て覚えるのが一番ですからねぇ……?」

 

 

 

しいて言えば、授業中に無駄に当てられること────

 

 

 

「さ す が シエルさんですねぇ。いやいや、羨ましい……」

 

「皆さんも頑張りましょうね、シエルさんのような り っ ぱ な魔導師を目指して!!」

 

「彼女のように マ ジ メ にやればだれでも魔法を使えるようになりますからね!」

 

 

────どうも、こんな感じであからさまに当て馬役にさせられるくらいで。

 

 

特に、何も無い。

 

……無い。 

 

「いや、まぁ気にしないから本当に良いけど」

 

「お前、メンタル固いのな」

 

「ああ、胸に負けずの固さだ」

 

「サクヤ、後で校舎裏」 

 

……とりあえず、アタシは無事に高校生活を送っていた。 

 

「む、デートの誘いか? 

同じクラスの、しかも女子から……嫌いではないないシチュエーションだが、少しばかり古すぎやしないか?」 

 

「サクヤ。お前は、違う意味で鉄壁メンタルだな……」

 

無事に合格できたサクヤ、ヴォルクとも同じクラス。

入試であそこまでやったんだから、問題児が固まらないようにクラスは別になると思ってたんだけど……学校側は、寧ろ問題児ばかりを集めることにしたらしい。

テストが壊滅的なサクヤに、魔法がさっぱりなヴォルク、不良少女のアタシ。他のクラスメートもアタシみたいなヤンキーや、授業について行けない生徒に魔法が苦手な技術家タイプ。そして、最後に人数合わせでギリギリ合格できた生徒。ラノベのタイトル風に言えば、『魔導師高校の劣等生』と言でも言うべきか。一癖も二癖もあるような人間ばかりが、このクラスに集められている。

 

「いやまぁ、実際アタシは優秀だし? 

……っていうかサクヤ、課題止まってるわよ。さっさとやりなさい」

 

「む、了解した……。

それにしても、シエルはよくも容易くクリアできるものだな、誘導弾10個の同時制御など」

 

「ああ、それは俺も思うぜ。

クラスでもできてる奴ほとんどいねーし……まぁ、そもそも俺は1個まともにできてないが」

 

そして現在、我らが劣等魔導師は魔法の授業中。

 

内容は、誘導弾を複数生成し操作する事、目標10個。

 

「まぁ、アタシは砲術師だしね。

寧ろ、アタシのポジションだったら10じゃ……20個でも全然不足。少なくとも30はなきゃ話にならないわよ?」

 

「30……考えたくねぇな、頭がこんがらがっちまいそうだ……うぉっ……!?」

 

と、ヴォルクが作っていた魔力弾が急成長。一気に巨大な魔力弾へ、そのまま魔力から火に変換され炎の塊に────

 

『パスッ』

 

────最後は、なんとも頼りない音と共にそのまま消滅した。

 

いやぁ、汚い花火ねぇ……。

 

……。

 

「ヴォルク、せめて1個くらいできない?」

 

「いや、だから苦手なんだよ。

俺の魔力は、固ぇ。というか、固すぎて体から魔力を離すとまともにコントロールできねぇ……なにせ俺は、世間的には『障碍者』らしいからな」 

 

ヴォルク・アームストロング。

入学試験でチームを組んだ男子で、2Mを優に超える巨漢。鋼なんて目じゃない、超合金の肉体と、炎の変換適正を持つ……のだが。

 

「ああ、えーっと『過度硬性魔力体質』、だっけ」

 

この男、射撃魔法が一切使えない。

というか、今のところ身体強化とバリアジャケット展開以外の魔法を使えたところを見ていない。

 

「おう。

体つきに個人差があるみたいに、魔力にも個人差がある。柔らかくて砲撃しやすかったり、固くてシールドを張るのに向いていたり、回復魔法に向いていたりする……が、その中でも、通常の魔力運用ができない程に固い魔力の人間が存在する。無理やり使用しても魔力の過剰供給に始まり、意図しない変換に、制御不可、最後には今回みたいに体を離れた途端に即霧散、散々だ。

俺に出来るのはこの前みたいな身体強化に、オマケの変換資質の炎くらいだな」

 

そう言って、腕を発火させるヴォルク。

そのまま振り回す……って危ない、って、ちょっ、火の粉飛んできた。危ないからやめなさい……。

 

「んんっ……ヴォ、ヴォルク。

いきなり火責めか、いくら私でも、いつでも良いというわけではないんだぞ? まったく、おかげでイッて折角の愛の結晶が飛んでイッてしまった……」

 

「うぉあ!? 

誰だ、魔力弾変な方向に飛ばした奴!」

 

「あっぶねーな、どこのバカだよ! せめて上向けろ!!」

 

「痛っ、ちょっとサクヤさん!!」

 

と、サクヤに火の粉が掛かる。

そして、集中が途切れたことによりサクヤのシュートが制御不能に。不審な挙動の末、クラスメイトに直撃した。

 

ああもう、授業中にふざけるから……。

 

「っていうか10個できてたわね、意外……」

 

「ん? 

まぁ、『廻咲流』対魔法師を想定しているからな、使い方だけは勉強した。魔力はそれほどでもないから、魔法だけでの戦闘は無理だが……ついでに、勉学はさっぱりだ。自慢じゃないが、2限目のテストは確実に赤点だったな」

 

「いや、あのテスト簡単だったでしょ……」

 

サクヤ、サクヤ・シェベル。

ヴォルクと同じくチームを組んだ相手で、スレンダーな女子。魔法は操作だけならそれなり、剣士としては優秀……というか、砲撃を斬って奪うチート性能。見た目はクールというか穏やかというか……ミステリアスな雰囲気というか、とにかく黙っていれば完璧な美少女────

 

「赤い点は勃○時のク「サクヤ、自重」リスだけで十分だというのに」

 

────なので、永遠に黙っていてほしい。

一応、近くに男子(ヴォルク)いるから。っていうか、普通にクラスメートいるから……肩をすくめて笑うサクヤを見て、アタシは溜息を吐く。

 

っていうか、この話氷皇運営から怒られたりしないわよね……? 

 

「おらぁ、もう1発! (パスン)」

 

「んんっ! 

ヴォ、ヴォルク。その、だから……な? プレイはいいんだが、やるならやると言って欲しいぞ。仮にも、魔法の授業中なのだから……その、こんなタイミングで催したり具合が急に悪くなって保健室まで行くと……怪しまれるだろう? だから……」

 

「サクヤ、黙って課題してなさい」

 

顔を赤くするサクヤを見て、ちょっとばかし次元の壁を越えた心配事。

これ以上酷いと色々とマズイ(もう手遅れな気もするけど)と感じ、サクヤの思考を少しでも誘導する。

 

「むぅ、了解した。

まぁ、スるのは放課後でもできることだ「黙れ♪」」

 

「お前ら……」

 

ヴォルクと(主に)サクヤに振り回されて今日も1日が過ぎていく。

 

……ミッドチルダでの新生活は、まぁそれなりに充実している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、今日も疲れた……」

 

帰り道、ため息交じりに一人つぶやく。

 

今日も賑やかな1日だった。

 

あの後、ヴォルクが2回ほど魔法の暴走から巨大な爆発を生じさせて巻き込まれたり(何を間違ったのか、とんでもない大爆発が発生した)、そのうち1回はアタシ達だけじゃなく周囲の生徒に危害が及んだり(なお、1回目含めサクヤは無傷だった)、ヴォルクの飛び火で集中力を失ったサクヤにより3回ほど周りの生徒に魔力弾が飛んで行ったり(なぜこっちは防げないのか、っていうかわざと食らってるでしょ?)、そのせいでクラスメートとリアルファイトに発展しかけた(ヴォルクを見学処分? にすることで、全面戦争は回避された)くらい。

 

本当に、なんとも飽きさせない素晴らしい1日だった。

 

……。

 

明日も、学校かぁ……。

 

……。

 

「まぁ、何もないよりはマシってことで……」

 

考えてもらちが明かないし、精神が持たない。

 

明日の苦労は、明日の自分に。

 

アタシは気持ちを切り替えて、本を読みながら家に向かって足を向け。

 

そして、家が近づいたころ。

 

「……ん?」 

 

『えー、そうですかー? そんなことないですよ……ね、フェイトちゃん?』

 

『え? あ、うん。そうだよね、なのは……うん』

 

何時もの道を、いつも通り。

もうすぐ愛しき我が家……というところで気づいた。

 

家のあたり、なんだか楽しそうというか賑やかというか……。

 

『ええ、なにその微妙な反応!? 私ってそんな寝顔なの!?』

 

『うん、家とかでちゃんとベットで寝れば普通なんだけど……ソファとか疲れてそのまま床とかだとたまに、ね? 寝苦しいんだと思うけど……』

 

『中々面白いぜ、嬢ちゃん。

局じゃその顔見て笑わなかったら昇進できる……とか噂になってんぞ?』

 

『ええ!? 

なんですか、その噂。やめてくださいよ「大尉」~!』

 

「……大尉ぃ!?」

 

ついでに、すごく聞き覚えのある男性のワードが聞こえた。

 

それに、あの喋り方に大尉って、まさか……!!! 

 

「お父さん!?」

 

「ん? おう、シエルか」「あら、シエルちゃん」

 

そこにいたのは我が父、グラリック・ファナフロストと、母のロア・ファナフロスト。

 

「あ、シエルちゃん。お帰り~」「ごめん、先に頂いちゃってるよ~」

 

「あ、これシエルさんの分です。席はここどうぞ!」

 

「我が娘よ、1か月ぶりだな」

 

「え? あ、うん……」

 

それが、なんかなのはさん達と庭でバーベキューしていた。

 

……いや、何やってるんだ本当に。

とりあえず、ヴィヴィオがお肉が入った皿を貰って席に案内してもらう(ヴィヴィオ、いつもながら気の利いたできた娘だ)。

 

「もう、シエルちゃん。

メールで『今日なのはちゃん達とバーベキューするから早く帰ってきて』って連絡したでしょ? なのに、こんな時間まで帰ってこないなんて。せっかく部下に仕事押し付けて、いいお肉も買ってきたのに。ご飯、先に食べ始めるちゃったじゃない」

 

「あー」

 

メール……読むのやめた後に、そんなこと書いてあったのか。

 

っていうか、部下に仕事押し付けて来たのか。

 

「ごめん、ごめん。

ちょっと、友達の補習付き合ってて────」

 

「シエル、嘘をつくならもう少しうまくつけよ?」

 

「あのメール送っておいてなんだけど、シエルちゃん友達居ないでしょ」

 

「────おう、その喧嘩幾らだ」

 

……娘をなんだと思ってるんだ、アンタ等。

実際に、こちとらヴォルクの補修に付き合って来たんだ。3回の爆破と10回の誤射を食らって、生還して来たんだぞ、この娘は。 

 

「……ふふっ」

 

「ん?」

 

と、なんか後ろから普段聞かない声が。

美人というかカッコいいというか……かつどこかふわっとした感じ。

 

やったらスタイルのいい、すらっとした体に胸に中々無駄に肉がついていらっしゃる(地味にイラッと来る。いや、いいなーとかは思わないけど、断じて)、長い金髪の女性。

 

っていうか、知ってる。この人は、確か。

 

「フェイト・T・ハラオウン執務官……ですよね」

 

「うん。

笑っちゃってごめんね、家族のやり取りが楽しそうだったから……始めましてだね、シエルちゃん。なのはから聞いてた?」

 

「楽しくはないです」

 

フェイトさん、フェイト・T・ハラオウンさんだ。

アタシのバリアジャケット、デットロックの原型『バルディッシュ』を使う管理局の痴女……もとい、魔王なのはさんの片腕とか黄色い死神とか色々言われてる、あのエース魔導師。

 

「シエル・ファナフロストです。

アタシのバリアジャケットが、ハラオウン執務官殿のバリアジャケットを参考に作られていまして。一応、そういった経緯で」

 

「フェイトでいいよ、話し方も変に畏まらなくてもいいし。

でも、そっか。そういえば、1回シャーリーが許可取りに来たっけ。シエルちゃんがそうだったんだ……使ってみて、どう?」

 

「はい、やっぱり動きやすいです……まぁ、ちょっと見た目がアレですけど」

 

「あー……。

うん、まぁ使いやすいなら……まぁ、あの見た目は私もちょっとキツいと思うことはあるけど……」

 

バリアジャケットについてアタシが言うと、若干苦笑いになるフェイトさん。

まぁ、使っといてなんだけどアレはねぇ……。

 

「まぁ、それはそれとして。

改めて、私は執務官のフェイト・T・ハラオウン。同じバリアジャケットを使う同士、これから宜しくね」

 

「はい。こちらこそ、宜しくお願いします」

 

「うん。

あ、それと私『も』ヴィヴィオの保護者で……といっても、なのは以上に仕事で家にいないんだけど」

 

「あ、重ねてお願いします」

(私『も』ねぇ……)

 

ニッコリ笑うフェイトさん……んー、この人もなんというか……雰囲気が……なんというか、苦労してるなとか、何も知らない感じじゃないというか(まぁ、別に何があったのかは気にしないし、聞かないけど)……。

 

いやぁ、にしても。

 

不屈のエースオブエースと管理局の死神が一緒に暮らしてて、ついでになんだか訳ありな幼女を保護してて。

 

ミッドチルダ……なんというか────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『以下の者は、本日の放課後に校長室まで来ること

 

   シエル・ファナフロスト

 

  ヴォルク・アームストロング

 

   サクヤ・シェベル            』

 

 

 

「────なんとも、暇しなさそうな町よねぇ……」

 

 

 

次の日、登校早々にアタシは呟いた。




3か月半空きました。










すいません、遊 ん で ま し た。

次回はもっと早い投稿目指したいです。

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