物間こころの生存戦略 作:こころたん
ふっふっふっ、ついに手に入れた私だけの超高性能ドローンカメラ! 画素数は憶単位。他の性能も素晴らしく、ドローンも自動撮影や自動で回避するシステムを搭載。静音性もばっちりで、いらない音は消える。他にも編集用のパソコンとかも色々と買った。
でも、温泉旅館と温水プール施設を作った代金にしたら安いと思う。工事費だけで億単位いくらしいし。内装とかは玉藻さんに相談して高級感溢れる仕様にしてあるし、とってもいい感じ。効能とかは植物作成を利用して肌がツヤツヤになったり、染みや傷が勝手に消えるようにしておいた。
そして、今はもう一つ作った施設、舞台で私は動画配信しながら舞っている。声をだしながら、左右にステップを踏みながら、片手で薙刀を振るい、もう片方の手で扇子を開く。
「わん、つー、わん、つー」
観客席側にある大きなスクリーンには私の映像が映し出されている。それを見ながらまねっこをしていく。感情を失う前の私の技術は高く、まだ追いつけない。
『身体を再構成された弊害か』
『でしょうね。ですが、私がしっかりと人への魅せ方というものを教えてさしあげますわ♡』
「お願い」
一通り身体を動かしてから、次は玉藻に演技指導をしてもらう。ついでに英雄の師匠にも身体の動かし方を、先生には戦略や戦術を、不死鳥さんには炎の使い方を習う。身体を壊す勢いで鍛えていく。
『はい、そこ違います。あと四度あげてください』
「こう?」
『そうです』
『だが、それでは動きに隙が生まれる』
『色々と試すしかないねえ……』
扇子を振り回すと同時に炎を出し、薙刀を振るうと光の軌跡を残す。薙刀を空中に投げてバク転する。落ちてくる前に消滅した薙刀の代わりに扇子をもう一つ作ってそれで舞っていく。炎を操作して火の龍を空へと放つ。それらは空で複数に分かれて花のようになって散っていく。
「ふぅ……」
『では、次は歌いながらやってみようか。更に仮想敵を出そう。不死鳥君、頼むよ』
『あいよ。でも、大丈夫か?』
「ん。頑張る」
掻いた汗を腕で拭ってから、また動く。仮想敵の火の敵を薙刀で斬り、扇子の炎で吹き飛ばしていく。相手側は不死鳥に操られているのでどんどんやってきて襲い掛かってくる。まるで殺陣みたいになっていけれど、ようしゃなく殺しにかかってきている。普通の人なら即死間違いなしな火力。
相手が二メートルあるバッファローになって突撃してくる。それをステップで躱しながら身体を独楽の様に回転させながら薙刀で切断する。袖が動きによって動き、火の粉が舞う。
【なにこの訓練動画。やばすぎるんだけど】
【アメリカのヒーローってこんなことしてるの?】
【あっちはヒーローの死亡率も結構高いし……納得できる】
【こころちゃん、どうみても複数の"個性"を使っている件】
【炎と感情を操る。後は光か。他にもあるのかな?】
【昨日、植物系の動画をあげてた】
【歌も凄い。いや、歌自体は要練習か。でも、声が凄くいいな。無表情だけど】
【そこがまたいいんじゃないか! それにしても、和服で鎖骨を滴る汗……いい】
【わかる】
ドローンによる自動配信も問題ないみたいで、コメントがいっぱい流れていっている。
『日本のアニメを見ましたけど、歌いながら戦う物がありましたよね。あんな感じでやってみましょうか♡』
『ああ、あれか。昔にあったなあ……』
仕方ない。もっと歌おう。それにマルチタスクの訓練にもなるし。
「ブラック★ロックシューター~~」
髪型を左右非対称のツインテールに変えて、服装も千変万化で変化させる。それで歌いながら戦っていく。ロックキャノンはないから、炎を収束して砲撃として放つ。
『こっちも遊んでやるか』
相手が私と同じ炎の姿となって襲いかかってくる。しかもご丁寧に先生があちらについた。その上、師匠もあちら側だ。こちらの味方は玉藻だけ。玉藻も私の演技指導がメインなので四面楚歌。
『ほらほら、右に意識が集中して左ががら空きだよ』
「っ!?」
『そっちに気を取られたら、今度はこちらだ』
相手側は
限界を超えて力を発揮する。想いは力。だからこそ、私にもできる。全力の一撃。
「あっ」
『消さないと駄目だよ』
「ん」
消したら貫通しきる前に止まったので、オーバーホールで修復して"個性"訓練は終わり。
「じゃあ、次はゆぐゆぐダンジョンで身体を鍛える」
【まだやるのか!】
「まだまだ序の口。"個性"を鍛えたら、次は身体。そして休憩して"個性"を鍛えて、また身体。繰り返し」
【ヒーローってとんでもねえな……】
【ヒーローになろうかと思ったけど、俺には無理です】
【現実的に無理だろ……】
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」
【無理】
千変万化で綺麗な服装に着替える。一瞬だけ発光して着替えたら、何故かコメント欄が高速で流れていった。
【見えたっ!】
【嘘だ!】
【いや、輪郭だけは……】
【10歳くらいの子なのに……】
【ばっか、だから魔法少女なんだろ!】
【変態ばかりか……】
『ばかばっかって言ってみてくだい♡』
「ばかばっか……?」
【その台詞はっ! ルリルリだと……】
姿が大きめの白色のシャツに紺色のスパッツに変わっているので、そのまま走る。ただ、白色のシャツの裾が長いのでスパッツがほぼ見えていない。でも、たいして邪魔にならないのでそのまま走っていく。
ゆぐゆぐダンジョンに到着したら、機械に雄英高校のIDカードを入れて中に入る。現在、放課後ではなく授業中なので使われている。その場所は一階のエントランスに表示されているMAPで確認できる。そこからコースを選択する。選択するコースは"個性"は使用禁止なので、勢いで駆け抜ける。
目の前の螺旋階段を走って登っていると、突如横の壁から無数の弾丸が顔の高さで放たれてくる。咄嗟に左腕を上げてガードする。炎を出せば防げたけれど、"個性"使用禁止なのでそのまま防ぐ。一発一発は成人男性が身体を仰け反らせる程度の威力のそれは、140㎝ぐらしかなくて体重も軽い私にとっては一発で身体が持っていかれる。ましてやそれが一斉に数十発も飛んでくるのでそのまま下へと落ちていく。
空中で身体を回転して柔らかい床に着地する。掌の中を確認すると、種の弾丸だった。それらは地面に落ちると発芽してまた種の弾丸を飛ばしてくる。
「これ、子供には辛い」
『この程度、攻略せずしてヒーローにはなれん』
弱音を心に仕舞いこんで、すぐに螺旋階段に戻る。先程の位置に近付いたら、今度は上から降ってきたので、バックステップで回避する。よくよく見ると弾丸を放ってきた蕾の位置が変わっている。同じ場所に配置して死に覚えを防止されているみたい。作った私だけれど、この難易度は大変。
速度は銃弾より遅い程度。身体能力で攻略する必要はあれど、装備の使用は禁止されていないのでなんとかなる。
『道具などに頼るな。これが生死を賭けた戦いならば構わん。だが、これは訓練であり、死ぬことはない。ならば己の肉体でのみ攻略してみせよ』
『スパルタだね。だが、賛成だ。この程度は道具なしで行ってみようか』
『頑張れ、頑張れ♡ あ、何時でも身体は貰ってさしあげますのでギブアップなら言ってくださいな♡』
『まあ、死なないし頑張れ』
「……ふぅ……いく……」
踏み込んで加速し、急停止して弾丸をやり過ごし、また加速して通り抜ける。背後から弾丸が飛んでくる。スライディングして回避すると、額のすぐ上を通り過ぎていく。弾丸の充填までのタイムラグを利用して身体を回転させて腕立ての要領で飛び上がり、振り向こうとしたら弾丸が飛んできたのでバク転でぎりぎり回避し、天井を蹴ってなんとか先に進む。
今度は上からゴロゴロと大きな玉が転がり込んでくる。急いで吹き抜けにある複数の蔦に向かってジャンプし、蔦を掴んで向こう側に移動する。その途中で蔦が狙撃されて切られ、落下していく中、冷静に判断して切れた蔦を使って向こう側に放って設置されている手摺の棒の一つに絡めて移動。蔦が外れる前に反対側に到着した。そう思ったら、今度は目の前に植物でできた人型が現れて蔦を鞭のように放ってくる。
「っ!?」
一撃で身体が吹き飛ばされていく中、床を掴んで爪を立てながら必死に衝撃を殺す。身体中に痛みが走るし、爪が割れたけれど無視する。相手は植物人間。打撃は効かないけれど弱点がちゃんとある。その弱点は頭部にある赤い球体と足の裏から床に生えている蔦。その蔦を千切れば勝てる。ただし、基本的に相手の攻撃は直撃すれば即死攻撃扱いで吹き飛ばされたり、巻き付かれてそのまま吹き抜けにポイ捨てされる。つまり、見極めていなさなければならない。ちなみに時間をかけると弾丸を放つ蕾も現れるので難易度は酷い。
「えい、えい、おー」
走って前に出る。振るわれる両手の蔓の鞭を見極めて打撃を横から入れて弾き、中央に飛び込んでいく。背中から打たれるのを我慢し、自ら前に飛ぶことでその衝撃も合わせて加速して赤い球体に触れて、足裏を相手の身体につけて全体重をかけて引き抜く。背中から激痛を感じるけれど無視。引き抜くと植物人間は蔓の束になって消えて、そのまま床に吸い込まれていく。
「うー痛いー」
後ろを見ると、背中のシャツがばっさりと切れていて背中に鞭の跡が残っている。両手も弾いたせいか、皮膚がやぶれて血がでている。でも、その
でも、このままだとまずいのでシャツを脱いで引き裂かれた部分をさらに引き裂いていく。裂いた物を両手に巻けばまだ戦える。
『ちょっと待ちなさい! これ、放送中なのですよ!』
『あー胸を隠せ、胸を』
「ん」
胸にもさらしのように巻いて続きをする。コメントをみたらすごい勢いでコメが流れていくけれど、それはどれも心配とか、そんな感じのもの。でもよくわからないからそのまま進む。大丈夫。腕が折れても足さえ無事ならどうとでもなる。腕ならたとえ千切れても問題ない。でも、足は駄目だ。動けなくなる。そうなれば的になって死ぬだけだよね。
進んでいくと、今度はギロチンが複数あり、空中の足場を移動する感じだった。でも、これの攻略方法はギロチンの刃の横にある取っ手を掴んで登っていけるようになっている。たぶん、これが最短ルート。そんなわけで行ってみよう。まだいけるから。
その先にあったボス戦で腕が折れた。折れた腕で攻撃したけれど最終的に両腕と片足が折れて、口だけでアルラウネの喉に噛みついて抉り取ってやった。流石にこれ以上は無理なのでコンテニューして、復活。
システム的に私みたいな非力な幼女が無個性モードでやる設定ができていなかった。普通の鍛えた高校生を設定されていて、全身打撲程度ですまされるはずが、私では骨折になってしまった。まあ、被害が出る前に判明してよかった。不死鳥で再生して終わりだから。
【危険すぎじゃね?】
【小さな子供用にできてないのか。そもそも"個性"を使ったクリアが前提の難易度なのでは?】
【つまり、こころちゃんが自分から縛りプレイをしていると。まあ、植物だし火を使えばすぐだろうし、わからなくはない】
「……これから、お手本をしてもらう」
【お手本?】
「師匠、お願い――
―――心得た」
【仮面変えた?】
師匠に身体を任せてお願いしてみた。弾丸は全て最小限で避けるどころか、撃つ前に接近して握り潰し、植物人間の攻撃は掠りもせず全て見極めて回避し、赤い球体を引き抜いて倒す。ボスすら手数の関係で時間がかかったぐらいだ。
「見本はこれだ。精進せよ」
【【【無理だろ!】】】
「おー」
一つ思った。身体を師匠に任せて徹底的に鍛えてもらってから、身体を返してもらって復習すれば効率がいいのではないだろうか。話してみると、それでいくことになった。ただ、他の人にも任せてみると、皆がそれぞれ"個性"が有りなら先生を除いてかなり強かった。しっかりと使い方を身体に教え込んでもらい、"個性"の使い方を座学でレクチャーしてもらって実戦した。先生が例外なのは、相手は"個性"を持っていない上に他の"個性"が使えないから。あくまでも一人という扱いだし、先生にとってこの訓練は天敵。それでも私よりも断然強く、普通に上までいってたけど。実戦経験は大きかった。