物間こころの生存戦略 作:こころたん
根津
ネズミなのか犬なのか熊なのか、誰もわかならい校長、根津さ! 皆、元気にしているかな? 僕はとっても元気だよ。だってウハウハだからね!
「で、校長。今回の件はどういうことですか?」
雄英高校校長室で他の先生達も集まってきている。僕達の手には物間こころから提出されたゆぐゆぐダンジョンの設計図とトラップとエネミーのデータ(仮)が存在している。この(仮)は自動更新されるのでハッキリ言って意味ないからだね。
「どうもこうも、僕が彼女に依頼して作らせた。それだけさ!」
「……本当に?」
「まあ、彼女の"個性"を把握するために餌として与えた理由もある。彼女達が遊び場を欲しがるように
「うわぁ……」
「コスト削減か」
「いくらセメントス先生がいるとはいえ、市街地や救助訓練にしても慣れがでてくる。かといって、大規模に改造するととてもじゃないがお金がかかりすぎる。ない袖は振れないのだよ。ははっ」
正直に言って、今年は事件だらけのせいで赤字だからね。毛の艶がなくなるどころか、毛根が抜けたりして禿げてきたところすらあったんだ。
「ふふふ、みてくれよこの毛の艶! そしてふさふさの毛! 彼女が治してくれたんだ! ストレスがなくなったよ!」
「治療系の"個性"も合わさっていたんですか」
「みたいだね。"個性"名はもふもふさいきょー。獣系統にしか効かないという微妙な"個性"になったらしい。ハウンドドッグ先生には有効だろうね」
「……あとで行ってみるか……」
行ってみるといいさ。とっても気持ち良くしてくれるよ。
「で、話を戻すけど、ゆぐゆぐダンジョンは使えそうかな?」
「使えるでしょう。難易度はかなり厳しいですが、逆に言えばこれを攻略できれば確かな実力を得られます」
「無個性でもクリアできるレベルと設計図には書かれているが、いけると思うか?」
「無理。と言いたいが、私は可能だと思う」
「オールマイト先生はそう言うけど、コイツは逸脱者を作り出すためのものだよ。何度も壁を越えることが大前提の難易度だね。計算したけれど、これをクリアするには最低でも小隊編成で限界を超えてようやくだよ。僕達がそうだった。これを一人でクリアするとか、全盛期のオールマイトとは言わないでも、それに近い力がないと無理だろうね」
「あー俺が足を引っ張ってましたしね」
「相澤君のは仕方ないよ。相手、"個性"じゃないしね」
「純粋な物理攻撃だもんねえ」
「"個性"で作り出されていても、それが植物として"個性"から離れたらどうしようもない」
ミッドナイト先生の言う通り、あそこの敵は基本的に意図的に突然変異させられた植物だからね。ボス戦では効いたけれど、他のトラップやエネミーはあくまでも"個性"の扱いじゃない。もしくは一瞬だけ"個性"の扱いになっているのかもしれない。下手をしたら、一つの生命体の身体の中というかもしれないしね。
「どちらにせよ、このダンジョンは使える。
「校長、商売にする気ですか」
「この施設を使わせるかわりに講義を一時間から二時間だけしてもらう。WINWINな関係じゃないか」
「確かにその通りですね」
「さて、物間こころについてだ。ここ数日彼女の様子を確認していたけど、知能がかなり退化していたよ。流石に四歳児とはいわないけれど八歳くらいかな。容易く誘導が可能だ。今は戻ったみたいだからわからないけどね」
「それって危険じゃないですか。確か、あの子の中にいるヒーローって極端な人ですよね」
「
「彼がオール・フォー・ワンを止めてくれているか……あれ、待って。確か、あの子って重犯罪者から"個性"を手に入れてたから……」
「悪に傾くほうが多いか」
「一応、教えてもらった"個性"はリストにして公安にも送ってあるけど、バラバラになったせいで自分でもよくわかっていないみたいだ」
しかし、こう考えるとこれからのためにむしろヒーローを引退した人の"個性"や一般人の"個性"を集めさせるのも手かもしれないね。悪の成分を薄めるために。老衰の人達や後継者がいない人から集めれば……いや、僕が考えることじゃないか。一応、提案だけは公安に投げておこう。
「メインの"個性"は彼女本来の"個性"、感情を操る"個性"とオール・フォー・ワン、
「オール・フォー・ワンも危険だが、戦闘で考えると
「回避不可能の即死攻撃に近いしね」
「肉体系の天敵だ。私でも彼を相手にしたら、相打ちの可能性が高い。本当によく倒せたもんだ」
「持久戦らしいよ。ただひたすらミサイルや銃弾を叩き込んで遠距離持ちのヒーロー達で攻撃する。それでも六日で七割は殺されたみたいだね。ちなみにその戦闘後は現在も汚染されていて立ち入り禁止さ、ははっ」
「化け物だなぁ」
「ちなみに彼女はそれを超える可能性がある。しかも、自爆しても復活できるという……」
「なにその歩く核弾頭。やめてよね」
「ははっ、まさに人類最終兵器だね!」
「倒せる可能性があるのは相澤君だけか」
「対抗策を持っている可能性もありますよ。いえ、すでに対策をされている可能性すらあるでしょう。俺の感情が操られていれば終わりだ」
「まあ、大丈夫でしょう。物間君と透形君がいれば、そうそう踏み外さないわ。しっかりと教育すればだけれど……」
「それは僕達の仕事だ。っと、明日は臨時の全校集会を開くよ。内容はあのゆぐゆぐダンジョンについて。景品は食券や、彼女のオーバーホールかな。こっちは依頼しないといけないけれど……勉強の方はどうだい?」
「まだまださね。人にやらせるのは危険……と、言いたいんだが……すでに人体の構造は覚えきっているよ」
「へぇ……」
「あの子、千変万化でその人に変わってから、肉体を燃やして再生して覚えるとかいうふざけた方法を取るんだよ。アニメの影響で」
「あ、アニメ?」
リカバリーガールに聞いてみたら、炎の中から片手を突き上げて出てくるヒーローのシーンが気に入ったようで、そんな感じで遊びをかねて身体の構造を勉強したようだ。他にもまねっこをして遊んだりもしているようだ。まあ、いいか。他にも色々と決めないといけない。全校集会でヒーロー科の子達に仕掛けないといけないしね。
次の日、全校生徒の前に立って僕は彼等に説明していく。
「ゆぐゆぐダンジョンはヒーロー科、普通科、経営科など科と学年によってランキング制度を導入することにしたよ。毎月報酬をあげるから、頑張ってくれたまえ。あ、放課後はボス部屋以外は"個性"使用禁止だからね。授業で使う時は先生次第だ。あくまでも戦いの感覚を掴んだり、身体を鍛えたりするためのものだ。それと成績次第ではヒーロー科への転入を認めるし、成績にも加点するから、そのつもりでいてくれよ」
全員の眼がギラギラとこちらを見詰めてくる。景品は全て豪華な物だ。例えば一ヶ月デザートプレゼント券などなど色々とある。
「ああ、経営科の者達はゆぐゆぐダンジョンにある休憩エリアで店をだしたりするのを認める。サポート科と一緒にやるように。お金はでないけれど、雄英ポイント、略してUPを使うことにする。このポイントで商売をしてくれ。稼ぐ方法はダンジョンを段階的にクリアすることやミッションの達成だ。皆、頑張ってくれたまえ」
「ありがとうございました。次に紹介する人物がいる」
周りをみると、彼女達がいなかった。そう思ったら、上から巨大な奴が降ってきた。それも笑いながら。
「HAHAHAHAHAHA、わたしがぁぁぁぁぁぁきたぁぁぁぁぁぁぁっ!」
台の上に着地した巨大な筋肉が沢山の存在は頭の上に小さな女の子を乗せている。
「「「「オールマイトォォォォッ!」」」」
「あれ? でも、あそこにいるのは……」
「え?え?」
「いや、あれは……」
「アレは私だ。そして、これも私だ。そうだろう、諸君! アレは私に見えるかね!」
指差してアチラに視線を集める。オールマイトは困ったように頬をかいている。その間に今度は姿が変わって透形の姿に変わっている。
「えーと、前をみるように」
「?え?」
「先輩?」
「脱ぎます!」
「「やめろぉおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」」
「とう」
ばさっと服を掴んで引っ張ったと思ったら、今度は身体が開いて中からミッドナイト先生が現れる。そして、胸にある服のボタンをぷちぷちと外して……
「やめなさい!」
「あいた」
「お姉ちゃん……」
ミッドナイト先生が後ろからハリセンで叩いた。
「むぅ、こうすれば喜ぶって本に書いてあったのに……」
「どこの本かしら?」
「お兄ちゃんの部屋にあった」
「物間?」
「お前……」
「待ってくれ、濡れ衣だ。そんな本、妹達が一緒にいる部屋に置くわけないだろう。きっと誰かが入れたんだ」
「そういえば、少し前にA組の峯田達遊びにきていたような」
「えーとりあえず、物間と峯田は生徒指導室に出頭するように。あと、遊ばなくていいからさっさと自己紹介しなさい」
「はーい」
やれやれ、本当に悪戯好きのようだ。
「あの、えりっていいます。よろしく、おねがいします……」
「「「よろしくーーー」」」
「昨日の動画の子だ。やっぱりここにいた」
「ってことは……」
そう思っていると、ミッドナイト先生に化けていた彼女が飛び上がってくるりと空中で回転すると狐の仮面に狐の尻尾、それに狐の耳をした赤いセーターに茶色のダッフルコートを着た桃色の髪の毛を持つ人形のような綺麗な無表情の女の子が現れた。
「……やあやあ、我こそはきっとたぶん、ヒーロー、秦こころなるぞ。まず、私と最強の称号を賭けて闘え!」
「「「「ええええええええええ」」」」
そして、彼女の小さな手が鋭い刃の剣に変わる。同時にヒーロー科の生徒達が身体を震わせて膝をついていく。これは恐怖の感情を増幅したのかな?
「ふっふっふ、その程度でヒーローを目指すなど、片腹痛い……」
「あの、お姉ちゃん、痛いの? 大丈夫?」
「あ、痛くないよ? 本当だよ? だから、心配しなくていいよ?」
「う、うん……」
ヒーロー科の生徒達は殆どが膝をついている中、立ち上がったのはビッグスリーと呼ばれる三人だけだ。やはり経験の差はでかいね。
「遊びはそこまでにしろ」
「はーい」
彼女が両手を叩くとヒーロー科の子達は何度も荒い息を繰り返し、全身から汗を流していく。彼等が体験したのはあの両手の剣で斬り刻まれる恐怖だ。相澤君が考案したこれはヒーロー科全てに効率よく体験させるためのものだね。
「さて、他の科はわからないだろうが、ヒーロー科諸君には彼女に頼んで濃密な殺気と恐怖を体験してもらった。それを克服できなければヒーローになれると思わないことだ。それと改めて自己紹介しろ」
「はじめしてー、アメリカでヒーローやってた物間こころだよ。ヒーローネームはさっき言った通り、感情を司る者、秦こころ。身体は小さく見えても14歳、女の子で複数の"個性"を持ってる。よろしくねー」
自分のほっぺたを人差し指で動かして笑顔を作ろうとしている。
「こっちは妹の壞理ちゃん。基本的に一緒に雄英高校の中を徘徊して遊んでるから、仲良くしてねー。泣かしたら、食べちゃうぞー」
口に指を入れて頬っぺたを広げる姿は無表情だが可愛らしい。しかし、その後ろの尻尾の先が大きな狐になって同じように口を大きく開けている。そこは人なんか丸呑みにできそうな感じだ。
「あれ、笑えなかった?」
「冗談に聞こえないわよ」
「うー悪戯するぐらいだよー。だから安心してね。一日、ずーと笑い続けるだけだよー」
「それ、拷問でしょうが!」
「あっはっはっは、子供を泣かすのが悪いんだよー。あ、でもトリックオアトリートにしよう。そうしよう。お菓子がもらえるよ、壞理ちゃん!」
「お菓子……じゅる」
彼女は壞理ちゃんを抱き上げて台から降りていく。お菓子を常備していたら大丈夫みたいだね。
「はい、雄英で預かる二人でした。何か有ったら直ちに連絡するようにお願いね。それとこの子達への質問は受付ません。片方は現役のヒーローだけれど、日本の法律に疎いところもあるからね。それでも仲良くしてあげるように」
「では続いて……校内での無許可による動画撮影、写真撮影などは禁止する。撮影する場合は教員の許可を取った場所で行うように。他になにかありますか?」
「あります。寮内を含めた持ち物検査をするわよ。子供に悪影響を催す物は全て没収します」
「そんなぁあああああああああああぁぁぁぁっ!」
うん、これは仕方ないよね。しかし、娯楽が少ないのも駄目だろうし、うーん。そうだ!
「こころ君」
「はい。何時もニコニコあなたの横に這いよる混沌、こころです」
「無表情だけどね。まあ、いいや。温泉って作れるかな?」
「温泉……不可能じゃないと思うけど、機械の構造がわからない」
「その辺はパワーローダー先生と相談してくれないかな」
「……ん、治療系の"個性"があればいいかも」
「持ってないのかい?」
「もふもふさいきょーだけ」
「まあ、普通の風呂と遊べるプールを作ってくれ。プールは水中訓練や救助訓練とかもできるようにしてくれるといいかな」
「……お金、とるよ……?」
「う……いくらだい?」
「えっと、撮影機械の代金とか。後舞台も作りたい」
「わかった。経費で落としてあげるから、それで頼むよ」
「ん、任せて」
なんだかゾクリとしたけれど、まあ大丈夫だろう。ははっ、そうに違いない。
請求書
カメラ各種:992万。
マイク各種:399万。
音響各種:425万。
編集機器各種:284万。
その他:359万。
合計:2459万円+税
うがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
こころちゃんに頼る? 代価は必要だ